その1
『VS 長森瑞佳』
そうだな感謝を込めて…。
「デートにでも誘ってやろうか?」
「え、えぇ〜っ…」
「ん?」
「そ、そんなぁっ、まずいと思うよそれはぁっ…」
「どうして?」
「ほらぁ、体裁悪いっていうかっ…。
わたしのこと好きなコとか、勘違いしてショック受けちゃうよっ…」
「長森…実はオレのこと嫌いだろ?」
『VS 七瀬留美』
う〜ん…オレは知らぬ間にクラスの男連中の多くを敵に回していたってことか…。
しばらくは七瀬と距離を置くか…。
しかし、相当険悪にでもならない限り、わかりづらいだろうな…。
険悪…。
うーん…。
何を話しかけられても、同じ言葉を答え続けるのはどうだろう。
「あ、折原……。ねぇ、瑞佳、なにか言ってた?」
「デカルチャー」
「ゼン○ラン?」
うわっ、あっさり返された。
『VS 里村茜』
細い道を抜けると、そこは…。
「……」
「…どこですか、ここ」
ぽそりと呟く茜。
「どこだと思う?」
「…学校に見えます」
「オレも学校に見える」
「…少なくとも、たい焼き屋さんには見えません」
「オレも見えない」
「……」
「偶然にも学校への近道を発見するとは…ついてるなオレたち」
「……」
無言でオレの顔を見上げる茜。
明らかに非難の顔だった。
「残念だけど、たい焼き屋はあきらめるしかないな」
「うぐぅ…たい焼き…」
なんとなく、その言葉だけは言ってはならなかった気がするんだが…。
『VS 川奈みさき』
「…そう言えば、ちょうど引き分けだよね」
突然そんなことを言う。
「引き分け…? 何が…?」
「屋上にどっちが早く来るか、だよ。
昨日が浩平君で、今日が私。ちょうど引き分けだよ」
「まあ、確かにな」
一勝一敗ってことか…。
「それなら、明日どっちが先に屋上に来るか勝負だね」
「勝負?」
「うん、勝負だよ」
「…わかった。その勝負受けよう」
「うん」
「ただしッ!
この折原浩平にッ、精神的動揺によるミスは無いと思っていただこうッ!」
ドギャァァァンッ!
「……」
無言の先輩。
やっぱり…ジョジョネタは通じないか…。
『VS 上月澪』
「自己紹介もできないね」
「……」
…ふるふる。
先輩の言葉に首を横に振る女の子。
そして、ずっと持っていたスケッチブックを取り出す。
ページをめくり、黒のサインペンで何かを書いているようだった。
「……」
女の子は、ニコッと笑ってそれをオレに向ける。
スケッチブックのページをいっぱいに使って、文字が書かれていた。
なになに…。
「ハロハロ〜、わたしミオ!
ちょこっとドジな高校一年生! みんな、よろぴくね♪」
「……」
ぶんっぶんっ!
「…浩平君、その子が全力で否定してるの、私でもわかるよ?」
…でも、なんとなーく、間違ってはいない気はするんだけどな。
『VS 椎名繭』
「なにしてるの?」
長森が優しく聞く。
「そいつの墓か…?」
オレはマフラーに包まれて横たわる一匹の小動物を見つけて、そう訊く。
こくり、その子が頷いた。
「死んじゃったんだ、可哀想にね…」
どれだけ時間をかけて掘ったのだろうか?
だが、服の汚れの割には、まだ穴は浅かった。
「しゃあない、手伝ってやるか。貸しな」
スコップを受け取り、しゃかしゃかと地面を掘るオレ。
やがて、十分な深さの穴が掘れた。
穴の中に小動物を横たえるとき、ふとその白い毛並みが見える。
その小動物は、イタチを細長くしたような姿だった。
「フェレットね。名前は…?」
「…ノロイ」
ガ、ガ○バの冒険!?
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