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 (インターネットをビジネスに活用する情報戦略について)

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(設問ア)
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 A社は東北地方に拠点を置く倉庫業者である。主要な
寄託者は菓子・衣類・家電など一般消費者向け商品の
メーカーや卸業者であり、その配送先は主に小売店であ
る。
 近年東北地方でも郊外型大規模小売店の出店が著しく、
保管商品アイテム数の増加・出庫依頼の多品目小ロット
化など入出庫・保管業務の形態に変化がみられ、それに
伴い寄託者からの情報フィードバックの要請も高まって
きている。
 A社ではCSの向上を経営方針の1つに掲げており、
寄託者からの要請には積極的に応じてきた。また、配送
先である小売店からはA社に起因する苦情以外にも配送
業者原因がある苦情も寄せられているが積極的に対応し
ている。
 このようなA社の姿勢が評価され大規模小売店B社か
ら商品の保管から配送までを一括してアウトソーシング
されることとなり、これを機に情報化を促進し競争優位
性を確立する積極策を打ち出す事になった。しかし最近、
A社に起因する苦情が増加しており、その原因の1つに
A社の方針であるCS向上のためのサービスや苦情処理
が負担となっていることが判明し、A社では危機感を募
らせている。
 システムアナリストを擁していないA社は独立したシ
ステムコンサルタントである私にシステムアナリストと
しての立場で情報戦略の策定を依頼した。これを受けて
私はA社の経営方針に基づき、寄託者・配送先双方の
CS向上を達成目標とし、「A社業務の合理化を図り各
種問合せに迅速に対応するための情報化の推進」を念頭
に新物流システムの構築を提案した。また、短期間の実
現のために、データ通信にはインターネットを活用し、
システム構築には高い技術力を備えた専門業者へ業務委
託することを付言した。

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設問イ
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1.A社のビジネスプロセスの分析
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 A社では在庫管理システムは導入済みであり、入出庫
及び在庫に関する帳票類を出力し利用している。また、
倉庫内ではロケーション管理を行っている。

 A社の業務フローの概要は以下の通りである。
1)商品到着後読合せ検品、保管場所へ移動し入庫伝票
  に棚番号を転記
2)入庫伝票を在庫管理システムにパンチ入力
3)FAX・電話・データ送信のいずれかで(寄託者に
  より異なる)出庫依頼を受付
4)出庫依頼を在庫管理システムにパンチ入力
5)出荷先毎のピッキングリスト作成、品揃え
6)配送業者への配送指示、積込検品
7)出庫実績の在庫管理システムへの確定入力
8)日次締後在庫マスタを更新し、在庫日報を作成。寄
  託者へ報告
9)在庫旬報・在庫月報を作成し寄託者に報告

以上のフローから問題点として
1)紙ベースのビジネスプロセスであり無駄な作業が生
  じる
2)在庫マスタの更新が日次処理で行われるため、問合
  せへの即時回答が困難
3)在庫管理システムへの入力作業がボトルネックとな
  り、他の作業が遅延
4)パンチ入力に起因するミスの発生

ということがあるのではないかと考え、実情をヒアリン
グしたところ
1)在庫状況の問い合わせの都度倉庫の実在庫を確認し
  て回答しなければならない
2)在庫管理システムへの入力ミスによる在庫日報と実
  在庫の差異が生じ、修正に時間と手間を費やしてい
  る。
3)在庫管理システムで作成される資料は専用帳票を使
  うため出力形式が固定しており、寄託者の要望に答
  えるためには別途パソコンで表計算ソフトに再入力
  しなければならず負担が高まっている

との回答が得られ、裏づけられた形となった。

また、A社に寄せられる苦情としては
1)ピッキングミスによる商品の過不足
2)問合せに対する回答の催促
3)配送業者起因の汚損・破損、誤配・遅配

が主なものであり、問合せでは
1)予定外の出荷のための在庫照会
2)予定外の入庫・保管の可否
3)配送状況・到着予定の確認

が主なものである。1)と2)は販売繁忙期に集中し、
3)は東北地方という地域がら冬季間に増加する。

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2.新ビジネスプロセスへの変革と前提要件
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 前項で述べた問題点を解決し、達成目標を実現するた
めに、紙ベースのビジネスプロセスからの変革を考え、
新物流システムには

1)出庫依頼のEDI化を推進し、出庫情報の確度の向
  上と入力業務の合理化を図る。データ通信にはイン
  ターネットを活用する。
2)バーコードとハンディターミナルを導入し、入出庫
  実績の精度を向上させ入力業務を合理化する。同時
  にロケーション管理の精度向上と合理化を図る。
3)在庫管理システムの再構築を行い、電子データとハ
  ンディターミナルからの情報入力を可能にし、在庫
  マスタに入出庫実績をリアルタイムに反映させる。
4)配送業者のインターネット貨物追跡を活用し配送状
  況の問合せへの回答時間を短縮する
5)求車情報システムを導入し求車情報を公開すること
  で集荷依頼の合理化を図る。
6)寄託者・配送先・配送業者および社内向けの問合せ
  画面を用意し、画面の操作で必要な情報の入手を可
  能にする。画面はwebの操作性とプラットフォー
  ムに依存しない特性を活かしてwebを活用する

以上が不可欠であり、新システムの早期実現には高い技
術力を備えたシステムインテグレータに業務委託する必
要があると主張した。また、新システム実現の前提とし
て

1)ビジネスプロセス変革への全社的取り組み
2)配送業者との協力体制の確立
3)寄託者の理解を求める

ことが必要であり、1)についてはトップダウンの決定
事項としてA社全社に周知すること、2)及び3)では、
トップセールスによって理解を得、協力体制を築かなけ
れば新システムの実現はありえず、トップの積極的な関
与が不可欠である事も付言した。

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3.早期実現への工夫
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1)システム構築に係る工夫
 短期間にネットワークを構築するためにデータ通信に
はインターネットを活用すること、寄託者・配送先・配
送業者向け情報提供にはアクセスの利便性と機密保護を
考え、必要な情報のみをwebサーバに置き、各社には
ブラウザを使用して情報入手させることを提案した。イ
ンターネットの利用には通信の不調、自社サーバへの不
法アクセスなどのリスクもあることを説明し、サーバ保
守をはじめとする運用は、ネットワーク監視・障害対策
面からも信頼性の高い外部の専門業者にアウトソーシン
グすることをあわせて提案した。

2)トップの関与に係る工夫
 トップも参加する新システムのプロジェクトチームの
編成を要請した。プロジェクトチームが中心になり職場
懇談会を通じて新システムの目標や意義の周知を行うこ
ととなった。また、別途役職者がチームを作成し、寄託
者各社及び配送業者を巡回し、理解と協力を要請するこ
ととなった。

3)情報リテラシー教育
 新システムの効果的な運用と総合的な活用を行い得る
情報リテラシー獲得の工夫として、A社の入出庫担当者・
事務職員を実地訓練するための導入時教育プログラムと
継続教育プログラムの立案を提案した。情報リテラシー
が得られなければ実効あるシステムとはいえず、業務に
オーバーヘッドを増やすだけであることを強調した。継
続教育に関しては、A社から、定期的に開催されている
職場懇談会を活用したいとの逆提案がなされた。

 私の提案は、A社に受け入れられ、私はコンサルタン
トパートナーの協力を得ながら、A社業務に適したシス
テムインテグレータを調査した結果、外部委託業者を
C社・D社・E社に絞り込み、A社に提案した。A社で
は3社のシステム構築費用およびシステム運用費用も含
め、プレゼンを検討した結果、自らがISP業者でもあ
る大手システムインテグレータであるC社に、在庫管理
システムの再構築を含む、システム構築とインターネッ
トサーバの運用・保守を依頼することとなった。

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設問ウ
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4.ビジネスプロセスの見通しについての評価
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 A社はもともと業務改善・作業品質向上に熱心な企業
風土とCS向上に高いモチベーションを持っており、こ
のシステムが稼働すれば効果的な運用が可能であろうと
考えている。
 また、C社の技術力の高さから判断して、A社の達成
目標が高い確度で実現可能な成果が期待できると考えて
いる。今後A社がIDCの利用等システムの拡張を考え
た場合でも、C社が提供するサービスを利用することで
スムーズな移行が可能であり、低いコストでのシステム
拡張が可能であろう。
 寄託者・配送先・配送業者がA社システムを利用する
部分については、関心度の違いによる利用状況の落差が
生じると予想されるのでシステム稼働後に対応策を講じ
る必要があろう。A社のシステムが寄託者・配送先およ
び配送業者の関連業務の向上に貢献し、A社のビジネス
サクセスにつながることを期待している。





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