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S社エンジ事業部業務支援システムの計画策定

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(設問ア)(800字ライン)
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1.システム計画の概要
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1−1)S社の沿革
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 S社は、創業75年になる中堅の建設会社である。横須
賀海軍工廠の造船の外注からはじめ、戦後はプラント建
設のエンジニアリング会社の下請けとして、プラント業
界が不況になった十年前からは総合建設業として、数回
にわたり事業内容を変針してきた。最近は、人材派遣業
とソフトウェア開発受託業を買収し、社会・時流の変遷
に対応しようとしている。
 買収した人材派遣事業とソフト受託事業は、買収時の
影響で人材の出入りがまだ激しく、収益の柱としてはま
だ落ち着いたものとはなっておらず、いまだに、建設事
業(S社ではエンジ事業部と称している)が収益の柱で
ある。

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1−2)業務支援システムの計画
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 S社エンジ事業部は本社の事業本部と17の部、支店、
出張所からなっており、業務支援システムは、これらの
営業情報、工事情報、予算・実績情報をイントラネット
で統合・運用するものである。
 営業現場、工事現場での運用・利用もにらみ、WWW
サーバとPC、モバイルPCとのC/Sで実現するグルー
プウェアである。主に次の機能がある。
 a.日常業務で用いる帳票・文書作成機能
 b.それらを回覧し承認を得るフロー機能
 c.a.のデータを基にした集計・統計機能
 d.aで入力できないデータのための掲示板・稟議機能
 e.各部員の権限に応じた参照・一覧・検索機能
 f.基幹勘定システムとのデータ整合機能
   (ただし、これは手動によるバッチ処理)
 このシステムにより、部員間での情報・データを共有
し、利活用する計画である。

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(設問イ) (2,075字ライン)
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2.システムの開発・導入の目的
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 先に述べた通り、S社はほぼ10数年で事業内容の変針
を行ってきており、管理職やスタッフ部門がライン部門
の最前線に必要な情報・スキルを必ずしも保有しておら
ず、従ってライン部門の若手教育や指導などにも支障を
生じている。
 一方で、スタッフ部門や管理職は、ライン部門から上
っくる日報や実績データのタイミングや精度等に不満が
高じている。
 わたしは、当初日常定型業務の効率化という事で業務
改善のコンサルティングを受けたのであったが、上述の
様なS社独自の環境も分析した結果、事業部内のコミュ
ニケーション改善も含めたグループウェアとして策定す
る計画を提示した。
 コミュニケーション改善は、スタッフ部門とライン部
門の横関係と、管理職と若手といった縦関係の両方を含
むものである。コミュニケーション改善の前提として、
事業部員は共通の情報・データを持つ必要がある。そう
した共通基盤の上に全部員が立つことで、コミュニケー
ションが改善され、いわゆる「言葉が通じる」関係とな
る。
 この共通基盤の提供が、すなわちグループウェアであ
る支援システムである。したがって開発されるシステム
は、全部員に利活用され得る簡易なユーザインタフェー
スを持つことが、まず第1に肝要である。
 導入されたシステムは、日常業務に確実に定着させる
必要があり、単にインタフェースだけに頼るのは不十分
である。わたしは、計画の中に、日常業務に定着させる
ための工夫を加えた。

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3.システムを定着させる工夫
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 わたしが考えたシステムを定着させる工夫は、次の3
つである。
 a.日常定型業務がすべてシステム内で完結する事
 b.システムを利用しなかった場合でも連携できる事
 c.システム利用時の利点を加えて差別化を図る事

aに関しては、すなわち業務機能の網羅性である。いく
ら簡便ですばらしい性能のシステムでも、業務の一部に
だけしか対応していなければ、つまりはシステムを使わ
ない業務が残る事になる。特にPCやシステムに対して
反感あるいはアレルギーを感じる世代や個性の人々には
認めてもらえないし、使う意志を消失せしめる事になる。
わたしは、この点に関して、要求定義の際の業務フロー
作成を複数グループで別々に行わせ、相互レビューを行
って完全を期した。

bに関しては、導入・移行時のスムーズさも当然ながら、
主に実運用の現場を分析した結果である。
モバイル環境にも対応した、TCP/IPでのイントラネット
であるから、基本的にはどこからでもアクセス可能であ
る。しかしながら、実際の現場では、携帯電話のサービ
ス対象区域外であるとか、あるいはシステムダウンとか
で、手作業を行わざるを得ない場面が発生するものであ
る。一部の、例えば見積内訳書とか工程表の作成とかは、
客との対応上、要求分析時にはなかったフォームの帳票
文書となることもあり得る。
よって、システムは業務フローのどこからでも入れて、
かつ出れるような仕組でなくてはいけない。必ず業務フ
ローの最初から入って、最後まで通して使用しなければ
ならないようなシステムでは、利用度は下がると考えら
れた。
わたしは、以上を設計担当者に説明、納得させた。
さらに、帳票の出力にあたっては、統合・標準化のコン
センサスが得られたもの以外に関しては、現用と全く同
じ帳票の形式を維持する事も求めた。
この時点で、システムの環境も制限される事となった。
WWWベースで、帳票印刷の自由度が高い表計算ソフト
を利用するという事になり、サーバ環境や開発言語も表
計算ソフトを動作させるのに便利な言語という結果とな
った。

cに関しては、何らかの利点や機能をシステムだけに持
たせるという事であり、それによってシステムを利用し
ない場合より、ユーザに得するという事である。
といって、業務に支障をきたすようなものでは、bの観
点からいっても良策ではなく、本末転倒となる。
電子メールの導入に関しては、賞罰性に近いものを勧め
た事があったが、今回はなじまないと思われた。
わたしは、営業情報の掲示板に関して、投稿ユーザや投
稿内容に関して得点をつける事を勧める事にした。さら
に、得点のつけ方や、得点を人事考課に反映する事も示
唆した。

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(設問ウ)(575字ライン)
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4.評価
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 業務支援システムは開発中であり、現在コーディング
が全機能の約60%を終わったところである。
 したがって、本来であれば評価するにはまだ時期尚早
であるが、今回S社の依頼により、一部の機能だけをプ
ロトタイプとして提供した。その試験運用の結果から、
ある程度の評価が可能かもしれない。
 試験運用は、S社エンジ事業部の一部門(20名)を対
象に行われている。
 S社エンジ事業本部としては、システムの一部であっ
ても実際に部員に見せる事で、部員の関心や理解を得る
ことにあったようである。もちろん、プロトタイプの目
的はそういう所にあるのではないのだが、S社の立場に
立って考えると、関心をひくために一部機能だけを運用
するという事は失敗であったと思われる。
 ユーザである部員のほとんどは、一部の業務しか反映
していない事を知った時点で、興味を失ったと見られる
からである。
 実務の現場で行われている業務は、業務フローの中で
全てに関連性があり、途中で関連を断つ事はできないと
いう事である。
 わたしは、前章で述べた3つのうちの最初の2点につ
いて、重要性をいよいよ認識している。

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合計3,450字ライン、114分
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