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 CS財務会計システムの導入

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(設問ア相当)
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1 業務の内容
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 私は、市町村における事務作業の情報化を共同で行う
ことを目的に設立された公益法人の職員である。職員数
は146人で、事務所は、本所のほか出先機関3か所が
ある。今回私がシステムアドミニストレータ(以下「S
AD」という。)として参画した業務の内容は、ホスト
系オンラインシステムである予算書・決算書作成システ
ム、請求書収納管理システムを既設ネットワーク利用に
よるクライアント・サーバ財務会計システム(以下「C
Sシステム」という。)に統合及び移行するものである。

 私の役割は、システム化により a.経営課題となって
いる総務課内の経理担当者の人件費の抑制、b.職員のコ
スト意識の醸成、c.全庁的な事務作業の効率化及び省力
化、d.情報リテラシの向上をいかに行うかであった。

 システム移行に当たっては、職員が納得し期待できる
ものである必要があり、その効果が共有できることを重
要として捉え、できる限り部門間及び職員間のコミュニ
ケーションの向上に努めることとした。

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(設問イ相当)
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2 現状の問題とシステム化への問題
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2.1 経営課題
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 4所における経理担当者は、専任化している職員が8
人におり、組織の割には多くの要員を配置していた。当
団体は8室課あり総務部門を除くと情報部門ばかりであ
り、経理担当者は他室課への人事異動の対象となりにく
く、このため高齢化が進み、人件費の高騰が問題となっ
ていた。また、決算期、予算期及び伝票入力が集中する
月末には、時間外勤務が40時間から80時間と多く、
その手当についても問題となっていた。
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2.2 職員のコスト意識の欠如
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 事業課の職員においては、担任している事業に対する
コスト意識が欠如しており、自分勝手に仕事を進めてい
るのが実態であった。請求書発行の遅延及び未収金回収
の不請求など、自分の埒外との認識があり、決算時期に
なってあわてて処理する場合が多々見受けられる。

 しかし、一方では、コスト意識を醸成させる資料提供
を行っていなかったことも事実であり、意識付けするた
めの資料提供も課題であった。
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2.3 事務作業の煩雑さ
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 予算編成においては、各課が作成してきた予算書をも
とに積算根拠等を入力し、集計を行ってきた。予算執行
においては、各課で手書き伝票による予算管理を行うの
に加え、月末には経理担当者が伝票入力作業を行い、月
締め資料の作成を行ってきた。年度末になると予算不足
にかかわらず、執行を行っているなど、予算流用措置を
講じる必要が生じ、事務作業が非常に煩雑となっていた。

 また、経営判断に利用できる資料、コスト意識が図れ
るような資料を再三システム部門に作成依頼してきたが、
要員不足に加え、システムの理解不足により、システム
修正に手間取るなど、要望項目がバックログとして貯ま
る一方であった。
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2.4 情報リテラシの欠如
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 今回のシステム移行の主なメンバーは、実務経験が豊
富でその道に関してはプライドが高い職員が配置されて
いた。しかし、これらの職員はコンピュータリテラシが
低く、業務モデルを作成に当たって、業務分析を行うた
めのDFD図作成すらできない状況であった。

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3 システム移行による問題の解決と取組
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3.1 事務作業の効率化及び省力化
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 最初に行ったのは、全庁的システムの導入であり、全
職員が利用することになることより、システムに向けた
理解を得るために、各所属長への説明会を行い、所属間
のコンフリクトを解消し、協力体制を確保することとし
た。次に、各所属の係長クラスを集め、ブレーンストー
ミングにより、システムに向けた本質的問題、解決策を
見出すことした。このなかで、ホスト系システムで有効
に活用できるデータがあることを知らされる。それは以
下のようなものであった。a.年間1万件を越す請求デー
タ、b.年間5千点を超す帳票データの利用、c.入金情報
が提供されるファームバンキングデータであった。これ
らのインタフェースを確立するために、それぞれのシス
テムの概要からテーブルレイアウトを把握した。

 これにより、事務作業は大幅に削減され、所属間のコ
ンフリクト及びセクショナリズムが減少し、協力体制が
確立された。
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3.2 情報リテラシの向上
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 担当者は、実務経験が豊富であるが、コンピュータに
対しては、一種のアレルギー的拒否反応を示し、それを
取り除くことを優先にOJT等を行う。

 最初に、いままで行った経理事務において、表計算シ
ステムを利用し処理することで、その効果を体験させる
こととした。次に、作成する文書は、すべて電子化され
たものとし、手書き文書はすべて受け付けないよう徹底
するとともに、電子化した文書の再利用により、事務効
率が向上することについても認識させることした。財務
会計については、当該システムを利用しないと業務が遂
行できないように徹底させた。

 これにより、少しずつ経理担当者のコンピュータリテ
ラシのレベルは向上したが、情報リテラシまでには至っ
ていないのが実態である。
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3.3 経営課題の解消
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 システム化に合わせ本所及び3所の経理事務を本所に
集中し、出先機関における現金の扱いは一切行わないこ
ととした。また、上記3.2の業務改善により効率化及
び省力化を実現することにより、6人体制を半分の3人
体制とすることができた。加えて、時間外勤務について
も月平均40時間を5時間に削減し、予算・決算時にお
いても、計画的に作業ができるようになった。これによ
って、人件費相当として年間で2,500万円削減でき
たことになる。

 また一方では、予算・執行管理を従来は科目しか行っ
ていなかったが、これを事業別に行うこととし、事業別
に収支状況がリアルタイムで確認できるようにした。し
かし、これだけでは十分と言えず、これに加え事業別収
支状況表、事業別予算執行状況表等各種資料の作成を行
い、利用の喚起を促すこととした。これによって、早期
請求、早期回収に努め、年度末に集中していたこれらの
処理が、年間を通じて行うようになり、職員のコスト意
識を醸成することができる。また、経営層にとっても、
採算性の悪い事業のスクラップが検討できるようになっ
た。

 経営課題として、経営判断を行うための材料は従来な
かったが、今回は、CVP分析ができるように、固定費
及び変動費の管理を実施するようにした。
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3.4 情報資源の共有化
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 事業課では、表計算ソフトを利用してプログラムを作
成したりできるところもあり、従前から予算及び執行の
データ提供を切望されていた。今回のシステム構築によ
り、データを容易にTXT形式に編集し提供できるよう
にしたため、EUCの実現を図ることができた。

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(設問ウ相当)
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4 課題と今後の取組
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4.1 原価計算システムへの展開
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 経営意思決定への活用として、標準原価計算システム
が切望されている。情報サービス産業では、原価計算は
非常に難しいとされているが、事業別とした今回のシス
テム移行では、直接費(人件費を除く。)については、
把握できたものの、間接経費についてはその配賦方法を
確立していく必要がある。これは、職員の人件費、光熱
水費、賃借料等の間接の事業別配賦方法を明確していく
必要がある。そのためには、工数管理システムの数値を
有効に活用し、職員の人件費を妥当な方法により配賦す
る。

 また、ABC(活動基準原価計算)により、コストド
ライバを明確化して、より精度の高い原価計算を行って
いく必要があると考えている。
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4.2 電子決裁システムとの連携
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 文書管理システムを今後導入する予定であるが、財務
会計システムで作成される伝票の電子決裁をシステム化
する必要がある。ペーパーレス化に向けて取組を行うと
ともに、事務作業の効率化を実現させ、意思決定の迅速
化を促進していく必要がある。意思決定の迅速化は、今
後販売機会を失することになる。
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3.5 情報リテラシの向上
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 コンピュータリテラシの向上は着実に前進しているが、
情報リテラシはいまだ実現できていない。これを向上す
るためには、OJT、OFF−JT等を行うことも必要
であるが、本質的には、職員一人ひとりの不断の努力と、
事務を改善していこうとする強い意識が重要である。こ
れらの意識付け及び方向性を明確にしていくことが、経
営層に代わってSADに求められることである。





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