ジャンル別・恋愛

「眠れる美女のあやまち」 ジュード・デヴロー ヴィレッジブックス

私が密かに最強の恋愛本だと思っている「時のかなたの恋人」の作者、ジュード・デヴローの本をネットで見つけたので早速読んでみました。最近読書からすっかり遠ざかっていたけれど、今年はせめて月一冊ペースで読書をするぞと誓い、この作品は本当に久し振りにハマって時の経つのを忘れて読み耽りました〜。

Story:二十世紀初頭のカリフォルニア、広大なホップ農場主の一人娘アマンダは、14歳の時から厳格な家庭教師であり婚約者でもあるテイラーの元で、世間から隔離された生活を送っている。アマンダが22歳のある日、経済学の教授であるハンク・モンゴメリーが農場の視察に訪れたことから運命の恋は始まり、農場の命運までも巻き込んでいく。

これは実際に起こった歴史上の事実を元に構成されていながら、農場の暴動が重くなりすぎずに、ハンクとアマンダのロマンスが全面に打ち出されているところが、デヴローテイストだなと思います。アマンダはまさに世間知らずの籠の鳥状態であり、その眠れる森の美女を目覚めさせるのがハンクであるわけですが、そのアマンダが世間に目を向け、自分が本当に愛する人であったり、生きる道であったりを模索して掴み取る過程は、なかなか心躍るものでした。ハンクの嫉妬や葛藤も丁寧に描かれています。お互いが惹かれあいつつも反抗し合い、お互いがお互いに翻弄されるさまも恋ならではの醍醐味で、楽しく読めました。しかし、2人が初めて結ばれた夜から、アマンダが快楽に溺れつつ、テイラーの婚約者としてハンクに恋人同士の手ほどきを受けるというくだりは、私的にはしっくりこなかったかな。テイラーという婚約者がありながら、別の男性と結ばれるという罪悪感は無かったのか?そこら辺の精神と肉体と現実の矛盾の描き方が、どうもしっくりこなかった。
「時のかなたの恋人」の大ファンとしては、どうしても比較をしてしまうワケだけれど、結論から言ってしまえば「時のかなた〜」の方が数段面白かった。それは、タイムスリップというモチーフが切なさの度合いをいっそう高めていることと、最後の最後まで結末が読めないというハラハラ度によるものだと思う。この「眠れる美女〜」は、最初から結末の読めるストーリーだった。
オススメ度★★★☆☆

「湾岸ラプソディ」 盛田 隆二 角川書店

Story:北大生の安達俊介は、大学近くのコンビニでバイトをしている。そこに毎週土曜の夜現れる女性は、必ずチョコレートを一袋万引きしていく。彼女の名前は涌井裕里子、俊介より一回り年上のラーメン屋の女房である。裕里子の夫と前妻の小夜子、その息子の正太たちの様々なストーリーを抱えながら、俊介と裕里子は抜き差しならない恋に陥っていく。

あんまり恋愛モノは読まないのですが、この作品は、現代小説としては私の中で一番感動した恋愛小説でした。この作品は、沢山の読みどころがあると思います。二人の関係がどう発展していくかは勿論のこと、裕里子の夫や、義母、正太、前妻の小夜子、お互いの両親などの脇役達にもそれぞれに物語があって、本流の二人に合流していきます。そして湾岸戦争や社会の動向が上手いこと織り込まれており、話に厚みが加わっています。
大学卒業間近で、一流企業に就職も内定している俊介が、駆け落ちはしたものの、まだ自分の将来に未練を残し、裕里子との生活にとまどう心情は、とても繊細に描かれており、非常に共感できるものがありました。「もし駆け落ちしてなかったら、もっと違った前途洋々の人生が開けていたのではないか、正太が自暴自棄になることもなかったのではないか、夫がアル中寸前まで身を持ち崩すこともなかったのではなか・・・」さまざまな「たら、れば」が頭をよぎりました。でもそういう沢山の選択肢をすべてなぎ倒して、たったひとつの答えへと流れ込んでいく後半は、圧倒的でした。切なくて苦しくて、でも熱いラブストーリーです。
更に、この本は、表紙カバーにも工夫がされています。上手い演出だと思います。是非多くの方に、手にとって読んでいただきたい作品です。
オススメ度★★★★★

「時のかなたの恋人」 ジュード・デヴロー 新潮文庫

Story:恋人に捨てられ、泣いていたダグレスの前に、16世紀のイングランド伯爵を名乗るニコラスという男が現れた。400年の時を超えて、永遠の絆を求めあうふたりの、切なく優しいタイムスリップ・ラブロマンス。

ハーレクインかと錯覚しそうな、めろめろラブロマンスです。でも、通常のロマンスの範囲を超えた題材のユニークさと、何よりストーリー自体が非常に面白くできていて、楽しめます。ダグレスとニコラスの運命の再会に、胸が熱くなります。
ヒロインのダグレスは、人間的な魅力に溢れています。お人好しで、泣き虫で、自らは何も決められなかった彼女が、ニコラスとかかわるごとに、強く、逞しく、成長していく様は、これぞ恋の醍醐味!でしょう。
今まで、私が読んだ恋愛モノでは、文句ナシのNo.1です!
オススメ度★★★★☆

「ぼくの美しい人だから」 グレン・サヴァン 新潮文庫

Story:27歳のエリート広告マンと41歳のハンバーガー店売り子が恋に落ちたら・・・。容姿、年齢、学歴、地位、すべて不釣り合いな2人が、悩み、絶望し、そしてお互いの価値観を打ち崩し・・・。男性の立場で、彼が何処までこの恋愛を誠実に捉えていくか、を描いた作品です。

主人公のマックスは、恋愛をする事で、内面の変化だけでなく、地位も立場も、かなぐり捨てて、ふたりが永く一緒にいることの出来る共通の場を真剣に模索していきます。
そして彼女であるノーラも、毅然と臆せずに、彼の人生から身を引いていこうとする辺りが、とても魅力的に描かれています。「人を愛するってどういうこと?」って考えさせられます。
また、これは「匂いの小説」と称されるくらい、匂いの描写が緻密です。
是非男性に読んで欲しいです。そして、私に感想を聞かせて?
あなたは、マックスのように人を愛せます?
オススメ度★★★★☆

「ジェーン・エア」 シャーロット・ブロンテ 新潮文庫

私は、新潮文庫の回し者か・・・?(ウソウソ、冗談)
どなたもきっとタイトルだけは知っている、名作です。私は、大人になってビデオを観て、いたく感動し(ロチェスター役のティモシー・ダルトンがカッコ良かった!)、それから原作を読みました。(遅い?)今気が付いたのですが、これはストーリーもテーマも前記の「ぼくの美しい人だから」に似ているかな?「ぼくの〜」が現代版で、「ジェーン・エア」が時代物版。恋愛のテーマは、今も昔も変わらないって処でしょうか。

Story:孤児のジェーンは、家庭教師として、貴族のロチェスター氏の館へ赴きます。身分の差、ロチェスター氏の意外な真実の暴露、さまざまな困難を越えていく、作者の自伝的作品です。

またまた、今気が付いたのですが、私は、大恋愛&成就モノが好きですね。悲恋モノは、特に記憶に残ってないみたいです。願望でしょうか・・・?
オススメ度★★★☆☆