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(ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略の立案について)

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(設問ア)
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1. ビジネス環境と情報システムのおかれた状況
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1.1. ビジネス環境の背景
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  E 社はパソコン周辺機器メーカーC 社の下請け企業と
して主にデジタルカメラ,スキャナ用のレンズを製造し
ている.C 社からの受注に対し基本的に完全受注生産で
対応していた.各レンズ製品の製造リードタイムは2 〜
3 日である.
  従来はC 社からE 社にはC 社での製品製造数量の予定
に基づいた発注数量の内示が本発注の一ヶ月前に提示さ
れていた.内示で示された数量と本発注の数量に差異は
ほとんどなく,余裕を持って生産計画業務や製造を行っ
ていた.
  しかしC 社では従来の作れば売れるという時代ではな
くなったということもあり,市場の動向を細かく調査し,
その結果に応じて製品の製造数量の調整を行うことした.
E 社もこの動きに対応することが求められた.

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1.2. システム化の背景
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  E 社では発注数量の細かい変動に対応するため,従来
月次で行っていた生産計画業務を週次で行うようにし,
計画業務の負荷軽減のため生産計画スケジューラパッケ
ージを導入していた.しかし,以下の問題があった.
1)受注の変動がおきる頻度は日単位で起こることもあり,
  場合によっては納期まで余裕のない受注が発生するた
  め,現場で作業計画を変更せざるを得ない.
2)変更を見越して生産計画立案時に多めに生産数量を設
  定する場合もあり,余分に作った製品の過剰在庫が生
  じる場合もある.
  以上の問題点のため,E 社全体として業務の進め方や
システムの運用について戦略を立てる必要があった.

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1.3. 私の立場
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  私はE 社の生産管理・計画システムを担当するシステ
ムエンジニアである.プロジェクトリーダーとして戦略
の立案作業に携わった.


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(設問イ)
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2.立案したIT戦略
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2.1.私の立案したIT戦略
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  1.で述べたようにE 社では受注数量の変動にすばやく
備える目的で生産計画スケジューラを導入している.し
かし,実際には必ずしも受注数量の変動に対応している
とは言いがたい状況である.私は,現状発生している問
題の原因を明らかにするために現状の業務フローや,シ
ステム運用の調査,現在の受注状況についての調査を行っ
た.すると以下の点が明らかになった.
1)納期までの余裕がない受注はC 社から新しくリリース
  された製品用のレンズ製品に集中している.これらの
  受注に対応するため,現場での作業変更や,生産数量
  を多めに設定するなどの措置がとられている.
2)生産実績をスケジューラに反映させるための仕組みが
  ない.
3)過剰在庫となった製品を次回以降の受注で再利用する
  仕組みがない.
  私は以上の点について「C 社からの受注数量の変動に
対し最小の過剰在庫リスクで迅速に対応する」ことが必
要と考えた.そこで以下のような戦略を立案した.

  C 社から新しくリリースされた製品で用いられるレン
ズ製品については,製品の市場へのリリースからある期
間の間は見込み生産で対応する.その期間を過ぎたら従
来のような受注生産に切り替える.見込み生産とするこ
とでE 社では一定数の在庫を抱えることになる.新しく
リリースされた機器用のレンズの注文に対しては在庫を
引き当てる.また,このように対応することで受注変動
による生産計画への影響を抑えることができる.見込み
生産対象となっている製品については完全受注情報では
なく,所要量情報を基にで生産計画を立案する.

  また,生産している製品の工程間移動に用いるケース
に対し,バーコードを付与し,製造機械のそばにバーコ
ードリーダとパソコンを設置し,注文ごとの生産実績(
どの設備でどの注文がどの時間帯にどれだけの数量を生
産したかという情報)を生産計画スケジューラ用のデー
タベースに反映する事とした.これにより生産計画スケ
ジューラで立案処理を行う際に工場内部の状況を反映し
た生産計画を立案することができる.カタログスペック
上はE 社ですでに導入している生産計画スケジューラは
E 社の日ごとの生産数量に対して1 分程度の処理時間で
生産計画の一次解を算出することができる.この点も踏
まえて,現在の週次での生産計画立案業務をさらに午前,
午後の一度ずつに行うこととする.受注生産で製造を行っ
ている製品についても受注数量や納期の変更による生産
計画への影響を抑えることができる.また,影響があっ
たとしてもスケジューラ上で把握できるため,作業現場
での対応作業を軽減することができる.

  見込み生産を行う製品については在庫管理システムに
よって受注への在庫引き当て処理や在庫の状況を管理す
る.安全在庫量を下回った時点で所要量データを発生さ
せ,それに基づいて生産活動を行う事とする.

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2.2.私の工夫した点
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  2.1.で述べた対応方法においては見込み生産を行って
いた製品をどの時点で完全受注生産に切り替えるか,ま
た,安全在庫数量をどのように設定するかが重要な点に
なる.
  どの時点で切り替えるか,という事の考え方のひとつ
として内示から本発注までの受注数量の変更回数や変更
数量があるしきい値を下回った時点というものがある.
そこでC 社からE 社への過去の受注実績がこの考え方に
当てはまるかどうかE 社の協力を得て検証作業を行った.
検証作業の結果,この考え方が当てはまるという結論を
得られた.
  そこで,日々午前,午後行うことになる生産計画業務
の他に週次で内示と本受注に関する統計情報を調べ,見
込み生産から完全受注生産に切り替えるかどうかの判断
を行う業務を追加することとした.さらに見込み生産を
行っている製品の在庫引き当て結果や所要量情報の発生
頻度を調べることで安全在庫数量の見直しを行うことと
した.

  以上の点はデータベースから表計算ソフトなどにデー
タを取り込み,処理できる内容である.生産計画スケジュ
ーラを既に導入し,生産実績情報の収集システム,在庫
引き当てシステムを追加で導入することになるため,本
格的な需要予測システムをさらに導入することによるコ
ストは軽減したい.E 社は主にC 社の動向に注目すれば
よく,この方法であれば安価な表計算ソフトで実現でき
るため,コストもそれほどかからないと考えた.

  ここまで述べた方法はE 社が従来行ってきた完全受注
生産というあり方を変えるものである.そのため,E 社
の経営層にもプロジェクトに本格的に関わっていただき,
トップダウンでプロジェクトを遂行する事とした.


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(設問ウ)
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3. 立案したIT戦略に対する評価
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  システムの構築と並行して内示と本発注の間の差異に
ついて分析を繰り返し,安全在庫量の設定値や,差異の
しきい値について仮説を立て検証を行った.
  この結果を基にシステムの構築終了後,週次での見直
し作業を本格的に行うようになっている.今のところ,
徐々にではあるが,在庫数量は適正な値を示すようになっ
ている.これは今回立案したIT戦略が有効であることを
示していると考えられる.

  E 社は今回のIT戦略の立案,実行の経験を基に生産管
理業務のみならず他の業務についても今までのあり方を
見直すことができないか検討を進めている.私は今後も
E 社の業務改革,情報戦略の立案に積極的に携わり,E
社の企業としての成長に貢献する所存である.




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