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(情報戦略の企画について)

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(設問ア)
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1.M社の経営破綻処理の準備
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1.1.M社の放漫経営
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 M社は資本金2百億円,従業員数約千人,年商1千万
円弱の一部上場製造業である。M社の株式の11%はA
社が,残りの大半は銀行や生保が所有している。しかし
M社の社長は代々創業者一族が世襲していて,高齢のT
社長は既に十数年間現職にある。
 T社長はバブル期に株式投資を積極的に行って数十億
円の損失と,その数倍の含み損を被った。また,海外で
の不動産投資や国内での文化活動など,一見イメージは
良いが,採算性の見込めない事業への投資を繰り返して
いた。これらの投資の原資として,多量の転換社債やワ
ラント債を乱発し,その償還期限が来年に迫っている。
 また,M社の売上高は概ね9百億円前後であったが,
T社長は一千億企業の社長になりたいとの夢を持ってい
た。そして一時的な流行に過ぎないことが明白な商品の
製造設備に過大な投資をしたり,採算を度外視したシェ
ア拡大を目指したりした。その結果,本業が儲からない
体質が定着してしまい,負債は膨らむ一方であった。
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1.2.会社の穏便な清算に向けた経営戦略
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 以上のような状況にあって,M社が来年度中に倒産す
ることは最早避けられない。そして倒産した場合には,
T社長始め取り巻きの歴代役員の経営責任を問うために
株主代表訴訟が起こされることが懸念されている。
 M社経営陣にとって現在の最重要課題は,M社破綻後
に自分たちの責任を追及されないように工夫することで
ある。T社長は再建への努力の姿勢を示すため,昨今流
行のカンパニー制や執行役員制を導入し,A社他から社
外取締役を受け入れるなどの改革を行っている。また,
採算性を度外視した無謀な事業を整理し,なるべく有効
な事業に見えるように改革することで,責任を逃れるべ
く努力を開始することになった。
(設問ア:800字ライン)

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(設問イ)
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2.M社ECサイトの改革
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2.1.M社のECサイトの現状と今後の方針
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1)ECサイト開設の経緯と現状
 数年前からのITブームの中で,T社長は高度情報化
社会に乗り遅れてはならないと考えていた。そして,E
Cが画期的な売上高と利益をもたらすとの幻想を抱き,
ECサイトの開設を指示したのである。
 ところが,M社は概して情報化が遅れており,社員の
情報リテラシも非常に低いレベルにあった。ECサイト
の開設を指示された部長もコンピュータやネットワーク
の知識は皆無に等しかった。彼は取り敢えず自分の言う
ことを聞く営業マンを集めてプロジェクトを組んだが,
そのままでは何もできず,広告代理店に相談した。その
広告代理店と,その紹介のコンサルタントおよびSIベ
ンダ他を加え,プロジェクトが動き始めたのは昨春のこ
とである。
 しかし,その広告代理店もコンサルタントも効率よい
ECのノウハウを持っていなかった。M社のECサイト
の本格稼動は予定時期よりも大幅に遅れ,経費も当初の
見込を大幅に上回った。結局現在までに約5億円を投じ
ているが,売上はいまだ1千万円にも達していない。

2)ECサイトの改革方針
 M社経営陣はECサイトが予想以上に儲からないもの
であることを認識したが,ここでこれを止めてしまうわ
けには行かない。経営判断を誤って無駄な投資をした責
任を追及される恐れがあるからである。
 このサイトを継続するに当たっては,運用コストの削
減と売上以外の効果をアピールすることの2点が最も重
要な戦略とされた。

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2.2.M社ECサイトの改革の企画
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1)ECサイト改革への参画の経緯
 私は昨年までM社の子会社に在籍し,情報化と経営革
新に当たっていた。そして,M社の累積赤字一掃と,グ
ループ内でも最先端の情報化を実現した実績を買われ,
今般の改革の責任者に選ばれた。しかし,私がM社ネッ
トワーク営業室に赴任した時には,既にECサイトは上
述のような破綻状態にあったのである。

2)コスト削減方針
 私はまず,年間3億円近いECサイト運用コストの内
容を分析し,削減の方針を立てた。
 コストはシステムの保守・管理費,サイトのコンテン
ツ制作費と,M社ネットワーク営業室従業員の人件費そ
の他の固定費からなる。
 システムの保守に関しては,臨時に費用が発生する,
サイトの大規模なリニューアルや機能の追加を極力避け
ることにした。通常のシステム管理の費用についても,
管理体制の見直しと価格交渉で削減を図ることにした。
 コンテンツ制作については,広告代理店への外注を止
め,社内スタッフによる制作を中心とすることにした。
また,海外取材など費用のかかる企画を極力排すること
にした。
 社内の固定費については,ネットワーク営業室の要員
を,後述するサイトの目的変更に絡めて他部署との兼任
にすることで削減を図ることにした。室員は基本的に販
売推進室や事業部の所属とし,また各部室に割り当てら
れる本社固定費負担額も大幅に削減した。

3)サイトの目的の変更
 2)で述べた削減を実施しても,ECサイトに必要な経
費は年間1億円近いものとなる。その採算を単独で考え
た場合,年間数億円の売上が必要となり,その実現性は
皆無であると考えられた。したがって,この事業の正当
性を主張するためには,サイトの存在が本業に与える良
い影響をアピールするしかない。
 このサイトはECによって売上と利益を実現すること
を想定して制作されているが,M社商品やそれに関連す
る情報を満載している。私はこのサイトを消費者への情
報提供のツールと位置づけることで,存在意義をアピー
ルすることにした。そして,ECを行うのは,消費者の
動向を探るためのアンテナショップ的なものであって,
それ自身で利益を生むものではないと主張することにし
た。
 サイトの目的を以上のように変革するために,コスト
を掛けない範囲での情報提供ページの充実や,メールマ
ガジンの発行頻度を上げるなどの方策を打ち出した。

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(設問ウ)
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3.ECサイト改革の課題と対策
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 以上のような改革を行うに当たって,私は以下の2点
を重要と考え,対策を考えた。

1)改革目的の隠蔽
 今般の改革は,倒産後に責任を回避するための方策に
過ぎないが,株主や取引先は勿論のこと,従業員にもそ
のことを知られてはならない。私は,この改革がM社の
将来の発展にとって有益なものであると,会社の内外に
繰り返し主張して理解を得るように努めた。

2)削減前のコストの位置付け
 今般の改革で年間2億円以上のコスト削減になり,社
外へ支払う費用も1億円程度削減されることになる。
 このようなコスト削減は,それ自身が評価されるより
も,削減以前の支出が無駄であったことの責任を追及さ
れる可能性が高い。私は削減前の費用を,システム的に
もコンテンツ的にも立ち上げ時に必要な初期費用であっ
たと主張することにした。そのため,通常のコスト削減
実績をアピールする場合とは反対に,削減前のコストの
正当性を主張するための理由付けに腐心した。
(設問イ+ウ:2325字ライン)





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