だるま市とタコ天ツアー

 「旅は道連れ、世は情け」。体の調子がよくなると、また、旅へ駆り立てる虫が疼きだしてくる。家と学校の往復という日常性の中に埋没しているとストレスが溜まり、それからの脱却の手段として、非日常性の最たる旅が恋しくなるのである。新しい出会いはないかと、それも絶世の美女と隣り合わせの席にという淡い願いが叶わないかと。しかし、現実はというと、ラフな格好の髭面に寄って来るような美女はいなく、人の良さそうなおじさんかおばさん相手が関の山といったところである。でも、いろいろと相槌ちを打ちながら聞く話しも案外楽しいもので、時には「これ食べんね」と付録がついたりするから、こんなのもいいかなと思ってしまったりするのである。
 さて、この度の旅は10月頃から温めていた旅行プランで、ウィークエンド切符という格安なるものをチラシで拝見したからである。私の旅は基本的に青春切符を使って、というような1日乗り放題の鈍行列車の旅が多いのだが、これもご多分にもれず、柳井−尾道間1日乗り放題の格安切符を使っての旅である。ウィークエンド切符という名の通り、土・日だけに通用する切符である。2人以上の利用であることと、廿日市駅以東でないと切符の購入ができないというのがネックであるが、2人で3,600円(1人前1,800円)という格安値段というのは何といっても魅力である。ちなみに、柳井−廿日市間の片道で1人前930円、青春切符の1人前2,300円ということと比較しても、その格安感というのがうなずけるはずである。(初めは廿日市駅まで切符を購入しに行かないといけないが、次回からはこの旅行の折に買っておけば、柳井から自由に乗れる)
 そこで、もう1人の連れを誰にするか、そして、どこに行くかということになるのだが、連れは息子か娘にするとして、どこに行くかは昨年行きそびれた三原の「だるま市」にすることにした。ターゲットは、2月の第2土曜である。それまでには何としても体調を整えておかなっくてはいけない。肝機能の検査はこまめにしてきたが、数値が上がったり下がったりするのが少々気掛かりで、あとは正月をうまく乗り切って、風邪に注意するだけ。そう思い続けて2月を迎えた。
 2月に入ると、三原の「だるま市」を中心に据えて、後はそれに付随してどこを巡るかも決定し、最終プランを作成しなくてはならない。そして、連れをだれにするのかも。10月当初は竹原に行き、呉線巡りをと考えていたのだが、大学時代の友人からの欠礼はがきに、亡父の遺作展を1月11日から2月11日まで尾道で行うとの案内があったことと、連れを最終的に娘にしたことにより、映画の舞台にもなった尾道まで今回は足を伸ばすことにした。

  最終プランは次の通りである。

 1.目 的

  @ わが家の家内安全と3年生の学業成就を願い、だるま市にて願掛けだ
   るまを購入する。

  A 三原名物のタコ天を、人目もはばからずがぶりと豪快に頬張って食べ
   ることにより、日頃の生活では味わえない地ダコの味を堪能する。

  B 文学のふるさと尾道を訪れ、林芙美子をはじめ、数々の作家たちの
   生き様に触れるとともに、友人の亡父の遺作展(絵画)を鑑賞し、命
   の洗濯をする。

  C 「旅の恥はかき捨て」ではなく「旅は道連れ、世は情け」の精神で、
   旅先で出会った人々との一期一会を大切にする。

  D フル1日使った旅行を通して娘とのふれあいを深める。

 2.期 日 2月8日(第2土曜日)

 3.行 程 柳井(7:38) − 廿日市(8:41)ウィークエンド切符購入
      (9:06) − 尾道(10:41)千光寺などの寺巡りと文学記念室
       見学、文学のこみち散策、遺作展鑑賞、瀬戸内地魚料理の昼
       食(13:57) − 三原(14:10)だるま市見学とだるま
       購入,タコ天の一気喰い(16:12) − 岩国(18:06)
       乗換(18:14)− 柳井(18:51)

 4.参加者 私と次女

 5.服装等 少々の汚れは気にならないようなラフな服装と少々の歩きに耐
       えられ
ような運動靴(できればウォーキングシューズ)

 6.持参物 おやつ,るるぶ広島,本(教科書が教えない歴史U),カメラ

 7.経 費 電車代              5,460円

       ロープウェイ代            540円

       食事代(ジュース等を含む)    5,000円

       タコ天代               500円

       入場料              1,500円

       だるま代             2,000円

       土産代              3,000円

       予備費              2,000円

       合計を20,000円(1人前10,000円)に抑える

 さて、当日気になるのはやはり天候と体調である。天候の方は日頃の行いがいいせいか、絶好の旅日和となり、歩くにはやや汗ばむぐらいの天候であった。体調はといえば、娘の方が風邪気味なのが気に掛かったが、娘もタコ天を喰うという食い気が勝り、鼻をグズグズいわせながらついてきた。
 今回は娘と一緒の道中のため、電車ではこちらから他の人には話しかけないで、もっぱら親子のふれあいを主にしたため、2人でたわいのないことをベラベラ話しながらの旅となった。丁度大和中の教え子と同級ということもあってか、行きはその話題が中心であった。Kさんがねとか、Oさんがねとか、中学生時代の彼女らの姿を彷彿とさせる話しに時を忘れるようであった。帰りには娘の方は、疲れとチョット風邪気味のせいもあってか、眠りこけていたが、私の方は、以前読んだ「教科書が教えない歴史」の続編である「教科書が教えない歴史U」をこの際一気に読破してしまった。一昨年読んだ三浦綾子著の「銃口」は、戦中の教師を扱った小説ということもあってか、涙なしには先に読み進め得なかったが、この本は前作同様に、「誰の立場に立って、今のこの時期に・・・」と、執筆者への怒りなしには先に読み進め得ないような代物であった。木を見て森を見ない手法で、しかも読みやすく万人受けをするような口調で簡潔に綴ってあるだけに非常にタチが悪い。一度「銃口」と「教科書が教えない歴史」を読み比べたらいかがなものかとも思う。このように、鈍行列車に乗ると時間に余裕がでてくるため、日頃読めない本も誰に邪魔されることなく読めるというもう一つのメリットがある。だから、私はこんな旅にこだわるのである。
 ツアーの本題である「だるま市とタコ天」であるが、あれこれと取り留めもなく書き綴ったため紙面が少なくなってしまった。紙面の都合で「百聞は一見(味)にしかず」としておこう。来春自分の目と舌で確かめてはいかがですか。