ドイツ語で、ドッペルゲンガー(Doppelganger) 、日本では「離魂体(りこんたい)」と呼ばれるこの現象は、ひとりの人間が離れた場所で同時に目撃されるような現象を言う。

ドッペルゲンガーの代表的な特徴として、その場にいる人とまったく喋ろうとしないことが知られている。また、自分のドッペルゲンガーを見たら死ぬ、という説もある。


アメリカのメーン州に住むジャネット・ブレナンという女性は、30年以上も前から自分の分身を見るようになったという。
彼女が初めて自分の分身を意識し始めたのは12歳のころだった。ある秋の日、彼女はお姉さんと一緒に家の一階でテレビを見ていた。するとお姉さんの友達の男の子が家に訪ねてきて、「ジャネット、さっき手を振ったのに何で無視するのさ!」と言う。

「手を振ったってどういうこと?」とジャネットが聞き返すと、
「さっき君が二階の部屋の窓辺に立っていたから僕が手を振ったのに無視したじゃないか。」

「それっていつのこと?」「ほんの今さっきだよ。」

ほんの今って・・私はずっと一階の部屋でテレビを見ていたのよ。」

気持ちが悪くなって二階に上がってみたがやはり何の異変も感じられない。この事件から数年たって彼女は、全然身に覚えのないところで「あなたを見た」という話をたびたび聞くようになった。


目撃される彼女は、なぜかいつも母親と一緒に車に乗っている場面ばかりだった。その二人は、友達が大きな声で声をかけても手を振っても、いつも無視するという。

分身は大学に入学してからは更にたびたび現れるようになり、友達から覚えのないことで文句を言われることが増えてきた。だいたい、「さっき廊下で声をかけたのに何で無視するの!」といったものが多かったらしいが、それがもとで人間関係がまずくなったり、縁が切れてしまった友達もいたりして彼女も困り果てていた。


そして数年たって彼女も結婚し、夫と子供2人の四人暮らしをするようになった。そんなある夜、ジャネットの住んでいる地方が激しい嵐に見舞われた。子供たち二人は二階の部屋でそれぞれ別々に寝ている。

子供たちが自分の部屋の窓を開けっ放しにしていないか、彼女は夫と二人で確認に上がった。夫は息子の部屋に入り、彼女は娘の部屋に入った。そして息子の部屋から出てきた夫が彼女にこう言った。

「ジャネット、先に部屋に入ったのなら何で窓を閉めなかったのさ。」
「え・・。私にあなたと同じ部屋になんか入ってないわよ。」


「そんなことないだろ。僕が部屋に入ったら君はもう、窓際に立っていたじゃないか。僕が別の窓を閉めて振り返ったら、もう君はいなかった。」
「そんな・・私は娘の部屋にしか入ってないのに・・。」

しかし夫はジャネットがその夜着ていた青いガウンをはっきり見ているのである。
「またあの現象だわ・・。」彼女はピンときたが、その場はなんとか適当なことを言ってとりつくろった。

彼女に昔からつきまとっているドッペルゲンガーはまだ消えない。最近では自分の娘にさえドッペルゲンガーが現れるようになったという。こういう体質は遺伝するのだろうか。


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