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 コンピュータウイルス対策(予防、発見、駆除、復旧)業務の改善

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(設問ア)業務改善の概要とわたしの立場(役割)
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1.業務改善の概要
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 当社業務のひとつとして、パーソナルコンピュータ
(以下、PCと称する)用の特定業務用アプリケーショ
ンソフトウェア製品(以下、単に「製品」と表記する)
の開発、製造、販売、保守がある。わたしは、自社製品
に対するコンピュータウイルス対策(予防、発見、駆除、
復旧)業務の改善を実施した。なお、以下、「コン
ピュータウイルス」を、単に「ウイルス」と表記する。
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2.業務改善の必要性
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2.1.ウイルス感染機会の増加
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(1)海外とのソフトウェアのやりとり
 当社は、国内に60営業所、アメリカ、ヨーロッパ、
東南アジアなど、海外にも現地法人を有し、「グローバ
ル経営」を経営方針としている。これは、製品市場、お
よび労働力等の経営資源の調達先を、広く、全世界に求
めようというものである。この結果、1)海外向け製品
を国内で開発、2)国内向け製品を海外現地法人におい
て現地仕様に変更、などの製品開発形態が存在し、海外
とのソフトウェアのやりとりが増加し、海外産のウイル
スに感染す
る機会が増加した。

(2)ネットワーク構築
 グループウェアツール導入のために、社内にPCネッ
トワークを構築したため、ネットワークを経由してウイ
ルスが急速感染する危険がある。

(3)PC社内標準機として国際標準機を選定
 グループウェア用の標準PCとして、国際標準機を採
用するに至って、ウイルス種類のうちほとんどを占める
国際標準機型ウイルスに感染する機会が大きくなってき
た。
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2.2.ウイルス対策費用の制約
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 不況下の経営環境では、対策用の経営資源は制限され、
効率のよい対策方法に移行する必要があった。
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3.私の役割
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 本社技術管理部門に着任したわたしは、「自社製品に
対するコンピュータウイルス対策」を企画、推進、指導
することになった。職務分掌としての指導対象は、製品
開発、製造、品質管理、販売、保守部門(以下、「関連
部門」と表記する)である。しかし、有効な「ウイルス
対策」を実施するためには、一般の事務部門でもウイル
ス対策を実施してもらう必要があり、他部門との交渉能
力を問われる立場にあった。

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(設問イ)問題点と解決策、工夫点
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1.改善前の業務
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(1) サイトライセンス契約により、2ヶ月おきに、ワク
チンソフトメーカーよワりクチンソフトの更新版が技術
管理部宛送付されてくる。

(2)技術管理部では、 これをフロッピーディスクにコ
ピーして、関連部門に社内便で送付する。

(3)関連部門のシスアドは、 配布されたフロッピーを
使って、自部門のPCに順次ワクチンソフトを入れる。
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2.問題点
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2.1.全社対策が未実施
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 対策が、関連部門に限られていた。このため、関連部
門でウイルスを駆除しても、未対策部門から再感染して、
社内から完全駆除できない例が、過去に多かった。配布
フロッピー作成、梱包、宛名書きなどに多大な工数を必
要とし、これ以上の配布範囲拡大は不可能であった。
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2.2.ワクチンのみのウイルス対策
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 技術管理部自身を含めて関連部門内で、ウイルス対策
の一部であるワクチンソフトの使用がウイルス対策のす
べてであると、誤解されていた。
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2.3.関連部門でもウイルス検査が実施されていない
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 わたしは、現状のウイルス検査実施状況を知るために、
関連部門を対象にアンケート調査を実施した。その結果、
個人レベルでは、ウイルス検査が実施されていないケー
スがあることが判明した。
 ウイルス検査をしない理由としては、1)必要性がわか
らない、2)ワクチンソフトの操作方法がむづかしい、
3)めんどう、というような回答が代表的だった。
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2.4.ウイルス対策に関する宣伝が不十分
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 1年に1回程度、本社勤務のパソコンリーダ的メンバ
を対象にウイルス対策セミナーを実施していたが、その
ほかの社員にはウイルスの情報が伝わっていなかった。
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3.解決策の策定、実施
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 わたしは、ウイルス感染機会増大の一因となったグ
ループウェアツール導入/情報ネットワーク構築を、単
なるネガティブファクターとしてとらえることはしな
かった。逆に、ウイルス対策に有効利用する工夫をした。
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3.1.ユーザーの負担を少なくするウイルス検査の仕組み作り
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 わたしは、全社的にウイルス検査をしてもらうために
は、ユーザーの負担を少なくするウイルス検査の仕組み
作りが必要と考えた。
 そこで、わたしは、従来使用していたワクチンソフト
から下記の要件を満たすソフトへの切り換えをはかった。
1)OS起動時検査あるいはタイマーなどによる自動検査
 が可能。
2)常駐監視機能を持つ。
3)ウイルス対策の重要度に応じて、検査の精度をカスト
 マイズできる。
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3.2.ウイルス配布作業の工数削減
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 社内ネットワークが整備されたにもかかわらず、大き
な工数を必要とするフロッピーによる配布が続けられて
いることに疑問を感じたわたしは、その原因を調査した。
結果、「ネットワーク経由感染の速さ」が、即、「ネッ
トワーク配布は危険」と解釈されてきたせいであるとい
うことが判明した。
 そこで、わたしは、感染防止策を講じたうえで、ネッ
トワーク配布に移行することにした。
 ワクチンソフトを電子掲示板掲示文書の添付ファイル
とすることにより、1)配布中にワクチンソフトがウイル
スに感染する可能性をゼロに、2)配布に要する工数をゼ
ロにした上で、3)全社配布を実現した。
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3.3.ウイルス対策の基準作り
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 わたしは、部門ごと、個人ごとで対策レベルに差があ
る現状を解決するためには、なんらかの指針、基準が必
要と考えた。
 そこで、わたしは、平成7年7月7日通産省告示『コ
ンピュータウイルス対策基準』(以下、単に『コン
ピュータウイルス対策基準』と表記する)を、当社の実
態に則してカストマイズすることにした。
 理想的には、全社的に『コンピュータウイルス対策基
準』の中の「ソフトウェア供給者基準」に準拠したいと
ころであるが、限られた経営資源では不可能であった。
 そこで、わたしは、ウイルス対策の要求レベルに対応
して対策レベルを分けることとし、関連部門のシスアド
および情報システム部門の協力を得て、3種類の社内基
準を作成した。
1)各部門のシスアド用に「システム管理者社内基準」
2)関連部門のユーザー用に「ソフトウェア供給者社内基準」
3)非関連部門のユーザー用に「システムユーザ社内基準」
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3.4.ウイルス対策の教育・啓蒙
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 わたしは、折しも全社的な導入が済んだばかりのグ
ループウェアツールの電子掲示板を、ウイルス対策の教
育・啓蒙に活用することにした。

(1)ウイルス対策の重要性を宣伝
 わたしは、ウイルス検査をかんたんにするだけでは不
充分、ウイルス対策の重要性を一般社員に理解してもら
わない限り、効果的なウイルス対策は不可能であると、
考えた。
 そこで、わたしは、1)社外からウイルスを持ち込まな
い、2)社内のウイルスを放置しない、3)社外にウイルス
を持ち出さない、という「ウイルス三原則」をスローガ
ンに、電子掲示板に於いて「当社にとってウイルス対策
がいかに重要なことであるか」を訴えた。

(2)ウイルス対策の情報提供
 また、「ウイルスって、なに?」というところからス
タートして、ウイルスに関する情報提供を電子掲示板で
おこない、ウイルスに関する知識レベルの全社的な底上
げをはかった。

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(設問ウ)解決策または工夫についての反省点と今後の改善点
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1.改善案の評価
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 1)『コンピュータウイルス対策基準』のうち、「シス
テム管理者基準」「ソフトウェア供給者基準」について
は、80%程度の項目に準拠した対策を実施できた。

 2)全社対策開始当初、何年も潜伏していたと思われる
ウイルスが10種類程度発見され、駆除に追われたが、
その後、沈静化した。全社対策の実施の効果大と評価で
きる。

 3)電子掲示板については、一般社員からの質問・意見
も寄せられるようになり、有効に機能している。
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2.今後の改善点
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2.1.ウイルス対策質的向上
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 対象者が多いため、「システムユーザ社内基準」が守
られていないケースが、まだ、見受けられる。今後、地
道な指導を続けて、改善していく。
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2.2.ウイルス対策範囲の拡大
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(1)海外
 企業グループ全体をウイルスに対する脅威から守るた
めに、海外現地法人管理部門に働きかけ、海外現地法人
に於けるウイルス対策を実施する。

(2)協力会社
 協力会社管理部門に働きかけ、協力会社の指導をする。
 当社が、ソフトウェア開発を委託している情報サービ
ス業は小規模な企業が多く、ウイルス対策の意識が低い。
(当社内ではじめて発見されたウイルスは、協力会社が
感染源であった。)





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