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No.043 2人を生き埋めにした、大学生たちのリンチ殺人

1人の女性をめぐって始まった2人の男たちのケンカは、それぞれが仲間を集めて争い、拡大していった。一方がいったんは勝利し金を恐喝しようとしたが、その金を受け取りに行った先で、今度は逆に相手からリンチを受ける。


(敬称略)
▼藤本翔士と徳満優多の関係悪化

藤本翔士(21)徳満優多(21)は仲の良い友人だった。
しかしある時期を境に2人の仲は急速に悪化し、この2人の憎しみ合いが、後に起きる殺人事件の発端となる。

藤本翔士は東大阪大学4年生であり、徳満優多はこの大学の系列である短期大学の卒業生であり、当時アルバイトで生活していた。

2人とも同じサッカーサークルのメンバーだったが、徳満は短大卒業後もこのサークルに参加しており、そこで1人の女性(18)と知り合った。しかしこの女性は藤本翔士の彼女であった。


2006年5月ごろ、この女性に好意をいだいた徳満優多は、藤本翔士の彼女と知りつつも積極的にアタックし、「つき合って欲しい。」というメールを何度も送信するようになった。そのうち彼女の心もだんだんと徳満の方に傾いてきた。サークル内でも親しく話しかける徳満の姿が見られるようになった。

一方、本来の彼氏である藤本としては面白くない。自分の女が急速に徳満と仲良くなり始めたのだ。徳満に対してだんだんと怒りが込み上げてきた。親しい友人に対して徳満に対する怒りの言葉ももらすようになった。

5月15日、藤本と徳満はついに殴り合いのケンカとなった。世間にはありがちな、女をめぐるケンカであるが、このケンカは藤本が勝ったようである。徳満は友人の彼女に声をかけていた後ろめたさもあったのか、ここで引き下がった。

しかし1回のケンカでは藤本の気持ちは収まらなかった。「おう!これで終わったと思うな。明日、またキッチリ話つけたる。絶対来いよ!」
と、時間と場所を指定し、藤本は去って行った。


そして翌日、呼び出しをくらっていた徳満は、友人である東大阪大学3年生・佐藤勇樹(21)に相談を持ちかける。顔を腫(は)らした徳満を見てびっくりした佐藤が尋ねた。

「お前、どうしたんや、その顔?」
「やられた・・。藤本って奴に・・。」

「藤本いうたら、あれやろ、お前がホレたとか言うとった女の彼氏やろ。」
「そうや、彼女と俺がメールしとったんが気に食わんかったらしい。」

「そんだけでそこまでやられたんか!?」
「そう、それでな、これから奴と合うことになっとんや。何か話つけるいうてな・・。」

「そういうことなら俺も一緒に連れてけ。そんな危険な所へ1人で行かせるわけにはいかんやろ。」

「佐藤・・。ええんか?」
「気にすんな。俺らダチやないかい。」

と、藤本に呼び出しを食らった場所へは佐藤がついてきてくれることとなった。徳満優多は佐藤勇樹について来てもらって、藤本翔士に会いに行った。
この時点での敵対関係は
徳満優多

佐藤勇樹
× 藤本翔士 側

となる。


▼徳満優多と佐藤勇樹、一方的にやられる

しかしその場所で徳満と佐藤の2人を待ち受けていたものは、藤本翔士を含む5人の男たちだった。

いきなり藤本が徳満に近づいて来て、思いっきり徳満の顔面を殴った。後ろに弾(はじ)けるように徳満は倒れ込んだ。

「なめてんのか、てめえ。人の女に手え出してタダで済む思うとんのか?」上から藤本が脅しをかけるように言う。
徳満優多

佐藤勇樹
× 藤本翔士

岩上哲也

他3人の、計5人

「やめろ!」と佐藤が叫んで徳満を助けに行こうとしたが、藤本の仲間である岩上哲也(21・無職)に制止され、

「誰やねん、お前?カンケーない人間が出しゃばるなや!」と、今度は佐藤が殴られた。

「おう!お前らも暴れてええぞ!」と、藤本が仲間に叫んだ。「よっしゃーっ!」と、仲間たちが次々と徳満と佐藤に襲いかかる。ここから5対2でのリンチが始まった。

顔面を相当殴られ、倒れたところを何人にも蹴られ、半殺しの目に遭(あ)わされた。藤本たちはこの後、ほとんど動けなくなった徳満と佐藤を車に乗せ、約5時間連れまわし、散々脅しをかけ、最後はガソリン代として5000円を奪った。

再び藤本が叫ぶ。
「これで終わりやないからな。来週までに慰謝料として50万持って来いや!」

岩上哲也が「逃げられる思うなよ。こっちは山口組系のヤクザ知っとんや。払わんかったら殺すぞ!海に沈めたろか、生き埋めにしたろーか!」と脅しをかけ、50万払うことを約束させられて徳満と佐藤はようやく開放された。


▼徳満と佐藤の復讐

散々リンチを受け、相手はヤグザと知り合いだという言葉に徳満と佐藤は完全にビビッていた。(実際にはヤクザとのかかわりはなく、ただのハッタリだった。)しかし一介の大学生に50万は簡単に用意できる金額ではない。

困り果てた2人が頼ったのが、佐藤の中学時代の同級生である小林竜司(21・無職)と、広畑智規(とものり・22・大阪府立大学3年)である。

ここで登場する「小林竜司と広畑智規」が、後に起きるリンチ殺人の主犯格となる人物である。


相談は、ある喫茶店で行われた。佐藤から一通り話を聞いた後、小林が口を開いた。

「相手の連れがヤクザじゃあ?上等やないけ。ワシはそんなもんは怖くも何ともないわい。何が慰謝料じゃ。ふざけんな。埋めるだの何だのフカシこきやがって。上等じゃ、向こうがその気ならこっちだってやったろーやないか!」

徳満優多

佐藤勇樹

小林竜司

広畑智規
× 藤本翔士

岩上哲也

徳満「待ってくれ、小林!あいつら本気みたいやった。あんまり刺激するようなことすると、ホントに俺ら殺されちまう!」

広畑「そうや小林、ヤクザが絡(から)んどんや。慎重にいかなならん。お前かて、兄弟おるんやろ?

こういうのはどうや?まずお前ら2人(徳満と佐藤)が『金を払います。』と行って奴らをおびき出す。場所は岡山がええな。あの辺りなら俺らもよぉ知っとる。地元やからな。」

小林「そうか、そこでワシらが待ち伏せして・・。」

広畑「そうや、拉致って孤立させて、後はフクロにしたる。お前らかて、このまま済まそう思うとるわけやないやろ?」

徳満「あ、ああ、そりゃもちろん!」
佐藤「俺だって出来ることなら仕返ししてえ!」

広畑「ただし、俺は手出しはせえへん。暴力は苦手なんでな。」
小林「ああ、そっちの方はワシにまかせろ。血の気の多い奴ならぎょーさん知っとる。」

広畑「そいつらには思い知らしたるわ。二度と反抗する気が起きんように、キッチリシメたる。心配すんな。」

広畑が具体的な計画を立てて、役割分担などを決め、小林が人数を集め、復讐計画は実行に移されることとなった。


▼50万円払います

2006年6月18日深夜。徳満と佐藤は藤本に連絡を取った。

「約束の50万、払うわ。岡山の親戚に相談したら金、貸してくれることになったんや。今から岡山まで取りに行こう思うとる。車でそこまで送ってくれれば、借りた時点ですぐに渡すわ。」

徳満優多

佐藤勇樹
× 藤本翔士

岩上哲也

運転手役会社員
の、5人で車に乗って岡山に出発。
藤本は友人である岩上哲也(21・無職)と、車を運転している仲間の会社員の、合計3人で迎えに来た。この車に全員が乗り込み、岡山に向かって大阪を出発した。


「ホントやろうや、岡山に着いたら金払ういうんは。」藤本が念を押す。
「だ、大丈夫や、話はつけてある。」と徳満も焦った返事を返す。

岡山に入り、降りる予定のインターチェンジが近づいて来た時、佐藤が「あの・・、スマンけどトイレ行かせてくれんか。」と言い出した。

「そんなモン、後にせえ!」と藤本が言うが「インター出たところでええんや。立ちションしてくるさかい。」

「チッ、しょうがねえ。」と、トイレに立ち寄ることにした。


▼小林竜司と広畑智規の待ち構える岡山に到着

一方小林と広畑たちはインターの出口で藤本たちの乗った車が出てくるのをじっと待っていた。こちらは小林と広畑を含めて7人の男たちが3台の車に分乗して待機していた。

「小林さん、来ました!」仲間の一人が藤本たちの車を見つけて小林に知らせる。料金所を出たところを確認し、小林たちは車を発進させそのままそっと後をつけて行く。

すぐに藤本たちの車は空き地のようなところへ止まった。佐藤のトイレのためだ。ここまでも計画通りである。

車から佐藤や徳満が降り、相手である藤本とその仲間の岩上、そしてもう1人の会社員も小休止のためか、全員がいったん車から降りた。長時間の運転で疲れたのか、藤本たちは背伸びなどをしてくつろいでいる。

その瞬間、小林、広畑の他、7人の男たちがいっせいに駆け寄ってきた。それぞれが手に刃物やバット、特殊警棒、金づちを持っており、たちまち藤本たち3人を取り囲んだ。


▼立場逆転

徳満優多

佐藤勇樹

小林竜司

広畑智規

他5人の、計9人
× 藤本翔士

岩上哲也

運転手役会社員



計3人
「何や!お前ら!」藤本たちが叫ぶ。

「状況読めや、死にたいんか、てめえ。」という小林のセリフに、藤本たちもこれが罠だったことに気づいた。

「貴様ぁ!ハメやがったな!」藤本が徳満と佐藤の方を振り向いて叫ぶ。

立場は逆転した。これまで監禁状態で藤本の車に乗っていた徳満と佐藤も小林・広畑と合流し、これで徳満側は合計9人となった。
「三人を別々に車に乗せろ!場所を変えるで。小林、お楽しみはそれからや!」と広畑が指示を出した。

ここからは小林竜司と広畑智規が一切を仕切る。

小林・広畑たちは藤本たちを岡山県玉野市の深山公園につれて行った。車から降ろし、藤本たち3人を並ばせた。

藤本たちからすれば、恐喝した相手から今日50万受け取るはずだったのが、逆に相手の罠にはまってしまったのだ。


▼リンチの開始

「おう、佐藤、お前を殴ったいう奴はどいつじゃ?」小林が尋ねる。
「こいつら2人ですわ!」と、佐藤が、藤本翔士と岩上哲也を指差した。

「フーン、で、もう1人のこいつは?」と小林が聞いたところで藤本が、
「待ってくれ、こいつは運転手やってもろうただけやねん!こいつは関係ない!許したってくれ!」と叫んだ。

「ほぉー、で、組の名前出したのはどいつや?」再び小林が佐藤に聞く。

「それはこいつです!」と佐藤が岩上哲也を指差した。

「おめぇか・・。」小林が岩上にゆっくりと近づく。
「あ・・、いや、あれは本当は・・。」岩上が弁明しようとしたが、小林が言葉を遮(さえぎ)る。

「残念やったな。わしゃあ、ヤクザ大嫌いなんじゃ!」そう言いながら手に持った警棒を頭上に振り上げ、次の瞬間、思いっきり岩上の頭めがけて斜めに振り降ろした。

ガツッと鈍い音がして警棒は岩上の横顔を直撃した。「ぐぁっ!」と悲鳴を上げて岩上が倒れ込む。

「おぅ!お前らもやったれ!」小林が叫んだ。「ヒャッホー!」と楽しむような声を上げて、小林側の数人が一斉に襲いかかった。

ここから一方的なリンチだ。バットで殴り金づちで殴り、鉄パイプで殴り、倒れた所を何人かがかりで蹴りまくる。

「オラー!」「死ねやー!」と声を上げながら藤本と岩上を一方的に痛めつける。2人はみるみる顔が腫(は)れあがり、血ダルマとなった。

「や、やめて下さい・・。」「すいませんでした・・。」2人はリンチを受けながら謝るが、小林側は全くの無視だ。


この件の当の本人である徳満と佐藤はビビッて最初は暴行には加わらず、見ているだけだった。

そこへ広畑が声をかける。「ええんか?見とるだけで。女を守るんやないんか、徳満!借りを返すんやなかったんか、佐藤!」

「う・・。」

徳満と佐藤がためらっているところへ小林がバットを差し出した。
「おめーらもやれ! 誰のためにやっとると思うとんねん!」

バットを受け取った徳満がまだ迷っている。ぐったりとなった藤本を、小林が起こして顔を上げさせる。
「オラ、やれ!」と徳満に声をかける。

藤本にはまだ意識がある。小さな声で「ご、ごめん・・。やめて・・。」と口を開くが、次の瞬間徳満は「うわあああっ」と叫んで思いっきりバットで藤本の顔を横殴りにした。

ぐったりとなって倒れる藤本。

「おう、佐藤!お前はこっちじゃ!」小林が今度は倒れている岩上を抱(かか)え起こし、佐藤にバットで殴るように命令した。

佐藤もためらいはしたものの、「うおーっ」と声を上げ、岩上の顔面をバットで直撃した。

これでタガがはずれたのか、最初は迷っていた徳満と佐藤であったが、これ以降は相手側の2人を凶器でメッタ打ちにし始める。

「はっはー、やりゃあ出来んじゃねーか。」と小林も言う。


散々リンチを繰り返していた時、公園の後ろの方で「キャーッ」という悲鳴が上がった。ハッとして振り向くと、通行人の女性のようである。見られた。警察に通報されてはまずい。

「おう、場所を変えるで!」広畑がすぐに指示した。

半死半生の2人をそれぞれトランクに詰め、会社員も車に乗せて発進した。すでに日付は変わり、6月19日の午前3時になっていた。


▼穴を掘ってくれや

次に彼らが来たのは、先ほどの現場から約5km離れた、かつて小林が働いていたという会社の産業廃棄物処理場である。ここは岡山市と玉野市の境の山間部にある場所である。

「いいとこ知ってんな、小林。」と広畑が言うと
「おお、昔、この会社に世話になってな。夜になるとこのゴミ置き場には誰も来(け)えへんねん。」
と小林が答える。

ここで2人に対するリンチが再び始まった。2台の車のヘッドライトが現場を照らす。
2人とも顔面は腫(は)れ上がり、服は裂け、全身血まみれとなりもはや立つことも出来ない。

中には、倒れている藤本たち目がけてゴルフクラブを構え、「次、300ヤード行きまーす。」などと言い、腹に向かって思いっきりクラブを叩きつける者もいた。腹にヒットして悲鳴が上がると「ナイスショット!」などと周りもはやしたてる。


徳満と佐藤もだんだんと不安になってきた。「やり過ぎなんじゃないか?」「このままじゃマジで死んじまう。」

2人でささやき合っていた時、小林がここに置いてある建設機械を見ながら、仲間の1人に向かって、
「おめえ、確かユンボ(建設機械の一種)使えたよな? 穴を掘ってくれや。」と指示した。

重機で穴が掘られ始めた時、徳満と佐藤が驚いて聞いてきた。
「小林、まさか埋める気なんじゃないだろうな・・?」

「ああ。」
「マジか!?」と広畑も驚く。

「奴らにゃヤクザがついとんじゃろ?ここまでやっちまったんや。始末するしかねーだろ。」

小林の言葉を受けて広畑も
「それもそうやな・・。奴らにゃ消えてもらった方がええ。」とつぶやく。ヘッドライトの方向や、穴を掘っている間の見張り役、その他の役割分担などは全て広畑が指示を出した。

まもなく重機は止まり、掘られた穴を覗きこんで広畑が、
「浅いんとちゃうか?この深さじゃよう隠せん。」と言うので穴は更に深く掘られた。


▼残酷な命令

深さ1.5メートルくらいに達した時、作業は終了とされた。瀕死の状態になっている藤本を引きずり起こし穴の横に立たせた小林は、藤本たちの仲間である会社員に警棒を渡し、

「こいつを殴れ。手加減したらお前も殺す。」と命じた。

会社員は泣きながら瀕死の藤本を1回ほど殴った。

「おめーがこいつを突き落とせ!」と更に小林は命じる。
「そんな無理です!仲間を突き落とすなんて・・!」

「そうかぁ、残念やな。おめーだけは助けてやろうと思うとったが・・。おい、穴もう1つや!」と仲間にもう1つ穴を掘るように命じた。

「ま、待ってくれ・・!」と会社員の男が藤本に近づいていった。

「や、やめてくれ・・。」と藤本が懇願する。

「元はと言えば俺はこの件には関係なかったのに、何でこんな目に遭うんや・・。」会社員はゆっくりと手を藤本の背中に近づける。

「お願いやから殺さんといて・・。」藤本は涙ながらに会社員と小林たちに訴えるが、それも無視された。

「やれや!」再度の小林の命令に、会社員は「藤本・・、俺かて命はおしい。」と言いながら藤本の背中を突き飛ばした。

ドサッと音がして藤本は穴の底へ転落した。


次に小林は大きな石の塊(かたまり)を掴(つか)み、
「おい! こいつをあいつに向かって投げろ。」と今、突き落とさせた会社員に渡した。

「そんな・・、そんなこと出来ません。」

「さっさとせいや、おめーも埋めるぞ、コラァ!」小林が怒鳴る。

石を受け取った会社員は、穴の底の藤本めがけて投げ入れた。ゴキッと音がして藤本に命中した。

小林がやたらとこの会社員に命令したのは、殺人に加担させることで、この会社員から警察への通報を防ぐためでもある。

「おう、お前らもやれ!」小林が仲間にも命じる。数人が穴の周りを取り囲み、次々と石やコンクリート片を投げつけ、藤本を直撃した。

「もうええやろ、土、入れよか。」

小林が広畑に言うと「せやな。」と広畑も指示を出した。
仲間の1人が再び重機を操作し、まだ生きている藤本の上から次々と土砂をかぶせていった。

間もなく穴は完全に埋められた。それはすなわち下に埋まっている藤本が死亡したことを意味する。

後に死体が掘り起こされて解剖された結果、死因は窒息死だった。鼻や器官の中にも土が詰まっていた。


▼2人目の殺人

1人を殺害して、いったんリンチは終了した。もう1人の瀕死の状態であった岩上はトランクに詰め込んでいったん小林のマンションに連れて行かれた。

この時点で、小林は、ある知り合いの男に電話をかける。電話の相手は以前小林が風俗店で働いていた時の知り合いで、岡山市の暴力団関係者である。

実際にヤクザと関係があったのは、最初にヤクザを名乗った藤本・岩上側ではなく、小林の方だったということになる。

小林はこれまでの経過と1人殺したことを報告し、今後のことを相談すると、その電話の相手は「ヤミ金融で借金漬けにして金を奪え。」と指示した。

しかし、岩上は瀕死の状態で血まみれとなり、立つことさえ出来ない状態だった。金融会社に出向ける状態ではないのでこの計画は断念し、そのことを再び電話で報告すると、「金が取れんのなら連れてこんでもええ。警察に通報されるとまずい。生かして帰さずに処分せえ。」
と言われた。

「やっぱりこいつも埋めるしかねーな。」と小林が言い出し、再び岩上をトランクに詰め、仲間の2人と共に先ほどの現場に戻って来た。

藤本を埋めた穴から5メートルほど離れた場所にまた穴を掘る。突き落とす前に両腕を頭の上で粘着テープのようなもので縛(しば)り、更に両足も縛っておいた。動けない状態にしておいてから藤本と同様、穴の中に突き落とした。

再び重機で上から土をかぶせた。岩上の死因も窒息死だった。

3人の中で、ただ1人殺されなかった、運転手役をやっていた会社員はそのまましばらく監禁されていたが、警察には絶対言わないと約束させられて翌日ようやく開放された。開放する時に広畑は、警察への通報を防ぐ目的で、その会社員の免許証のコピーを取らせておいた。

開放はされたが、しかしいつまた小林たちに拉致(らち)されて殺されるかも知れない。恐怖に耐え切れずこの会社員はすぐに警察に出頭して全てを話し、助けを求めた。


▼逮捕・判決

一方の小林は指名手配されていたものの、事件から数日の間は逃げ回っていた。
時が経って冷静になったのか、6月23日午後、母親に電話し、「友達から困っていると相談を受けたんやけど、相談に乗っているうちに殺してしもうた。」と打ち明けている。

それを聞いた母親も「(それが)本当なら、自首しなさい。」と自首を勧めた。小林から母親への連絡はしばらく途絶えたが、24日に再び小林から電話があり、

「これから自首する。一緒に来て欲しい。」と頼んできた。翌日25日、自宅近くの神社で待ち合わせ、母親と2人で車に乗り、警察へ向かった。

小林は自首する前に母親に「母さんの子で幸せでした。」とメールを出している。また、警察へ向かう車の中で、「死刑にならんかったら出てこれるから。長生きしてな。」とも言っている。そして母親に付き添われ、玉野署に出頭した。

後の小林の供述によると「暴行しているうちに歯止めがきかなくなった。」と話しおり、また、他の仲間も「そこまでやるとは思わなかった。」と供述している。

25日の小林の逮捕から始まり、28日までにリンチに関わった9人は全員逮捕された。


小林竜司は一審・二審ともに死刑判決、徳満優多は懲役11年、佐藤勇樹は懲役8年、広畑智規は無期懲役となった。広畑智規は暴行には加わっていないものの、計画のほぼ全てを仕切った主犯格であると見なされた。

大阪地裁で和田真裁判長は「なぶり殺しとも言える無慈悲極まりない犯行で、これ以上残忍な殺し方はない。広畑被告は犯行を指示するなど役割は極めて大きい。」と述べた。また、積極的に暴行を行った白銀資大(もとひろ・23・大阪商業大学)は一審で懲役20年という判決も出された。その後、小林竜司被告は平成23年(2011年)年3月25日、最高裁でも上告棄却の判決を受け、死刑が確定した。



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