2000 ライディング・ザ・ブレット"RIDING THE BULLET"/短編小説
ライディング・ザ・ブレット/アーティストハウス(単行本)★2000部限定カバー
ライディング・ザ・ブレット/アーティストハウス(単行本)★BOLオリジナルカバー
ライディング・ザ・ブレット
/アーティストハウス(単行本)
作品説明
母親が急病で倒れたという知らせを受け、大学生アランはヒッチハイクで病院までの旅にでる。オレンジ色の不吉な満月が墓石を照らし出す夜に起こる不思議な出来事とは? アランの心の闇にあるものは一体何か? ブリット<弾丸>のように疾するムスタングとともに、恐怖のスピードはさらに加速して ……。 
作品解説
本作は、キングが新しい試みとして、ネット配信のみではじめて出版した短編である。2000年3月14日の深夜に、ダウンロード配信にて発売されたが、2日間で50万人の読者が殺到し、話題となった。
その後、フランス、イタリアなどで書籍の形態で発刊されたが、ついで日本でも発刊が決定した。
カバー違いで三種類が発刊。ひとつは、レッドカバーで、初回2000部。これは発売開始当日、翌日の二日間で完売した。ブルーカバーはオンライン書店BOLでの購入特典版。最後に一般書店店頭にて、オンライン販売から二ヶ月遅れの発売が開始された版である。
装丁/藤田新策氏のコメント
  長い間キングのカバーの仕事に携らせてもらっていると、巨人キングもやはり人間、グッと来る奴と そうでない奴があるなと思う事がある。そしてグッと来る奴というのは、いつも決まって僕の頭の中の記憶の蓋をパッと開け、もうとうに忘れてしまっていた情景などをいきなり蘇らせたりする。「IT」の原稿を読んでいた時には、中学生の頃、互いに自作の漫画を見せ会っていた友達で、その後別々の高校に進んだが、次の夏休みに山の中の貯水地で泳いでいて死んでしまった子の名前と顔が、リアルに頭の中に浮かびあがって来た。
  そして今回の作品も無意識というエリアのメモリーの中から、ある光景を浮かび上がらせた。小学生の夏休み、僕は静岡県の清水市にある親戚の家に泊まっていた。そして親戚の子と「狐ガ崎ヤングランド」 という遊園地に行こうという事になり、日中子供同士で畑の中の道をとぼとぼと歩き始めた。一時間程歩いた が、いっこうにそれらしきものは見えて来ない。心細くなってきていたところに、向こうから背中が丸くなった お婆ちゃん歩いて来たので、さっそく尋ねてみた。 「すいませんヤングランドってどっちですか?」 「は、やぐら?」 「いいえ、ヤングランドです。」 「やぐら!」 ・・・何度尋ねても、お婆ちゃんは火の見やぐらか盆踊りのやぐらの事を説明しようとしている。 しかたなく、またとぼとぼと畑の中を歩き始めたのだった。今になって冷静に振り返ってみると、60年代の中盤のお婆さんの頭の中には「ヤング」という 言葉と「ランド」という言葉自体が存在していなかったのではないのかとも思ったりする。
 と、まあ偉そうな事を言っている僕も、今回この仕事の依頼を最初に電話で受けた時。、ライディング オン ザ ブレットの、「ブレット」=「銃弾」という意味が頭の中に浮かばず、「え、パン の上に乗る?」・・・もしかしてキングの得意の「パンの上の糞なみに食えねえ」とか、御下劣ギャグ系の 小説か?・・・などと一瞬誤解してしまった。
   しかし送られてきた原稿を読みはじめると、僕のアホな誤解は見事に裏切られた。 御下劣どころか、実に味わい深く、「山の上から見る仲秋の明月」より美しく、しかも泣ける傑作だった。
  秋の夜長窓から、月なんか眺めながらゆっくりとページをめくって下さい。 そして時間が過ぎても、大きな満月を見る度に、きっとこの物語を思い出すようになるんじゃないかと思います。  


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