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 (情報システムの中長期計画の策定について)

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(設問ア)
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1.当社の情報システム5ヶ年計画の概要
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1.1.私が赴任した時点の当社の状況
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 当社は中堅食品メーカーの子会社で,親会社の製品を
関連会社の社員等に販売するために設立された,資本金
5千万円,年商5億円の株式会社である。従来,当社で
は親会社から指示された製品を,同じく親会社から配付
された名簿に従って案内し,販売するだけであった。そ
のため,当社では独自の販売戦略を立案する必要もなく,
社員の士気は低かった。私は数年来債務超過状態にあっ
たこの会社の経営を立て直すため,97年5月に親会社
から出向し,取締役経営企画室長に就任した。
 当時,当社では古いパッケージソフトを利用した販売
会計システムの他はパソコンが利用されていなかった。
年配の社員が多いこともあり,旧式のワープロ専用機を
使いこなすのがやっとの状況であった。

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1.2.経営環境の変化による情報化の必要性
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 数年来の不況のため,そろそろ従来のような呑気な商
売のやり方は許されない雰囲気になりつつあった。前々
年に就任していた新社長は,その頃会社の主導権を完全
に掌握し,経営革新を始めたところであった。私は社長
の命を受け,業務内容の抜本的な見直しと,新規事業参
入の可能性の検討を開始した。98年春には経営の5ヶ
年計画の策定を完了し,取締役会で承認された。これに
引き続いて情報化5ヶ年計画の策定に着手し,同年秋に
策定が完了,取締役会の承認を受けた。その計画は次の
3点を柱とするものであった。
 ・西暦二千年問題対応措置の早期完了
 ・パッケージソフト更新に伴う業務革新
 ・新事業参入のための情報化投資
(設問ア:725字ライン)

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(設問イ)
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2.情報化5ヶ年計画の策定過程
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2.1.経営5ヶ年計画の概要
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 本論文の主題である情報化5ヶ年計画は,当社の経営
5ヶ年計画を前提に策定されたものである。ここではま
ず,その経営5ヶ年計画の概要について述べる。

1)前期:1998〜2000年
 この期間は従来の業務の抜本的な見直しと効率化を実
行し,新規事業に振り向け得る経営資源の見当を付ける
期間とする。

2)後期:2001〜2002年
 この期間は2000年末までに計画をまとめた新規事
業を実行に移す。2002年中には新規事業についての
評価をまとめ,次の5ヶ年計画に反映させる。
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2.2.情報化5ヶ年計画の策定手順
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 私は当社の情報システムを整備する上で,以下の順に
検討を進めた。これは緊急性のあるものを最優先にし,
次に後々の基礎となるべきものを固めた上で,最後に新
しいものに手を付けるという手順であり,経営5ヶ年計
画を踏まえたものである。

1)西暦二千年問題対応措置の早期完了
 当社の販売会計システムは93年に導入されたCUI
環境の古いタイプであった。調査の結果,このシステム
は2000年以降全く作動しないことが判明したので,
99年中に更新することを最優先課題とした。
 このシステム更新は,ハードウェアの全面的な入れ替
えを伴う大掛かりなもので,必要な投資額は600万円
余りと見積もられた。これは当社にとって,単に既存の
業務を継続するための投資としては大き過ぎる金額であ
り,問題となった。

2)システム更新に伴う業務革新
 上述の西暦二千年問題対応措置に必要な投資が問題に
なるのは,既存の業務に変化がない,すなわち新しい利
益を生み出さないからである。私はむしろこの機会を利
用して社内の情報化を進め,業務を根本的に見直して効
率化することにした。私は投資額を追加し,以下のシス
テムを実現することを社長に提言した。
 ・社員1人当たり1台のパソコン導入
 ・すべてのパソコンを社内LANに接続
 ・社内LANからのインターネット接続と,社員全員
  への電子メールアドレス配布
 これによって,従来OA化一歩手前の状態であった多
くの業務を一気に情報化し,業務手順を根本的に見直す
ことで効率化するのである。
 このシステムを実現するためには,西暦二千年問題対
応措置と併せて1300万円を超える投資が必要であっ
た。しかし,実際には5年リースで月額25万円弱の支
払いになる。私は新規事業を見据えて優秀な事務員を雇
うことと比較すれば安いものであると社長を説得し,了
承された。
 新システム導入に併せて,社員の情報リテラシ教育の
計画も策定し,予算化した。しかし,キーボード操作も
ろくにできない者もいる状態で,全社員がすぐに新シス
テムを使いこなせるとは考えられなかった。そのため,
新システムは従来の手作業で起票された伝票も入力でき
るなど,移行措置には細心の注意を払うことにした。

3)新事業参入のための情報化投資
 経営5ヶ年計画では,新事業の詳細は2000年半ば
に決定する予定である。しかし,インターネットを利用
して親会社の製品や他社から仕入れた関連商品を販売す
ることは概ね決定されていた。そのため,情報化5ヶ年
計画では具体的なシステム投資計画については策定して
いないが,以下の事項を決定した。
 ・投資対象はハードウェアよりも,むしろソフトウェ
  アやノウハウを中心にする。
 ・情報化投資額はその時の経営状態により決定するが
  概ね500〜1000万円とする。

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(設問ウ)
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3.情報化5ヶ年計画の検証と今後の施策
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 ここで述べた情報化5ヶ年計画は98年秋に策定され
たものであるが,西暦二千年問題対応措置と,システム
更新に伴う情報化は一応の成功を収めた。現在では親会
社の人員整理に伴う出向によって社員が若返ったことも
あり,情報リテラシもかなり高いものとなっている。既
存業務は以前よりも遥かに効率よく行われるようになっ
た。今後は業務の遂行方法よりも,業務そのものの見直
し,すなわち真に経営に貢献する業務の選別が課題とな
る。
 新規事業への投資については,先に述べたように5ヶ
年計画策定時点では詳細に決定されていなかった。実際
にはその後経営環境が更に悪化し,新規事業には投資で
きなくなってしまった。全員がインターネットに接続で
きる環境は整備されているので,インターネットを利用
した通信販売は一応開始している。しかし十分な収益を
上げるには至っておらず,今後売上・利益の増加の可能
性を詳細に検討し,投資の可否について検討する必要が
ある。
 いずれにせよ,経営環境の変化が激しく,情報技術も
日進月歩の時代である。今後次の経営および情報化5ヶ
年計画を策定するにあたり,中長期計画をタイムリーに
見直す体制を整えることが重要になる。
(設問イ+ウ:2225字ライン)



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