《今週の金田一さん》感想一覧・番外編〜♪ |
◇番外編!由利先生の事件簿C◇ |
悪魔の設計図(石膏美人・獣人) |
またまた由利先生ものです。表題作は『悪魔の設計図』(「富士」昭和13年6〜7月)。 信州の湖畔に静養にやってきた三津木俊助。芝居見物に出かけたのはよいが、なんとその舞台で殺人事件が。心を残しつつ東京に帰った俊助だったが、関係者である黒川弁護士に事件を依頼された由利先生から連絡を受ける。 いや、金持ちのじいさんの、相変わらずの身勝手と独り善がりぶりには参ってしまいます(^_^;)金が絡むから、人も思い切り悪くなってしまうしね。サスペンスフルな展開(なぜか小娘が活躍するという、横溝センセの大好きな展開 笑)、と異常な執念深さと怨念のダブルパンチ(な、なんでここまで…^^;)が思い切り楽しめる一品です。 お次は『石膏美人』(「講談倶楽部」昭和11年5〜6月)、短めの長編ですね。 敏腕記者三津木俊助の乗った自動車に、ぶつかってきたトラックには奇妙なものが積み込んであった。白木の箱に入れられた石膏人形なのだ。トラックにのっているのは不気味なせむし男。そのせむし男がはみ出した人形の腕をぽきんと折ったその瞬間、「あ、痛ッ!」という叫び声が。空耳か…?気になる三津木はやがてある殺人事件を目撃することに。 三津木が目撃する殺人現場は、なんと三津木の恋人、瞳の自宅の裏の空家。その空家は瞳の父、一柳博士の親友藤巻の持ち家だったのです。大事な恋人瞳の父親やその友人と、奇怪な殺人事件はどう関わってくるのか?いや〜、三津木俊助って何歳くらいなのかしら?と常々思っていたのですが、結構楽しい恋愛生活を楽しんでおられたのですね…と言いつつ、どうも恋人同士って感じがしない二人でした(笑)しかし、この作品、少々間が間延びしている感じはあるのですが、ラストに向かって凄い盛り上がりを見せます〜。ちょっと思いもかけない秘密が暴露されたりして、めっちゃ悲しい展開になってしまうのがちょっと意外だったり(T_T)三津木の事件との関係も、ううむなるほど!という感じでした。大変、面白ろうございました……。 最後は短い作品『獣人』(「講談倶楽部」昭和10年9月)。これは珍しいのではないでしょうか?若き日の由利麟太郎青年の事件です。 バラバラ死体ばら撒き事件が勃発。その一片を発見した由利麟太郎は、怪しい学者の住む家に連れ込まれた珠枝を助けることになる。その屋敷には何か、不気味なものが住んでいるらしい気配が…。 いや、気色悪いです(^_^;)想像するとちょっと笑えるのですが。最後にすごい尤もらしい話が出てくるところがまた面白い。ううーん、「金色の液体」っていったい何だったんだ!それにあの「鎧」は一体何のために着ていたんだ?!設定の面白さに幻惑されつつ、ちょっと意味の分からない話でした。でもま、若き日の由利センセに出会えたので大満足〜♪ |
◇番外編!由利先生の事件簿B◇ |
双仮面(鸚鵡を飼う女・盲目の犬) |
今回は番外編で由利先生にご登場いただきます。まずは表題作『双仮面』(「キング」昭和13年7〜12月)です。 日本一の造船成金雨宮万造が喜寿のお祝いに自ら作らせた、黄金作りのスクーナー。船首にちりばめられたダイヤモンドはなんと時価五万円!万造はもう、心配で心配でたまらない。というのも、近頃はやりの「風流騎士」なる盗賊から、一輪の薔薇が届けられたからなのだ。はたして、喜寿の祝いのその当日、「風流騎士」はやってきた。等々力警部の厳重な警戒も何のその、雨宮の甥恭介に成りすました風流騎士は、まんまとダイヤモンドを盗んだだけでなく、雨宮を刺し殺して去ったのだった。雨宮の末期の言葉は「俺を殺したのは・・・柚木薔薇」 も〜、脱力するしかない面白さ(^_^;)すごくバラエティに富んだ内容で、登場人物も面白すぎ。何のために中央アジアにあるさる小国の王族であるアリ殿下、なんつうキャラを登場させないといけなかったのか全然理解できない(爆)何者やねん、こいつ。ま、面白いからいいんだけど。いや〜、メロドラマチックな展開がなんともいえず楽しかった。最後はなんでか悲劇で締めくくり。力技ですな〜(^_^;)ちょっと物悲しい重厚な感じを与えたかったのかな?無理だってば(爆)犯人が何であんな邪悪な性格になったのかが、全然わからなかった。生まれつき?由利先生もあまり活躍してないし、等々力警部に至っては・・・。てなわけで、へなへな気分で次へ。 他は短編二つ。『鸚鵡を飼う女』(「キング増刊」昭和12年4月)はおなじみ三津木俊助もの。寂しい坂を上り詰めた俊助は、奇妙な光景に出くわす。異様な風体の男の正体は一体?と考えるまもなく、凄惨な殺人現場に案内されることに。 むむむ、「百足団」って・・・(^_^;)おいおい〜、と思っていたら、犯人は全然意外じゃないじゃん!しかも最後はなんだか感動の大作(?)って感じになっちゃって、どうしたら良いんだか(爆)しかし、こんなまわりくどい事するかねえ。 もう一つは『盲目の犬』(「キング増刊」昭和14年4月)。楽しいクリスマスの宴の席にやってきたのは、なんだか気色のわるい男だった。殺人を予言して帰っていった男の正体はなんなんだ?本当に殺人は起こるのか?どうにも気にかかる由利先生は、男を追けてみることに。ところが思いもかけない凄惨な現場に案内されることとなる。 う〜ん、ろくでもない男が起こした、チョ〜怖い犯罪。盲しいた犬こそ、いい面の皮ってかんじで。しかし、あまりにろくでもない男が登場するんで、誰が一番ろくでもないのか、分からなくなってしまったぞ(^_^;)やっぱ、可哀相なのは犬だよね。 というわけで、超B級作品ばかりでした。アタシ的にはB級作品は嫌いじゃないので、けっこう楽しめたけど。やっぱり、脱力ものだよね〜(^_^;)特に表題作は、つぎはぎだらけって感じで完全に破綻してますな(^^)ま、面白かったんで良いけど♪ |
◇番外編!由利先生の事件簿A◇ |
幻の女(カルメンの死・猿と死美人) |
今回はまたまた番外編。由利先生ものを二つと、三津木俊助ものを一つ。 表題作は『幻の女』(「富士」昭和12年1月〜4月)。アメリカ帰りのジャズ歌手、八重樫麗子の泊まっているホテルに、怪しげ二人組みがやってきた。小柄な、抜けるように色の白い青年と、かれが「アリ」と呼ぶ大男。麗子の部屋に忍び込んだ二人が、ある手紙のことで彼女を脅している最中にやってきたのは、新聞記者三津木俊助だった。とっさに麗子に化けた青年によって体よく追い払われた俊助は、貴族院議員樅山子爵が麗子の部屋を探しているのを見かける。やがて、「人殺し!」の叫び声がホテルに響き渡った。殺された麗子ののこしたダイイングメッセージは「まぼろしの女」。これこそ、俊助が追跡している殺人鬼なのだが、麗子や麗子を脅していた二人組み…彼らと「幻の女」とは一体どんな関係があるのだろうか? 「幻の女」の正体や如何に?サンフランシスコから帰国したばかりで、いまいち前身のはっきりしない麗子がやっぱり怪しい…んだけど、麗子は殺されちゃったし…青年に化けてホテルにもぐりこんだ怪少女(?!)と大男アリの存在も気になるし(彼らが麗子を殺したのだろうか?)…錯綜する謎のかたわらで、物語は涙アリ、活劇アリ、なんでもアリ(笑)の様相を呈してくる。けっこう楽しく、かつ感動的なストーリーだが、一体「幻の女」はなんで殺人鬼になってしまったのかなあ〜?そ、それに昔ってほんとうに行方不明になった娘がサーカスに売られてた、なんてことがあったんだろうか(ーー;)ラストは妙に物悲しいのであった。 次は『カルメンの死』(「講談倶楽部」昭和25年1月〜3月)。海外で広く活躍し「カルメン」を得意とするソプラノ歌手、峯八千代の死体が発見されたのは、劇団員の豊彦と早苗の結婚式でのことである。豊彦を早苗に譲る形になってしまった八千代は、お祝いに大きな箱を運ばせていたが、それを開けてみるとなんと!八千代がウエディングドレス姿の刺殺体となって詰め込まれていたのだ。結婚式に呼ばれていた由利先生は、早苗の不審な行動に目をつけるが。 いや〜、この世で怖いものというとやっぱり年増の深情け?!…「カルメン」という情熱的な舞台さながらに、愛憎のもつれは死を招くのであった。まあ、邪魔者がいなくなって若い二人は幸せになれるかもしれないから、これはこれでメデタシかも(^_^;) 『猿と死美人』(「キング」昭和13年2月)は、三津木俊助が探偵役を。闇の中にリーン…異様な鈴の音を響かせながら大きな箱が川を下っていた。箱といってもただの箱ではない。なんとそれは「檻」だったのだ。檻の中には意識を失った長襦袢すがたの美女が、そして檻のうえには鎖につながれた猿が一匹。この不気味な代物が流れ出したと思われる屋敷内では、たくさんの猿に囲まれて、男が殺されていた。 もうちょっと、犯人の心情に沿った物語にしたほうが、納得しやすいものになったと思うけどな〜。哀れな存在として描けば、もっと話も膨らんだような気がするんだけど。不気味な趣向だけに気をとられて、そこらへんが練れてないのが残念! |
◇番外編!由利先生の事件簿@◇ |
蝶々殺人事件(蜘蛛と百合・薔薇と鬱金香) |
今回は番外編。横溝作品には金田一以外にも探偵が出てくるらしいけど、その中でも長編だけで6作品に登場するのが白髪ジジイこと「由利先生(由利麟太郎)」なのだ。かつて警視庁の捜査課長をしていたという由利先生は、よき協力者としてこころよく警察に受け入れられていたらしい。というわけで、今回は表題作の長編『蝶々殺人事件』(「ロック」昭和21年5月〜22年4月)と短編を二つ。 昭和十二年の秋、「世界的ソプラノ」「世界的蝶々夫人(マダム・バタフライ)」などと呼ばれたオペラ歌手、原さくらが死んだ。大阪での公演を控え、東京から列車で移動したはずのさくらが姿を消して数時間後、歌劇団の荷物の一つ、コントラバスのケースの中から撲殺死体となって発見されたのだ。コントラバスケースが運び出された大阪のあるアパートの一室が殺人現場かと思われたが、そのアパートへ重たいトランクが運び込まれた事実が発覚する。殺人現場は大阪か東京か?奇妙な暗号文まで飛び交う中、やがてさくらのマネージャー助手が殺され、事件は連続殺人へと発展する。 新聞記者、三津木俊助が、初めて挑戦する探偵小説の題材となったのが、この「蝶々殺人事件」。三津木の関わった部分以外はさくらのマネージャー土屋の日記を借用するという形でまとめられている。由利先生はさくらの夫の依頼でこの事件にかかわることになる。 昭和十二年に起きた事件という設定だが、不思議なほど古めかしくない。現代にもってきても十分通用しそうな、丹念な作りの作品だ。トランクとコントラバスケースによる死体搬送のトリックに気をとられてしまうと、それが作者の思う壺。実はもっと根本的なトリックがあったのだあ〜(あっ、ネタバレすれすれ)やや動機が弱いような気もするが、被害者の性格がいろいろな意味で深く関係するこの犯罪の構成を考えると、その意味でも見事な出来栄えであるといえる。 『蜘蛛と百合』(「モダン日本」昭和8年7〜8月)。 三津木俊助の美貌の友人瓜生朝二。彼はいま、君島百合枝という女性に心を奪われていた。その女に関わった男の二人までが不審な死に方をしたという話を聞き、友人の身を案じる三津木の目前で、瓜生は殺された。真相を探るうち、三津木は百合枝の妖しい魅力の虜となっていく。 伊馬という少女の扱いがあんまりだと思うけど、全体的には蜘蛛の持つ不気味さを漂わせた印象的な作品に仕上がっている。蜘蛛の影や鎖の音などの小道具の使い方もいい感じ。何で犯人がこんなことをしたがるのかがよく分からないが、あのラストには参った!凄すぎる。 『薔薇と鬱金香』(「週間朝日」昭和8年8月)。 東都劇場の開場式、選ばれた人々が観劇を楽しんでいた。鬱金香夫人弓子もその一人だったが、ある老紳士の顔を見て激しく動揺する。ちょうどそのとき、劇場で火事が発生し、弓子はその老紳士に助けられる。弓子はなにに怯えたのか…弓子の前夫は薔薇郎と呼ばれた歌手に殺されたのだが、そのことが何か関係があるのだろうか。 短い作品だが中身は濃い〜。醒めた目で読めば、んな馬鹿な〜^_^;みたいな感じだけど、この世界にはどっぷり浸った方が得策。金田一ものに『蝋美人』という類似作品があるが、私はこっちの方が好き。 |