新刊本

「GO」 金城 一紀  講談社

Story:杉原は日本で生まれ日本で育った高校生だけれど、両親が朝鮮籍を持っていたために、中学まで朝鮮の民族学校に通い、その後韓国籍を取得した、在日韓国人である。元ボクサーでパチンコ景品交換所を営む父の影響もあってか、やたら喧嘩に強く、教室に殴り込みに来る生徒を片っ端からやっつけ、「二十三戦無敗の男」として君臨している。国籍に対する偏見や差別に苛立ちながらも、それは杉原にとって重大な問題では無かった。ある日、やくざの息子、加藤の誕生パーティに顔を出した杉原は、そこであっけなく恋に堕ちてしまう・・・。
私は、特に予備知識もないまま、この本を読んで、衝撃を受けた。彼の受けた傷みが私にも多少解るから。でもそれは、本人にとっては傷みでもやましいことでもなんでもない。だって、自分は日本人や朝鮮人である前に、ただ一人の人間なんだから。なのに周囲は(日本人は)それを許してはくれず、がんじがらめに一つの偏見に自分を縛り付けようとする。自分の大切な人(愛する人)に、自分の国籍を受け入れて貰えないかもしれないという恐怖と、虚しさに、杉原は対峙する。最後に、桜井に対して訴える彼の言葉は圧巻だった。
こういうテーマと取り組みながら、この小説は暗くない。元ボクサーのオヤジ、そのオヤジに尽くしながら、ある日突然資本主義的快楽に目覚めてしまう母、優秀な友達の正一、またその正反対を行く、過激な元秀、彼らが、コミカルだけれど前向きで、生き生きと描かれているからだ。
これは、人種差別を問うた作品であると同時に、純粋な恋愛小説でもあると思う。
第123回直木賞受賞作
オススメ度★★★★★

「青の炎」 貴志 祐介  角川書店

Story:「このプログラムは不正な処理をしたので強制終了されます。」ある日、秀一の家に邪魔者が入り込んできた。母の離婚した夫、曽根である。害をまき散らすその男から、家族を守るため、秀一は曽根を殺害することを決心する。
貴志祐介といえば「黒い家」「天使の囀り」等、グロテスクでホラーチックな作品を連想させますが、この作品は、少し趣向が違います。あらかじめ犯人が判っており、犯行に至るまでの動機や、完全犯罪を企てる経過や、心理描写が事細かに描写されています。未成年者が連続殺人を行うという非道な内容であるのに、重苦しくないのは、秀一の淡い恋心まで描き込んだ青春小説のようにも捉えられるからかも知れません。また、タイトルの「青」にこだわった描写が随所に出てきて、印象深い味わいとなっています。
愛する家族を守るために企てた完全犯罪が、奇しくも愛する家族や恋人に少しずつ暴かれていく様は、なんとも切なく、完成度の高い作品だと思います。
オススメ度★★★★★

「白夜行」 東野 圭吾  集英社

Story:事件は昭和40年代から始まった。大阪の下町で、質屋殺しが起こる。容疑者とされた女性が事故死し、事件は迷宮入りとなる。その殺された質屋の息子、桐原亮司は、売春斡旋、海賊版ソフトの販売、パソコンショップ経営と、次々仕事をするが、その陰には常に事件の臭いが漂う。一方、容疑者の娘、唐沢雪穂は、親戚に引き取られ、後に資産家と結婚し、自らも事業を興し大成功を納めるが、不思議なことに彼女にとって都合の悪い人は皆、不幸になっていく。質屋殺しの犯人を追い続ける老刑事、笹垣は、19年にわたって事件の真相と二人の関係を暴いていく。
東野圭吾という人は、いろいろなミステリの手法を用いて、作品ごとにそれぞれ違った作風を醸し出す人だなと思います。その中でもこの作品は、ちょっと冷たい、沈痛な雰囲気の文体です。しかし、緻密な構成は、精巧なパズルを一つずつ組み立てていくような、驚きと感動があり、佳境に向かって、ぐんぐん引き込まれていく感があります。
白夜の中を彷徨う雪穂と亮司。幼い時にずたずたに引き裂かれた心を取り戻すために、二人は次々と犯罪に手を染めていく。その姿には、悲哀がこもっており、少し泣けました。
オススメ度★★★★★

「千里眼」 松岡 圭祐  小学館

Story:日本各地で起こる爆弾テロ事件に、政府は憂慮していた。同じ時、東京湾観音でポケットに一冊の書物を入れた少女が倒れる。催眠療法で心の病を治すカウンセラーの岬美由紀は、その少女の陰に、日本存続の危機と、カルト教壇の存在を知り、救済に立ち向かう。
主人公の岬美由紀は、スーパーマンの様な女性です。頭脳明晰で、相手の心を読んだり、元自衛官の経験を生かして、爆発物や機械の知識に精通していたり、危険を顧みない行動力があったり、最後にはとんでもない事までしてしまいます。その圧倒的なスピード感とエンターティメントを堪能していただきたいです。
オススメ度★★★★☆

「安楽病棟」 帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)  新潮社

これは、痴呆の進んだ老人医療、終焉医療にスポットをあてた作品です。
最初の三分の一は、痴呆病棟に入院してくる老人達の、若いときから入院までの経緯が、患者や家族の立場から描かれています。後半は、痴呆病棟に働く城野看護婦の視点で物語が進んでいきます。
日々の入院生活の中、様々な視点からの問題提起がおこなわれています。看護婦のきめ細かいケアの大変さ、痴呆老人を持つ家族の心情、オランダやアメリカを例にした安楽死の現状。その中で、生きるってどういうことだろう、痴呆になって介護され、生きる屍のようになっても生き続けるってどういうことだろう、積極的な延命医療やその対局の安楽死、医療に携わる者はどこまで人の死を操作したらいいんだろう等、たくさんの事を考えさせられます。
書中の看護婦の言葉「お年寄りのケアというのは大変だけれど、人をケアするって、自分もケアされている気がするんです」というのが、とても印象に残りました。
そして、最終章では驚愕の大どんでん返しが用意されています。終焉医療に、明確な答えは今のところ出せないのが現状かもしれません。この本の中にも、読んでいるのが辛くなるような描写が沢山ありました。しかし、生きている限り人は必ず老います。避けては通れない、自分の身にも降りかかってくる問題として、真剣に考えていかなくてはならないと思いました。
オススメ度★★★★☆

「わたしのグランパ」 筒井 康隆  文藝春秋

Story:「父はレイゴの人であり」・・・父の日記を偶然読んでしまった珠子は、祖父が刑務所に入っており、まもなく刑期を終えて出所してくることを知る。中学一年生の珠子の周りには、さまざまな問題が取り巻いていた。入学早々いじめにあっていること、そして校内暴力による学校崩壊、両親の不仲、地上げ屋と称する暴力団の嫌がらせ・・・。出所してきた祖父の恵三は、珠子の悩みを一挙に解決してくれる最強のグランパだった。

「こんなに上手く事が運ぶはずないよなぁ」と思いながらも、祖父恵三と珠子の深い絆に胸が熱くなり、二人を取り巻く家族や街の人達の暖かい交流にほのぼのとした安らぎを覚える作品です。無差別殺人、家庭や学校の崩壊等、殺伐とした世の中にあって、この作品は「人間としての原点に立ち返る」事を思い起こさせてくれた気がします。
オススメ度★★★★☆

「イントゥルーダー」 高嶋 哲夫  文藝春秋

本年度「サントリーミステリー大賞」を受賞した作品です。
「イントゥルーダー」とは、コンピュータに侵入するハッカーやバグの事をいいます。ハイテクコンピュータ犯罪を背景にしながらも、これは親子の絆、心への侵入をテーマにした作品とも言えると思います。
Story:日本のビル・ゲイツとも称される大手コンピュータ会社の副社長である羽嶋浩司は、ある夜突然電話を貰う。「あなたの息子が重体です」それは、昔同棲していた松永奈津子からの電話だった。今までその存在すら知らなかった自分の息子が、事故に遭って生死の境を彷徨っているという。初めて対面するベッドの上の息子は、父である羽嶋浩司を尊敬し、同じ大学へ進み、同じコンピュータ業界に身を置いていると知る。息子の人生を追っていくうちに、羽嶋は息子が巻き込まれていた陰謀を知り、息子の遺志を継ぐべく、巨悪に立ち向かっていく。それは折りしも、社運を掛けた新製品コンピュータの発売直前の事だった。
オススメ度★★★★☆
99/09/05

「永遠の仔」上・下 天童 荒太  幻冬舎

原稿用紙にして2000枚に及ぶ、とても長いこの本は、かなり読み応えがあります。しかし3人の主人公達が少年時代の1979年と、現在である1997年の2元中継様式で話が進められており、18年前と現在のミステリが少しずつ謎解きされていく展開なので、グイグイ読ませてくれます。
この作品の中には、沢山の問題が提起されています。老人介護医療、幼児虐待、親子関係のさまざまな有り様・・・。人は耐え難い心の傷を受けたとき、どこまで真っ当に生きていけるのか?あるいは生きていけないのか?その事を追いながら、最後の2行を読んだとき、はらはらと泣いてしまった私でした。この壮大な悲劇は、最後の2行のために書かれたのかも知れません。
オススメ度★★★★☆
99/05/17

「本当は恐ろしいグリム童話」 桐生 操  KKベストセラーズ

これは、子供には読ませられない本です。
継母が子供を斧で殺し、スープにする残虐行為あり、近親相姦あり、生々しい性描写あり、「これが童話?」と思わせる内容です。子供の時に読んだあの「白雪姫」は、実はこういうことだったのか・・・昔の記憶をたどりながら読み比べると、あまりの違いに驚くばかりです。中世ヨーロッパの時代背景が説明してあり、物語を、より深く考証する手助けとなります。人間は、善良なだけではない。愛も憎悪も抱き、残酷であり、エゴイスティックである、そのありのままの姿を、勇気を持って見つめる事・・・結構大切なことかも知れません。
私個人としては、「魔法を使わない、英知のシンデレラ」ってのがお気に入りです。
オススメ度★★★★☆
99/04/02

「私が彼を殺した」 東野 圭吾  講談社ノベルス

Story:流行作家、穂高誠が、結婚式の当日新婦の目の前で毒殺された。容疑者は、新婦の兄・マネージャー・担当編集者の3人。彼らは全員、事件後つぶやく。「私が彼を殺した」と・・・。果たして真犯人は誰なのか?
この本は、最後まで謎解きがされません。真犯人は、自分で見つけましょう。最初から最後まで、至る所に、容疑者の動機や、殺人時の行動や、ヒントが、用意周到にちりばめられています。心して読みましょう。読み終えた後、犯人が判らずに、もう一度バラバラと本を読み直すという羽目に陥ります。(私がそうでした、笑)
同シリーズ(?)の前作「どちらかが彼女を殺した」も、なかなか面白いです。
オススメ度★★★★☆
99/03/23

「コスメティック」 林 真理子  小学館

「化粧品業界、騒然」「これは暴露本ではないのか?」等のうたい文句につられて、興味本位で読みました。
Story:キャリア女性の沙美は、バブル後の厳しい現実にさらされ、職場の片隅に追いやられてしまう。偶然の出会いから、外資系化粧品会社のPR担当に抜擢され、『もう一度這い上がるため』化粧品業界という戦場に繰り出していく。
時に挫折にまみれながらも、女性ならではの細やかな心遣いと英知で、成功の階段を駆け上がっていく沙美の悪戦苦闘ぶりが、圧倒的なリアリティと共に、伝わってきます。キャリア女性の、恋愛、結婚、出産という事についても考えさせられます。また、情事を通して、男女がお互いを利用する、必要とする、駆け引きや騙し合いの妙についても考えさせられました。これも男女の愛の一つなんだな・・・と。
最後の一ページには、空恐ろしい気さえしてきました。この物語には終わりがありません。それは、恋も仕事も頑張るキャリア女性に終わりがないという事なのかも知れません。
オススメ度★★★☆☆
99/03/21

「ああ言えばこう食う」 阿川 佐和子&壇 ふみ  集英社

この本は、著者と同じ30代以上の、未婚の女性が読むと、共感できると思います。
阿川 佐和子と壇 ふみの「食」をテーマにした、往復エッセイです。彼女らは、結婚願望があるのに結婚できないという共通の悩みを抱え、その奮闘ぶりが、笑えます。ざっくばらんな性格の阿川嬢と、几帳面な壇さんの、ボケと突っ込みのバランス感覚が、何とも言えず絶妙です。良い味、出してます。
そして何より、彼女らの知性と教養の深さと、経験の豊富さが滲み出る文体・・・憧れます・・・。
女の友情を通じて、個々の彼女らが、とても魅力的に輝いて見えてくる、すてきなエッセイでした。
オススメ度★★★★☆
99/02/16

「五体不満足」 乙武 洋匡(おとたけ ひろただ)  講談社

著者の乙武さんは、先天性四肢切断という障害をもっています。生まれたときから、両手足がないのです。
彼の小学生時代の会話より(本文抜粋)「ボクには誰にも負けないものがひとつある。」「何それ?勉強だったら、私も負けないわよ。」「ううん、そんなことじゃない」「じゃあ、何?」「ボクには手と足がないこと
彼は、スゴイです。怖ろしく前向きで、ポジティブ思考です。最近、これも障害者と差別をテーマにした『どんぐりの家』を読んだばかりですが、「どんぐり」が障害者の実態と差別を描き、健常者や社会の意識改革と共生を訴えているのに対して、乙武さんは、既に社会の中で共生してしまっています。障害は、単なる身体的特長であり、個性であるという意識のもとに、普通の学校へ行き、野球やバスケット等スポーツをし、受験勉強もし、大学生活を過ごしています。
この本を読んでいると、障害者が世間の目から隔離され、福祉というの名の檻に閉じこめられてしまう時代は、もう終わったのだと、痛感させられます。乙武さんの事、もっと知りたいな、友達になりたいな、と思いました。あとは、健常者が心の垣根を取り払うだけなのかも知れません。
オススメ度★★★★☆
99/02/09

「天国までの百マイル」 浅田 次郎  朝日新聞社

「鉄道員」(ぽっぽや)で、直木賞を受賞後、初の長編小説です。
Story:城所 安男は40歳。経営していた不動産会社を倒産させてしまい、自己破産者に。別れた妻子への仕送りにも、頭を悩ます日々である。そんな時安男は、母が狭心症で、極めて危険な状態であることを知り、天才的な外科医のいる千葉県鴨浦町を目指して、母と共に百マイルの旅に出た・・・。

いかにもお涙頂戴のありそうもないストーリー展開なのですが、やっぱりポロポロ泣いてしまう、浅田ワールドって、不思議です。現代社会の中で、つい置き去りにしてしまいがちな親子愛や、人道的な愛を思い起こさせてくれます。所々に、はっとするようなフレーズがあり、心洗われるような気持ちになります。
この作品の中で、安男の母と、元妻の英子と、愛人のマリという3人の女性が、それぞれとても素敵に描かれています。個人的には、私は、マリがとても気になる存在でした。彼女の心情が痛いほど伝わってきました。(意味深?)
オススメ度★★★★☆
99/01/21

「業火」 パトリシア・コーンウェル 講談社文庫

ドクター・スカーペッタ「検死官」シリーズの最新版、9作目です。
Story:新聞王スパークスの農場を突然襲った不審な火災事件。バスルームで発見された身元不明の女性の死体からは、無数の切り傷が・・・。時を同じくして、過去の凶悪犯キャリーが脱走をはかり、スカーペッタとルーシーに迫る・・・。

このシリーズは、毎回新しい犯罪パターンが描かれており(今回は連続放火殺人)、安定していて、ハズレがありません。
主人公のケイ・スカーペッタと姪のルーシー、元FBIのベントン、警部のピート等の登場人物が、互いに引き寄せ合ったり、別れたり、内面的にも外面的にも変貌を遂げていく様子が、シリーズを通じて描かれており、それが魅力の一端を担っていると思います。今回も、最後に辛い辛い結末が・・・。
オススメ度★★★☆☆
99/01/13

「らんぼう」 大沢 在昌  新潮エンターテインメント倶楽部SS

Story:「史上最悪のコンビ」・・・身長185pの「ウラ」と小柄で敏捷な「イケ」は刑事です。署内検挙率No.1、そして被疑者受傷率もNo.1の凶暴なこの2人に追われる容疑者は、悲惨この上ない・・・。痛快でテンポの良い、短編連作です。

公僕なのに、やたら喧嘩っ早いこの2人、でもヒューマニティに溢れており、最後で必ずホロッとさせられます。犯罪者の孤独や悲哀が、被害者や関わる人々のそれぞれの事情とあいまって、上手い具合に話が組み立てられています。
主人公はそのままの、一話完結短編集なので、読みやすいですよ!
オススメ度★★☆☆☆
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99/01/05

「月光の東」 宮本 輝  中央公論社

これぞ宮本輝の真骨頂とも言うべき作品・・・です。「精神を病む」「業」「不倫の否定」の三種の神器(?)も織り込まれています。
Story:複雑な家庭環境を持ち、不幸な少女期を送った美女、塔屋米花(とうやよねか)の『ねぇ、私を追いかけて。月光の東まで追いかけて』という言葉の心意を、彼女に関わった幾人かの人間の人生を絡め合わせてたどっていく物語です。塔屋米花のミステリアスな逸話を追いかけながら、人の業の深さや、縁の不思議さ、愛することの意味を考えさせられます。

塔屋米花に関わった人々のそれぞれの人生模様が、宮本輝流の道徳観で、丹念に緻密に描写されています。味わいながら読みましょう!
この物語の中で、競馬の馬券を「複勝ころがし」というやり方で買い、1万円を100万円近くまで儲ける話があるのですが、自分の運を試すという意味で、なかなか面白いなぁと思いました。今度、馬券を買うチャンスがあったらやってみようっと。
オススメ度★★★☆☆
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98/12/13

「心室細動」 結城 五郎  文藝春秋

’98年第15回サントリーミステリー大賞受賞作です。
Story:A大医学部教授への昇進を目前に控えた上原健治は、二十年前に関わった忌まわしい医療過誤事件の脅迫を受ける。その事件に関わった医師、看護婦が相次いで突然死する。果たして、脅迫者、殺人犯は誰なのか?上原は、事態を切り抜けることが出来るのか?

「人道上、決して許されない惨劇」「神をも恐れぬ所業」なんて書かれており、凄いことを想像していたもので、その点は少し拍子抜けしました。でも、事件当時潔く罪を認めて謝罪し、償いをしていたら、こんなに大事にはならなかったはずの出来事。それが時を経て、関わった人々の事情が複雑に折り重なり、皆を破滅へと追いやっていく過程は、リアルで迫力があり、一気に読ませます。
オススメ度★★★☆☆
98/11/13

「受精」 帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)  角川書店

Story:舞子の最愛の恋人「明生」は突然の事故で、この世を去ってしまう。失意の底で見出した一筋の光明は、明生の子供を宿すこと・・・。すべてを捨てて、ブラジルのサルヴァトールへ旅立つ舞子の行く末は・・・

最愛の人を亡くす哀しみ・・・著者は男性なのに、女性の心理を上手く捉えて表現しているなぁと、思います。私も前半は、思わずうるうるしてしまいました。で、感情移入した分、その女性の哀れさにつけこんで犯罪が行われていく様は、同じ女性として言いようのない腹立ちと嫌悪感も感じました。これは、単純なサスペンスものとは一線を画し、倫理的、宗教的に、生命の法則というものに問題を投げかけた作品といえるかも知れません。
後半は、事態が急展開して、息吐く暇もなく読ませてくれますよ。(ラストの予測はついたけど・・・)
オススメ度★★☆☆☆
98/11/09

「インターネット業界の仕事」 原 勝也  三一書房

インターネット業界って具体的にどんな仕事があるの?って、素朴な疑問から読み始めたこの本、この業界への就職を目指す方はもちろん参考になるでしょうが、私のような趣味でパソコンをいじっている初心者さんにも、お勉強になる本ということで、オススメしたいと思います。

まず、訳の解らない専門用語ってのが、ほとんどありません。あっても、解りやすく解説されています。
目まぐるしく変貌を遂げているコンピュータの世界で、私などはとかく方向性を見失ってしまいがちですが、「あ、こういう利用の仕方もあるのか」とか「将来はこうなっていくのか」という発見もあり、無限の可能性を感じたり出来ました。

内容は、「基礎知識」「コンテンツビジネスとは」「マスコミの新しい形態」「SOHO関連」「ゲーム業界について」「関連企業の紹介」等です。
文系でも狙える新しい仕事が続々と登場している、ってのも興味深く読めましたが、「もはや文系理系というカテゴライズは無意味だ」っていうところまで進化し始めているインターネット業界の勢いには、圧倒されてしまいそうです。
しかし・・・著者の言葉を借りて言うならば『ネットサーフィンをしているうちに、17年ぶりの友人と再会する(もちろんインターネット上で)といった経験をすると、インターネットがものすごく人間の本質に根づいたもののような気がしてくる。インターネットが人間の新しいコミュニケーションツールとしての要素を持ち合わせていることに驚いたりもする。』・・・これもまた、真実だと思います。
(余談・・・実は私も最近、5年ぶりくらいで同級生との再会をネット上で果たしました!これって、本当に嬉しいモンですよ。)

必死で力説してしまいましたが・・・実は著者の「原 勝也」氏は徳地町出身でありました!思いっきり私情、愛情込みの紹介!?でも、ホントに面白かったんだってばっ!(^^)
オススメ度★★★★☆
98/10/29

「ライン」 村上 龍 幻冬社 

Story:テレビや電話のコード(ライン)を見ていると、それを流れる電気信号が映像として見えてしまう「ユウコ」。
彼女を始めとし、東京の一夜を、多彩な人々で、織りなしてゆく、リレー方式の物語。

最近の村上龍の作品は、援助交際だとか、大量殺人とか、風俗描写だとか、テーマがネガティブです。
凄惨で、自己破壊的で、吐き出し口のない憤りを感じるモノが多いのです。
この作品もそうですが、そういう堕落しきって、精神的空洞をどうすることもできない人々の中に、ちらほらと見え隠れする、すごくピュアな感性には、ドキリとするモノがあります。
村上龍は、こういう言葉の宝石を散りばめるのが、旨いな〜と思います。
鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた彼の描写は、好みが二分するところだとは思いますが・・・(嫌いな人は、受け付けないかもしれません)
最終章の「他人」で、犬人間の言った「今のオレが、オレとしてフィットしてるんだ」のくだりは、納得できて感動しました!
そして、最後の最後で「ユウコ」の吐いた言葉は・・・(秘密、本を読んでみて!) 
オススメ度★★★☆☆
98/10/11
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