「バトル・ロワイアル」 高見 広春 太田出版
この小説は、確か'99年に「日本ホラー小説大賞」の最終選考まで残って、あまりに過激で問題作過ぎたので、選考から漏れたという曰く付きだったと思います。
Story:1997年、東洋の全体主義国家(地名等が日本そのものだけど)、大東亜共和国の香川県城岩中学校3年B組の生徒は、修学旅行の途中にバスごと政府に拉致され、高松市沖の小さな島に連行された。そして政府の戦闘シュミレーションを理由に、最後の一人になるまで、孤島の中で殺し合いを行わされる。少年、少女達は、色々な行動をする。パニックに陥る者、絶望して自殺してしまう者、やる気になる者、逃げまどう者、疑心暗鬼になる者、信じて裏切られる者、ゲームは刻々と進み、最後に残った者は・・・。
同じクラスの仲間同士で殺し合いをするなんて、ゾッとします。でも読んでいくうちに、だんだん感覚が麻痺していき、人が殺されていくのが当たり前のような錯覚に陥ってしまう自分が、怖かった。いじめとか、少年達の無差別殺傷事件とかが、珍しいことではなくなった今、そしてこれから先の日本が、怖いと思いました。しかしこれは、単純な殺人ゲームだけを書いたものではないと思います。日本人は、誰かが右といえば、全体が右を向いてしまいがちだと思うのですが、絶望的な状況下にあって、如何に自分を見失わず、理性を保てるか、人を信じられるかを問うていると思います。終わり方も、胸を締め付けられそうで、これは本当に過激で、しかも強烈に心に残る作品でした。
オススメ度★★★☆☆
「天使の囀り」 貴志 祐介 角川書店
Story:ホスピス医として終末医療にあたる北島早苗の恋人、高梨光宏は、アマゾンの取材旅行から帰ってきた後、「天使の囀りが聞こえる」という言葉を残して、不可解な自殺を遂げてしまう。その高梨と同行した隊員が、似たような自殺をしている事を不思議に思った早苗は、その原因を突き止めるべく調査を開始した。
精密な知識の上に描かれた物語、読者を飽きさせない展開、胸をえぐるような臨場感、怖いけれど一気に読めます。前作の保険金殺人をテーマにした「黒い家」同様、現実ではないけれど、如何にもありそうな現実と紙一重の怖い小説を書かせたら、天下一品の作家ではないかと思います。
オススメ度★★★★☆
「玩具修理者」 小林 泰三 角川書店
’95年第二回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品です。受賞作の「玩具修理者」と、書き下ろしの「酔歩する男」の二編で構成されています。
「玩具修理者」は、ちょっとグリム童話を思い起こさせる、グロテスクで、禁断的な、ストーリーです。最後のオチで、あっ!と言わせてくれます。短編だし、非常に読みやすく、スパイスの効いた作品です。
「酔歩する男」は、緻密な仮説とストーリーの元に、主人公がタイムトラベラーだと思い始め、壊れていく様を描いています。自分が過ごしているごく普通の日常が、実はとても不安定で、多次元的な要素を含んでいるかもしれないと思う事の恐怖、タイムトラベラーの悲哀等が、リアルに描かれていると思います。少し難解ですが、背筋の寒くなる恐怖感を感じました。
オススメ度★★★☆☆
「リング」 鈴木 光司 角川書店
「リング」・「らせん」・「ループ」と続く、3部作の第1作目です。個人的には、この3部作の中では、これが一番怖くて鮮烈でした。
Story:同時刻に別々の場所で原因不明の変死を遂げた4人の男女。雑誌記者の浅川は、偶然にその事実を知り、興味から調査に乗り出す。彼らの共通点は、無くなる一週間前に全員で一本のビデオテープを観ていること・・・。そのビデオテープを観てしまった浅川にも、一週間後には死が訪れるのか?友人の竜司と共に、呪われたテープの秘密に生死をかけて挑む。果たして2人は助かるか・・・。
これは本当に怖いです。次々とおどろおどろしい秘密が暴露されていき、先を読まずにはおれなくなります。
次作の「らせん」も読みたくなってしまいますよ。
オススメ度★★★★☆
「火車」(かしゃ) 宮部 みゆき 双葉社
Story:休職中の刑事、本間俊介は、親戚の青年、栗坂和也から、失踪した婚約者を捜して欲しいと依頼を受ける。その失踪人、関根彰子はクレジットカードの乱用により「自己破産」をしていた。関根彰子の行方を追っていくうちに、明らかになっていく衝撃の事実とは・・・
最近急増している、消費型の自己破産者の心理を、鋭く描いていると思います。
また、異常なまでの債権者による取り立てと、それから逃げるために一家離散にまで追いやられる債務者の地獄の日々は、読むにつれ胸が締め付けられるような気がします。人間が人間らしい感情を持てなくなってしまう瞬間があるのですが、さすがにいくら自己破産者だとはいえ、可哀想で泣けてきました。
本間俊介のまわりを取り巻く人々にもスポットをあて、細かく描いてあり、凄惨な借金地獄の描写と、うまく対比させていると思います。
オススメ度★★★★☆
「メドゥサ鏡をごらん」 井上 夢人 双葉社
井上 夢人コーナーへ
「スキップ」 北村 薫 新潮社
Story:17歳の高校生、一ノ瀬真理子は、ある日の午後、自宅で居眠りをしたら・・・25年後のオバサンになった姿で目が覚めた。覚えはないが、当然ながら結婚して姓が変わり、夫と17歳になる美也子という娘までいる。夫の桜木さんと、美也子に助けられながら、平成の世の中で、高校教師という仕事までこなしてしまう真理子。失われた時は取り戻せるのか?
昭和42年から、現代にタイムスリップ、これって覚醒の感があるって事がよく解ります。42年当時の世相もよく書かれていて、懐かしいし、その時代の人から見た現代ってのも、納得したり、驚かされたりで、楽しく読めます。例えば、テレビのチャンネルがなくてリモコンをどうやって使ったらいいか解らないとか、瓶じゃなくて紙の箱に入った牛乳やジュースとか・・・。怖々プルトップの缶を空けてみたら、蓋の部分が中身に触れて汚らしいと感じたとか・・・。そういえば、これらの物が出始めたとき自分もそう感じたなぁ、って思います。
真理子は、失われた時を取り戻したいと切に願うのですが、最後にどんな気持ちの決着をつけるのか・・・。
オススメ度★★★☆☆
「パラサイト・イヴ」 瀬名 秀明 角川ホラー文庫
第2回日本ホラー小説大賞受賞作。映画化もされました。
Story:大学の薬学部に勤務する永島利明は、ミトコンドリアの研究で実績を上げていた。ある日突然、妻の聖美が不可解な交通事故を起こして脳死してしまう。腎バンクに登録していた聖美の腎臓は、安斉麻理子という少女に移植される。利明は聖美の死を受け入れられず、腎の摘出の際、聖美の肝細胞を採取し、培養する。「Eve1」と名付けられたその細胞は、異常な能力を持ち始めるが・・・。
著者が薬学専攻ということもあって、科学的な専門知識を駆使して書かれたこの作品は、説得力があり、ストーリーの面白さ、発想の大胆さで、グイグイ読ませてくれます。また、臓器移植、遺伝子工学ということに対しても、考えさせられます。人類はどこまで、生命の創造というものに、関わって良いのか・・・。
ただ一つ・・・ラストが・・・私は、ちょっと納得いきませんでした。
オススメ度★★★☆☆
「天使の牙」 大沢 在昌 小学館
大沢 在昌コーナーへ