1702年、イギリスの北ヨークシャー州、サースク村に住むトーマス・バズビーは、妻の父親を殺害した罪で絞首刑に処され、殺人犯としてその一生を終えた。
彼には生前、長年愛用したとてもお気に入りのイスがあり、暇があればこのイスでうたた寝をするというくらい、そのイスが気に入っていた。

このイスは彼の死後も当然残ったのだが、このイスにはバズビーの呪いがかけられているのだという。

バズビーの死後このイスは、妻が家財道具を処分した一環で、「バズビー・ストゥープ・イン」というパブに置かれることになった。ちなみにこのパブの名前は処刑されたバズビーからつけられたものである。

パブに置かれたこのイスは、それが元殺人犯のものであったことや、持ち主が絞首刑になったこと、このイスには呪いがかけられている、などの色々な噂が広まり、酔った勢いで面白がって座る人たちが結構いた。

だが呪いの噂は本当だったのだ。第二次世界対戦中、パブで酒を飲んでふざけてこのイスに座った兵士たちは全員戦死した。その後も噂が噂を呼び、ますます有名になったこのイスは、パブで酒を飲んで気が大きくなった若者たちが度胸試しをするのに格好のネタとなった。

24歳のある空軍のパイロットは、「バズビー・ストゥープ・イン」で仲間たちと酒を飲んでいた時、話題がたまたま、この呪われたイスのことになった。

「俺はそんな呪いなんて信じないよ。」と、彼は軽く言い、そのままイスに座ってみせた。だがその数時間後、彼は交通事故に遭い、この世を去ってしまったのだ。

また別の建築作業員は仲間が止めるのもきかずこのイスに座り、その翌日、仕事中に屋根の上で作業をしていた時に足を滑らせて地上に転落し、首の骨を折って死亡した。


バズビーが死んで300年以上経つ。その間このイスはずっとパブに置かれ、呪いの話は地元ではかなり有名になった。だがそれでも、面白がって座る者や呪いを否定する人たちは後を経たず、年間で数人はこのイスに座った。

その数は300年で61人。そしてその61人はイスに座った後、極めて短期間で全員が死亡している。

パブのオーナーもさすがに気味が悪くなり、誰も座らせないようにするためにこのイスを、地元の博物館である「サースク博物館」に寄付することにした。

博物館で「ザ・バズビー・ストゥープ・チェア」と名づけられたこのイスは、別名「死を招くイス」と呼ばれ、もうこれ以上、誰も座ることが出来ないように、今では天井からロープで吊り下げられて展示されている。


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