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「レンタヒーロー」を直訳すれば、「賃貸英雄」である。 コンバットアーマーをレンタルするセカは、世界幸福を願う、夢のハイテク企業である。 レンタヒーローは、世のため、人のため、超人アルバイターとして働くのだ!! |
システム
移動は、トップビューで、戦闘画面では、サイドビュー・アクションとなる。 変身するためのコンバットアーマーは、お金を払ってレンタルし、電池がエネルギー源になる。 |
経験値の概念はなく、開発費を寄付することにより、アーマーや武器をパワーアップしていく。 |
レビュー
このゲームの面白みは何かと問われれば、『バカ』の一言に尽きます。
その『バカ』の徹底ぶりも見事なものです。
ゲーム内容はもちろんのこと、パッケージから取説に至るまで、懇切丁寧に『バカ』です。
これは狙っているというより、「こういうノリで作られた」と言ったほうが正しいでしょう。
このノリに着いていけない人は、ダメかもしれませんが、そうでない人は、最初の内こそギャグが鼻につくかもしれませんが、ゲーム中盤ともなれば、知らず知らずの内に、このB級脱力ギャグの虜になっていることでしょう。
ですが、ただバカで終わるなら、それだけのゲームだったでしょう。
しかーし、そうではありません。
一本道で、与えられた仕事をこなすだけの『お使い』ゲームではありますが、そのシナリオが絶品です。
シナリオの一部を挙げてみますと、
ラブレター配達、出前、デパートの屋上のヒーローショー出演、銀行強盗退治、地上げ屋撃退、正体不明ロボットの破壊、潜入捜査、痴話喧嘩の仲裁などなど・・・
他のゲームでは、なかなかお目にかかれないバラエティに富んだ内容となっています。
笑いあり、涙あり、そして、原寸大のヒーローという設定だからこそできた、人情味あふれる小市民的シナリオもいいです。
序盤は、ツライかもしれませんが、中盤からお話は徐々に盛り上がっていき、終盤は激燃えです。
最初は成り行きでなったヒーローだけど、チンピラに絡まれてた女性を助けて、ちょっとしたヒーロー気分で「まんざらでもないな」と思ってたら、子供たちにウンチを踏まされるは、ラブレターの配達で地獄のタライ回しに合うわ、出前の手伝いまでさせられて、
これって、ただの便利屋なのでは?・・・
とか思うんだけど、仕事や事件を解決していくうちに、少しずつ有名になって、プレイヤーも主人公も、いつの間にやら本物のヒーローになっていることに気づく。
そしてラストでは、
オレがやらねば、誰がやる!!
というまでの勢いになっています。
これは、シナリオのよさや、経験値を排除した事などもあるでしょうが、男の子なら誰でも持っていたであろうヒーロー願望を叶えつつも、「世の中そんなに甘くない」と、現実世界の厳しさ、扱いを「ヒーローであるはずの」主人公に突き付け、「お前も苦労してるなぁ」とプレイヤーに『同情』念を抱かせることで、主人公とプレイヤーのシンクロ率を極限にまで引き上げることに成功しているからでしょう。
そして、シナリオのみならず、登場するキャラ、アイテムのほとんどが何かしらのパロディだったり、現実世界の日常に潜んでいる、よく考えるとバカだなぁ〜ってことを、面白おかしくプレイヤーに再認識させてくれるところも、このゲームのツボです。
1つ1つの家にトイレや台所、風呂なんかもちゃんと再現されているのも、こだわりというか、芸の細かい事ですね。
その辺の「プレイヤーと主人公の目線の一致」というのも、このゲームへの感情移入を助けている要因の1つでしょう。
ファンタジーRPGなどでは、独自の世界観がありますから、設定されていない細部は、空白やあいまいな想像でまかなう訳ですが、こういう現代を舞台とした物では、少々説明不足な部分があっても、現実世界がそれを補ってくれるのですから、これほど詳しい設定資料はありますまい。
他にこのゲームで重要な物といえば、「お金」の存在でしょうか。
コンバットアーマーをレンタルするのもお金がいる。
支払い期限中にレンタル料を払えないと、アーマーは使えなくなっちゃいますし、エネルギー源である電池も、自分で買わなくちゃならない。
体力回復のドリンク剤を買うにも、お金。
武器や、アーマーのパワーアップにも、お金、お金。
やられて病院で目が覚めると、お金が半分に減っている!
この世は、カネがすべてかーっ!!
と、叫びたくなりますが、実際その通りなんです。
ま、普通にやってれば、お金に苦労する事はないと思いますけどね。
とはいえ、このゲームでは、人情話のシナリオの方が心に残りますから、このゲームをやって、世の中カネが全てだなんて思う人はいないしょうね。
まぁこれも、このゲームのノリである、一種の風刺であり、パロディなんでしょうね(妙な解釈でお茶を濁してしまいました・・・)
ドリームキャストでリメイクされていますが、そちらは未プレイ。
でも見た感じ、なんか絵が濃い感じがするので、のほほんとしたこのゲームには、メガドラ版の方があっているような気がします。
ドリームライブラリで配信されているらしいので、興味のあるかたは、プレイしてみてください。
「レンタヒーローNo1」(ドリームキャスト)
「戦え!!北出マン」(Windows)