▼臨死(りんし)体験

臨死(りんし)体験とは、事故などで重症に遭(あ)い、医学的にはほぼ絶望的な状態から、あるいは一度死亡が確認されてから、再び蘇生して生き返った人が、死んでいる間に「あの世」で体験してきたことを言う。このような例は、はるか昔から世界中で数多く報告されている。

東京の会社員であるAさん(当時26歳)は、ある日の夜、車を運転していてガードレールに激突するという事故を起こした。すぐに救急車で病院に運ばれたが、Aさんの怪我はひどく、手の施しようのない状態だった。

ほぼ絶望的な状態ながらも母親の必死の頼みで手術が行われることになった。結果的にはAさんはなんとか蘇生したものの、その治療を受けている間に臨死(りんし)体験をしてきたのだという。

「何か周りが妙に騒がしいという感じで目が覚めました。自分自身はなぜか部屋の高い場所にいました。そして自分がひどい怪我をして病院で治療を受けている、自分自身の姿を上から見ていたのです。」

一般的に言われる幽体離脱の現象で、魂が身体から抜け出して、上から自分自身の姿を見ているのである。

医師たちは懸命に治療を行っている。母親は枕元で祈りながら震えている。父親ががっくりと肩を落としている姿が見える。二人の医師が輸血を行い、看護婦がマッサージをしている。人々の会話もはっきりと聞き取れる。
「瞳孔が開いている。やはりダメか・・。」
「会わせたい人がいるなら、早く呼んだ方がいい。」

そのような会話をききながらAさんは「僕は死んでない!ちゃんとここにいるじゃないか!」と何度も叫んだが、誰も気づいてくれる人はいなかった。

そのうち、はっと気がつくとAさんは全く別の場所にいた。灰色の雲の中に自分がいることに気づいた。雲の先の方には真っ暗な穴があいていて、自分自身がどんどんそこに引き込まれていっている。

「あそこに落ちたら終わりだ!」瞬間的にそう思って必死にもがいたが、どうしようもなく、とうとう穴の中に引きずりこまれてしまった。中は凍りつくように寒く、真っ暗で何も見えない。

だが、この苦しい感覚もすぐに終わった。次の瞬間は何か暖かい、そしてきれいな花が咲き乱れる山の中にいた。Aさんはそこで飛んだり走ったりしながら、子供のころから事故に遭うまでのことを次々と思い出していた。もう思い出せないはずの二歳くらいの頃や、小学校の入学式のことなどが鮮明によみがえってくる。

その山に突然、強い光が上空から迫ってきた。太陽が異常なほど明るくなってきているのだ。その光がどんどん強くなり、何も見えないほど明るくなった時、パッと目が覚めた。そこは病院のベッドだった。

一瞬の出来事のような感覚だったが、実際にAさんが目覚めたのは事故から三日も経ってからだった。意識が回復し、大分落ち着いた時、Aさんは治療をしてくれた医師の人や看護婦の人にそれぞれお礼を言った。誰がどういうことをしてくれたか、見て覚えていたからだ。

「あなとは瞳孔が開いて完全に死んでいたんだから、そんなことが分かるはずがないじゃない。」
と関係者の人は気味悪がったが、Aさんにはちゃんと見えていたのだ。


▼臨死体験者の共通した体験

これは典型的な臨死(りんし)体験で、昔から世界中で報告されているケースもだいたいこのような場合が多い。死、あるいは死後の世界の世界観に関して、一番影響を与えそうなものは宗教であると思われるが、臨死体験の場合、宗教も国籍も老若男女も関係なく、報告されたケースには多くの共通点があるという。

臨死体験の研究者であるケネス・リング氏は、著書「いまわのきわに見る死の世界」で、104例の実例をあげて「ニア・デス体験(臨死体験)は、ほとんどの場合、ある一定のパターンをとっている。」と紹介した。

代表的なものとして、

1.医師が「ご臨終です」などと家族に言っている、「自分の死の宣告」を聞いている。

2.自分自身の身体を少し高いところから見下ろしている。周囲の人の動きも見え、話し声も聞こえている。

3.突如、暗闇の中に突入する。トンネルのような暗闇である。

4.暗闇のトンネルを抜けると急に明るくなり、楽園のような世界に降り立つ。

5.そこで、すでに亡くなっている家族や友人たちと出会う。

6.光の精ともいうべき、何か輝く存在が現れ、生か死か選択を迫られる。

7.一生の出来事が次々思い出され、生涯を振り返る。

8.このまま死の世界へ行くか、現世に戻るかを決定する。中には生前親しかった人から「帰れ」「来てはいけない」などと言われて戻る決意をする人もいる。

これらの全てを経験する人もいれば、この中のいくつか、あるいは一つだけ、など人によって体験はさまざまである。

また、「灰色の霧・水際(みずぎわ)・ドア・柵(さく)」など、何らかの「境界」と接近した、という報告もいくつかあり、現世とあの世の分ける境も存在する可能性がある。


臨死体験は物的証拠がなく、体験した本人の報告だけが頼りであり説得力に欠けるとも言えるが、死からよみがえった人たちの多くのコメントには似通った点が多数あり、その点においては信用に値する面もある。


逆行催眠で刺激される霊界での記憶

逆行催眠とは、被験者に催眠術をかけ、だんだんと過去の記憶へとさかのぼっていくものである。
1967年、臨床心理学者のヘレン・ウォームバック博士によって、ある特殊なレポートが発表された。被験者750人を対象として逆行催眠をかけ、かなりの確率で生まれる以前の記憶を引き出すことに成功したというものだ。

人間の記憶の奥底には母親の体内にいる時からそれ以前のことがきちんと記憶されていて、催眠によって刺激を受けると詳細に思い出すことがあるという。

博士の研究結果によると、実験に参加した人の81%は、この世に生まれてくる時に、ある特定の身体を選択して生まれてきたと語った。しかもその大半の人が、霊界にいる責任者らしき存在と相談の上、いやいやながらその身体を選んだというのだ。
再びこの世に生まれてくることは、気の進まないままに進行したことらしいのだ。

そして、「生まれる前はどういう状態だったか」という問いに対しては、90%の人が霊界は楽しいところだったと語った。生まれ変わるのを望んでいた人は全体の26%で、大半の人は生まれてくることを望んではいなかったのである。

また、それぞれの被験者に、生まれてくることが決まった時はどんな気持ちだったのかを尋(たず)ねてみると、
「何か少し苦しい目に会いに行くという感じです。」
「やらなければならないことがある、という義務感のようなものです。床が汚れていたら掃除をしなくてはならない、という程度の感覚です。」

というような意見が聞かれた。

更に、「生まれ変わった後の、次の人生について何らかの情報を持っていたか」という問いに対しては、87%の人が「知っていた」と答えた。つまり、次の人生の中で出会う両親や恋人・友人などのことは、霊界にいる時や、またはこの世と霊界の中間の世界にいる時にすでに知っていたというのである。


輪廻転生(りんねてんせい = 生まれ変わり)~前世の記憶を持つ女の子

インドのニューデリーに、リーナ・グプタという少女が住んでいた。リーナは当時二歳。このリーナがある日、両親に向かって、
「私には主人がいたんだけど、すごく悪い人で私のことを殺したのよ。」と言い始めた。最初は両親も祖母もびっくりしたが、テレビか漫画の影響だろうと思って聞き流しておいた。

ところがリーナは何度も何度も同じようなことを言う。それにリーナには変な癖があって、場所を移動するたびにあたりをきょろきょろ見まわすのだ。車に乗る時も周囲を見渡してから乗る。よくバルコニーに出てはあちこちを見渡している。その癖があまりにしょっちゅうなので、両親はリーナに「何かを探しているのかい?」と尋ねたところ
「主人がいないかどうか確認しているのよ。それから私の子供を探しているの。」と返事が返ってきた。主人がいたら、また殺されるかも知れないとでも思っているのだろうか。

更に毎日のように、主人に対する憎しみや、自分の子供がいかにかわいかったか、について両親に話し続けた。これだけ言われると、リーナが単に大人の口ぶりをマネしているだけとは思えない。両親は悩み、友達に相談したり、あるいは精神科の医者にみてもらった方がいいのだろうかとお互いに話しあったりしていた。

そんなある日、母親の友人がある情報を持ってきた。自分の知りあいで、リーナの話す家庭と良く似た境遇の家庭があるというのだ。娘を嫁にやったが、嫁いだ先で主人に殺され、両親は悲しみの日々を送っているという。

リーナの両親は、リーナを連れてその人たちに会ってみることにした。一番喜んだのはリーナで、行き先を教えずに連れてきたのだが、その家が近づくにつれてはしゃぎだし、道にも妙に詳しい。

その家に着くと真っ先にかけだし、出てきた老夫婦を指さして
「この人たちが私の両親です。」と、今の両親に向かって紹介した。

この老夫婦の言うこととリーナの言うことは全て合致した。これまでの発言は子供の空想ではなかったのだ。
殺人者である元の夫は妻殺しの罪で服役していたが、模範囚として10年で出所したらしい。それを聞いたリーナは「また殺される」とおびえた様子だったという。


輪廻転生に関しては科学的な仮説があって、人間の脳の中には記憶を司(つかさど)る物質があり、その物質にその人の記憶が記録されているのだという。この物質が、本人が死んだ時に脳内から放出され、大気中を漂(ただよ)った後その物質が母親の胎内にいる子供の脳や、すでに生存している子供の脳に入り込んで故人の記憶がよみがえる。
これがあたかも生まれ変わりのような現象を生じさせるというものだが、これはあくまで一つの説である。臨死体験者のコメントや催眠によって引き出された記憶の説明に関しては弱い面がある。


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