2004年8月までの読書日記
  • 読書感想のページは移転しました。2004年9月以降の読書感想
  • このページでは、私が読んだ本について、個人的な主観により、感想を述べています。
  • 感想は現時点での自分自身の経験則や嗜好の投影であり、特定の作品を揶揄する目的ではありません。go_madの読書メモのようなもの、とご理解下さい。
  • 感想内のグレー文字部分につきましてはネタバレの恐れがありますので、これから読まれる予定の方はご注意下さい。
購入本リストは こちら


第三の男/グレアム・グリーン/---
2004.08.28読了 no-- ★★☆☆☆
有名な映画の脚本用に書いた小説。脚本にすることを想定して書いたためか、短くあっさりした内容です。これは映画で観たほうがいいのかな?という印象でした。

第四解剖室/スティーヴン・キング/新潮文庫
2004--.--読了 no-- ★★★★☆


幸運の25セント硬貨/スティーヴン・キング/新潮文庫
2004--.--読了 no-- ★★★★☆


黒い玉/トーマス・オーウェン/東京創元社
2004--.--読了 no-- ★★★☆☆


猫のゆりかご/カート・ヴォネガット・ジュニア/ハヤカワ文庫
2004.--.--読了 no6 ★★★☆☆


不夜城/馳星周/---
2004.3.10読了 no5 ★★☆☆☆
エルロイに影響を受けているというベストセラー作品。同僚に借りました。・・・やっぱり和モノは苦手。小説以前にマンガっぽいキャラクター造形に辟易してしまいます。
お話のほうも、どろどろした内容の割には情念のようなものを感じない、というか、どろどろして見えないというか。重苦しさを全く感じませんでした。同僚はとっても気に入ってるようなので、どんな感想を言おうか悩んでます。


ブラックハウス/スティーヴン・キング/文春文庫
2004.2.10読了 no3.4 ★★★★☆


第四の手/ジョン・アーヴィング/---
2004.1.30読了 no2 ★★☆☆☆
サーカスの息子についで、これも感情移入しにくかったです。特にクラウセン夫人の行動はかなり不可解で、全く理解できず。???な印象のまま読了でした。

サーカスの息子(上下)/ジョン・アーヴィング/---
2004.1.15読了 no48.1 ★★★☆☆
なんだか登場人物に感情移入しにくく、なかなか乗れませんでした。結局最後までイマイチなままだらだら読んでたのですが、それでもラストシーンの美しさにジーンと来てしまいました。これで乗って読めてたら、もっと感動しただろうなー。残念。

取るに足りない殺人/ジム・トンプスン/扶桑社
2003.12.10読了 no47/★★★☆☆


未亡人の一年(上下)/ジョン・アーヴィング/---
2003.12.10読了 no45.46/★★★★☆


平原の町/コーマック・マッカーシー/---
2003.11.10読了 no44/★★★★☆


猫が耳のうしろをなでるとき/コーマック・マッカーシー/---
2003.10.29読了 no43/★★☆☆☆
ハヤカワの異色作家短編集「壁抜け男」、マルセル・エイメの童話集です。
国境三部作の三作目を図書館で予約してあるので、到着するまでのつなぎに・・・と思ったんですが、1時間で読み終わってしまいます。
内容はやっぱり(?)童話。ちょっと意地悪でヒステリックな両親と小さな姉妹、それと人間のようにしゃべる動物たちのお話です。猫好きなので、タイトルにも惹かれたんですが、なんとなく擬人化したやつは好みじゃないんですよね。

越境/コーマック・マッカーシー/---
2003.10.28読了 no42/★★★☆☆
「すべての美しい馬」に続く、国境三部作の二作目。
少年が馬に乗って、アメリカからメキシコへ向かう、前作の別バージョンみたいな感じを受けました。但し、こっちのほうがちょっと私には難しかった。旅の途中で出会う人々の物語が途中途中で結構ページを割いて差し挟まれるのですが、よく理解できないまま流し読みしてしまいました。「居場所」に拘る主人公がそれを求めるごとにどんどん離れていく様子はとても面白く?読めます。10年後に再読したいです。

死のクロスワードパズル/ジョン・D・マクドナルド/---
2003.10.17読了 no41/★★☆☆☆


すべての美しい馬/コーマック・マッカーシー/---
2003.10.10読了 no40/★★★★☆
最初はとても読みにくいです。1/5くらいまで読んでも、まだいまいちお話に乗れませんでした。文章がとても特徴的で、読点がほとんどなく、ひとつの文章がとても長いです。登場人物のせりふにもカッコがありません。無駄な説明が省かれていて、いきなり真ん中あたりから読まされてるような印象を受けます。でも、だんだん慣れてきて、国境を越えるあたりからはのめり込んで読みました。
なんというか、風景が美しい。古き良き時代ですが、セピアカラーで感じるのではなく、まるで自分がその場面にいるかのような、みずみずしい感触があります。水の冷たさや夜の暗さ、山の静けさや馬に触れた時の暖かさを手に取るように感じることができ、とても気持ちがいいです。途中、かなり暴力的なシーンもあります。ただキレイなだけではないのも私好み(笑)。これは三部作の一作目らしいので、続けて読んでみます。
・・・それにしてもメキシコって怖い。

悪い種子が目覚めるとき/B・M・ギル/---
2003.10.1読了 no39/★★★★☆
これはなかなか面白かったです。最初はイマイチかなーと思っていたのですが、途中からお話が俄然生々しくなってきます。ラストのさわやかさ(?)だけで★ひとつプラス!

マイン/ロバート・マキャモン/文春文庫
2003.9.28読了 no38/★★★☆☆
60年代を背景に現代を生きる女たちのお話。徹底的に女に的を絞ってあり、まるで部外者だと言わんばかりに情けなく描かれた男たちの姿が逆に印象的。お話とは関係ないですけど、カバーはなんであんなことになっちゃったんでしょうか。藤田氏の絵がちょっと勿体無いですね。お話自体は逃げる、追いかける、追いつく、逃げる、の繰り返しで、残念ながらこの手の流れは途中で飽きちゃうんですよねえ、私は。

屍鬼/小野不由美/---
2003.9.20読了 no37/★★★☆☆
とっても遅いですが、ようやく読みました。
普段から日本人作家の作品はあまり読みません。現代モノなのに、変に古めかしい言葉を使ってみたり、遠まわしに表現してみたりするものが、どうも合わない。微妙に浮世離れしたような登場人物が多く、共感できない。閉鎖された小さな村を舞台にした吸血鬼モノということで、この作品にもあまり期待はしていませんでした。
読み始めたら、主人公は寺の坊主兼作家先生。やっぱり、と肩をおとしつつ読み始めましたが、読了後は期待以上に満足できました。
ものすごい厚さなのに、ほとんどだれることもなく、最後まで一気に読んでしまいました。主要な人物の中でも限られた数人以外はなんか置き去りにされちゃってたのがもったいないし残念ですが、力作を読んだなぁ、という手ごたえは感じました。但し、ラストは・・・うーん。

わが母なる暗黒/ジェイムズ・エルロイ/---
2003.9.10読了 no36/★★★☆☆
なんともすごい本です。エルロイが子供の頃に殺された母の、未だ未解決のままになっている殺人事件を、エルロイ自身が追いかけたドキュメンタリー。作品としてどうこうというわけではないんですけど、淡々とした筆致で書かれているのに、滲み出す念のようなものを感じます。彼のフィクション作品を「楽しむ」感覚では読めなくなりそうな気さえしました。エルロイの作品はこの事件にすべて根ざしてる、なんてよく聞きますが、これを読めば納得です。一通り読んでから読むべき本。

異形の花嫁/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2003.9.5読了 no35/★★★☆☆
オベールの新作。図書館で予約してたのが、ようやく届きました。
印象としては「森の死神」っぽい感じ。五体満足?ですが、児童虐待の過去を持つ主人公が、自分の身の回りに起こる事件を黙々と推理します。
うーん、でもいまいちだったかな。設定は風変わりですが、内容にはあまり新鮮さを感じませんでした。

殺人症候群/リチャード・ニーリィ/---
2003.8.27読了 no34/★★☆☆☆


ジャンクフィクションワールド/風間賢二/---
2003.8.18読了 no33/★★★★☆


青ひげ/カート・ヴォネガット/ハヤカワ文庫
2003.8.10読了 no32/★★★☆☆


スラップスティック/カート・ヴォネガット/早川書房
2003.8.5読了 no31/★★★★☆
ヴォネガット2作目。ヴォネガットってSFの人なんですよね。アーヴィングがヴォネガットと並び評されてあからさまに嬉しそうな顔をした、という話を読んで、「デッドアイディック」を読み、とても気に入ったので、どんどん読んでいこうと思っているのですが、バリバリのSF作品にぶつかったらどうしよう・・・と、ちょっとビビッってます。
さておき、この作品は大丈夫でした(SFといえばSFなのですが・・・)。前半がとても面白かった。
ヴォネガットの作品は、滑稽で風変わりなところは確かにアーヴィングに近いものを感じますが、内容はどっちかというと暗いです。寂しい、というか、アーヴィングとは対照的に、ことさら孤独を強調するような内容かな。でも文章が面白いのでそれほど重苦しい感じはしません。


殺す人形/ルース・レンデル/ハヤカワ文庫
2003.8.5読了 no30/★★★☆☆
レンデル2作目。タイトルからはちょっと違う印象を受けますが、「狂気」を主題にした作品です。主人公ドリーがどんどん狂気へ陥っていく様子はとても自然?に読めました。同時進行で進むもうひとつの狂気の青年ディアミットも然り。
どんなにもがいても孤独から抜け出ることの出来ないドリーとディアミットのような人がいるかと思えば、なんの苦労もなく、またなにもかもが味方するかのように、簡単に穴を埋めてしまうバップとイヴェット、はたまたかりそめの時間に幾度となく身をゆだねるドリーの父。彼らを見ていると、人生は孤独を埋める作業だと言われてるような気持ちになりました。

クライム・ウエイヴ/ジェイムズ・エルロイ/文芸春秋
2003.8.1読了 no.29/★★★☆☆
現在のエルロイを形作った、と本人自ら語る母の惨殺事件と、それを調べる間に引っかかった事件についてのドキュメンタリー、その他に短編が何作か収録されています。
このあとエルロイは「わが母なる暗黒」という分厚い本にこの惨殺事件についてまとめているので、この事件についてならそっちだけ読んでもいいかも。
短編のほうはもういいかな。個人的にはエルロイは長編が面白いです。


凶手/アンドリュー・ヴァクス/ハヤカワ文庫
2003.7.25読了 no.28/★★★☆☆
エルロイとトンプスン以外で初めて読むノワール。
タイトル通り、そのもの両手が武器である殺し屋のお話。なかなか面白かったです。無口で無個性な外見をし、音、感情、情報など様々なものから切り離された生活を送っている無色透明で摑みどころのない男。そんな主人公とそのまわりを取り巻く様々な人々の間に流れる微妙な感情が、この作品の見所かも。ラストも良かったです。

雪の死神/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2003.7.22読了 no.27/★★☆☆☆
掲示板で「読むな」と釘をさされたにも関わらず、手に取ってしまった「森の死神」の続編。雰囲気的には「森の死神」とあまり変化ありません。問題は終盤。あれじゃあ納得できないよなぁ、という感じで残念でした。


デッドアイ・ディック/カート・ヴォネガット/---
2003.7.15読了 no.26/★★★★★



壁抜け男/マルセル・エイメ/早川書房
2003.7.10読了 no.25/★★★★★



ハリウッド・ノクターン/ジェイムズ・エルロイ/文春文庫
2003.6.25読了 no.24/★★☆☆☆



ホワイト・ジャズ/ジェイムズ・エルロイ/文春文庫
2003.6.15読了 no.23/★★★☆☆



LAコンフィデンシャル(上・下)/ジェイムズ・エルロイ/文春文庫
2003.6.10読了 no.21-22/★★★★☆



ビッグ・ノーウェア(上・下)/ジェイムズ・エルロイ/文春文庫
2003.5.30読了 no.19-20/★★★★☆


深夜のベルボーイ/ジム・トンプスン/扶桑社
2003.5.20読了 no.18/★★★★☆
丁度いいペースで訳出されるトンプスン作品。扶桑社さま、今後ともよろしくお願いします。
この作品も、相変わらず楽しませていただきました。もうトンプスン作品にはかなりの安心感があります。実際に主人公の内面を覗きこんでいるかのようなリアルな感触は、トンプスン作品でしか味わえません。次回作が待ち遠しい!

ブラックダリア/ジェイムズ・エルロイ/文春文庫
2003.5.16読了 no.17/★★★★☆
LA四部作の1作目です。
エルロイ作品に出てくる刑事(主人公)に、ケッチャム「ロードキル」のルール警部補(だったかな)を重ねてしまいます。ホラー小説ばかり読んできた私にとって、精神科に通い、職権を乱用する、あまりにも小説的でない刑事、ルールに驚いたのですが、エルロイの小説ではそれが普通のようです。
他のエルロイ作品もそうですが、半ば過ぎあたりから物語がどんどん転がり始め、ちょっと興奮していまいました。様々な謎が次々と明らかになっていく様は、ちょっと都合よすぎる感じがしないでもないですが、読んでいる間はそんな些細なことを気にしないで夢中になってました。
ドロドロした内容の割りにさわやか?なラストも好きです。どうも最近ハッピーエンドが好きになってきたかも(笑)。

仮面の情事/リチャード・ニーリィ/新潮文庫
2003.4.30読了 no.16/★★☆☆☆
リチャード・ニーリィの作品は面白い、とどこかで読んだので、買ってみました。
えー、結論から言うと、私に合う作品ではなかったようです(笑)。

ドリーム・キャッチャー(1.2.3.4)/スティーヴン・キング/文春文庫
2003.4.14読了 no.11.12.13.14/★★★☆☆
宇宙人モノ(苦手)なのでちょっと不安でしたが、 久々に面白かったです。
ITでトミーノッカーズでグリーンマイルな内容でしたが どれの焼き直しという感じもしません (あとがきにも書いてありましたが)。
中期の頃のキングが戻ってきた!みたいな感じを受けましたが、 お話自体はより複雑さを増していてたくさんの「伏線&謎の解明」が テンポ良く進んでいくのでさくさく読めました。
最後ちょっとやっつけっぽい感じがしたのがちょっと減点です。

嘘、そして沈黙/デヴィッド・マーティン/扶桑社ミステリー
2003.4.14読了 no.15/★★★☆☆
タイトル通り、様々な「嘘」がお話全体を形作っている点が一貫していて、お話全体としては結構好きなほうかな、とも思うのですが、どうも登場人物に魅力を感じません。人物自体は良くかけてると思うのですが、どうも好きになれないというか・・・。「好き」な部分も「嫌い」な部分も同じくらいあるせいで、いい悪いは別として個人的に変に気になる小説です。
ジャンルはミステリだと思うのですが、ホラーばりの描写が面白くもあり、逆に鼻についたりもします。そのへんも微妙(笑)。

158ポンドの結婚/ジョン・アーヴィング/新潮社
2003.3.29読了 no.10/★★☆☆☆
 今まで読んだアーヴィング作品とはちょっと違った印象を持ちました。「ガープの世界」「ホテルニューハンプシャー」「サイダーハウスルール」「オウエンのために祈りを」といった作品は、どれも子供がとても魅力的に描かれていて、大人になってからも、その魅力を保ったまま生き続けている姿に打たれたりしたんですが、この作品は「大人」の作品といった感じ。
 二組の夫婦による合意の上での継続的な夫婦交換。決してスムーズに行くはずもなく、簡単に理解しあえるものでもない、もつれにもつれた感情の行き来が延々と描かれていて、ちょっと重苦しい内容です。

恐怖通信/オーガスト・ダーレス他/河出文庫
2003.3.24読了 no.9/★★☆☆☆
 アンソロジー。最初の「幽霊/オーガスト・ダーレス」は結構好きな感じの作品だったんですが、「恐怖通信」という題名の割に、魔術とか魔女を題材にしたファンタジックな作品が多かったのが残念。私はあまりファンタジーには馴染めないのです。でもラストを飾る「十月ゲーム/レイ・ブラッドベリ」はやっぱり秀逸。ただ、これは他の本でも読めます。

オウエンのために祈りを(上・下)/ジョン・アーヴィング/新潮社
2003.3.16読了 no7.8/★★★★☆
 キリスト教をテーマにした物語だったので、少々難しく感じましたが楽しく読めました。「信仰」の正体、「奇跡」への感じ方など、どうしても日本人にはすんなり馴染めないですね。微妙なところを捉えられず損をしている気がします。
 前半から終わり近くまで、延々とオウエンとジョンの日常が描かれるわけですが、様々な異なる場面を流れるように淀みなく語る合間に、なんとも魅力的なエピソードを挟みつつ、読者を引き込んでいきます。やはりアーヴィングは凄い!と改めて感じます。
 しかし、この作品はそれだけで終わらなかった!終盤全てのエピソードが一つに収束していく様には、信仰に思うところを持たない私でさえ感動を覚えました。

ロウフィールド館の惨劇/ルース・レンデル/新潮社
2003.2.9読了 no.6/★★★★☆
 ルース・レンデルを読むのは初ですが、かなり面白かったです。
 最初の一行目から、物語の結末とその動機が語られ、その後も事件の共犯者やら犠牲者などの情報が与えられます。このような形式の為、前半は文章の切れ目切れ目で「ここでこうしていればこんなことにならなかったはずなのに・・・」といった第三者的コメントが挟まれ、正直うっとうしく感じていたのですが、後半ついにミリンダによって迎えるべきときを迎えてからは目が離せず参りました。
 傍から見れば狂っているようでもある石のようなユーニス、実際は原始的な人間の本質を体現したような存在かもしれない、それがまた怖い。ユーニス以外の登場人物に関しては、ほとんど肉付けされていないにも関わらず、それで十分と思わせてくれるほど、際立って特異である反面、どこか自分を見出してしまうキャラクターに圧倒されました。

自殺の丘/ジェイムズ・エルロイ/扶桑社ミステリー
2003.2.1読了 no.5/★★★☆☆
ホプキンズ三部作の第三弾。ホプキンズシリーズはこれで終わりとのことですが、やっと面白くなってきたのに!という感じです。
三部作の中ではこれが一番面白く読めました・・・と書いていて気づきましたが、そういえば、またしても弱さを抱えて苦悩する男の話・・・!どうも私が好む話の確定要素と考えて間違いないようです(もし私の読書感想を参考にされてる方がいらっしゃったら、その辺割り引いてくださいね・笑)。
「自殺の丘」という邦題は直訳ですが、なんだかしっくりこない言葉ですね。作中何度も繰り返される「そして自殺の丘では死が快感だった」も、うまくすれば印象に残る名台詞になっただろうし、作品の印象も左右した気がします。


ホプキンズの夜/ジェイムズ・エルロイ/扶桑社ミステリー
2003.1.25読了 no.4/★★☆☆☆
ホプキンズ三部作の第二弾。続けて読もうと思ったらなんと買い忘れていたことに気づき、くやしい思いをしました。前作は第一作目ということもあり、十分に紹介する必要があったということで、今回はロイドの存在感がちょっと薄く感じるのも仕方ないのかな?

ラストの裏切りはもう少し衝撃的にかけた気がします。なんだか薄っぺらいエピソードに感じました。

震える血/マキャモン、マシスン他/祥伝社文庫
2003.1.13読了 no.3/★★☆☆☆
エロチックホラーのアンソロジー。もともとこういうのはなんとなく苦手なのですが、それとは別にあんまり面白い作品がなかったです。書いてるメンバーはそうそうたるメンバーなんですが・・・。

血まみれの月/ジェイムズ・エルロイ/扶桑社ミステリー
2003.1.8読了 no.2/★★★☆☆
遂に取り掛かったホプキンズ三部作です。ホプキンズのある種異様なキャラクターに興味を覚え、最後まで面白く読めました。テディとロイドの関係はレッドドラゴンのグレアムとダラハイドを彷彿とさせます。ただキャラクターを強烈に印象付けるほどの描写がなく、個人的にはもう少し教えて欲しい感じはしましたが、まだあと2作ありますので、そのへんは保留にできます。が、読み終わってみると、意外と印象に残る台詞が多いですね。ロイドの人物像など、最初の暴動のエピソードにかなり要約できている気がします。

キラー・オン・ザ・ロード/ジェイムズ・エルロイ/扶桑社ミステリー
2003.1.2読了 no.1/★★★☆☆


夜の子供たち(上・下)/ダン・シモンズ/角川文庫
2002.11.17読了 no.26.27/★★☆☆☆
吸血鬼&医学&ゴシックホラー。ごめんなさい、ひたすら眠く、読み終わるのにかなり時間がかかってしまいました。登場人物に謎が多いことが、私に対しては、モチベーションをあげるどころか下げてしまったようで・・・。

けだもの/スキップ&スペクター/文春文庫
2002.11.11読了 no.25/★★★☆☆
アンソロジー「死霊の宴」を編んだスキップ&スペクターの長編ホラーです。なかなかにスプラッタ。そしてエロチック。まさにスプラッタパンクといった感じの作品です。レイモンとかお好きな方は好きかもしれませんね。主人公の性格付けなど、私も面白く読みましたが、どうも「誘惑する美女」みたいなのが苦手なんです・・・。なんでしょう、嫉妬でしょうか(笑)。

ナニー/ダン・グリーンバーグ/新潮文庫
2002.10.19読了 no.24/★★★☆☆
古本屋でなにげなく買った本。ジョン・ラッツの「同居人求む」や、映画の「ゆりかごを揺らす手」、「ローズマリーの赤ちゃん」など色んなものを彷彿とさせる内容。読み始めたら一気読みしてしまい、ラスト近くでは怖い!とも思いました。が、ハッとさせるような驚きがないことと、設定に関して説明不足な点がいくつか残ること、それと主人公夫婦の心理描写というか関係などが結構面白かったので、もう少しその辺を突っ込んで欲しかった、という点で個人的にはちょっと減点。

トーテム/デヴィット・マレル/ハヤカワ文庫
2002.10.18読了 no.23/★★☆☆☆
ランボーの原作「一人ぼっちの軍隊」の作者デヴィット・マレルが、キングの「呪われた町」に触発されて書いたというホラー作品。キング曰く「まったく素晴らしい。「一人ぼっちの軍隊」よりも興奮した」とのこと。キングはこの「一人ぼっちの軍隊」も絶賛していたので、かなり気に入ったのでしょう。私はなんとなく物語に没入できず、最後まで話の筋を追う感じでしか読めませんでした。

魔界の家(上・下)/ジェームズ・ハーバート/ハヤカワ文庫
2002.10.9読了 no.21.22/★★★☆☆
表紙はおどろおどろしいですが、内容は「魔法」をテーマにしたファンタジーテイストの作品。もちろんファンタジー・ホラーという感じではあります。どちらにしても表紙と内容が全く合っていません。肝心の感想・・・は普通、かな?(笑)

悪を呼ぶ少年/トマス・トライオン/---
2002.9.28読了 no.20/★★☆☆☆
キングが「死の舞踏」の中で絶賛していた作品。キングの絶賛する作品はどれも面白く、ハズレがなかったのですが、残念ながらこれにはあまりのれませんでした。なにか文章が読みにくいんですよね。訳のせいかとも思いましたが、そうでもなさそうだし。お話自体も、予想したとおりになってしまい、あまり新鮮味を感じませんでした。それなりに古いお話かと思ったら、そうでもないし・・・。モダンホラーのはしりと言われる作品が出始めた頃ですが、他の作品のほうが面白かったです。

サイダー・ハウス・ルール(上・下)/ジョン・アーヴィング/新潮文庫
2002.9.0読了 no.18.19/★★★★★


乙女の祈り/アンドリュー・クラヴァン/---
2002.8.0読了 no.17/★★★☆☆


真夜中の死線/アンドリュー・クラヴァン/---
2002.8.0読了 no.16/★★★☆☆


ホテル・ニューハンプシャー(上・下)/ジョン・アーヴィング/---
2002.8.13読了 no.14.15/★★★★★


闇が噛む/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2002.8.9読了 no.13/★★★☆☆


森の死神/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2002.7.24読了 no.12/★★★☆☆


鉄の薔薇/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2002.7.23読了 no.11/★★★☆☆


ジャクソンヴィルの闇/ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫
2002.7.20読了 no.10/★★★★☆
これでもかってほどにホラーな作品でした。フランス人、しかもミステリ作家ですよね?さらに女性(まあ、これはあんまり関係ないかもしれませんが)がこんな作品を書くなんて驚き。といってもあんまりフランス人作家の作品、読んだことないのですが、もっと内省的な白っぽいものをイメージしてしまいます。
読みはじめたが最後、一気に読み通し、現在午前3時(涙)。吐き気をもよおす描写が多いのですが、やめられない。ストーリーに起伏があり、設定も面白いです。キング程ドラマもないし、ウィルスン程盛り沢山でもないけど、そこらのホラー作品には決して負けないのでは。グロさや書き込みの程度が丁度ケッチャム「オフ・シーズン」とかぶってるかも。
死ぬほどいい女/ジム・トンプスン/扶桑社
2002.7.16読了 no.9/★★★★★
本屋で偶然発見して購入。続々出てますね。このミス受賞以来やっぱり売れてるんでしょうか。
またまたトンプスン節炸裂といった感じの作品でした。読者のみならず、自らを欺き続ける男はここでも健在。が、他のトンプスン作品に較べて、虚構と現実との線引きがある程度明確でわかりやすい為か、主人公の内的世界に比較的スムーズに没入できます。ラスト近くの狂気の描写は秀逸!かなり面白かったです。次が楽しみ。
ガープの世界/ジョン・アーヴィング(上・下)/新潮文庫
2002.7.10読了 no.7.8/★★★★★
最近、某メーリングリストで大人気のアーヴィング代表作。この本は10年程前に既読だと思っていたのですが、読了してみると、上巻しか読んでいなかったことが判明。どうりで記憶が中途半端なはずです。
何故前回は、途中で読むのをやめることができたのか我ながら不思議。最初から最後まで決して飽きさせない意外な展開と興味深く個性的なキャラクター、思わず二日連続朝4時就寝(笑)。文章構成に関しては全くピンとこない私さえ、思わずうーんと唸ってしまうようなストーリーテリングの妙。愛と死、暴力とセックス、私の好む小説には頻繁に扱われるこの手の題材を、一見乱暴にも思える手口で提示しつつも、何故か明るい印象を残す、複雑な小説でした。何度も読みたい作品です。
霧/ジェームズ・ハーバート/−−−
2002.7.03読了 no.6/★★★★☆
休業期間中も、本の記録だけは残しておくべきだった・・・、後悔。
復帰1冊目は積ん読本だった「霧」。確か「死の舞踏」で絶賛されていたような気がします(確認しようと思ったら、見つからない!引っ越しのバタバタで仕舞い込んでしまったのかな)。
お話には、始まってすぐに引き込まれます。被害にあった村の住民がそうであったように、読者もなんのココロの準備もなく亀裂へ呑み込まれてしまい、そこから繰り広げられるありとあらゆる狂気のオンパレードに圧倒。スプラッタな現場に混じって、日常的な光景が繰り広げられる様は本当に恐ろしいです。ちょっとしつこい感じもしましたが、面白く読めました。
アフター・ダーク/ジム・トンプソン/扶桑社
2002.6.15読了 no.5/★★★★☆

黒後家蜘蛛の会(5)/アイザック・アシモフ/新潮文庫
2002.5.00読了 no.4/★★★★☆

偶然の音楽/ポール・オースター/新潮文庫
2002.5.00読了 no.3/★★★★★

ぼっけえきょうてえ/岩井志麻子/角川書店
2002.5.00読了 no.2/★★★★☆

戦慄の絆/−−−/−−−
2002.4.00読了 no.1/★★★★☆

黒後家蜘蛛の会(2)/アイザック・アシモフ/−−−
2002.3.31読了 no.60/★★★☆☆
とにかくアシモフという人の知識の深さには驚かされる!「黒後家蜘蛛の会」は、とっても楽しい百科事典です。
アメリカン・サイコ(上下)/ブレット・E・エリス/角川文庫
2002.3.20読了 no.58-59/★★★☆☆

マーチ博士の四人の息子/ブリジット・オベール/−−−
2002.3.23読了 no.57/★★★★☆
医者の四つ子の息子達。趣味や性格は違えど、見た目は全く同じ。住み込み家政婦は、そのうちのひとりが殺人者であることを独白した手記を発見する。
殺人者の手記と、家政婦の日記を交互に読ませる設定。全て会話口調のため読みやすく、面白かったです。全く同じに見える四つ子の息子達の中からの犯人探し、という設定は面白く、あまりミステリ好きではない私もわくわくして読みました。
ちょっと伏線が少なすぎる、というか、もう少し最後で「なるほど」と思わせて欲しかったような気がします。ところどころあった伏線は、どれも危なっかしさが足りず、無難な印象です。四つ子の息子達のキャラクターについても、もう少し情報が欲しいような。読者が犯人を推理し、絞り込む材料が乏しいため、どうも起伏のない印象です。
虚ろな穴/キャシー・コージャ/ハヤカワ文庫
2002.3.20読了 no.56/★★★★☆
アパートの物置にぽっかり開いた穴に魅せられる若者達のお話。登場人物は自称詩人、彫刻家、アーティストといった面々だけにアバンギャルドな雰囲気・・・倦怠感漂う小説で、そういう意味では「アメリカン・サイコ」や「ファイトクラブ」に通じるものが。それなのに、この二作の主人公たちの清潔さに比べ「虚ろな穴」の登場人物たちの不潔なこと(笑)!対照的なのが面白いです。
こういう終始鬱々としたトーンのお話は、読んでて結構辛くなったりするんですが、不可解な穴と、まわりを取り巻くキャラクターに比べて、真面目(?)な主人公への共感と反発で(実際、このお話を読んでいると、主人公に感情移入せざるを得ない)、なんとなく最後まで読まされてしまいます。
ホラーな題材は、エンターテインメントの要素を強調する役割が多いように感じますが、そういう意味では、かなり変化球な感じがします。何故この人はホラーを選んだんだろう?他の作品も読んでみたいです。
惨殺の女神/ジョン・ソール/ハヤカワ文庫
2002.3.15読了 no.56/★★☆☆☆

死の代理人/L・ロン・ハバード/ニューエラジャパン
2002.3.15読了 no.55/★★★☆☆

奇跡の輝き/リチャード・マシスン/−−−
2002.3.12読了 no.54/★★★☆☆
死後の世界を舞台にしたラブ・ストーリー。無宗教な日本人には、きらびやかで心地よく、なんの不満も不足もない天国の存在っていうのは、どうも眉唾な感じがしてしまいます。地獄のところでは、神曲を彷彿とさせ(ちなみに天国は「大霊界」を思い出しました・笑・見てないんですけど)、もしかしてこれがモチーフなのかな、とも思いましたが、解説によるとギリシャ神話がモチーフだそうです。なるほど、そういったリアリティを排除できる観点に立てば、なかなか面白かった気がします。
ブルー・ワールド/ロバート・マキャモン/文春文庫
2002.3.12読了 no.53/★★★☆☆
マキャモンの短編集。本人は短編は苦手で、まわりが書けというから書いている、と述べていますが、なかなか面白かったです。ただ、私もマキャモンは長編作家という気がするなあ。この短編集の中でも、長いもの程面白かったのです。「夜はグリーンファルコンを呼ぶ」然り、「ブルー・ワールド」然り、です。短いものは、発想はどれも面白いと思うのですが、どうも生き生きした感じが伝わってこず、「作品」という段階でとまっているような気がします。
あと、以前「ナイト・ソウルズ」でも「夜襲部隊」として掲載されていた「ミミズ小隊」。(「ソウルズ」はとても好きな短編集ですが、マキャモンのこの作品は中でも特に好きでした)「ミミズ小隊」というタイトルは、とても興味をそそるタイトルだと思うのですが、内容とのバランスを考えると「夜襲部隊」のほうが効果的では、と個人的には思います。
縮みゆく人間/リチャード・マシスン/ハヤカワ文庫
2002.2.25読了 no.52/★★★☆☆
やっと見つけたマシスンの長編です。一日に1/7インチずつ縮んでいく男のお話。なにか思い出しませんか?キングの「痩せゆく男」みたいですよね。きっと「痩せゆく男」はここからヒントを得たのでしょう。邦題も意識したものになっています。
「地球最後の男」に続き、これも孤独に苦しむ男の描写に重点が置かれています。ただし、何故か「地球最後の男」に比べて、胸に迫ってこない。何故でしょう。
まず「小さな人間」という設定に、どうもコミカルなイメージを抱いてしまうこと。身長1インチに満たない小さな人間、というと、絵本のほうのガリバー旅行記や、ドラえもんのスモールライト、みたいにコミカルなイメージが抜けず、どうも主人公の苦悩に違和感を覚えてしまいます。
それと「男性」的な抑圧の描写が多く、女性である私にはどうもピンとこないこと。
しかし、ラスト、ミクロの世界へと移行していくくだりでは、物語の広がりを感じました。・・・ただゼロにならない、っていう発想自体は、お話が始まった時点でなんとなく感じていたので、ちょっとがっかりかな。
黒後家蜘蛛の会(1)/アイザック・アシモフ/−−−
2002.2.24読了 no.51/★★★★☆
基本的に謎解きミステリには興味がないのですが、これは面白く読めました。毎回毎回同じ設定であること=「お約束」が、読者に安心感を与えます。次々と読んでいき、メインキャスト達の個人像ができあがっていくのと比例して、作品に対する親しみも湧きます。アシモフ自身も書いてて楽しいでしょうねえ!続きを読みたいシリーズです。
トワイライト・アイズ(上・下)/ディーン・R・クーンツ/ハヤカワ文庫
2002.2.17読了 no.49.50/★☆☆☆☆
うーん、これは・・・!人間の皮をかぶった邪悪な魔物(ゴブリン)を見分ける能力「トワイライト・アイズ」を持つ少年のお話です。
唐突に一人語りの形式で、僕には邪悪な魔物をみわける能力が備わっている、ついこの間も人間の皮をかぶったゴブリンの伯父さんを殺して、今逃げてるところだ、と始まるので、てっきりパラノイアだと思ってしまいましたが、考え過ぎでした。いきなりこんな風に始まる時点で、結末が既にみえたよう気がして、あとは惰性。
この作品の重要な題材として、主人公少年とその恋人の愛情が取り上げられているのですが、これが全く共感できない。都合よすぎ。どうも信じ難く、受け入れることができませんでした。 ライアはスリムの能力にうすうす気付いてたわけだし、しかもそれをゴブリンに密告してる。それなのにいきなり恋人同士になるかなぁ?しかもあっさり寝返って、今度はやる気満々でゴブリンに立ち向かってるし。こんな女はとても信じられません(笑)。それなのに後半は延々とふたりの絆の強さについての描写が続くので、読む辛さは増すばかり・・・
シルエット/ウィリアム・アイリッシュ/創元推理文庫
2002.2.15読了 no.48/★★☆☆☆
アイリッシュは「裏窓」の入った短編集以外は、ちょっと期待外れの感アリ。面白いとは思うのですが、好みではないみたいです。
埋葬された涙/タビサ・キング/新潮文庫
2002.2.6読了no.47 /★★★☆☆
キングの奥様、タビサ・キングの長編です。当初、どうも的を得ない比喩的表現や、リズムを損なう短い文節の繰り返しが気になったのですが、次々とめぐる過去の回想と現代との行き来の中で段々引込まれていきました。
残念なのは終盤。段々目新しい事柄がなくなってきて、ちょっと退屈してしまいました。
あと、何故ふたりの関係をシロのままにしておかなかったのかな?
夜の旅、その他の旅/チャールズ・ボーモント/早川書房
2002.2.4読了no.46 /★★★★★
大当たり!「異色作家短編集」は、機会があれば全部読みたいなあ、と思っていたので買ってみたんですが、久々の衝撃的出会いでした。一話読み終える度に、満足のため息。それはブラッドベリの短編を読み終えたときの気持ちにかなり近く、私にとってはそのブラッドベリの「十月はたそがれの国」以来の経験でした。この本大好き!
お気に入りは、社会的縮図の中のどうしようもないやるせなさ「鹿狩り」、私の好きな"ブラッドベリの老人もの"テイスト「魔術師」「淑女のための唄」。
残念なのはこのチャールズ・ボーモントの作品は、雑誌、アンソロジーに掲載されたものを除くと、これ以外に邦訳されていないらしいこと。ほんと残念。雑誌を漁ります!
悪夢/ジェームズ・ハーバート/−−
2002.1.22読了no.45 /★★★☆☆
外人版大槻教授のお話(笑)。今まで読んだのが運よくアタリばかりだったのかもしれませんが、個人的には、お屋敷が舞台のお話は結構恐いです。主人公のトラウマが軸になっている内容の割には、そっち方面物足りない気がしますが、ストーリー展開や、状況描写が真に迫っていて、読んでいて引込まれます。
晩餐会の物語/ウィリアム・アイリッシュ/−−
2002.1.20読了 no.44/★★☆☆☆
ちょっとミステリ色が強い短編集だった。残念。
第四間氷期/阿部公房/新潮文庫
2002.1.20読了 /★★★☆☆

ふたりがここにいる不思議/レイ・ブラッドベリ/新潮文庫
2002.1.15読了 no.43 /★★★★☆
やっぱりブラッドベリはいい!
幻の特装本/ジョン・ダニング/ハヤカワ文庫
2002.1.1読了 no.42/★★☆☆☆
「死の蔵書(以下蔵書)」の続編・・・というよりシリーズもの、というべきかな。「蔵書」は、古書店業界という舞台設定でしたが、こちらはその裏話も受け継ぎつつ、こんどは本作りの業界にも踏み込んだ設定。裏話は「蔵書」と同じく楽しめました。が、ストーリーのほうは、「蔵書」のほうが面白かった気がします。ちょっと話が整理しにくい感じがしました。
スワン・ソング(上・下)/ロバート・マキャモン/福武書店
2001.12.27読了 no.40-41 /★★★★☆

ルル・オン・ザ・ブリッジ/ポール・オースター/新潮文庫
2001.12.12読了 no.39 /★★★☆☆

シティ・オブ・グラス/ポール・オースター/角川文庫
2001.12.20読了 no.38 /★★★☆☆

孤独の発明/ポール・オースター/新潮文庫
2001.12.15読了 no.37 /★★★☆☆

スティンガー/ロバート・マキャモン/扶桑社ミステリー
2001.11.25読了 no.35-36 /★★★☆☆

家/ロバート・マラスコ/ハヤカワ文庫
2001.8.30読了 no.34 /★★★★☆

鳩笛草/宮部みゆき/−−−
2001.8.2読了  /★★★☆☆
  超能力をテーマにした短編集。うち二編は、キングの「ファイアスターター」から多大なる影響を受けている様子です。
  「燔祭」は、念力放火の能力を持つ女性のお話。このお話はその後、長編「クロスファイア」へと受け継がれていきます。自らを「装填された銃」と呼び、自らの使命を信じることで、その力との折り合いをつけようと生きる主人公は、まるで「ファイアスターター」のチャーリーのその後を見るようでした。チャーリーがあの後、どうなったかは知る由もありませんが、この主人公のようになっていたら、ちょっと悲しいですね。
  「鳩笛草」は、能力的には「デッドゾーン」のジョンと同じものを持つ女性の話ですが、こちらは「燔祭」とは逆に、その力を身軽に利用している点が印象的です。
  でも、やっぱし和物苦手かも・・・今回特に、主人公たちの年令が私と近かったため、ちょっと苦しかったです。
ローズマリーの息子/アイラ・レヴィン/早川書房
2001.7.24読了 no.33 /★★☆☆☆

幽霊たち/ポール・オースター/新潮文庫
2001.7.26読了 no.32 /★★★☆☆

グリフターズ/ジム・トンプソン/扶桑社ミステリー文庫
2001.7.22読了 no.31 /★★★☆☆
  詐欺師のお話、ということで、粗筋からはあんまり興味をそそられなかったのですが、面白く読めました。悪の世界に身を置く三人の詐欺師たちの生き方が、押し付けがましくなくリアリティを感じさせます。そこに絡んでくる実直な看護婦キャロルは、残酷な夜の足の不自由な娘を彷彿とさせるキャラクター。トンプソン作品の登場人物は、実直な人間が時に思いもかけない強さを発揮しますね。
  映画にもなっているようなので、是非みてみたいと思います。映像の方が面白いかも。
黒いカーニバル/レイ・ブラッドベリ/早川書房
2001.7.15読了 no.30 /★★★★☆
  ブラッドベリの短編集の中でも、私の一番のお気に入り、「10月はたそがれの国」は、処女短編集「DARK CARNIVAL」を再編したものである、ということだったので、ずっとこの処女短編集を読みたいと思っていました。で、みつけたのがこれなのですが、後書きによると、これは「DARK CARNIVAL」とは似て非なるものなのですね。どうやら日本独自の再編版、といったものらしいです。「10月・・・」に収録されなかったもの、「DARK CARNIVAL」にも収録されていない雑誌に収録されたもの、といった、日本で読めなかったものを編んだものであります。
  ブラッドベリ、SF物を中心に、未読が結構ありますので、地道につぶしていこうと思います。
ゴッド・プロジェクト/ジョン・ソール/文春文庫
2001.7.12読了 no.29/★★★☆☆
  ジョン・ソール、実は嫌いでした。家にまだ未読のものが何冊かありますが、新たに買って読むことはないだろうと思っていたのですが、結局これを購入。きっかけはヤフー掲示板。私と同じくソール苦手な人が、ホラー好きの友人から『騙されたと思ってゴッド・プロジェクトだけは読んでみ!』と言われた、という書込みに興味を持ったのでした。
  すると、面白い!子供たちに一体なにが起こっているのか、それは誰によってもたらされたものなのか、というミステリを上手く引っ張りながら進んでいくので、先が気になってどんどんページを繰ってしまいました。
  最後のあたり、読者をあっと驚かせるつもりで挿入したのであろう小児科医のエピソードは、意図がくさいほど伝わってちょっと興ざめ。産科医をシロにする為の伏線はかなりあって、それなりに必要性も感じるのですが、彼を悪玉にする必要があるのかな?同じくエピローグで、子供たちが彼の名前を口にしますが、これにも白けてしまいました。あと、ちょっとあっさり人殺し過ぎだし、夫婦間の愛情関係、上手く行き過ぎ(笑)。個人的にはこういう細かい日常描写のリアリティの積み重ねで、作品の印象がガラっと変わりますので、ストーリー上必要ならば、もう少し自然に見せて欲しいな、と思いました。
ナイト・ワールド(上下)/F・P・ウィルスン/扶桑社ミステリー文庫
2001.7.7読了 no.27-28 /★★★☆☆
  長かったナイトワールドサイクルもようやく読了。ここに到達するまでの話を集約するにふさわしい派手さで、面白く読めました。ウィルソンはいつも話にボリュームがあって、んとなく得した気持ちにさせてくれます。
しかし、こうやって通して読むと、もう単純に読了したことの達成感に紛れてしまって作品自体に対する評価が、自分の中でちょっと曖昧になってしまっている気もします。
  グレーケンが自分の役割に終止符を打ちたい気持ちとか痴呆になったマグダのこと、とか、正義のヒーローの人間らしさを垣間見るいいエピソードだと思うんですがグレーケン自身の語りが少ない所為か、あまり上手く処理されてなかった気がするのが残念といえば残念でした。
触手(上下)/F・P・ウィルスン/ハヤカワ文庫
2001.6.24読了 no.25-26 /★★★★☆
  ナイトワールドサイクルの中で、唯一ハヤカワから出ている作品です。
  「医学ホラー」等と銘打っている為、ちょっとビビリ気味だったのですが、難しい専門的な知識に頼ったストーリー展開があるわけではなく、大変楽しく読めました。ある日、浮浪者に触れられたことから突然他人の病を癒す力を得る医者のお話ですが、同じくひょんなことから予知能力を授かった「デッド・ゾーン」のジョン・スミスと同じような状況に追い込まれ、同じ孤独と、同じジレンマに陥ることになります。但し、ジョンに比べて、ずっと味方が多く、読者の胃を痛ませない組み立ては、やっぱりウィルソン、という感じがします。
  結果が全てか、それともプロセスか。媒体が人間である以上、そこには葛藤が生まれ、それが主人公の苦悩をより引き立てます。よくよく考えると全体的に説明不足な部分も多いと感じたのですが、それが全く気にならないあたり、ウィルソンの力量を感じました。ラストに畳み掛けるふたつの皮肉な展開が、ナイトワールドにどういう風に繋がっていくのか楽しみです。
マンハッタンの戦慄(上・下)/F・P・ウィルスン/扶桑社ミステリー文庫
2001.6.18読了 no.23-24/★★☆☆☆
  ナイトワールドサイクル2作目(多分)。始末屋ジャックという、必殺仕事人的な(?)仕事をする男が主人公のオハナシ。先に読まれた皆さんがつまんない、と口を揃えておっしゃっていたので、あまり期待していませんでした。
  実際読んでみて、つまんないとは思わないけど、ちょっとやっつけ仕事っぽい雰囲気を感じます。展開にも特別驚きがないし、子供だましっぽい感じがしました。ジャックが始末屋になったいきさつを語る部分なんて、ジャックのキャラクターに読者を惹きつける重要な部分だと思うんですが、全然響くものがなくて残念。ジャックは大使館や国連といった世界の大物からの依頼で動いていますが、そこまでの品格も迫力もないように思います。正直説得力がないです。次は「触手」を読みます。
アメリカのありふれた朝/ジュディス・ゲスト/集英社文庫
2001.6.15読了 no.22 /★★★☆☆

完璧な犠牲者/角川文庫
2001.6.3読了 /★★★☆☆

ずっとお城で暮らしてる/シャーリィ・ジャクスン/学研ホラーノベルズ
2001.5.31読了 no.21/★★★★★
  最高!ヤフーオークションで偶然発見して、500円で落札した絶版本ですが、ホント運がよかった。ネット古書店のサーチで検索してみると、3500円で売られてました。多分、オークションで見つけてなかったら、3500円で買ってたでしょう。
  私の大好きなジャクスンの世界。本当は傾いているのに、まっすぐに立っているように錯覚する部屋のような、不思議な感覚の世界がそこにあります。思わず憧れてしまうような幸福と、その観念をささえる狂気、不安要素の微妙さは、ここでも素晴らしいバランスを保っているように思います。ジャクスンの邦訳が出ているもので、未読はあと一冊!早く読みたいです。
地下室の箱/ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー文庫
2001.5.31読了 no.20/★★★☆☆

メランコリィの妙薬/レイ・ブラッドベリ/早川書房
2001.5.30読了 no.19/★★★★☆
  今併読しているブラッドベリの「黒いカーニバル」の後書きに、「ブラッドベリのように書けるのはブラッドベリだけだ」というような主旨の言葉が紹介されていました。翻訳されたものでさえ、その詩情あふれる言葉選びにぼーっとなってしまうのだから、本国のファンはそりゃあもう熱狂的になるのも無理はない、という気がします。
  ブラッドベリを読んでいて、こんなことを感じました。純粋な哀しみや喜びを求めようにも、上っ面で偽善的なテーマ、ありふれているか、もしくはただただ遠回しなだけの文体があふれている中、心に響くのはリアリティだけ。そして私にとって、今最もリアルに感じられるのがホラー小説だったり。そんな中、ブラッドベリの作品はリアリティを押し付けることなく、心に響き、文字を追うだけで高揚感を与えてくれます・・・素晴らしい作家!そのせいか、普段は皮肉で、後味の悪い作品を好むのですが、彼の作品に関しては、ハッピーエンドを求めてしまいます。
  お気に入りは、買うつもりじゃなかったのに、これを読んで本書をレジへ持っていってしまった「穏やかな一日」、物質に劇的な変化を求める時の、あの高揚感(そしてアイスクリーム!)「すばらしき白服」、ブラッドベリの老人ネタにはとことんヨワイ「サルサのにおい」、同じく老人ネタ、ラストには何ともいえぬ安堵感を味わった「旅立つ時」。
野蛮人との生活/シャーリィ・ジャクスン/ハヤカワ文庫
2001.5.29読了 no.18/★★★☆☆
  タイトルの「野蛮人」は、彼女自身の子供たち。(愛情込めて)そう呼ぶに相応しい子供たちとの生活をエッセイ風の小説に仕立てたものです。後書きによると、どうやら実際の生活を元にしている様子。
  長男、長女のふたりから始まって、最後には次女、次男も加わり、大混乱の日常。全体的にはおもしろおかしい読み物なんですが、そこはシャーリィ・ジャクスン、その可笑しみとさりげない不安要素が危ういバランスを保っていて、不思議な読中(?)感を得られます。
  「くじ」に短編として掲載されていた「チャールズ」は、この作品の中のエピソード。一編の作品として抜き出された時、ようやく明らかになる不安要素に、彼女の作品全てに通ずる特徴のようなものを感じました。
乱歩が選んだベスト・ホラー/ちくま文庫
2001.5.20読了 no.17/★★★★☆
  アンソロジー。名作ホラー短編が12作収録されているのですが、特筆すべきはその前書きとも言える、乱歩の「怪談入門」。コラムとして完成されているとは口が裂けても言えない(笑)ですが、とにかく熱く語ってるため、なんとなくこちらも興奮(笑)。次から次へと出てくる作家、作品名の洪水に、読書欲を刺激されます。
  この「怪談入門」をベースに、中から選りすぐった短編を編んだのが、このアンソロジー。後書きには、それぞれの作品と、それが「怪談入門」の中で紹介されている章を紹介しています。そのため、作品→後書き→怪談入門、という手順を繰り返して読み進めました。巻末には、「怪談入門」中で言及された作品、作家についての出版社等のリストが付されていて、大変役立ちそうです。後書きによると、この編者も「怪談入門」に紹介されている作品読破に挑戦したそうで、それだけに読者のかゆいところに手が届くつくりになっていると思います。
  乱歩は「怪談入門」の中で、「怪談」と「幻想怪奇小説」と「恐怖小説」の言葉を使い分けています。現在のほうにホラー小説で括らない分類にも魅力を感じます。
  本編の方には「猿の手」のオリジナルバージョンが収録。ある一部分がカットされてるバージョンが多い、とのことですが、確かに読んだ事のないパラグラフでした。この作品は何度読んでもまた読み返したくなります。今回も3回くらい読んでしまった(笑)。ブラム・ストーカーの「猫の復讐」は、結末は容易に想像できるものの、そこにたどり着くまでのなんともいえぬ不安な感じがたまりません。アンブローズ・ビアスの「ふさがれた窓」、ともすれば見逃しそうなぐらいあっさりと書かれた最後の行に怖気をふるいました。ウィルキー・コリンズ「ザント夫人と幽霊」は、愛って美しいなぁ、などと恥ずかしげもなく感じてしまった作品(笑)。ジョージ・マクドナルドの「魔法の鏡」は、おとぎばなしの世界だけど、安心して読めました。ロード・ダンセイニの「災いを交換する店」、交換したい災いなんてありますか?乱歩の「目羅博士」は、エーヴェルスの「蜘蛛」の着想を乱歩なりに練り直したものだそう。「目羅博士」は既読でしたが、こうやって並べて読むとなかなか興味深いものがあります。探偵小説家らしい改変の仕方だと感じました。
闇の報復(上・下)/F・ポール・ウィルスン/扶桑社ミステリー文庫
2001.5.12読了 no.15-16/-----
  「ナイトワールド・サイクル」3冊目。「城塞(キープ」「マンハッタンの戦慄」「触手(タッチ)」「リボーン」「闇の報復」「ナイトワールド」の6作品からなる「ナイトワールド・サイクル」ですが、「城塞(キープ)」「リボーン」と読んで、ようやく、これがシリーズものであることを知りました。それからは順番に読もうと思ったのに、また間違ってしまった(涙)。1→4→5と読んでしまいました。3と6は、まだ未購入なのですが、2はうちにあったのに・・・(号泣)。もうでたらめです。
  でもとりあえずこれの前に「リボーン」を読んでおいてよかった。
  最後「ナイトワールド」を読むまでは、評価は保留です。
血の伯爵夫人/レイ・ラッセル/朝日ソノラマ
2001.5.9読了 no.14/★★★☆☆
  モダン・ゴシックの真髄、というサブタイトルに惹かれて古本で購入していたものです。タイトルもスゴイが、表紙もスゴイ(笑)。ちょっと外で読むのは恥ずかしいかも、です。
  しかし中身は面白かった。モダン・ゴシックというよりも、ダールやブラウンに通じるような作品が多かった気がします。表題作「血の伯爵夫人」は、かの有名な「鉄の処女」を用いて、夜な夜な(?)処女の血を浴びていたというエリザベート・バートリの物語をちょっと違った角度から捉えた物語。若さと血に飢えた残酷な女というのではなく、まわりに翻弄されたが、本当は知的な心優しい女であったというような捉え方で書いています。彼女にとっては、こちらのほうが残酷だったかも・・・。
  レイ・ラッセルの作品は以前長編の「インキュバス」を読んでいますが、全く趣が違うので驚きました。
ポップ1280/ジム・トンプスン/扶桑社
2001.5.3読了 no.13/★★★★☆
  ジム・トンプスン4冊目。このミスで1位をとった作品でもあります。
  まずこの訳者、三好さん(でしたっけ)は、トンプスンに合ってますねぇ。この人の訳だと、格段に読みやすくなります。今後もし他の作品が出ることがあれば、是非この人の訳で読みたいです。
  さて、内容は、小さな町の保安官が悪びれず殺人を重ねるといったあたり、「内なる殺人者」とよく似ています。が、「ポップ1280」の方が、より軽いノリです。さらに、どちらかというと「内なる殺人者」のほうが、イマっぽさを感じます。というのは、両主人公共通して頭がよく、冷酷なキャラクターですが、「ポップ1280」の主人公は、それを意識していない。「なんとなく頭に浮かんだものが、最終的に結びつくんだ」というような主旨の台詞でそれがわかりますが、反対に「内なる殺人者」の主人公は、自分の頭の良さを冷静に捉えています。そのあたりが「ポップ1280」に比べ、少し現代っぽいと感じる所以でしょう。
  ラストはちょっと散漫な印象。後書きによると、二行ほど削ったあとが見られるらしいですが、それを加えてもちょっと物足りない感じがします。
でも、面白かった。黒くて下品な笑いが満ちた作品です。
未来世界からきた男/フレドリック・ブラウン/創元推理文庫
2001.5.6読了 no.12/★★★★☆
  ブラウンの短編集。SFの巻と悪夢の巻に分かれています。
  第一章、SFの巻は、その名の通り、SF短編。ほとんどの作品が、かなり短いのですが、思わずくすっと笑ってしまうラストが次々とやってきます。お気に入りはほとんど全部ですが、強いて挙げれば「こだまが丘」、これぞブラックユーモア「未来世界からきた男」。
  第二章、悪夢の巻は、ホラーアンソロジーに載っているような題材の作品。やはり、こちらの章の方が好きです。お気に入りは、色彩を失う世界が浮かんでくるような「灰色の悪夢」、たたみかける完璧なオチ「緑色の悪夢」、残酷な現実「青色の悪夢」、下ネタ「魔法のパンツ」、あまりにもバカバカしくて笑ってしまった「大失敗」、人生とはなにか?「殺人十課」、リアルな嫉妬「いとしのラム」。
  こうやってあらためて思い返すと、本当に楽しめる作品ばかりでした。
地球最後の男/リチャード・マシスン/ハヤカワ文庫
2001.4.29読了 no.11/★★★★★
  なかなか出会えなかった本、キング堂さとし様の情報により、ようやく出会うことが出来ました。
  読みはじめてすぐにニヤニヤ。これは私の好きな作品だ、と直感しました。よくよく考えてみると、私のお気に入り作品と「孤独と弱さを抱えた男が闘う」という点で共通しています。なんだ、私はそういう話が好きだったのね、と今更気付いたりして。
  もっともっと長くてもいいと思いました。少し物足りないくらいの頃合で物語が進展していき、無駄がないのかもしれませんが、もう少し立ち止まったりすることろが見たかったとも感じます。吸血鬼についての考察は興味深く読みましたが、これもちょっと無駄がなさすぎて、都合よく感じてしまいます。
  しかし愛と正義を基準にしながらも、善悪が根底から覆り、居場所を失ってしまうラストには、思わず涙してしまいました。
死のドライブ/ピーター・へイニング編/文春文庫
2001.4.23読了 no.10/★★★☆☆
  車をテーマにしたアンソロジー。一応ドライバーながら、車には全く興味のない私。キングの作品が収録されていなければ、手に取ることはなかったかもしれません。しかしキングに感謝、こんな私でも十分に楽しめました。
  お気に入りは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思わせる「二度目のチャンス」、恐怖と焦りと怒りが怒涛のように押し寄せる、何度読んでも大好きな作品「決闘(激突!)」、ついニヤッとしてしまうラスト「高速道路で絶対に停車するな」、日本にもありそうな場所が舞台で想像力が働きやすかった「事故多発区間」、ダールらしい面白さを味わえる「ヒッチハイカー」、手塚治虫を思わせる近未来像「デス・レース2000年」、私もこのタイプかも・・・(笑)「景色のよいルートで」、オチは読めるが、好きなタイプの作品なので「違反」 も。
真夜中の囁き/チャールズ・L・グラント/創元ノヴェルズ
2001.4.22読了 no.9/★★☆☆☆
  特につまらなくはなかったんですが、女の主人公、子供たち、黒魔術的な雰囲気、そしてオクスラン・ステーションという、キャッスルロックやセイレムを思わせる田舎町を舞台にした設定等、あまり生かしきれていないような気がします。訳文のせいか、もともとの文体のせいか、ちょっと流れが滞る感じもありました。
  このオクスラン・ステーションを舞台にした作品は、何作か出ているようなので、他のも機会があれば読んでみようと思います。
我が町、僕を呼ぶ声/ウィリアム・ゴールディング/---
2001.4.18読了 no.8/★★☆☆☆

オズワルド伯父さん/ロアルド・ダール/ハヤカワ文庫
2001.4.15読了 no.8/★★☆☆☆

秘密の友人/アンドリュー・クラヴァン/角川文庫
2001.4.12読了 no.4/★★☆☆☆

霧の壁/フレドリック・ブラウン/ハヤカワ文庫
2001.4.10読了 no.3/★★★☆☆

残酷な夜/ジム・トンプスン/扶桑社
2001.4.2読了 no.2/★★★★☆
  これは面白い!と言いたいんですが、恐らく重要であろう暗喩が理解できず、中途半端なまま読了。
  入れ歯でチビ「であるからこそ」女をひきつけてやまない男と、それを取り巻く登場人物の面白さで、一気に読んでしまいました。最後近くになって、物語は暗転していくのですが、その部分を読むための重要なキーワードの意味を推し量れなかったんですよね・・・。この部分が読み取れれば、もっと面白い作品であることは間違いない・・・と思います。
  多くのトンプスンワールドの舞台となる犯罪裏組織のようなものには、今のところあまり興味が持てません。ゴッドファーザーとか観てみようかな・・・。
11の物語/パトリシア・ハイスミス/ハヤカワ文庫
2001.4.2読了 no.1/★★★☆☆
  ハイスミスは短編、とのご教授を受け、短編集を購入。ハイスミスは10年ほどまえに、一度長編を読みましたが、あまり面白くなかった印象があったため、読んでいませんでした。
  皆さんのおすすめだけあって、なかなか面白かったです。扱っている題材はホラー小説に近いが、超自然に行き先を求めない短編、といった印象です。ホラー小説ばかり読んでいると、ストーリーの行き先を、勝手に怪物とか別世界とか呪術とかに限定して想像してしまうので、新鮮に感じました。
  しかし、彼女はかたつむりマニア?かたつむりに関する短編がふたつも入っていて、気持ち悪くなってしまいました(笑)。
小人たちがこわいので/ジョン・ブラックバーン/−−−
2001.3.26読了 no.48/★★☆☆☆

怪奇小説傑作選2/ジョン・コリアー他/創元推理文庫
2000.3.23読了 no.45 /★★★★☆
  どの作品もほんとに面白かった!1や3も是非読んでみたいです。お気に入りは、女性の特性には我ながら苦々しい思いを抱いてしまう「ポドロ島」、罪さえ省みない男の恐ろしさ「帰ってきたソフィ・メイスン」、死ではなく生の恐ろしさを知る「船を見ぬ島」、悪魔的な儀式と子供の組合せは恐ろしい「スレドニ・ヴァシュタール」、ストレートにコワイ「テーブルを前にした死骸」、胸を締めつけられるような気持ちになる「恋がたき」、少し幸せな気持ちになる明るい風刺「住宅問題」。
ストレンジャーズ(上下)/ディーン・R・クーンツ/文春文庫
2001.3.18読了 no.43-44/★★★☆☆
  作家、医者の卵、神父といった人々が、それぞれ遠く離れた場所に住みながら、同じ恐怖の影に怯え出す様子を、あっちこっちに飛びつつ現在進行形で進めていく上巻は、大変面白く読みました。しかし、半分を過ぎ、謎が少しづつ明らかにされてきだすと、登場人物が鼻についてしまい、なんとなく意欲を無くしてしまいました。
  確か「ファントム」を読んだときもこういう感じでした。なんとなく物語の向こう側に作者を意識してしまい、現実に引き戻されてしまって。特にキャラクターの心理や行動が、説得力に欠ける気がします。
  個人的にSFを受け入れ難いせいもあるのかな?あと、ラストの状況はハッピーエンド?雰囲気的には、大変明るいラストでしたが、ハッピーエンドと言い切るには怖いような気もします。
闇の展覧会2/レイ・ブラッドベリ他/ハヤカワ文庫
2001.3.12読了 no.42/★★★☆☆
  有名アンソロジーだけあって、やはり風格みたいなものを感じます。お気に入りはやはりブロックの「クリスマスの前夜」。そしてラストの一文にブラッドベリらしさを堪能した「見えざる棘」。その他「裏窓」を思わせるラムジー・キャンベル「闇の孕子」、下手したら馬鹿馬鹿しいようなシュチュエーションなのに、何故かとてつもなく悲しい気持ちになった、マシスン親子の共作「精神一倒・・・」、いかにもキングが書きそうな話、ゲイアン・ウィルソン「罠」、単純にこういう形式の話には弱い、チャールズ・L・グラント「赤黒い薔薇の庭」なども好きです。
リボーン/F・ポール・ウィルスン/扶桑社ミステリー文庫
2001.2.27読了 no.41/★★★☆☆

くじ  異色作家短編集12/シャーリイ・ジャクスン/早川書房
2001.2.24読了 no.40/★★★★★
  早川書房から出版されている「異色作家短編集」シリーズは、その作者だけでも、大変興味深いラインナップで、ずっと読んでみたいと思っていました。ただ、ハードカバーでの発行で、古書店でも全くみかけないので、後回し後回しになっていたのですが、皆さんのオススメもあり、ようやく購入した一冊目がこの「くじ」です。
  とにかく、買ってよかった!帯にもある「日常の中に潜む残酷」、とは使い古された言葉のような気がしますが、ジャクスンの短編以上にこの言葉に相応しい作品を知りません。取りたてて衝撃的な事件も、恐ろしい怪物もそこにはなく、ただ見慣れた日常がさりげなく切り取られているだけにも関わらず、そこには胃を締め付けられるような残酷と、ひそやかながらも圧倒的な絶望が存在します。以前彼女の長編「たたり」を読んだときに感じた、なんともいえない居心地の悪さは、きっとこの描写の積み重ねだったのでしょう。
  お気に入りは、不気味さと切なさが同居する「決闘裁判」、残酷な日常に追いつめられる「背教者」、誰しも体験した大人の無神経「麻服の午後」、当の本人さえ意識せぬ場所に潜む悪意「意味の多様性の七類型」。
  そして、温かな田舎のある一日の形をとった恐怖の一日を描く表題作「くじ」。最後を飾るこの作品、この短編集に収録されている他の作品の、チクリとした痛みに慣れきったところで読んだので、思わずゾッとさせられました。モダンホラー短編がやろうとしていることはこれだったのか、と目からウロコの思いです。必読本!!
死者との結婚/ウィリアム・アイリッシュ/創元推理文庫
2001.2.20読了 /★★★☆☆
  ヒッチコックによって映画化された「裏窓」の収録された短編集を手に入れたのがきっかけで、この人の短編のファンになったのですが、長編は初挑戦です。
  初っ端からほとんど話の筋が読めてしまう上に、設定やキャラクターなど、全く目新しさがなく、ほんとだったらつまんないはずなんですが、何故か話に引込み、一気に読ませてしまうところがスゴイ。普通だったら短編ですむネタ。これを長編にされたって、最後まで読むに堪えないような作品にしかならないでしょう。が、実際は少しの時間も惜しんで読みふけったのです。
  作中、三度も結婚するパトリス(ヘレン)。ずっと、タイトルの「死者」とはヒューを指す、と思っていましたが、もしかしたら違うかもしれませんね。
  私の場合、結局最後まで犯人はわからずじまいでした。ビルなのか、パトリスなのか?しかし、私的にはお母さん犯人説を推したいです。お母さんの策略だった、という解釈がミステリ的なひねりが効いてるんじゃないかな?
  と、よくよく思い返してみると、意外と色んな解釈が出来て面白い小説だったように思います。また機会があれば他の作品も読みたいです。
まっ白な嘘/フレドリック・ブラウン/創元推理文庫
2001.2.13読了 /★★★☆☆
  短編の名手、フレドリック・ブラウンの短編集に着手しました。
  たしかに面白い。SF色が強いかと思っていましたが、そんなことはなく、ミステリ、ホラーの要素をふんだんに盛り込んだ粒ぞろい。ロアルド・ダールやロバート・ブロックの短編に近い印象を受けます。お気に入りは切なさとばかばかしさがあいまって苦々しい読後感の「後ろで声が」。長い長い時間と、非日常的空間の中で削り取られていく言葉の話が興味深い「史上で最も偉大な詩」。駄洒落的な戦慄のラストをむかえる「むきにくい林檎」。そして、現代の日本に設定して読みたかった「うしろを見るな」。
ファイトクラブ/チャック・パラニューク/ハヤカワ文庫
2001.1.26読了 /★★★☆☆
  映画「ファイトクラブ」が面白かったので、もう少し作者の狙いに踏み込んでみたくて、原作を読んでみました。
  小説の映画化というのは、製作の事情により、どうしても削らなければならない部分、筋を改変しなければならない部分、というのが出てくるので、大抵の場合、原作の方が狙いを理解しやすかったりするんですが、この作品は例外(笑)。映画の方がわかりやすかった(笑)。
  というのも、文体が非常に独特。主人公の視点からのみ、物語が語られているのですが、暗喩的な表現が多用されていて、とにかくスイスイ読みすすめられるタイプの作品ではありません。私の場合、元々読む動機が動機なので、最初の方では、かなり力を入れて読んでいたのですが、次第に疲れてしまって、残りは流し読みみたいな感じになってしまいました。しかし、主人公の倦怠感というか、自己の確立に対する不安、というイメージは、全編を通じて伝わってきたし、暴力や破壊への衝動と結末へ向う作品の世界観は、なにかうやむやに出来ない、というかさせない感じがあります。
  それにしても映画はよくこの作品を映像化したなぁ、と改めて感動。暗喩に続く暗喩からなる独特のイメージ、主人公とタイラーの関係の表現など、大変難しい部分でも無理のない印象を受けました。 映画の方では、タイラーが主人公のもうひとつの人格であるということは、話が進むにつれて、だんだんと明らかになる、一種の秘密みたいな感じで処理されていたのですが、原作の方ではこれをかなり最初のあたりから、暗黙の了解といった感じで、それとなく示しています。ただ、はっきりとそれが判明するのは中盤を過ぎてからで、それも、独特の雰囲気に一役買っているかもしれません。
エクソシスト/ウィリアム・ピーター・ブラッディ/新潮社
2001.1.10読了 no.39/★★★★★
  遅れ馳せながらディレクターズ・カットの公開により、はじめて映画「エクソシスト」に触れた私。名画、名画とは聞いてきたけど、心底恐ろしかったし、不安をかきたてられました。原作「エクソシスト」は、絶版になっていると、なにかの雑誌で読んだので、古本屋で見つけたときに買っておいたんですが、正解でした!買っといてよかった。
  さて、原作ですが、これも素晴らしかった!脚本には、当の原作者があたっているだけに、大変忠実な仕上りになっています。原作より映画の方がよかった、と心の底から言える作品に出会ったことがない私は、基本的に原作至上主義なのですが、この作品に関しては、ほんとにどちらも選び難い。
  この作品のテーマは「悪魔祓い」ですが、本来ならまず前提としてあるはずの悪魔の存在が、色んな方向から捉えられていて、大変興味深いものがありました。それがそれぞれの方面から納得のいく形でアプローチされていて、読者は意識せずとも自ずからの解釈を探る方向へ向かってしまいます。
  カラス神父に関しては、やはり映画よりも肉付きのあるキャラクターになっていて、それだけにラストシーンでのカタルシスが得やすい感じを受けます。 映画では、カラスが悪魔に取り殺されたのか、それとも自らの意志で悪魔と心中したのか、判断つけかねてたんですが、その辺の意識の所在が、原作では明確に処理されていたように思います。結果、息を引き取る直前のダイアー神父との場面も、生き生きしてます。
  メリン神父は、映画と同じく、プロローグと悪魔祓いのシーンにしか登場しないにも関わらず、揺るぎない信仰の象徴として、他の登場人物に対しても、読者に対しても、強烈な存在感を残します。これだけの存在感を持ったキャラクターって、そうはないですよね!
十月の旅人/レイ・ブラッドベリ/−−−
2000.11.15読了 /★★★☆☆

俗物図鑑/筒井康隆/−−−
2000.11.30読了 /★★★☆☆

殺戮のキャンパス/リチャード・レイモン/扶桑社ミステリー文庫
2000.10.30読了 no.38/★★☆☆☆
  前回「殺戮の<野獣館>」を読んだので、次は続編の「逆襲の<野獣館>」を読みたかったのですが、なかなか見つからないので、この「殺戮の<キャンパス>」を読むことにしました。
  「殺戮の<野獣館>」は、私好みの作品ではないものの、辛辣なユーモアを含んだ作品で、思い出すにつれ、私の中で肯定的な評価になっていったのですが、この<キャンパス>には、特にそういう感じも受けませんでした。さらにすんなりすっきり終わってしまって、かなり拍子抜け。最初の殺人はインパクトあったんですが(クライマックスなどよりも、ずっとインパクトあったくらいで)後は尻すぼみになってしまったような印象を受けました。でも、この人の作品って、ちょっと私の普段の読書スタイル(?)と違うところにあるので、とりあえずのところはなんにもいえないかも。
ゲッタウェイ/ジム・トンプスン/角川文庫
2000.10.25読了 /★★★☆☆

死の蔵書/ジョン・ダニング/ハヤカワ文庫
2000.10.15読了 /★★★☆☆
  皆さんのオススメに従い読んでみました。
  話自体はミステリで、謎解きっぽい感じなので、私にはいまいち楽しみ方がわからないんですけど、古本業界を舞台にした話で、そういった部分ではかなり楽しめました。古本屋巡りが趣味の人や、作品を収集したりしてる人なんかは間違いなく楽しめると思います。
  ただ、この作品の中では「キング本は値段も人気も高いが中身はない」といった扱いを受けており、ちょっぴり胸が痛い今日この頃(笑)。彼が登場人物に語らせたところによると『「ミザリー」は凄い作品だったが、その他は同じ作家が書いてるとは思えない』んだそうで。
オフシーズン/ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー文庫
2000.10.5読了 no.37 /★★★★☆
  待ちに待ったケッチャムの処女作。発売日に探すも見つからず・・・これだから田舎は困ります。
  出版時に、あそこを削られ、ここを削られ・・・と散々改悪(笑)を加えられた末に発売された初期の版とは違い、今回邦訳されたのは、オリジナルに近い形でケッチャムが完成させていたもの。
  というのも、この作品は二重に改変されているのです。当初出版社に書き直しを条件に買い取られた本当のオリジナル原稿は、ケッチャム自身がゴミ箱に捨ててしまったそうで。その後、条件に沿って表現を少し柔らかくしたのが、今回邦訳された版で、結局それでもまだ出版にいたらず、ラストまで書き直して仕上げたのが、当初処女作として発行された版とのこと。
  この作品はそんな出版の経緯にも思わず頷いてしまう程、暴力描写のオンパレード。食人族という設定である以上、ある程度の吐き気を催す描写は覚悟していましたが、やはりケッチャムの暴力描写は、読者の想像の範疇に収めきれるものではありません。
  しかし、そんな暴力描写だけが取りざたされる彼の作品ですが、むしろ(というか、本質的には)、彼の徹底した「作者であろうとも現実は曲げられない」的な視線が、ケッチャム作品の見所ではないかと感じます。そして、目を背けたくなるような残酷な描写が続いても、決して途中で止められないこと、は言うまでもありません。
  この「オフシーズン」では、なにひとつ読者の思い通りに物語は進みません。彼は裏切り続けます。それは、まるで現実に裏切られ続ける私たちのようでもあります。(以下グレー部分はネタバレ)
  キングを読み慣れた人なら、「生き残るのはカーラとニック、そして警官の助手は死に、警官はニック、カーラと力を合わせて・・・」というのを想像したのではないでしょうか?そして「ローラとジムが真っ先に死ぬ」と?しかし、主人公かと思われたカーラは真っ先に死に、ローラは生にしがみつき、警官は惨劇が幕を閉じ、エピローグに入ろうか、というときになってニックを殺してしまうのです。マージとダンの恋の行方は?それも教えてはくれないまま、ダンはあっさり死んでしまいます。これほどまでに主客入り乱れた構成でありながらも、読者に違和感を与えない(落着かなくはさせるでしょうけど!)のは、想像力やアイデア、テーマの部分だけでなく、構成力の面でも、ケッチャムが一流であることを物語ると思います。
  読んでる最中は、思わず、ケッチャム作品にハッピーエンドはないことを忘れてしまいます。しかし、間違いなくその作品はバッドエンドなのです。
10月はたそがれの国/レイ・ブラッドベリ/−−−
2000.9.12読了 no.36 /★★★★★
  ブラッドベリは短編作家だ、とよく言われています。長編作品から入った私はそのへんの感触がいまいち掴めないでいたのですが、この短編集を読んで納得!
  無邪気で残酷で、大人よりもたくさんのことを知っている子供の目。ブラッドベリの描く子供の目線にはなんとも言えない魅力があります。そして、目には見えない不可解な常識を独特の世界観で解釈する作品群、とにかくこのふたつの要素に完全にやられてしまいました。
  特に好きなのは「みずうみ」「使者」「大鎌」、それから「こびと」「壜」「小さな殺人者」「群集」「びっくり箱」「風」「下水道」「集会」・・・っていうかほとんど全部です(笑)。この中で一番つまらなかった作品を無理矢理選んだとしても、他のアンソロジーに収録されていたら、お気に入り作品に選んだと思います。
ザ・キープ/F・P・ウィルスン/扶桑社ミステリー文庫
2000.9.12読了 no.34-35 /★★★☆☆
  最近、感想書くのをサボりまくっていたので、頑張って復活します(笑)。
  この作品はウィルソン2作目。前回読んだときも思ったけど、珍しくサービス精神旺盛な作家ですね。私は読書歴も浅く、どっちかっていうと「狭く深く」のタイプなので、判断するには材料が足りないとは思いますが、最近は、シンプルな話をこれでもか、と書き込んでいくタイプが多いと感じます(キングの影響かも?)。もちろん私は、そういう作品大好きなんですけど、ウィルソンのように盛りだくさんの作品を読むと、ちょっと得した気がしますね。
  この作品、すごく怖かったし、どんどんページを繰ってしまったんですけど、どうもお伽噺チックなところが気になったのと、予定調和的な展開が多かったのがちょっと残念。
インキュバス/レイ・ラッセル/ハヤカワ文庫
2000.9.4読了 no.32 /★★☆☆☆

闇のなかの少女/ジョン・ソール/扶桑社ミステリー文庫
2000.9.2読了 no.31 /★★☆☆☆

黒衣の女/スーザン・ヒル/ハヤカワ文庫
2000.8.24読了 no.30 /★★★★☆

恐怖コレクション/阿刀田高/新潮社
2000.8.21読了 no.29 /★★★☆☆

内なる殺人者/ジム・トンプスン/---
2000.8.19読了 no.28 /★★★☆☆

あなたに似た人/ロアルド・ダール/−−−
2000.7.30読了 /★★★☆☆

老人と犬/ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー
2000.7.26読了 no.25/★★★★☆
  すっかりケッチャムファンになってしまった私。現在邦訳されているものはこれで全部読んだことになります。といっても4冊しかないんですけど。
  「隣の家の少女」「オンリーチャイルド」に比べると、直接的な暴力描写は少なく、物足りなく感じる向きもあるようですが、これまでの4冊の中では、この作品が一番私の好みです。
  キングの「ロードワーク」は、私のお気に入りの作品なのですが、それに近い感じを受けます。なんの変哲もないひとりのおっさんの身をはった抗議という点、そしてそこに主人公を導く過去の幻影。短時間で一気に読んでしまいました。近いうちにまた読み直したい一冊です。
闇から生まれた女/F・P・ウィルソン/−−−
2000.7.25読了 no.23.24/★★★☆☆
  ウィルソンは初めて読んだのですが、面白かったです。
  多重人格テーマ(といっていいのかどうかわかりませんが)の作品でしたが、話がそこだけに留まらず、読み進むごとにどんどん膨らんでいって、話がどこへいくのか予測がつかず、楽しめました。
  楽しむことを目的とした作品をエンターテイメント小説と呼ぶのだ、と理解してきましたが、こういう作品を本当のエンターテイメント小説というのでしょうね。また読んでみたいです。
スラッグス/ショーン・ハトスン/ハヤカワ文庫
2000.7.17読了 no.22/★☆☆☆☆
  なんとなく買った本。
  なんと人食いナメクジです。もうなんでもアリって感じですね(笑)。解説読んで初めて知ったんですが、どうやらこの作者、「SPAWN」の原作者みたいです。
  作品は完全にエンターテイメントに徹している、というか、キングやケッチャムのような純文学的要素や、問題提起の色はありません。ナメクジがなぜ人を食うのかも結局よくわからないし。個人的には、やっぱりキングやケッチャムみたいなバランスのいい作品が好きです。
幽霊世界/マキャモン他/新潮社
2000.7.15読了 no.21 /★★★★☆
  キングの名前こそないものの、ベテラン精鋭揃いのアンソロジー。古本屋で50円で売ってました。買うしかないでしょう。
  このアンソロジーはとにかく面白かった。私が今までに読んだモダンホラーの短編アンソロジーのベスト3には入ります。「幽霊もの」というしばりが私にあってたのかも知れません。
  最初の作品キャサリン・プタセクの「来る夜も来る夜も」で、まず引込まれます。彼女はなんとチャールズ・L・グラントの奥さんらしい。続くゲイリー・ブランドナーの「負け犬の徴」。これもまた面白い。ここまできて、続いて他の作品を読んでいくのが勿体無くなり、一日一作品の贅沢にとっておくことに。
  中で印象に残ったのは「刀鍛冶の双眸」。作者はゴードン・リンツナーで、外国人ですが、なんとこの作品は日本の時代劇。訳文は当然それにふさわしい訳になっているのですが、原文では一体、どんな風に表すのでしょうね?ウィリアム・F・ノーランの「今夜当劇場にて先行ロードショー」も面白かった。よくあるグルグル?ものですが、こういう作品は好きです。マキャモンの「幽霊世界」は、解説にも書いてあったんですが、キングの「霧」を彷彿とさせます。幽霊の描きかたは「いかしたバンドのいる街で」のようなユーモアも含んでいて、どっちかというとこっちに近いかもしれません。
  幽霊を題材にしたものはある種の哀しみに溢れています。キングの「入り江」にも通じる雰囲気の作品が、このアンソロジーにも多く見られました。「入り江」が好きな方には絶対オススメの一冊です。
オンリー・チャイルド/ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー
2000.7.13読了 no.20 /★★★★☆
  ケッチャム3冊目。
  私が「隣の家の少女」から受けた衝撃は凄まじいものでした。この「オンリーチャイルド」は、「隣・・・」と一緒に購入してたんですが、続けて読んでたら嫌いになってたかもしれませんね、ケッチャム。
  というわけで、間を空けて読んだのが功を奏したんでしょう、この「オンリーチャイルド」までの3作トータルで、私はこの作家のファンになってしまいました。
  このオンリーチャイルドも、「隣り・・・」と同じく虐待モノ。今度は小さな男の子がその的にかかります。思わず不快でイライラする描写は、「隣り・・・」のまま(正直、お子さんがいる方には、かなり辛いんじゃないでしょうか?)。しかし、それを最後までノンストップでページを繰らせてしまう筆力も「隣・・・」のままです。特に最後1/4は、グイグイ引き込まれてしまいます。
  「隣・・・」の時も思ったのですが、ラスト近くで、ぐぐーっと持ち上げて行きながら、ラストは意外とあっさりと締めくくります。しかし、それまでのイライラやムカムカとのバランスを考えると、むしろこのくらいのほうが心臓にいいかも、というのが個人的見解です。最後にストンと、気が抜けたような落されかたをすることでホッとするというか。しかし、結局悪夢は続くことを示唆して作品は去っていくのですが。
  ケッチャムの作品には、それぞれに明快なテーマがあり、作品ひとつひとつが、それぞれのテーマに向かって、これでもかこれでもか、これでわかったか、と執拗に問い掛けてくるような感じを受けます。決して難解ではなく、単なるお遊びでもない、これは私の大好きなキングの作品にも通ずる部分があり、個人的には凄く好みのスタイルです。今後、ケッチャムの作品を読破することに決めました。
魔術はささやく/宮部みゆき/新潮社
2000.7.10読了 /★★★☆☆
  以前から、キングの影響が指摘されている宮部みゆき。読んでみたかったのですが、この人の本は、あんまり古本屋に出てないんですよね。本はほとんど古本ですませる私、なかなか読めないでいましたが、やっとやっと発見し、読むことができました。
  面白かったです。途中で止められなくて、一気に読んでしまいました。私の苦手な、国内モノ特有の現実味のない描写みたいなものがほとんどなく(いや、あったかもしれないけど、気にならず)、まずそれが、面白く読めた所以でしょう。そしてキングに影響を受けているというだけあって、キャラクターをからめた、展開がものすごく巧いと感じました。隠す部分は隠しながら、興味を引っ張る程度に見せていく、そのバランスが絶妙で、次々ページを繰ってしまいます。
  私は、謎解きに終始して、人物が配置されたコマのように感じることに欲求不満を覚えるので、ミステリはほとんど読まないんですが、この作品では、人物の葛藤する様子なども重きを置いて描かれていて、とても面白く読めました。
ハンニバル(上・下)/トマス・ハリス/新潮社
2000.6.29読了 no.18-19/★★★☆☆
  とうとう読みました。待ちに待ったハンニバル。
  「驚愕のハッピーエンド」とはよく言ったものです。この言葉をいろんなところできかされていたので、自分なりに色々と想像してたんですが、その想像と、ほぼ同じ結果になってしまいました。ジョディ・フォスターが「私のクラリス・スターリングはあんなことはしない」と言って、役を降りたらしいですが、確かに、レッドドラゴン、羊たちの沈黙、と読んできた読者にとっては、どうも納得いきかねる、というか、もろ手を挙げて歓迎する雰囲気ではありません。レクターも結局人の子、というのを今更知らされても・・・と読者は当惑?
  羊たちの沈黙から、少し間が開き過ぎたのではないでしょうか。時間が作品の繋がりを絶ってしまった感じがします。もしかしたら、ミザリーのポール・シェルダンみたいに、レクターをお荷物に感じはじめているのかも??
  とりあえず、面白くは読めたので、これはこれとしておいといて、続きを読みたい気がします(笑)。
魔法の水現代ホラー傑作選第三集/村上龍編/角川ホラー文庫
2000.6.16読了 no.17/★★☆☆☆
  生え抜きの国内現代作家によるホラーアンソロジーです。村上春樹、山田詠美、吉本ばなな、景山民夫、原田宗典、椎名誠、森瑶子、連城三紀彦といった超有名作家達が書いた恐怖短編。
  私は国内現代作家のものはほとんど読まないのですが、どれも一度は読んだことのある作家の作品ばかりでした。このアンソロジーのシリーズを何冊か読んできているわけですが、海外の作家の作品に比べて、国内の作品は女性的な感じを受けます。訳文に比べて、文体が洗練されているせいでしょうか。このアンソロジーは特にその傾向が強い。洗練された文体には個人的にどうも抵抗があるので、ノリノリで読めたわけではないですが、いつも海外モノばかり読んでいる私には、新鮮な感じではありました。
  編者は村上龍。後書きを書いていますが、キングの書く序文に感じがよく似ています。ちょっと鼻につくのは偏見かな?
隣の家の少女/ジャック・ケッチャム/扶桑社ミステリー
2000.5.31読了 no.16/?????
  先日読んだ「ロード・キル」が面白かったので、同じケッチャムの話題作「隣の家の少女」を読むことに。ほんとはレクター3部作を続けて読むつもりでいたんですが、「ハンニバル」を買ってくるのを忘れていたので、まあ、気分転換に、と思ったのですが・・・。
  小説を読んでこんなにいやな気持ちになったのは始めてです。途中で続きが読めなくなったのも。「ジェラルドのゲーム」の手錠の描写で気持ち悪くなったりしたくらいでしょうか。バーカーの気持ち悪いスプラッタな描写に、眉をしかめながら読んだこともあります。でも、本当に読み進めなくなって途中で本を閉じるのは初めてです。
  まだ読んでない人は、どんなに残酷な描写があるのだろう、と思うかもしれません。しかし、この小説には、それほど目新しい残酷な描写は出てこないのです。
  2回ほど本を閉じた場面があります。それはどちらも性的な場面でした。一回目はメグが縛り付けられたまま裸にされるシーン。二回目は終盤、メグがレイプされているところにデイヴィットが出くわすシーン。一回目のシーンなんて、裸にするだけで、誰も彼女の身体に触れるわけでもないのに、そのおぞましさには身の毛がよだちます。二回目のシーンでは、思わず声をあげて本を投げ出してしまいました。どうにかしてこのシーンを飛ばして読む方法はないかと考えました。今でも、有難くも傍点まで打って強調された文章が、頭の中に鮮明に浮かんで、私をナーバスにさせるほどです。
  私が女性だからでしょうか。違うように思うのです。加虐趣味のエロ小説やビデオにはくさるほどあるであろう、なんてことないシーン。もっと酷いことや屈辱的なシーンのあるものだって当然ありますし、目にしたこともありますが、それから受ける印象とは全く違うのです。
  冒頭で大人になったデイヴィットは、本当の苦痛について語ります。「見ること」が本当の苦痛であると。デイヴィットがとうとうチャンドラー家に監禁されてからは、ずっと楽に読み進むことができました。デイヴィットは読者自身なのではないでしょうか。私はデイヴィットでありながら、この小説を読むことで、本当の苦痛を味わった気がします。
最後にキングによる解説があります。そこに「この本は気晴らしに読むものではない」と書かれているのを見て苦笑しました。それにしても、「ロードキル」の時も思ったのですが、ケッチャムの作品は冒頭の一章がいいですね。
  しかし、同じくケッチャムの「オンリーチャイルド」も買っていたのですが、とても読む気になれません。それどころか、他のホラー小説も・・・。
(以下追記)
  キングが「デイヴィットを自分の一部と認めるならば、この小説は評価できる」と言及したいたことについて、読んだ当初は、あまりの衝撃にその意味を実感することが出来なかったのですが、その後ケッチャムの著作を読破するに至って、大変よく理解できるようになりました。
  「隣の家の少女」が不快なのは、読者がデイヴィットに自分を見てしまうからであり、また、それを是が非でも認めたくないからであると思います。人間を形作る「恐怖」という感情を題材にしているとされる「ホラー小説」の分野において、これは至極重要なことであり、それを描き切ったケッチャムはもっと評価されてしかるべきだと思うのですが・・・。
羊たちの沈黙/トマス・ハリス/新潮社
2000.5.29読了 no.15/★★★★☆
  レッド・ドラゴンから、連続して読みました。一応再読ですが、例によってあまり内容を覚えていませんでした。
  すごく面白かったです。私はレッド・ドラゴンより好きです。レッド・ドラゴンも面白かったんですけどね。 
  グレアムが弱さを抱えたキャラクターだったのに対し、クラリスは強い。羊たちを(そしてその沈黙を)守るために、がむしゃらに努力する強さを持っています。グレアムとクラリスに対するレクターの処遇も対照的で印象に残ります。
  前作では、連続殺人犯人のキャラクターについて、これでもかというくらい書き込まれていたにも関わらず、こちらの作品は、連続殺人犯人よりもむしろ、クラリスとレクターのやりとりに重点を置いて物語が進んでいきます。知的でスマートな精神異常者、レクター博士に導かれ、実務経験のないクラリスが次々と手がかりを得ていく様は気持ちいいの一言!グレアムの妻のエピソードなどの挿入タイミングも絶妙で、とにかく揺さぶられっぱなしでした。
  ひとつ気になったのは訳。会話部分などが淡々としているのは、個人的に好きなので気にならなかったのですが、どうも文章がおかしい??部分が多かった気がします。読みにくいと言うほどではないのですが。
  続けて「ハンニバル」!といいたいところですが、購入するのを忘れてたので、また近いうち。
レッド・ドラゴン(上・下)/トマス・ハリス/ハヤカワ文庫NV
2000.5.24読了 no.13-14/★★★★☆
   「ハンニバル」発売を機に再読です。再読といっても、ちっとも内容を思い出せない(笑)。
  ほとんど初めて読むのと変わらない状態で読んだのですが、面白い!下巻に入って、ダラハイド側から物語が語られるようになるとともに俄然面白くなりました。
  想像力と直感力、道徳心と破壊。グレアムとダラハイドは、追う側と追われる側という相反する立場にありながらも、それぞれがお互いの分身であるかのような「似た者同士」的な雰囲気が漂っていて、その対比が物語を一層面白くさせてくれました。
  レバのくだりも、あれで素直に殺しをやめてしまうと陳腐になるところですが、竜の声との葛藤、その上でも計画を練ってグレアムに襲い掛かるエピソードは、より一層ダラハイドのキャラクターにリアリティを与えた気がします。絵を呑み込む!一見唐突に思えますが、よくよく考えると、ダラハイドのようなキャラクターがいかにも実際にやりそうではありませんか?
  ここではレクターもなりを潜めていますが、今後の展開に期待が持てるキャラクターの強さは既に発しています。ただ、この作品のレクター、まだキャラクターが固まっていないせいかもしれませんが、ちょっと俗っぽい感じがするのが残念といえば残念。
  続けて「羊たちの沈黙」にとりかかります!
獄門島/横溝正史/角川文庫
2000.5.5読了 no.12/★★☆☆☆
  横溝作品3作目。
  前回読んだ「悪魔の手毬唄」の中で“獄門島事件とそっくりだ”みたいな描写が何度もあったので、気になってこの作品を選びました。
  確かにそっくり(笑)。しかし、するっと最後まで読んでしまいます。毎回書いているとおり、トリックの巧妙さに、あまり関心を覚えないので、読後、特にこれといった感想などは浮かばないのですが、なんとなく初回の放送を見てしまったドラマやマンガのように、次も読もう、というオブセッションに駆られてしまいます(笑)。しかし、いつ読んでも同じリズムで事件が解決していくお約束の妙技とでもいいましょうか、意外と安心感があってたまにはいいかもしれません。
  悪魔の手毬唄の時、殺害方法なんかのインパクトがいまいちだな、と思ってたんですが、この獄門島と比べると、あっちのほうがインパクトありますね。
 ゴースト・ストーリー(上・下)/ピーター・ストラウヴ/ハヤカワ文庫NV
2000.5.4読了 no.10-11/★★★★☆
  読もう読もうと思いながら、なかなか手をつけられなかった「ゴーストストーリー」。
  表紙やタイトルから、なんとなく幽霊屋敷ものを想像してたのですが、全く違いましたね。内容や全体の雰囲気はキングの「呪われた町」を彷彿とさせますが、このゴーストストーリーの方がより厚みを感じます。呪われた町に何層も重ね塗りをした感じ。この話に関わる人物のエピソードが断片的に語られていくのですが、様々な人物の話が絡み合ってひとつに、というよりも、様々な人物の話を別々に見ているうちに、いつのまにかひとつに、というような臨場感を感じます。
  さらに、ゴシック小説を彷彿とさせるチャウダー協会の設定と、モダンホラー的なモンスターの描写の対比も面白く、ちょっと今まで読んだ事のないような不思議な読後感があります。
  ひとつ気になるのは「ねじの回転」のラストシーンをそっくり真似た描写があり、それが上手くその後のストーリーに絡んでいくのは大変面白かったのですが、その狙いが私には読み取れなかったのが残念。再読時に意識して読むつもりでいます。もしこれについての解釈をお持ちの方は、ぜひ聞かせてください。
 ロード・キル/ジャック・ケッチャム/----
2000.4.14読了 no.9/★★★★☆
  百冊斬りに参加しはじめてから、積ん読のホラー小説を片っ端から片付けてます(笑)。
  面白かったです。まず序文、というか冒頭の章で一気に引き込まれました。余談ですが、普段好きすぎて傷つけたい気持ちに駆られる事ってありませんか(笑)?猫とかハムスターとかを可愛がってると、握り潰したくなったり蹴飛ばしたくなったり(こんなこと書いたらヤバイやつと思われちゃうな・・・)好きな人の首を絞めたくなったり。私は愛情が加速するとそういう状態になったりすることがあります。この一線を超えてしまう殺人者って、もしかしているんじゃないかと思うんですが、主人公のウェインは、どうやらそういうのとも違うような気がして、計り兼ねてます。今の段階ではちょっと理解できないのがくやしいところです。
  この話の主要人物である(もしかしてこっちが主人公かな)ルール警部補にしても、キャロルにしてもリーにしても、ものすごく人間らしすぎて、小説になってるのか不安になるほどリアルです。キングでさえそうですけど、小説の主人公というのは、もう少しかっこつけたり、倫理感あったりするもので、リアリティもそのぐらいの方が、読者の共感を呼ぶんじゃないかと思うんですが(やっぱり人間、いくらリアリティを求めても、その現実派高く
みたいものでしょ)、この小説の人達はとってもリアル。 思いっきり私情をはさんで最後犯罪を見逃して大団円にしてしまったり、人を殺すほど愛し合ってたのに、極限状況に陥ったら相手を疎ましく思ったり、相手の為に命を投げて自己陶酔したり。 心理要素をクローズアップすることも飾り立てる事もなく、あっさりと目の前に突きつけられた気がします。
  展開はシンプルですが、設定も面白かったと思います。
 ファントム(上・下)/ディーン・R・クーンツ/ハヤカワ文庫NV
2000.4.8読了 no.7-8/★★★☆☆
 キングとなにかと比較されるクーンツの作品。今まで「ウォッチャーズ」と「バッドプレース」を読みましたが、私の中でクーンツの占める評価の位置が曖昧なままだったため、積ん読本の中からこの作品を読んでみました。
 バミューダトライアングルや、町中の人間が一夜にして消え去る、という不可解な事件に、クーンツ流の解釈を与えたもの、と理解していいのでしょうか。クーンツという作家はSFから始まって、以後もホラーだけに特化しない活動をしていると聞きますが、この作品は純然たるホラー。クーンツに暗いので、ホラーとSFの他にどのような作品を書いてるのかわかりませんが、少なくとも片手間にホラーを書いているのではない、やはりキングと並べられる程の力量のある作家なんだろうな、という印象は受けます。面白く読めました。
 しかし、キング作品と比べ(キングファンなので・・・)、キャラクターが生きて動くような感じではなく、どうも頭で組み立てて作家自身が動かしているという印象が抜けません。 ケイルやジーン・ターといった人物がどう絡んでくるのかと思いきや、ラストのどんでん返しの伏線の為に<用意された人物>といった感じで、少し拍子抜けしました。ケイルに関しては、彼自身の行動や思考、プロフィールといったものが章を割いてまで追われるにも関わらず、最後には、それ自体にほとんど意味がないように感じたのが原因かもしれません。あと、結局彼らのところにいたのが「本体」だったのでしょうが、スノーフィールドで動いている部分と、本体との関連したリアルタイムの描写が全くないことで、臨場感がそがれた感じがあります。 他の登場人物に関しても、ストーリーや伏線に従う為に感情や思考、行動を作者の手によって操作されているのが感じられるような唐突な場面もいくつか。私は個人的に、モダンホラーを読むときは、キャラクターの思考や動きに重きを置きますので、その意味では少し違和感が残ります。
 クーンツ作品では他に「ストレンジャーズ」が積ん読になってますので、近いうちそっちも読んでみたいと思います。
 十の物語 現代ホラー傑作選第三集 /高橋克彦編/角川ホラー文庫
2000.3.9読了/★★★☆☆
角川ホラー文庫の現代ホラー短編集です。以前に一冊だけ読んで、まあ深い印象は残らなかったものの、さらーっと読めて楽しめた感じはあったので、さらに2冊ほど買ってみました。これは第三集に当ります。
まず「人間華」。これは笑ってしまいました。ロマンチックな印象を与えようとしたんじゃないかと思いますが、ちょっと滑稽に感じたのはわたしだけ?物語の作り方としてはゴシックホラーっぽい感じを受けました。「魔性の猫」はキングの短編と同名の作品。内容はまったく違います(当たり前)。これは面白かった。不気味で悲しくて陰惨ですよね。あと、大好きな夢野久作の「卵」。これは未読だったのですが、これもコワイ。滑稽でコワイ。こういう作品とはセンスの波長が合うんですよね。ちょっと気違いじみていて荒唐無稽。「すてきな三人ぐみ」、なんだかすっきりした作品。すっきりしすぎていて新たに感じるものがない。こういうのはあまり好きでないです。文体も苦手なタイプ。
 悪魔の手鞠唄/横溝正史/角川文庫
2000.3.7読了/★★☆☆☆
 先に読んだ八つ墓村の作中にもタイトルが出てきたこともあり、続けて読んでみました。
 結論から言うと、八つ墓村の方が面白かった。やっぱり頭に懐中電灯・・・の男のイメージは強烈です。こちらでそれに対抗しうるイメージといえば、若い女の子達の変死体なんでしょうが、面白いとは思うものの、正常に頭の働いた人間の仕業、という感じが抜けなくてインパクトが得られませんでした。推理小説って基本的には、伏線の応酬と、その組み立ての妙を楽しむものなんでしょう。
八ツ墓村/横溝正史/角川文庫
2000.3.4読了/★★★☆☆
 古本屋で3冊セット100円で売ってたのをきっかけに初挑戦です。タイトルやカバーの不気味さ、江戸川乱歩との交流など、私にとって魅力的な要素を感じてはいたのですが、国内モノ嫌いが災いして現在までほおっておいたのです。
 いわゆるホラーではなく、推理小説なんですね。金田一耕輔という超有名キャラクターが軸なんですから、当然でしょうが。私は物語の筋そのものよりもむしろディティールに惹かれました。 頭に懐中電灯を2本立て、片手に猟銃、片手に刀をもって、次から次へと村人たちを惨殺していく男、しょう乳洞の奥に潜む鎧をまとった木乃伊。全く見分けのつかない双子の老婆、起こった殺人やそれにまつわるトリック、心理描写等にはほとんど興味を惹かれなかったんですが、そういうディティール は怖かったし不気味でした。
 もともと、小説を読むときに「誰が犯人なんだろう・・・」とか考えるように頭が出来ていないので、どんなに予測不可能なトリックを明かされても、「ふーんなるほど」としか思わないんですよね。私にとって推理小説って、のめりこみはしないけども、たまーに読んでみようかな、と思うもの。推理小説向きじゃないんだな。
リング/鈴木光司/角川ホラー文庫
2000.2.27読了/★☆☆☆☆
 日本のホラーブームの火付け役となった、あまりにも有名な作品。遅ればせながら読んでみました。
 映画の方は1年くらい前にビデオで観て、ものすごく恐かった。小学生の頃、「あなたの知らない世界」という番組を夏休みの昼にやっていて、恐がりの私は「見たいけど見たくない!」みたいな感じでうちわの骨組みの隙間から覗いて見ていたのを思い出します。
 しかし、小説、これはいかん!いや、小説的にどうのというのではなく、私は国内作品のこういうのが苦手なのです。こういうのというのは、登場人物の口調。芝居がかったというかおちゃらけているというかマンガっぽいというか、とにかくこういう口調が出てくると、一気に冷めてしまうのです。これは単純に好みなので、お許しを。その所為で、どうしてもストーリーに乗ることができなかったので、感想という感想は書けないのですが、それらしいことを言うならば、浅川の焦りと恐怖感は感じられましたが、貞子の呪いにどうも説得力がなかったことが気になりました。貞子の存在を恐ろしいとも哀しいとも感じなかった。これ、小説もヒットしたんでしょうか?映画のヒットが先なのでは?という気がしました。
ねじの回転/ヘンリー・ジェイムズ/新潮文庫
2000.2.20読了/?????
 ヘンリー・ジェイムズの幽霊もの。いまいち感想がまとまらないのですが、日記の方にアップしていた内容を一応アップすることにしました。
 ヘンリー・ジェイムズは、語り手の女性教師についてもっと書き込むべきだ、と言ったH.G.ウェルズに対して、読者に対する単なる語りの媒体で、透過するレンズのような存在として描かないと意味が無い、と言ったそうですが、私には彼女の存在がレンズの役割を超えて迫ってきました。時代や訳の雰囲気もあるかもしれないけど、ヒステリックなキャラクターに終始圧倒。幽霊よりよっぽど怖い(笑)。恐怖譚としてはあまり怖くないけど、ちょっともう何度か読みなおしてみたい気がします。いいな、と思う小説を読んだ時に感じる、なにか見逃したかもしれない、という感覚があるので。また忘れた頃に読みなおすことにします。
シンプル・プラン/スコット・スミス/扶桑社ミステリー
2000.2.1読了/★★★★★
 基本的に「映画観る前に原作読む派」の私は、サム・ライミによる映画化のビデオレンタルも開始されたのを機に、ようやく読み始めることにしました。
 昨日私はお菓子のクレーンゲームをやりました。そのゲームは昔のように、すくったお菓子をそのままポケットに運んでいくものではなく、すくったお菓子を台の上に落とし、落としたお菓子が次の台に押し出され、最後に押し出されたお菓子がポケットに落ちてくるというものでした。コインゲームでよく見かけるやつのお菓子版です。最後の台のポケット付近にはお菓子のタワーが組まれていて、その下部をうまく押し出せば、タワーがくずれ、大量にお菓子をとれるような仕掛けになっています。
 私は、ただなんとなく懐かしい気持ちと、いっぱいとれればいいなあ(笑)くらいの気持ちでお金を入れました。すると意外とうまくいき、タワーの下部がゆっくりとポケットに向って押し出されました。あと何回かでタワーが崩れそうな感じです。500円程投入した頃には、もうタワーを崩さないことにはやめられないような気持ちになっていました。
 ・・・結局私はタワーを崩すことが出来ないまま、そのゲームに2000円使いました。手許に残ったのは200円相当のお菓子と不完全燃焼の気持ち。
 ながながとくだらないことをすみません(笑)。この手のゲームやUFOキャッチャー、パチンコ等をしたことのある人なら、この気持ちがきっとお分かりになると思います。そして「シンプルプラン」の主人公は、まさにこういう風にして狂っていくのです。
 ゆっくりと流砂にのまれるように狂気の淵へ傾き、沈み込んでいく、常識的なごく当たり前のどこにでもいる人間。最初の投資を無にしない為にどんどん投資を重ねていき、深みにはまっていく現象は、日常いたるところに潜んでいます。だからこの作品の描写は説得力があり、読者を引き込んでいきます。その場その場で最も適していると思われる判断や行動の積み重ねが、物事を大きく変えていく。人間がごく静かに狂っていく様を、至って”シンプル”に描き出した傑作だと思います。
楽しい悪夢/ロバート・ブロック/ハヤカワ文庫
2000.1.27読了/★★★☆☆
 「サイコ」の原作で有名なロバート・ブロックの短編集。
 随分前に同じく短編集で「切り裂きジャックはあなたの友」というのを読みましたが、私はこの「楽しい悪夢」のほうが好きです。
 「子供にはお菓子を」が面白かった。特にラスト8行!「めがね」はベタなゴシック短編で、ありがちな感じもしますが私は好きです。「悪魔の落とし子」は「 トウモロコシ畑の子供たち 」を彷佛とさせます。
地獄の家/リチャード・マシスン/ハヤカワ文庫
2000.1.20読了/★★★★☆
 「 たたり 」「 シャイニング 」と並んで評される有名作品で、幽霊屋敷モノです。
 学者の博士と霊能力者という組み合わせで、噂の幽霊屋敷を調査に行く、という内容。「 たたり 」を既にお読みの方ならお分かりでしょうが、この設定は「たたり」とほぼ同じです。作品のバックボーンについては詳しくないのですが、「たたり」の方がほぼ10年早いので、おそらく意識してのことでしょうね。
 私は小説を読む時、登場人物にかなり感情移入して読むタイプなのですが、この小説の凄さはキャラクターの厚みにあると感じました。私達が、ひとりひとりそれぞれがそれぞれの倫理や目的に従って、よかれと思って行動しているように、この小説の登場人物達はそれぞれの信じるものに従って、最も適切だと考えられる行動を模索します。時にはぶつかったり不信を抱いたりしながら。 読みながら私は、バレットのリバーサーが未だ存在する幽霊によって動きだし、彼の説を破壊した時も、フローレンスが存在を信じ続ける<息子>によって傷つけられ茫然自失の時も、フィッシャーが自分のやり方を貫くことに疑問を感じたりしながら思い悩む時も、同じように引き込まれました。
 「 たたり 」は、ストーリーが調査途中で終わった感がありましたが、「地獄の家」はその後まで引っ張って読ませた感があります。どっちが好きかは好みかも。私はどっちも捨てがたいですが、やっぱり「 たたり 」の方が好きかな(笑)。
 面白いのは、「 たたり 」「地獄の家」「 シャイニング 」全てにおいて、登場人物のトラウマに幽霊が付け込んでくること。人間の意識下に潜む弱味は、幽霊屋敷にとって好物なのかも?
バトルロワイヤル/高見広春/太田出版
1999.12.28読了/★★★☆☆
 キング作品の中でも好きな方に入る「 死のロングウォーク 」と似た設定だったので、以前から意識していまし た。
 読後は、漫画感覚で一気に読める作品だと感じましたが、どうもリアリティに欠ける描写や設定が多く、説得力に欠けるかな、というのが印象です。漫画感覚、と書きましたが、まず登場人物がステレオタイプで、どこかで見たようなありがちなキャラクターである上に書き込みが乏しいので、先の行動が読めてしまう。「こいつだったらここでこうするだろうな」と思ったら大抵そのとおりなので、興ざめな場面がかなりがありました。 作者側では、一クラス分の人間が死んでいく上で、ひとりひとりの人間の死について出来るだけ書いていこうという意図があったのではないかと思いますが、ラスト近くで、まとめて死んでしまう等、都合のいい部分が気になりました。
 この作品で一番の敵になる生徒についての書き込みがあまりにも少なかったため、ラストの戦いにおいても緊張感が伝わってこず残念。RPGでボスキャラを倒すように、とりあえずこいつを倒したら終わり、というような感覚。敵役の生徒自体の精神状態というか狂気のようなものにもう少しせまれれば、もう少し緊迫した雰囲気になってたかも。彼の死についても、一番の敵であり脅威となる存在であったにしろ、もともと殺し合いをする相手ではなかったわけですから、あまりに素っ気なさすぎる気がします。その後は、主人公側と政府側が裏をかきあって、展開が二転三転し、面白い場面だったのかもしれませんが、ここでも結果として想像の範疇を超えないベタな展開だったため、ストーリーにぶんぶん振り回される快い感じは得られず残念。
 漫画やゲームの題材となってたら面白い作品になっていたかも知れませんが、個人的にはもう少し小説として読みたかった気がしました。ちょい欲求不満。
黒い家/貴志祐介/角川ホラー文庫
1999.12.中旬読了/★★★☆☆
 最近映画が公開されたこともあり、耳にする機会が多かったので遅れ馳せながら読んでみました。
 現実味のある舞台背景や、事件捜査的な要素にあまり興味がないので個人的にはあまり好きなタイプの作品ではありませんが、 ラスト付近、主人公の恋人がさらわれるあたりからは、緊迫感のある展開で面白く読めました。 半分くらいまで犯人あてっぽい作品かと思ってましたが、いつまでも勘違いしてるのは主人公だけで、読み手にはすぐに犯人がわかってしまうあたり、そういう作品ではないようで。保険業界や、心理学についての専門的な記述が多いのも特徴かも。
 虚ろで残虐で執念深い犯人の女性、ミザリーのアニーに通ずるものを感じました。 怖かった。

 
たたり/シャーリー・ジャクスン/創元推理文庫
1999.10月頃?読了/★★★★★
 ヤン・デ・ボン監督「ホーンティング」によりリメイクされたことで、小説も再版され、ようやく読むことができました。(ハヤカワNVの比較的古い作品だったので、ずっと見つからなかったんです)
 全編を通じて派手な心霊現象らしきものやあからさまな描写は殆どなく、ただ、屋敷の持つ不気味な雰囲気と、登場人物の感情描写にひきずられ、不安な気持ちのまま読み進めているところに、突然襲う衝撃の(?)結末。屋敷の描写の中に「どこかがすこしづつずれている為になにもかもが正確でない感じを与える」というようなものがありましたが、この作品自体がまさにそういう印象。結末に向ってじわじわとのぼりつめていく、が、読者にも登場人物にも居心地の悪さ(そして時には居心地の良さも!)を残しますが、なにがどこへ向っているのかまるで予測がつかない・・・という感じでしょうか?上手く説明できませんが、私は一気にこの作品にはまりました。何度も、何度も読み返したい作品です。
 ちなみに今回リメイクされた映画「ホーンティング」にはがっくり。原作から受ける印象とは正反対の作品でした。特にラスト近くに至っては大袈裟で陳腐なストーリー展開に脱力(好きな方ごめんなさい)!

キング作品の感想
<ネタバレを含みます>