『ちょっと実家に帰ってくる』

そんな短い一言だけを残し、アニキがいなくなってから2週間になる。
その間、何の連絡もない……
このまま帰って来ないなんて事はないと思うけど、なんや不安になったわいは
アニキの住む九州にやってきた。
やってきたのはええけど、アニキって九州の何処出身やったっけ?
とりあえず『鹿児島』っちゅうとこに来てみたけどなんや違う気ぃもするなぁ……

―鹿児島・桜島―

なんや、あの島……いや違うか、山か……煙吐いてるけど大丈夫なんやろか?
しかも、こんな繁華街に近い所やというのに……
まさか、龍脈の活動が活発になって火山が爆発するとかいうちゃうやろな。
こりゃあ、確かめとかなあかんな。

近くまで来たはええけど、なんやこの灰。
傘でもささんと全身真っ白になるやないか!
そういえば街中でも埃かぶって走っとる車が仰山おったけど、
あれって灰やったんやな、やっと納得いったわ。

そういえば、アニキに何のお土産も買ってないなぁ。
何かえぇ土産ってあるやろか?
ん……?
あったあった、あれがいいわ。
これやったらアニキも喜ぶやろ、よっしゃこれに決めたで!

それにしても、アニキの家はどこなんやろ?

―宮崎・鬼の洗濯岩―

この鬼の洗濯岩ってなんやろ?
今更、鬼道衆って訳でもないやろうし……
まさかっ、ここに残党が潜伏しとるっちゅうのか?
ここは、確かめにいかなあかんな。

う〜ん、どうも違うようやな……
これってただの海岸線だよなぁ。
ここと、鬼道衆が関係あるとは思えへんなぁ。
やっぱり、わいの勘違いか。
まぁ勘違いに越した事はないんやけどな。

ほな、次行こか。
その前にお土産も忘れんようにせんとな。

―大分・湯布院―

何々、この町には温泉があるんか?
そりゃあ、入っていかなあかんやろ。
せっかく来たのに入らんかったらバチがあたるわ。

ふ〜、気持ちえぇわ〜。
温泉ってこないに気持ちのえぇものやったんやな。
今まで知らんかったわ。
それに景色もいいし、最高やな。

あかん、こんな事してる場合やなかった。
早うアニキの家探さなあかんかった。
次はどこ探そうかなぁ。
……とその前にお土産やな、うん。

―熊本県・黒川温泉―

ふ〜ん、この町にも温泉があるんやな。
入湯手形?何やそれ?
えっ、それがあると3つの温泉にお得に入れるんか?
そやったら買っとかな損やろ。

やっぱり、気持ちえぇなあ、温泉は。
さっきの所も良かったけど、こっちも捨て難いなぁ。
静かな山間の温泉ちゅうのがまたえぇわ。
せっかく手形を買うたんやから3つ入って帰らなもったいないしな。
次は何処の温泉に入ろっかなぁ……

しもうたぁ……また道草くうてしまった。
早くアニキの所にいかなあかんのに……
こんな事しとる場合ちゃうな、次行ってみよか。
……その前に勿論土産は買うけどな。

―長崎・新地中華街―

懐かしい町並みやな。
なんや、田舎に帰って来た気ぃするなぁ。
…あ、あかん。涙でそうになったわ。
こういうのをホームシックいうんやろか?
こんなときは何か食べて気を紛らわせんとな。
どの店に入るろっかなぁ?

ここ、中華料理の店やったはず……
それやのに、聞いた事のない料理がある。
まぁいいや、それ食べてみようかな。

さっきの料理美味かったなぁ。
よっしゃ、これをアニキの土産にしちゃろ。
……って、何処まで行ったらアニキに会えるんやろか?

―佐賀・呼子―

あんなところにクジラがおる。
きっと港に近付き過ぎて海に帰れなくなったんやな。
よっしゃ、ここはわいが一肌脱いでやろうやないか!

・・・・・・・あれ?これクジラちゃうわ。
何々、『海中展望船』?
それが何でクジラの形してるんや?
しかも、ピンク色したのまであるし……
まぁ、深く考えてもしゃあないな。

それよりもアニキや。
ホンマ何処におるんやろうなぁ。
ん?・・・・あそこにこの町の名物が売っとるんか。
名物やったら買っていかんといけんな、うん。

―福岡・緋勇龍麻 自宅―

ここかな?
『緋勇総合病院』って書いてある……
実家が病院やて言うとったからまず間違いないとは思うんやけど。
まぁ、考えとってもしゃあないな。
とりあえず行ってみんとな。

な、何でこんな事になったんやろ?
ここは間違いなくアニキの家やったんやけど肝心のアニキはわいと入れ違いに
東京へと帰ってしまったらしい。
それやったらわいもすぐに帰ろう思うたのにアニキの両親から何故か引きとめられた。
何でもアニキの東京での生活ぶりを聞きたいらしい。
そんな事、直接アニキに聞けばええやん……と思ってはみたものの
強引なところはアニキそっくりで――さすがはアニキと家族なだけある――
抵抗と言う抵抗もできないままわいはしばらくの間アニキの実家で過ごす事になってしまった。
一体、いつになったらアニキに会えるんやろか?

わいが東京に帰りついたのはそれから3日後の事。
九州で仕入れたお土産を持ってアニキに会いに行ったのはその翌日の事になる……

 

>>あとがき<<

健露さまより『劉ちゃんを九州のどこかへ旅行に連れて行って下さい』とのリクエストを受けた
800HITキリ番SSです。
それなのに、何処かではなく九州全県回ってますけど……(苦笑)
一応、各県の中で観光地と呼べる場所をピックアップして旅をさせてみました。
管理人も旅好きのため書いていて楽しかったお話でした。

そのくせに、またしても駄文で申し訳ありませんがこの作品を健露さまに捧げさせていただきます。

  

※九州に詳しくない方のため各地の簡単な説明をしてみました。
〈 〉の中は劉ちゃんの買ったお土産です。
管理人がその地に行くと必ずと言っていいくらいに買って帰る品物です。
賞味期限のある物は一体どうしたんだろう?ってツッコミはナシでお願いします。
桜島: 錦江湾を隔てて鹿児島市街の対岸4?にあり、大正3年(1914)の大噴火で大隅半島と陸続きになった。
北岳・中岳・南岳が並び、南岳は現在も活動中で断続的に噴煙をあげています。
    〈お土産―さつまあげ〉
鬼の洗濯板: 青島から南の海岸線に数キロにもわたって見られる、幅の広い階段を水平に伸ばしたような
規則正しい岩の列は自然の造形の不思議さをみせてくれます。
    〈おみやげ―チーズ饅頭〉
湯布院: 周りを1000m以上の山々に囲まれた湯布院は、素朴な雰囲気と都会の香がマッチしている。
よく晴れた秋の朝には、神秘的な朝霧を見ることができる。
温泉地なのだがモクモクとした湯煙も歓楽街も見当たらず、素晴しい自然と町並みを楽しめます。
    〈かぼすドレッシング〉
黒川温泉: 美しいせせらぎと山ふところに抱かれた閑静な山峡の秘湯。
先には提灯がゆれ水車がまわり、山里の風情を醸しだしています。
『入湯手形』は小国杉に焼き印を押した黒川名物。
この手形があれば黒川の露天風呂が3ケ所楽しめます(期間は6ケ月)
    〈銘酒・蓬莱〉
新地中華街: 日本三大中華街のひとつ。鮮やかな中国様式の門が印象的。
長崎の姉妹都市である福建省の協力を得た本格的な中華門や石畳の復元など文化的にも意義がある町。
この一角の東西南北に極彩色の楼門が建っています。
    〈カステラ〉
呼子: 海岸部は、玄海国定公園に指定され、対馬暖流の流れるこの近海の水中景観はすばらしく海中公園に
指定されている地区もあります。クジラ型の『海中展望船』はちゃんと実在します。
    〈いかしゅうまい〉

健 露より

す、素晴らしい観光ガイド(笑)。
それぞれの地域(観光地)の特徴までまとめていただけるとは!!
私自身も旅行好きなので、このようなリクエストをさせていただいたのですが。
九州1周されているとは、思いも寄りませんでした………………ι

ちなみに、私も九州1周、家族旅行でドライブ(!!)ですが、したことがあるんですよ♪
その時は、福岡から佐賀、長崎、……と時計回りにまわったのですが、
最後は大分からフェリーで徳山(山口県)に帰りましたっけ……。

黒川温泉、行ってみたい行ってみたいと思いつつまだなのですが。
来年こそは!!(大笑)

偲様、ほんとうにありがとうございました☆


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