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  インターネット上でのワインの小売販売計画

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(設問ア)
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1.インターネット上でのワインの小売販売計画
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1.1.新規事業企画の背景
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 当社は高知市で酒類卸・小売業を営む,資本金一千万
円,年商約5億円の株式会社である。数名の従業員を雇
用しているが,実質的には家族経営の個人商店に近い。
私は一昨年,当社社長の三女に婿入りして以来,妻とと
もに取締役として経営に参画している。
 近年の不況による高級酒の販売不振や販売条件悪化等
により,当社の売上高・営業利益は数年来ジリ貧状態で
あった。また,規制緩和等によって流通革新が進み,従
来の卸業の存在価値が相対的に低くなって来ていた。当
社は従来卸売業のみを行っていたが,今後卸売業だけで
は生き残れないと判断し,三年前から新事業としてワイ
ンの小売販売を開始した。この新事業は売上・利益確保
に貢献し,会社イメージの向上やノウハウの蓄積などの
数字に表れにくい効果も評価されている。しかしワイン
の小売販売額は年間数百万円に過ぎず,会社全体の売上
減を補うには至っていなかった。
 以上のような事情から,私は年間3千万円程度の売上
と2百万円程度の営業利益が安定的に見込まれる新規事
業を企画するよう,社長から指示を受けた。
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1.2.新規事業の導入と業務革新
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 私は当社の体力では,まったく新しい分野に進出する
ことは無謀であると考え,酒類販売に活路を見出すこと
にした。日本におけるワイン消費量はバブル崩壊後数倍
に増えており,当社においてもワインの小売販売を拡大
することが有効であると考えられた。しかし,当社は郊
外の卸団地にあり,小売業としては不利な立地条件であ
る。平坦地が少なく地価の高い高知市において,繁華街
で新店舗を確保することは資金的にも困難であった。
 私はインターネットを利用した通信販売を企画し,社
長の決裁を受け,妻と二人で検討を開始した。
(設問ア:800字ライン)

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(設問イ)
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2.新事業実現のためのビジネスプロセス再構築
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 私は新規事業として,単に流行のe−ビジネスに参入
するだけではなく,これを機会に会社の業務全体を効率
化し,競争力を高めるべく,以下のようにビジネスプロ
セスを変革して行った。
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2.1.仮想ショッピングモールの利用
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 私達は既に自力で会社案内のホームページを開設して
いたが,通信販売のシステムを開発するには専門家の力
が必要となり,1千万円近い初期投資が必要であった。
また,独自に通信販売を開始しても告知が難しく,新規
顧客を大量に獲得することは困難であると考えられた。
そこで,当社は優良なシステムを提供し,既に多くの顧
客を集めて実績を上げている大手仮想ショッピングモー
ル「R市場」に出店することにした。

1)R市場店の概要

 まず平成12年1月にR市場内に開設した当社のペー
ジ(当社R市場店)の概要について述べる。
 R市場ではワープロ操作程度しかできない者でも容易
にホームページを作成することができるようになってい
る。店の紹介や商品情報を入力し、画像ファイルを送る
だけでページが完成し、顧客からの注文が受けられる体
制が整うのである。一方、HTMLタグを使用して凝っ
たページを作成することもできる。私達はまず最小限の
機能で「R市場店」を開店し、徐々にページのデザイン
に工夫を加えることにした。
 R市場に出店しているだけで、商品を検索して入って
来た顧客から注文を受けることもある。しかし既にR市
場内で多数の競合店がひしめき合っている状況において
は、顧客を獲得するためにマーケティングプロモーショ
ンに工夫を凝らす必要があった。
 R市場には懸賞やオークションを実施し,応募者にメ
ールマガジンを配信できる機能が備わっている。私達は
この機能を利用して,ワインに興味を持つ顧客のメール
アドレスを蓄積すると同時に当店のPRを図った。そし
て,これらの顧客にメールマガジンを定期的に配信した
が,その中での商品の紹介は売上に直結した。また,顧
客が任意のワインを選び,化粧箱,のし紙や包装紙を指
定できるギフトセットBTOサービスなど,当店独自の
サービスを提案していった。
 顧客から注文が入ると、R市場から私宛に電子メール
が届くので,R市場にアクセスして受注内容を確認し、
商品の出荷をする。当初は自ら倉庫へ行ってワインをピ
ッキングし、荷造りして,売上伝票と宅配便の配送伝票
に記入する作業を行っていた。

2)売上増に伴う帳票等の電子化

 リアルの店舗での小売は多い日でも顧客が十数人、売
上高十万円程度であった。そのため、売上伝票や各種の
帳票類はそれまで全部手作業で作成していた。R市場店
には従来の数倍から数十倍の注文が入ることが予想され
たので、私は予めパッケージソフトを利用した販売・会
計システムの導入を検討しておいた。しかし、リスクを
避けるため、R市場店開店当初は発注せず、受注増によ
る事務量増大が現実のものとなると同時に、この会計シ
ステムを導入した。費用は3百万円強であった。
 このシステムでは,R市場からダウンロードした受注
データをもとに受注伝票作成から一連の経理処理作業ま
でが自動化されている。また、ピッキングリストや宅配
便の伝票を印刷することにより,作業の省力化を図って
いる。更に,このシステムは事業種目毎に別々にデータ
を集計し、予実管理を行う機能も備えている。私はR市
場店だけでなく、リアルの店舗での小売や、本業である
卸業の経理を一括してこのシステムに移行し、会社全体
の事務処理効率化を実現した。
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2.2.オンライン発注による在庫削減
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 R市場店の売上は順調に増加し、平成12年後半には
毎月300万円以上の売上となった。ワインはその商品
特性上,多品目少量販売となるが,全品目を十分量在庫
しておくことはコストが掛かって望ましくない。また,
従来通り手作業で発注していては,多量の小口注文を迅
速に捌くことが困難であるし,受注量・品目数の増加に
より,発注業務の負荷が問題になっていた。
 顧客から寄せられる希望を取り入れて品目を増加させ
た結果、平成12年後半には在庫金額が常に800万円
を超えるようになっていた。そこで私は発注業務の効率
化と在庫削減を実現するための方策を検討した。
 当時、零細卸売業である当社は一次卸業者へ手書きの
ファクシミリを送信して商品を発注していたが、近年大
手の卸では発注のオンライン化が進んでいた。一次卸業
者の担当者に照会したところ、当社で正午までに入力し
た主要大手メーカーの酒類が翌日中に配送されるシステ
ムを約200万円の費用で導入できることが分かった。
私はR市場の受注データを処理してこの発注システムに
送れないかと考え、このシステムを扱うベンダの技術者
に相談した。この機能は比較的容易に実現できることが
確認されたので,私はこのベンダに連結部分のプログラ
ム開発を依頼した。このデータは当社の販売・会計シス
テムを通るので,発注伝票との整合性が保たれる上,在
庫管理も容易になった。このシステムの導入により、売
れ筋商品は常に適正在庫を確保し、受注頻度の低い商品
は受注後発注するという作業が自動化され、在庫金額が
500万円前後に圧縮された。

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(設問ウ)
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3.新しいビジネスプロセスの評価
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3.1.予想以上の売上増加による業務負荷の増大
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 平成12年は最終的に3800万円の売上があり、平
成13年は6千万円程度の売上を見込んでいる。当社は
本来酒類卸業であるため、倉庫や作業場所には余裕があ
り、荷造りをするアルバイトを1名雇うことで出荷は順
調に行われている。また,販売・会計システム,オンラ
イン発注システムともに順調に稼動している。
 ところが、R市場は本来零細な店が容易にインターネ
ットビジネスを行うためのシステムであり、多量のデー
タのやり取りには不向きである。新商品の登録も,受注
処理も,1件ごとに手作業で処理しなければならない部
分が少なくないのである。私達は毎日パソコンの前での
作業に時間を取られている。
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3.2.顧客データの分析と今後の施策
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 R市場のシステムではこれ以上の受注を捌くことは困
難であると考えられる。しかしR市場の集客力には捨て
難いものがある。私はまず,顧客データを詳細に分析し
た。その結果、受注の9割はメールマガジンの読者から
のものであり、更に受注の半分以上は繰り返し注文して
くる優良顧客からのものであることが分かった。
 以上の結果から,私達は新しいホームページの製作に
ついて検討を始めた。このホームページは当社独自のド
メインを取得し、商品データの整備から受注、決済まで
を効率よく行うための要件を満たすものとする。また,
従来のR市場店は現状のまま継続し、既存顧客を随時自
社のホームページに呼び込むことで、業務の合理化を図
るのである。
 この新ホームページのシステムの開発には、R市場店
における平成13年度の営業利益予想額とほぼ同じ、約
一千万円が必要と見込まれている。現在は今後の市場の
可能性を考えながら、社長をまじえて導入の可否を検討
しているところである。
(設問イ+ウ:3100字ライン)





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