Top Page  心霊現象の小部屋  No.46  No.44


No.45 新妻の奇行

北陸から上京して、東京で就職した福田さんは、社会人となって10年目に、6度目の見合いで結婚することとなった。相手は福田さんより1歳年上の麻衣子さんという人だった。

麻衣子さんは見た感じ、すらっとした美人で、内向的な性格、そして三千万の持参金つき。何か条件が良すぎて会う前は不気味な感じがしたが、初めて会った時から、福田さんは一目惚れし、その日のうちに「麻衣子さんを幸せにします。」と宣言したのだった。

そして1ヵ月後、二人はほとんどデートをすることもなく結婚式を挙げた。麻衣子さんが「派手なことは恥ずかしい」ということで、式自体は身内だけで行なう小規模なものだった。

麻衣子さんの家は資産家で、二人の新居として麻衣子さんの両親はマンションを一つ買ってくれた。そこがこれから二人の家となるのだ。


新婚旅行で初夜を終え、麻衣子さんがシャワールームに行こうとした時のことだ。福田さんが後に続いて、一緒に入ろうとすると、突然「来ないで!」と麻衣子さんが怒ったように叫んだ。

これまでおとなしかった麻衣子さんからは想像も出来なかった態度にちょっと驚いたが、これも恥じらいの一つだろうと好意的に受け止めた福田さんは、ちょっと時間をおいて勝手にシャワールームへと入っていった。

中でシャワーを浴びている麻衣子さんに後ろから抱きつく。が、麻衣子さんが浴びていたのはお湯ではなく、水だった。「うわっ、冷たっ! これ、水じゃないか!」

びっくりして福田さんが聞くと麻衣子さんは、「ちょっと身体がほてってて・・。落ち着いたらベッドへ行くからちょっと待ってて。」と答えた。今は秋。とてもではないが暑いという気候ではない。


そしてそれから三ヵ月後。夜、寝ていると隣で麻衣子さんが起きだす気配がして目が覚めた。「トイレかな?」と思ってちょっと目を開けて見てみると、麻衣子さんが床を這(は)ったまま、ドアに向かっているのだ。

「麻衣子、どうしたんだ!?」と聞くと「ちょっとトイレに行くところよ。」という返事が帰ってきた。

だんだんと麻衣子さんの不審な行動が目につくようになった。料理でも、麻衣子さんは冷たいものしか食べない。また、足音もほとんど立てずに歩く。


そして更に別の夜、福田さんはまたもや隣で動く気配がして目が覚めた。見てみると、麻衣子さんが身体をくねらせながら、ベッドから床へ這い降りようとしていたのだ。

「麻衣子!何やってるんだ!」とびっくりして聞くと、麻衣子さんはヘビが鎌首を持ち上げるようにぐいっと顔をあげて、悲しそうな顔をして一筋涙をこぼした。

どうも行動が変だ。福田さんは次の日、麻衣子さんの両親の元へ出かけて話を聞いてみることにした。麻衣子さんの両親の話によると、麻衣子さんにはヘビの霊がとりついているというのだ。

「あの子は、以前OLをやっていた時にヘビにとりつかれたようなんです。突然生卵を飲み出したり、生魚の頭を食べるようになったり・・、体温も急に下がってしまって、ヘビのような動きをすることが増えてきたのです。

精神科のお医者さんに診てもらっても原因が分からないのです。そこで祈祷師の人に診てもらったら、何でも3代前の祖先が生霊の憑(つ)いたヘビを殺したとかで、その霊が子孫にとり憑くのだと言われました。」

奇異な行動の全てを霊に結びつけて考えるのもよくないが、麻衣子の動きは本当にヘビに似ている。祈祷師のいうことも頭っから否定は出来ないと思った。


両親は、どうか麻衣子を見捨てないでくれとしきりに頼む。福田さんもかわいそうになって、いったんは家に帰ることにした。

だがそれから何日かして、決定的なものを見てしまった。福田さんがゴミを捨てようとして、台所のゴミ袋を覗き込んだ時、その中に血まみれのハトの頭が捨ててあったのだ。ハトは、カッと目を見開いた状態で無造作に捨ててあった。そしてその周りには小さな骨が何本か散らばっていた。

「麻衣子が食べたのか・・?」
思わずゾッとした。ベランダにやってくるハトに、麻衣子さんがエサをやっていることは知っていたが、そのハトを捕まえて、生きたまま丸かじりにしていたとは・・。

福田さんはもう、怖くて麻衣子さんには近づけなくなってしまった。早々に別居し、両親には悪いと思いながらも離婚の方向へと踏み切った。