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(情報を共有し活用するシステムの計画策定について)

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(設問ア)
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 当社は中堅の引越業者である。創業以来地域に密着し
た営業を展開してきたが、近年首都圏および関西圏の同
業他社の進出が顕著になり、営業方法の転換を迫られて
いる。そこで、当社は、従来引越の付帯業務として行っ
てきたエアコン脱着工事・アンテナ工事・原状復旧工事
等を商品化し、サービスを多角化することで引越以外の
需要を掘り起こし、顧客獲得に努めてきた。しかし、成
約件数は伸び悩んでおり、当初考えていた効果を得られ
ないでいる。
 セールス強化を推進してきた営業部では、セールスの
不手際以外に理由があるのではないかと考え始め、営業
マンやトラックドライバーにヒアリングした所、顧客か
らの要望や紹介などの情報を活用できずに商機を逸して
いることがわかってきた。営業部長はこの結果を受け、
定例会議の席上で、情報を共有し活用できるシステムの
必要性を訴えた。
 その結果、情報システム課長である私に計画策定の指
示が下った。私は、情報システム部長の指示を仰ぎなが
ら、情報共有化によるSFAの実現とCRM導入による
CS向上を通し、成約件数を増加させることを到達目標
とした営業支援システムの構築を計画した。ハードウェ
アは,当社は社内LANの敷設や社員各人へのパソコン
の配置は終了しているので新規にサーバを導入し、ソフ
トウェアは自社開発とパッケージソフトの導入を比較検
討した結果、パッケージソフトを導入することを前提に
計画を策定するとともに、情報システム部長を通し、利
用部門への周知徹底と協力を要請した。このような経緯
を経て、現在、営業支援システムはテスト稼働の段階に
ある。

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設問イ
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イ−1営業支援システム構築の目的
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 当社では「全社員がセールスマンであること」を経営
理念の1つに掲げている。この理念にのっとり、社員一
人一人がシステムを利用し、以下の活動を通して単なる
顧客の要望や紹介だった情報を成約に結びつけていくこ
とが目的である。

1.社員各自が入手した情報を共有することで顧客ニー
  ズを的確につかみ、商機を逃さない。
2.他の社員の行動をグループウェアを通じて共有し、
  連絡漏れなどの顧客に対する当社の不手際をなくす
  る。
3.営業活動の「報」・「連」・「相」を渉外履歴を通
  じて公開することで経験を共有し、ノウハウを蓄積
  する。
4.顧客データベースの活用で潜在的なニーズを顕在化
  し顧客が満足するサービスを提供する。
5.顧客の囲い込みによって、顧客に適合した提案営業
  を行い、CS向上をはかりリピーターを確保する。

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イー2:重要と考えたこと
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 前項の目的を達成するためには以下のことが重要であ
ると考えた。

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1.開発期間を短くすること
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 当社にとって、引越はもちろんのこと、エアコン工事
やアンテナ工事など新たに打ち出した商品で成約件数を
伸ばすことは急務である。自社開発では、このようなシ
ステムの開発ノウハウの少ない情報システム部の負担が
大きくなるとともに、開発期間が長期にわたる恐れが
あった。そこで、当社業務に適合したパッケージソフト
を調査し、導入することとした。ベンダーの選定には、
コストや納期、サポート体制のほか、当社業務にあわせ
たカスタマイズの可否およびその体制も選定基準とし、
B社・C社のプレゼンを検討した結果、C社パッケージ
を導入することとした。
 導入をスムーズにするために、関係部署から徹底した
ヒアリングを行った。ヒアリングの結果、C社パッケー
ジで当社業務に不適合と判断した部分についてはカスタ
マイズ要件として整理し、カスタマイズすることとした。
 通常、業務系パッケージソフトを導入する場合は、利
用者部門から、パッケージソフトの変更の要請やパッ
ケージソフトに合わせた業務変更に抵抗がある等の問題
点が表面化するが、幸いなことにまったく新しい取り組
みだったため、そのような問題はほとんどなく、逆に、
営業支援システムを業務に組み込む新たな業務フローの
作成をパッケージにあわせて行うこととなった。

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2.親しみやすいユーザインターフェースを採用すること
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 営業支援システムは全社員が使用するものである。し
たがってユーザインターフェースには親しみやすく、操
作が容易なことが重要であると考えた。また、各人に配
置されているパソコンは同一のOSやプラットフォーム
が搭載されているが、すべて同一の機種ではないため、
機種依存性の強いユーザインターフェースでは支障があ
ることが容易に予想される。そこでwebの特性に着目
した。当社でも各自のパソコンからwebページにアク
セスして情報を入手(あまりすすめられる事ではないが、
あるいは暇つぶし)している社員はよく見かける。ブラ
ウザを操作することに抵抗は少ないと考え、ユーザイン
ターフェースにはwebの技術を活用しているパッケー
ジを選択するか、webを応用したカスタマイズが可能
なパッケージを選択することを考えた。また、営業マン
は全員携帯電話を持っており、出先では携帯電話からの
アクセスを可能にしたいと考えた。
 前項で述べたC社のパッケージでは画面の操作はブラ
ウザで行い、また、携帯電話からのアクセスにも対応し
ている製品である。

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3.社員の参加意識を高めること
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 営業支援システムが本稼働に入った暁には、全社員が
使用するものであり、また全社員が使用しなければ実効
あるシステムとはいえない。社員の参加意識を高めるこ
とはひとり情報システム部だけの力ではなしえず、情報
システム部長を通じ、各部署の理解と協力を要請した。

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4.個人情報尊重の気風作り
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 営業支援システムの顧客データベースでは顧客の個人
情報を扱うため、運用には十分な配慮が必要である。情
報システム部長を通じて、総務部・人事部に個人情報流
出に備え社内規定の改訂を検討してもらうとともに、個
人情報保護の重要性を周知し、個人情報保護ポリシーを
策定した。

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イー3実務に定着させるための工夫
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 営業支援システムは、日常業務の中で利用されなけれ
ば意味がない。そこで、以下のような工夫を試みた。

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1.営業支援システムの目的の周知
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 社内研修の機会を利用して営業支援システムの目的や
概要を説明した。また、その際、営業部に協力してもら
い、情報を共有して成功した事例とクレームにつながっ
た事例を用意し、情報共有の意義について理解を深めて
もらうようにした。

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2.情報共有の習慣づけ
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 情報システム部長を通じて総務部に協力を要請し、次
のような情報共有の習慣づけのための実施項目を作成し
た。
ア)従来営業部だけに義務づけられていた、外出時の
 「行先表示板」への記入を全員が行う事とした。
イ)新たに電話応対の記録簿を作成し、全社員のデスク
 に配布し、顧客からの要望、クレーム、意見等の電話
 を受けた社員は記入の上ファイリングすることとした。
ウ)従来営業部員が個人で管理していた営業日報をファ
 イリングキャビネットに納め、必要に応じて閲覧でき
 るようにした。

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3.不安・不満要因の除去
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 営業部員の中には営業日報を共有化することで、自分
が担当する顧客を他の者に盗られるのではないかという
不安をもつ社員がいた。営業部長を通して、営業支援シ
ステムの意味を理解してもらうようにした。
 同様に一部の社員から行動を監視されるとの不満が出
たため、情報システム部長および営業部長を通して、営
業支援システムは行動を監視する目的のものではないこ
とを説明し、理解を求めた。
 そのほか、細かな不安・不満についても放置せず、説
明あるいは回答し、理解を深めるように努めた。

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4.デモの実施
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 営業支援システムのデモを行い、その際、希望者に実
際に操作してもらった。デモの際は、顧客役の社員と営
業部員役、電話応対した事務員役の社員でロールプレイ
ングを行う時間を作った。また、このとき出された要望
や提案で、採用可能なものは採用するようにし、不可能
なものは理由を明示してフィードバックした。

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設問ウ:評価
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 今回の営業支援システムの導入に関して、関係部署や
全社に理解・協力を要請しなければならない場面では、
情報システム部長を通し、定例会議の席上で行ってきた
が、導入のためのプロジェクトチームを組織することで
より円滑な意志疎通がはかれたのではなかったかと反省
している。現在テスト運用期間中であるので、評価のた
めの横断的な組織作成を提案している。
 全員参加を謳ったシステムであるが、テスト運用の段
階で既に利用度に差が見られるため、早急に原因を分析
し、対応策を講じなければならないと考えている。
 社内では、「自社開発した方が自由度もありコストも
押さえられたのではないか」という批判も散見するが、
比較検討した結果のパッケージ導入であったため、批判
は批判として受け止めなければならないと思う。一方で、
パッケージ導入に至るまでの経過をわかりやすく説明す
べきであったと考えている。





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