Top Page  心霊現象の小部屋  No.58  No.56


No.57 消えた着信履歴

西田雄二さん(仮名)の、会社の同僚である「松川さん」が、ある日突然交通事故で死亡してしまった。横断歩道を渡ろうとしていた時に車に跳ねられて、即死状態だった。
会社では一番仲の良かった友人であるだけに、西田さんもショックを受けた。通夜・葬儀、そして四十九日の法要も全部出席した。

四十九日を終えてしばらく経ったころ、ある日西田さんの携帯が鳴った。出ようと思って着信を見てびっくりした。先日亡くなった松川さんの携帯からだったからである。

番号も間違いない。名前も「松川携帯」と表示されている。しばらく出るのをためらったが、遺族の人が彼の携帯からかけているのかと思い、「この間の法要のお礼だろうか」と思いつつ、通話ボタンを押してみた。

だが携帯を耳に当ててみても「ツーツーツー」という音が聞こえるだけだ。切れてしまった。出るのが遅かったために、相手が切ってしまったのだろうか。


確かに生前、松川さんとは非常に仲がよく、毎日のようにお互いかけあっては仕事の話をしていた。だが、今、この携帯を使っているのは、多分遺族の人なのだろう。

悪いことをしたなと思いつつ、かけ直す度胸もなく、なんとなくそのままにしておいた。

だがそれから何日か経ったころ、またかかってきた。表示も「松川携帯」、番号も彼のものだ。今度はすぐに出てみた。しかしまた前回と同じ。「ツーツーツー」という音が聞こえるだけだ。また切れてしまった。

そしてそれから更にしばらく経ったころ、今度は西田さんがちょっと携帯を置きっぱなしにしていた時には「松川携帯」という着信が入っており、今回は留守録のマークが表示されていた。

何かメッセージが入っているのではないかと思い再生してみたが、無言のままで留守録は切れていた。3回もかかってくるとさすがに西田さんも気になり始め、今、彼の携帯を使っている人は誰なのかを調べようと、会社で松川さんの実家の住所を調べてもらった。


彼の実家に電話して携帯のことを聞くと、
「いえ・・携帯のことは知りませんが・・。今、その携帯を使ってる人はうちにはおりませんよ。」
という返事が返ってきた。

遺族の人が使っているのではなかった。では、一体誰が?

今度はNTTに行って聞いてみることにした。どうしてもつきとめないと気になってしかたがない。NTTで事情を話し、今この番号はすでに別の人が使っているのかどうかを聞いたところ、

「この番号は現在契約中止になってますから、誰も使っておりませんよ。通話不可能の状態です。」

という答えが返ってきた。
「いや、でも実際、私の携帯に3回もかかってきてるんです。もう一度調べてもらえませんか?」
と西田さんも反論したところ、

「では着信記録を見せていただけますか?」
というので、着信を表示させてみた。


だが、ない。彼の・・松川さんからの着信記録だけが消えている。他のどうでもいいものは残っているのに、彼からの着信だけが消えているのだ。

「そんなバカな・・。昨日までは確かにあったのに!消した覚えなんか全然ないのに!」

西田さんが驚いていると、担当の人が
「お客さま、ありませんか。」
と聞いてきた。

「はい・・。ないです。絶対消してないんですが、消えているんです。」

「よくあることなんですよ。」
と、担当の人が話を続けてきた。特に西田さんを不信がっている様子はない。

「大変申し上げにくいことですが、実際にこういった種類の話はよくあります。私どもの方にもこれまで何件かこういった報告が届いております。

こうした場合、どういう対応をしたらいいのか、どう言えばお客様に納得していただけるのか、私どもの方でもいつも悩んでおりまして・・。どうかあまり気にされませんように、としか言えないのです。

しばらく経ったら電話もなくなると思いますので、それまでご辛抱願えますでしょうか?いつまでも電話が続くようであれば、またご連絡下さい。」

という対応だった。西田さんの経験したことは、特に珍しいことではなかったのだ。