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(適用業務システム開発における業務の見直し計画の立案について)

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(設問ア)
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1.K社のEC参入とシステム開発の概要
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1.1.K社の新ECサイトの概要
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 M社は年商1千億円弱の中堅製造業で,昨年一般顧
客への小売販売を行うECサイトを開設した。しかし
組織が大きい上に必要以上に複雑なシステムを構築し
たため小回りが利かず,売上は低迷している。収益事
業としてのみ評価した場合,年間数億円の赤字を生み
出すこのサイトは完全に失敗であった。M社ではこの
サイトを同社製品に関する広報・啓蒙活動に特化し,
新たに子会社K社を設立して別のECサイトを開設す
ることにした。
 K社サイトはM社製品に限らず,関連の商品を幅広
く取り扱うことによって売上高の増加を目的とするも
のである。当初は顧客獲得のため大手ショッピングモ
ールに出店し,同時に自社サイトの開発に着手するこ
とになっていた。
 大手ショッピングモールに出店したサイト(以下R
店と呼ぶ)からの受注データは,当初M社の旧ECサ
イトのシステムで処理されることになっていた。この
システムは,R店からの受注データを元に自動的に在
庫引当・配送指示・決済等を一括して処理するもので
ある。
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1.2.K社の独自性を考慮した開発計画の見直し
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 以上のようにM社の既存のシステムを利用すること
により,当初は開発費用が節約できると考えられた。
しかし,M社のシステムは運用・保守にかなりの費用
が掛かる上に,小回りが利かないことが問題とされて
いた。そこでK社の事業戦略の見直しから始めて,K
社で使用するシステムを根本的に検討することになっ
た。別の子会社で業務革新と情報化に当たっていた私
はK社の責任者に任命され,K社の経営からシステム
開発計画策定までを担当することになった。
(設問ア:800字ライン)

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(設問イ)
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2.K社のシステム開発方針の見直し
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2.1.K社の売上高予想と業務フローの見直し
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 M社のECシステムは,当初年間十億円以上の売上
を想定して構築された。しかしながら,実際の売上高
は1千万円程度であり,ネットワーク,データベース
ともに利用効率が悪いものとなっている。私はまず,
K社での売上高を現実的な数字で想定した上で,それ
に合わせた業務フローを決定することが重要であると
考えた。その上で,情報システムや物流の体制等,既
存のシステムの問題点が議論できるのである。
 私はまず,同業他社の関連会社の実績や,ショッピ
ングモール内の一般小売店の動向を調査した。その結
果,K社の初年度の売上は最大で5千万円,次年度以
降も1億円程度までであると想定された。
 ところで,M社のシステムの一部をK社が利用する
場合,カスタマイズ等の初期費用に1千万円強を要す
る。更にシステム運用経費として年間2千万円以上が
必要となり,これらをK社が負担する計算になる。K
社の売上見込を考えると,このシステムをK社が利用
することはほとんど不可能であると考えられた。
 また,M社システムはメーカーの発想で作られてお
り,顧客と直接遣り取りする通信販売には様々な点で
不向きであると考えられた。このシステムでは,受注
データを元に,決済から商品の配送手配まで全て自動
的に処理される。そのため,顧客からの問い合わせへ
の返答や,イレギュラーな要求への対応が不可能であ
る。今日のECにおいては,CRMによって顧客満足
度を高めることの重要性が常識になっている。K社の
受注数は最大でも1日百件以内であると想定されるた
め,個々の受注を人間の目で確認する過程を業務フロ
ーに盛り込むことにした。
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2.2.M社システムからの切り離しと独自システム構築
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1)必要なシステム要件の検討
 以上の検討の結果,K社は当初予定されたM社シス
テムとの連携を中止し,独自にかつ安価にシステムを
構築することが必要であると考えられた。システムに
必要な要件を検討した結果,以下のような項目が挙げ
られた。
 ・K社システムは商品マスターと売上データを中心
  とし,受発注および会計処理全般を担当する。
 ・K社で作成した商品マスターとR店にアップする
  データの同期が取り易い。
 ・R店の受注データをK社受注処理システムに容易
  に取り込め,顧客からの連絡等により,必要に応
  じて随時修正することができる。
 ・受注データをもとに,配送手配まで一貫した処理
  をすることができる。
 ・K社受注システムに取り込まれたデータを元に,
  K社の決算処理に必要な帳票等が適宜作成できる。

2)パッケージソフトの利用の検討とEUD
 私は最初,以上の要件を満たすためには,市販の販
売・会計システムを用い,R店とのデータ受け渡しの
部分をEUDによって構築することが現実的であると
考えた。私はT社員をこのシステム構築のプロジェク
トマネージャに任命した。T社員は大手コンピュータ
メーカの元SEであったが,当社の商品への興味を持
って専門的な勉強をし,広報活動の要員として採用さ
れた者である。ECの企画全般をも担当させるという
条件で,T社員はプロジェクトマネージャに就くこと
を快諾した。
 T社員は市販のパッケージソフトを詳細に検討した
結果,市販の安価なデータベースソフトで一から構築
したほうが安価でかつ速いと主張した。そして,翌週
の月曜日には,週末に自宅で試作したプロトタイプを
実演して見せたのである。
 私はT社員に開発に必要な要員と日数の見積を指示
しようとしたが,次の瞬間,T社員は詳細な予定表を
提示した。前職でプログラマ,SE,プロジェクトマ
ネージャを一通り経験しているT社員は,R店の開店
に合わせ,十分な余裕を持って一人でシステムを開発
できる予定を既に立てていたのである。
 私はT社員の予定表を詳細に検討した結果,EUD
による構築を了承した。

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(設問ウ)
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3.見直し後のK社システムの特徴
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 T社員のシステム開発は順調に進み,R店も予定通
り開店して販売を開始している。受注処理関係の開発
を優先し,社内の決算書類等の作成部分は後から開発
するという計画であり,ほぼ当初の予定通りに進んで
いる。このシステムの特徴は以下の通りである。
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3.1.開発・運用・保守のコスト
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1)開発コスト
 必要なコストはパソコン3台(1台をサーバとした
C/Sシステム)と基本ソフト,ワープロ・表計算・
データベース等が揃ったパッケージソフトの代金のみ
で,90万円であった。これはM社システムをカスタ
マイズする費用の十分の一以下,販売・会計システム
のパッケージを利用した場合の数分の一である。
2)運用・保守コスト
 運用に要する費用はハードウエアの減価償却費と電
気代,インターネット常時接続のプロバイダ料金およ
び電話料金のみである。保守もT社員がECの企画・
運営業務の合間に随時行えるので特別なコストは発生
しない。
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3.2.保守の容易さ
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 日常業務の中でシステムを改良したい点があった場
合,要件をその場でT社員に伝えれば,すぐに改善さ
れる。業務フローの変更や新たな業務が発生した場合
にも,T社員がすぐに要件を把握して対応できるため
に,滞りなく業務を遂行できる。
(設問イ+ウ:2475字ライン)



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