明治時代、日本には長南年恵(おさなみ・としえ)という有名な超能力者がいた。彼女の能力は、物品引き寄せ・・、つまりその場にいながら、何らかの物質を引き寄せてくる能力である。
中でも最も得意としていたものが、空のビンに一瞬のうちに空中から水分を集めて、そのビンを水でいっぱいにする、という能力であった。
しかもこの、集められた水は「霊水」と呼ばれ、様々な病気を治癒するという効能があり、彼女の元には連日、その「霊水」を求めて大勢の人達が集まり、実際多くの人々が自分の病気を直すことに成功したという。
しかしこのようなことを続けていれば、ある心無い者からいつしか「詐欺だ、インチキだ。」との評判が立つようになり、当時の警察も当然のごとくそう考え、彼女は警察の捜査を受けることとなった。そしてその結果彼女は、人の心を惑わす詐欺師ということになり、警察に逮捕されて監獄に入れられてしまった。
そして後日、彼女の裁判が行われることとなった。当然裁判の焦点は、逮捕されるきっかけともなった、「空のビンを一瞬にして霊水で満たす」という能力だった。はたしてこの能力が本物なのかどうか・・。
裁判は神戸地方裁判所で行われ、当日は裁判長みずからフタをした50本の空ビンを使って彼女の能力の実験が行われた。大勢の人の見守る中、実験は始まり・・そしてその結果、ものの見事にカラ瓶は一瞬のうちに水で満たされたのであった!
誰にも文句のつけようのない形で彼女の超能力が本物であることが証明され、そしてその日のうちに彼女の無罪が言い渡された。この事件はきちんとした記録にも残っているという。