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(情報リテラシの向上について)

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(設問ア)
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1.M社におけるパソコン利用状況
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1.1.M社におけるパソコン導入の背景
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 M社は従業員千人強の中堅製造業である。本社に約3
百人と全国の営業所・工場に約2百人の事務職員が,ま
た全国に約3百人の営業要員が勤務している。これらの
従業員は業務上様々な文書や伝票を作成しているが,従
来は手書きやワープロ打ちの文書を,手渡し,郵送,フ
ァクシミリ送信等の手段で遣り取りしていた。
 近年の不況とバブル期の無理な投資の後遺症のため,
M社の経営環境は厳しいものとなっている。こうした状
況にあって,事務作業の効率化・コスト削減は重要な経
営課題の一つであった。近年の情報技術の進歩と機器の
低価格化を受けて,M社でもパソコンを本格的に導入し
て業務の効率化を図ることになった。
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1.2.パソコンの導入過程と現在の利用状況
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 事務系・営業系の全社員にパソコンを配布し,社内ネ
ットワークで結ぶ計画が平成7年にスタートした。開始
当初は各部署の組織長に配布し,順次管理職,一般職へ
と配布して行った。平成11年春には,ほぼ全員にパソ
コンとメールアドレスの配布が完了している。
 当初はパソコンをワープロの新型機程度にしか考えて
いない社員も多かった。また,ネットワークはプリンタ
が共有されるシステムであるという程度の認識しかなさ
れておらず,情報の授受は紙ベースで行われることが少
なくなかった。しかし,パソコンの配布が一般社員にま
で及び,若い社員がパソコンを日常的に使用するように
なって,状況は徐々に改善した。今日では多くの社員は
各自のデスクのパソコンを中心に仕事をし,社内ネット
ワークを利用して業務を進めている。
 M社情報システム部次長で,経営革新プロジェクトの
メンバーでもある私は,平成11年より社員の情報リテ
ラシ教育を担当している。
(設問ア:800字ライン)

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(設問イ)
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2.M社における情報リテラシの向上策
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2.1.M社における情報リテラシ向上計画の概要
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1)平成10年までのパソコン研修の概況
 私が現職に就く前にも社内でのパソコン研修は行われ
ていた。しかし,これは部署毎に希望する社員を集め,
ワープロソフトや表計算ソフトの基本的な使用法を学ぶ
ものであった。当初は外部講師を招いていたが,経費削
減のため,平成9年頃から情報システム部員が担当する
ようになっていた。
 この研修は各部署における実際の業務内容に合わせた
内容ではなく,ワープロや表計算の一般的な使い方を教
えるもので,初級と中級に分かれていた。

2)本格的な情報リテラシ教育の導入と業務の見直し
 上述の研修では,実務に直結するスキルの習得には結
び付かないという批判が社内から上がっていた。また,
同じ研修を受けた社員の中でも,研修が難しすぎるとい
う者と簡単すぎて役に立たないと言う者がいた。
 私は平成11年にパソコン研修の担当になったとき,
従来通りの画一的な研修を廃止することにした。そして
各部署・各役職の実態だけでなく,各個人のスキルに合
わせた研修を行うことにした。そして,情報リテラシの
高い社員に役職を与え,各部署の情報化を推進する役割
を担わせることにした。

 さらには,情報リテラシ向上のためには,情報システ
ムを利用しなければ業務が遂行できないシステムにする
ことも有効である。私は各部署と調整の上,後述するよ
うに社内の諸業務のルールを見直した。
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2.2.情報リテラシ向上のための新しい研修制度
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 私は各社員のレベルと業務内容の実態に合わせた研修
を行うため,従来のパソコン研修を改廃して,以下の二
つのカリキュラムを設けた。

1)パソコン入門講座
 従来のパソコン研修初級に相当し,ワープロや表計算
の初歩を学ぶものである。私は電子メールやインターネ
ットの初歩についてもカリキュラムに追加した。
 なお,従来の研修で問題となっていたのは,キーボー
ドの操作が極度に遅い社員が原因で,研修全体が進まな
いことであった。私は自信のない社員は事前にキーボー
ド操作を練習する講座を社外で受講できる制度を設ける
ことにした。

2)パソコン応用講座
 これはワープロや表計算の高度な使用法を学ぶ従来の
中級講座とは異なり,社内業務の処理に直結した内容で
ある。研修は営業系,事務系A,事務系Bの3コースに
分け,それぞれの業務内容に必要な,具体的なパソコン
操作について学ぶものである。
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2.3.ヘルプデスクとシステム化推進員制度の導入
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 平成9年より,情報システム部内に通称「パソコン相
談係」と呼ばれるヘルプデスクが設置されていた。しか
し,ごく初歩的な相談が頻繁に掛かってきて,通常業務
に支障を来たすこともあった。私は全社員の情報リテラ
シ向上も大切であるが,むしろ各部署に情報推進のキー
パーソンを置くことが有効であると考えた。
 私は人事部長および担当役員と協議し,上述のパソコ
ン応用講座の修了者を対象に試験を実施し,優秀者を認
定して手当を支給することにした。この制度で認定され
た「システム化推進員」は,各部署においてパソコン操
作を指導するとともに,社員の要望等を情報システム部
へ伝える役割を担うことになった。また,副次的効果と
して,システム化推進員に認定された社員のいない部署
は社内での立場が悪くなる雰囲気が醸成され,各部署競
って社員教育に励むようになった。
 情報システム部内のヘルプデスクは従来通り継続した
が,システム化推進員からの比較的高度な内容の問い合
わせへの対応が主な業務となった。
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2.4.電子決裁等の導入
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 パソコンの導入の目的はそもそも事務の効率化である
が,情報リテラシが高まらないと業務に情報システムを
利用できない。逆に業務に情報システムを利用すれば情
報リテラシが高まるという,表裏一体の関係にある。
 私は,社員の情報リテラシがある程度のレベルに達し
たところで,半強制的にシステムを利用しなければなら
ない業務フローを構築することにした。
 私の着任以前にも,一定の業務は社内ネットワークを
通じて行わなければならないことになっていた。しかし
これらの業務の多くは,一部のパソコンが得意な社員に
集中し,全社員にパソコン使用を動機づけるものとはな
っていなかった。とりわけ,管理職のパソコン利用が十
分でないことが問題になっていた。
 私は,管理職や,特に各部署の長しか行わず,部下の
社員に代行させることの出来ない業務を電子化すること
を計画した。すなわち,各部署の長による決裁書の本社
への届け出と,書面の回覧で行う稟議を電子化したので
ある。稟議や決裁が部員全員の希望に添った内容のもの
であれば,部下にパソコンを打たせることも出来る。し
かし,中には人事異動に関するものや,部下には秘密に
しておきたい内容も多々あり,部長らはやむなく自らパ
ソコンに向かうようになったのである。

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(設問ウ)
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3.M社における情報リテラシ向上策の評価
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 以上に述べた私の諸施策によって,社員全体の情報リ
テラシは確実に向上した。私の施策は成功を収めたとい
うことが出来るが,今後に残された課題もある。特に,
一部の社員はいまだに情報化の必要性に対する意識が低
いことである。
 以下に,一般社員と管理職の場合に分けて述べる。
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3.1.一般社員の情報リテラシ
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 若い社員はほぼ全員が完全にパソコンを使いこなして
業務を遂行している。しかし一部の年配の社員は,いく
ら研修を受けさせてもパソコンアレルギーが治らず,業
務の遂行に支障を来たしている。本人の意欲や適性によ
っては,配置転換や解雇の対象とすることも検討しなけ
ればならない。
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3.2.管理職の情報リテラシ
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 上述した施策の実施にもかかわらず,いまだに電子メ
ールを部下に打たせたり,ホームページを印刷させて読
んだりする部長がいる。情報化推進に支障を来たす者に
ついては,何らかのペナルティーを科す制度の導入が必
要である。
 いずれにせよ,ある程度まで機会を与えた後は,付い
て来れない者を思い切って切り捨てることが,他の社員
への動機づけとしても有効であると考えられる。
(設問イ+ウ:2775字ライン)





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