分析批評を使って、本を読もうとする意欲を高める授業が1時間でできると考えた。
2年生であるので用語を、主役・対役にした。
初めての教材文であるため、教師の範読を3回。そのうち1回は教師と一緒に児童も読む。
児童のみで読むのは1回にした。合計4回、教材文を児童は耳にすることになる。
主役という言葉の説明のために、『桃太郎』を例にした。
いかに実践を示す。
『ふたりはともだち』アーノルド・ローベル作 三木 卓訳の中から、「おてがみ」を、
B5版6枚分に印刷し、ホチキスで閉じて配布する。
教師が範読する。児童が紙をめくっていくのを確認しながら読み進める。
4分30秒くらい。読み終えた後、プリントされた枚数や順序にまちがいがないか
確認をする。
指示1 もう1回先生が読みます。座ったままで小さい声でいいですからいっしょに 読みましょう。 |
きちんと読んでいるところが、あけられているか、机間巡視を1回しながら読む。
指示2 今度は、自分の早さで読みます。読み終わった人は、座って声を出さないで 何回も読みます。では、全員起立。自分の速さで読みなさい。 |
読み始めて約7分経過したところで、あと3人となった。
「おてがみ」と板書した。あと、1人となったところで、発問1を板書した。
最後の1人のそばについて、いっしょに読んだ。6枚のうち最後の順序が反対になって
いて、どこかわからなくなっていた。順序正しいものと交換して、5枚目のところをいっしょに
読んだ。つかえずに読めるので、1人で読ませた。
読み終わった時、授業を始めて22分が経過していた。
発問1 このお話にだれが出てきますか。 |
指示3 ノートに1人かけたら、もっていらっしゃい。 |
次々に、ほとんどの子が問題を板書していない。
「問題を板書しておきなさい。」と小さい声で、1人1人に言う。
きちんと問題を写してから答えを書いてきたのは、27人中4人だった。
ノートを持ってくる列が途絶えたので挙手させ指名して発表させた。
「このお話に、だれがでてきましたか。」
指名した児童が、次のように答えた。
「かえる。」
すると、
「かえるじゃないよ。かえるくんだよ。」
と言う声が上がった。
そこで、私は、
「そうだね。かえるくんと書いた人は二重マルだね。」
と答えた。
画用紙に、描いておいたかえるくんの絵を黒板にマグネットではり、
その下にかえるくんと書いた。
同じように、指名ー発表させ、かたつむりくん、がまくんと絵を貼り、板書した。
(あとで気づいたが、かたつむりくんではなくかたつむりと本文中にあった。)
発問2 主役は、だれですか。 |
「主役って、わかる?」
と問うと、
「一番おもに出た人」「一番多く出た人」
という答えが返ってきた。
『桃太郎』を例にして、話をすることにした。
発問3 桃太郎の話を知っていますか? |
3名に、指名し、あらすじを話させた。
発問4 桃太郎の話に、だれが出てきましたか。 |
2名に指名し、答えさせた後で、教師といっしょに確かめた。
発問5 桃太郎、おじいさん、おばあさん、犬、サル、キジ、鬼の中で、 主役はだれですか。 |
「ももたろう。」と声が上がった。
「でもね。」という、児童がいた。
「桃太郎は、題が主役。」
「じゃあ、これはおてがみが主役なんだ。」
と教師が言うと、
「ちがう。」
指示4 主役は」だれか、ノートに書いてもっていらっしゃい。 |
「書いていれば、マルをつけます。」といって、ノートを持ってくる児童のノートに、どんどんマルを
つけていった。
「せんせーい、これであっているんですか。」
と何人かが、言ったが、かまわず、
「書いていれば、マルです。」
と続けた。
2人書いている児童もいたが、
「主役はひとり。」
とした。混乱するおそれがあるからである。
早く終わった児童には、
「理由も、考えてくださいね。」
と言った。
ほとんどの児童にマルをつけ終わったので、つぎのように言った。
「理由を考えている人もいると思いますが、かたつむりくんと、書いた人はいませんでした。
だから、がまくんかかえるくんか、どっちかですね。
指示5 かえるくんか、がまくんかどっちかに手を挙げてもらいます。 かえるくんと思う人。がまくんと思う人。 |
かえるくん・・・・・15人
がまくん・・・・・・・12人
「かえるくんじゃないの。」「がまくんよ。」という言い合いが、自然に始まる。
しばらくそのまま言わせておく。
「先生、かたつむりくんって聞かないの。」
と質問が出る。
「かたつむりくんという意見はでなかったから、かえるくんかがまくんでしょう。」
と答えた。
理由を聞いてみましょう。 |
・かえるくんが、がまくんに手紙をあげたから。(かえるくん)
・てがみをもらったから。(がまくん)
・手紙を書いたり、かたつむりくんにわたす手紙を書いたから。(かえるくん)
・初めに出てるし、いっぱい名前がでてるからがまくん。
・最初に、がまくんがいすにすわっちょった。
・でも、最初に会話を言った。だから、かえるくんと思う。
説明1 実はね。主役と、対役ってのがある。主役はおもに出てくる人。一番多く出てくる人。 対役はね、主役が言ったり、したりすることで気持ちが変わる人。 |
発問6 どっちが多く出てきた? |
「かえるくん」
「あのね、かえるくんは9回。がま君は、8回出てきた。
「先生、絵も関係あるんですか。」
説明2 テレビカメラを考えてください。テレビカメラはその人をずーっと追っていくでしょう。 その追っていく人は、だれですか。二人が、わかれる時があるでしょう。どっちいった? おひるねしているがまくんの方にいった?いかないね。 |
「でもね。」「でもね。」の声も出る。
「先生が、もう1回読みますよ。」
最後に、範読する。
「これから本を読む時に主役か対役か考えながら読んでください。
発問7 気持ちが変わったのは、がまくんかえるくん、どっちだった? |
1人の子を、指名する。
「がまくん」
発問8 どんな気持ちから、どんな気持ち? |
「いやな気持ちから、うれしい気持ち。」
同じ子が、答える。
「対役が気持ちが変わった人、主役が気持ちをかえてあげた人と考えながら読むといいですね。」
今回の授業で、主役はすべての場面で出てくる、一人で手紙を書いているときも描かれている
かえるくんとした。その定義が、主人公、中心人物とのちがいが、自分としてもはっきりできていない。
授業の途中で、「あと20分もない。時間が進むのがチョーはやい。」と言われたり、授業の終わりに、
「もっとやりたい。」と子どもに言われたりした。
帰り支度をしながら、感想を書いてもらった。
「他の話も読んで。」せがまれた。「もう下校の時間だから。」と言ったが、
「読んで、読んで。」と言われた。簡単に、他の「すいえい」の話のあらすじを話したが、これほど
反響があるとは思わなかった。
東京書籍を使用しているので、教科書には取り上げられていない教材で、1時間の授業を
組み立てた。子どもたちに紹介したい。お話だったからだ。
子ども感想を紹介する。
「がまくんはいやなきもちからうれしいきもちにかわった。たとえば、がまくんは、いちども
てがみを、もらったことがない。でもかえるくんが、がまくんにてがみをあげたから、いやな
きもちからうれしいきもちにかわったとおもう。」
「ぼくは、どっちがしゅやくかまよいましたがかえるくんでした。ぼくは『よかった』とおもいました。」
「おてがみを、かいてくれたかえるくんは、とてもやさしいですね。がまくんは、じぶんからも
だしてほしいね。そしたら、もしかしたら、その人がかいてくれるかもしれないよ。ぽすとのなかは、
からっぽでかわいそうだね。」
「わたしも、そうゆうこともあったけど5日たってきたこともありました。とてもいい本でした。」
◆授業を終えて◆
「『分析批評のワーク』1988年明治図書」が、出されたころ分析批評の授業に取り組んでみた。
時数が多くなる。教科書と違う教材をすることになってしまうことから次第に取り組まなくなっていた。
しかし、『法則化セミナー97テキスト』に「半年に1回の分析批評の授業でいいと思います。」
「このような会話を成立させるためには条件が必要です。」とある。
今回、自然に「がまくんだ」「かえるくんだ」という意見が沸き起こった。
現在のクラスを担任して初めてのことである。やはり我流ではだめだ。
指名なし発表をできるようにしておけば、もっと内容のある授業になっただろう。
本物に忠実であれば、児童の意欲がもっと引き出せたであろう。本を読んでわかったつもりでいた。
今後も分析批評で、児童の喜ぶ授業を目指したい。