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□ プロジェクトの品質管理に関して
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(設問ア)
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1.私の所属と業務
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 私は、大手ハ−ドウェア企業に所属する金融業界向け
のSEである。現在、大手銀行A行向け勘定系システム
(以下、A行システム)の開発に従事している。
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1−1.A行システムプロジェクトの概要
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 A行システムの開発は、当社がシステムインテグレ−
タとして全て請負う。開発言語はオブジェクト指向言語
であり、当社の標準パッケ−ジ(以下、標準版システム)
のカスタマイズを前提としている。開発チ−ムの構成は、
課長、社員6名、協力会社は4社(合計約30名)であ
る。開発期間は3年以上の大型プロジェクトである。課
長は責任者であるが、プロジェクトリ−ダ−は先輩の
T氏が担当した。
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1−2.私の役割
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 私はA行システムプロジェクトのサブリ−ダである。
サブリ−ダは、リ−ダのサポ−トの他に、担当するサブ
システムに関しては実質的なリ−ダの役割をもっている。
 私が担当したサブシステムは、電文送信を行わない処
理(以下、ロ−カル処理クラス)である。これは全体の
1/4程度の規模であり、協力会社は2社が関与してい
る。以下、ロ−カル処理クラスについて記述する。
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1−3.品質管理上の留意点
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 品質管理上の留意点は以下の三点である。
 第一に、オブジェクト指向の開発に対してスキルが高
くない。特に社員のスキルは低い。
 第二に、カスタマイズの対象である標準版システムが
完成していない。この二つは、制約条件として、プロ
ジェクト開始時点より認識されていた。
 最後に、協力会社を含め開発メンバ−が多数である。


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(設問イ)
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2.品質管理上の問題と対応策
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2−1.品質管理上の問題
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 品質管理においての問題点は以下の三点である。
・要員のスキル不足による品質低下
・協力会社との連携不足による品質低下
・標準版システムの影響による品質低下
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2−2.三つの問題に対する施策
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 私の施策の前提には次の考えがあった。
 要員のモチベ−ションとメンバ−個々のスキルがソフ
トウェアの品質に大きな影響を与える。また、個々のモ
チベ−ションやスキルが高くても、コミュニケ−ション
が不足していると、プロジェクト全体としてのソフト
ウェアの品質向上に結びつかない。
 組織として共通の目的の為に他プロジェクトに協力す
る体制が必要である。
 私の施策は三つである。直接的なものだけでなく、成
功するための提案など間接的なものもある。
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2−2−1.要員の教育
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 新規言語の習得は代表がトレ−ニングを受け、他のメ
ンバ−はOJTで済まされることが多かった。当プロ
ジェクトも、全体会議では同様の方針であった。
 しかし、私は社員全員が一定レベルのトレ−ンングを
受けるべきだと感じた。チ−ムミ−ティングの席で以下
の提案した。
・オブジェクト指向開発は、従来とアプロ−チが異なり、
 単なる新規言語での開発というものではない。個々の
 社員の技術水準が低いと、多数の協力会社のメンバ−
 を取りまとめられず、システム全体の品質が低下する
 可能性が高い。
・社員が流行のオブジェクト指向言語での開発に意欲的
 であり効果が大きい。
・スケジュール上、トレ−ンングを全員が受けることは
 可能である。
 最終的に、全体会議で承認を得る事ができた。私はト
レ−ニング担当を立候補し、社内のトレ−ニングセン
タ−に品質等を確認した。課長を除く全員が順次トレ−
ンングを受講した。
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2−2−2.コニュニケ−ションの向上
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 品質管理では、日々の作業で発生する問題点の早期発
見が重要である。後工程での品質の回復は、難しいだけ
でなく、費用や工期にも大きな影響を及ぼす。また、コ
ミュニケーション不足が原因の品質の低下だけは避けな
ければならない。
 まず、私は統制されたレビュ−による問題点発生の監
視だけでなく、日常的に、喫煙室などでも、メンバ−と
の積極的にコミュニケ−ションに努めた。特に、協力会
社のメンバ−には、私自身が理解者であり、話しやすい
人物であるということを認識してもらう必要があった。
これが最初の関係作りである。
 次に、協力会社を含めたプロジェクトのメンバ−全員
が、円滑にコラボレ−ションできる環境作りが必要と感
じた。この点に関して、従来はデ−タの受渡しだけで面
識がなかった協力会社同士のメンバ−を積極的にミ−
ティング等で同席させ、自然と良好な人間関係が構築さ
れるように図った。
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2−2−3.標準版システム開発チ−ムとの協力体制
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 当プロジェクトは、標準版システムの既存部品のカス
タマイズ(修正、派生等)が前提であり、A行固有の機
能についてだけ、部品(クラス、メソッド等)を新規製
造する方針であった。従って、新規開発部分が少なく、
その結果、品質的に比較的安定したプロダクトになると
期待されていた。
 ところが、製造フェ−ズの中盤で、協力会社2社から、
標準版システムの部品はバグが非常に多いという報告を
受けた。私は、標準版システムチームが、全体のスケ
ジュールに追われて、個々の部品を簡易なテストのみで
リリースしている点が問題だと判断した。さらに、不備
ではないが、標準版システムの部品とA行版のプログラ
ム仕様とでは、デ−タ型などの相違が多い点、関数や引
数が不足している点、具備すべきメソッドが存在してい
ない点があり、新規にコ−ディングする分量が予定より
非常に多いとの連絡も受けた。
 私は、事態を早速、チ−ムリ−ダであるT氏、及び課
長に報告した。私は、関係者からヒアリングした結果を
まとめ、数日後に開催されたミ−ティングで提案した。
・プロジェクト開始時期が異なっていたため、標準版シ
 ステムチ−ムとのコミュニケ−ションが不足していた。
 今からでも標準版システムチ−ムとの連携を強化する。
 課長経由で全体会議で報告され具体的に以下のように
 処置されることになった。
・標準版システムチームは、A行システムチームで再利
 用が予定される部品について優先的に扱う。
・標準版システムの仕様は、ファーストユーザであるA
 行システムをより考慮したものにする。
・その他、両チームはお互いより連携をとる。
 標準版システムチ−ムの理解と協力の結果、カスタマ
イズは以前より順調に進み出した。
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設問ウ
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3.三つ施策の評価と今後の課題
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 品質管理に関係して実施した三つ施策をについて現時
点での成果を確認する。また、今後のプロジェクトに反
映すべき事項を課題として付け加える。
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3−1.要員の教育についての評価
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 メンバ−全員がトレ−ニングに参加でき、全員のモチ
ベ−ションとスキルが向上した。結果として、品質向上
に寄与したと考えている。
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3−2.コニュニケ−ションについての評価
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 担当者レベルで相互に顔が見えることで、仲間意識と
責任感が強まり、プロジェクトとして良い方向に向かっ
た。社内社外を問わず、品質向上に対する意識が高まり、
積極的に改善策などの意見が出てくるようになった。
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3−2.他プロジェクトとの連携についての評価
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 プロジェクトの製造フェ−ズでは、社内他プロジェク
トが原因で、深刻な問題が発生したが、私一人で対応で
きる問題でないと判断し、上司に相談し適当な処理をと
ることができた。現在は、オブジェクト指向開発を最大
現に生かした安定した品質管理が行われている。
 標準システムチ−ムとの円滑なコミュニケ−ションに
より関係も良好である。
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3−3.品質管理についての今後の課題
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 今後、オブジェクト指向のプロジェクトが主流になる
と思われる。オブジェクト指向の開発は、ある程度の経
験を積めば、派生などの部品の再利用により高い品質が
期待できると実感している。部品の効率的な利用は品質
管理だけでなく、スケジュール管理、費用管理に貢献す
る。再利用を前提に、より早い段階から関係者間のより
一層のコニュニケ−ションが必要である。
 また、高い品質維持には、メンバ−のモラ−ルが大き
く影響するので、今後は社員だけでなく、協力会社など
も含め教育の支援も考えていきたい。




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