Top Page 心霊現象の小部屋 No.69 No.67
千葉県木更津市のある県道には、午前0時を過ぎると交通事故で亡くなった老婆の霊が出るという噂がある。 ある日の夜、午前1時を少しまわったころ、財津(ざいつ)輝明さんは奥さんを助手席に乗せ、この県道を走って自宅のある東京へと急いでいた。遊びに行った帰りだっのだが、すっかり遅くなってしまい、地元での噂も知らずこの道路を走っていたのだ。 「この辺って事故が多いのかしら。さっきから道路に花が供えてあったり、死亡事故多発っていう看板が出てたり・・。暗いから気をつけてね。」 と奥さんが言うと、 「なに、まだ眠いわけじゃないし、気をつけていれば大丈夫さ。」と財津さんも何気なく答えた。 この時、車の中でCDをかけて走っていたのだが、ある地点まで来た時、突然CDの音がだんだんと小さくなり、音楽が聞こえなくなってしまった。 「あれ?壊れたのかな?」 財津さんがボリュームをいじってみたが、代わりにピーとかザーという雑音が聞こえてくるだけで何も反応がない。今度は奥さんがいじってみたがやはり雑音が繰り返されるだけである。 しばらくするとその雑音もやみ、代わりに今度は「おぉぉ〜」「うぅぅぅ〜」という人の苦しむ声がスピーカーから聞こえ始めた。 「うわっなんだ、この声! ラジオか?!」 「ラジオじゃないわよ!これ、どこいじっても反応がないのよ!」 いつまでも続く人のうめき声に不気味さを感じ、財津さんが「おい、もう電源切れよ!」と奥さんに叫んだ。 「もう切ってるんだってば!」と奥さんも泣きそうな声で答えた。車内に人の苦しむ声が響き渡り、二人は背筋がぞくぞくしながらもその声を聞きつづけながら走っていた。 「あっ!」 突然運転していた財津さんが叫ぶ。奥さんが前方を見ると、車の前には一人の老婆が道路の真ん中に立っていた。 「危ない!」 「キャー!」 慌てて急ブレーキを踏むと、車はタイヤが音を鳴らしながら何とか止まった。人とぶつかったような衝撃はなかった。なんとか事故は避けられたらしい。 すぐにて二人とも外に降りてみたが、まわりには誰もいない。念のため車の下ものぞきこんでみたが、何もなかった。 「なんだったんだろう・・。確かにおばあさんが道の真ん中に立っていたと思ったんだが・・。」 「私も見たわ。絶対ぶつかると思ったんだけど・・。でも、誰もいない・・。」 状況がよく分からなかったが、とりあえず事故にはなっていないようなので、不思議に思いながらも二人は車に乗りこみ、再び発進した。 ちっょと走ると「あっ!」と再び財津さんは悲鳴をあげた。 「どうしたの?」 「ルームミラー・・。さっきのおばあさんが車の後ろに立ってる!」 奥さんがルームミラーの角度を変え、後ろを見てみると、そこには車が走っているにも関わらず、老婆が車の後ろに立っていた。立ったままの姿勢で走っている車にぴったりとついてくる。まるで道路の上をすべっているかのように、いくらスピードをだしても車の後ろの老婆は姿を消さない。 「さっきのお婆さん・・そんな!」 老婆は走っている様子ではない。いくら車を走らせても、「ただ後ろに立っている」のだ。 恐怖にかられた財津さんは一気にスピードを上げ、老婆を振り切ろうとした。しかし老婆は、まるで車のトランクに身体がくっついているかのいつまでもついてくる。 どれくらい走っただろうか。家に向かうためにこの県道を右に曲がり、少し走ったところでルームミラーを見ると老婆の姿は消えていた。 「いなくなったみたいだ・・。」 財津さんの一言で奥さんもほっとした様子だった。 「なんだったんだろう、今のは。幻覚・・? いや、お前も見たよな。」 「うん、確かに・・。でも見間違いだって思っておこうよ。」 「そうだな。その方がいい。もうこの件は話さないようにしよう。」 家に到着して、この一件は忘れようと思ってはいたが、財津さんは一応車の後ろを調べてみた。 「何だ、これ・・!」 車のトランクとバンパーには、人間のものと思われる長い白髪が大量にくっついていた。 |