Click here to visit our sponsor



----------------------------------------------------------------------

(情報戦略の策定について)

----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
(設問ア)
----------------------------------------------------------------------
1.M社の事業概要と情報戦略
----------------------------------------------------------------------
1.1.M社の事業内容と経営戦略
----
 M社は全国9箇所に工場を持ち,約20箇所に支店・
営業所を展開する,従業員千人,年商9百億円の中堅製
造業である。M社では毎年各支店・営業所から提出され
る販売計画をもとに年間生産計画を定めていて,実際の
生産数量は毎月見直していた。しかし近年同業他社が相
次いで新製品を投入したこともあってアイテム数が増加
し,商品のライフサイクルも短くなっている。そのため
販売計画が大きく狂い,品切れを起こしたり,逆に過剰
在庫を招いたりする事態が頻発している。
 良い物を作れば売れるというメーカーの論理が罷り通
ったのは過去の話である。今や顧客の求めるものを敏感
に感じ取り,素早い対応によって適切な商品を必要な量
供給できなければメーカーとして生き残って行けない時
代である。M社経営陣は営業現場の情報をいち早く生産
現場に取り入れ,現今の環境に対応することにした。
----
1.2.M社の販売・生産管理システムの戦略
----
 M社では上述の目的に沿って,全社を結ぶ社内ネット
ワークを構築し,以下のように数値だけでなく幅広い情
報を遣り取りすることになった。
1)支店・営業所
 販売予定数量の他,各地で収集した市場や同業他社の
動きに関する情報を適宜発信する。
2)製品開発関係
 製品の技術的な情報だけでなく,開発時に実施した市
場調査の結果などを広く発信する。
3)生産・物流関係
 商品の供給可能数量の発信だけでなく,生産現場から
の商品についてアピールしたい情報等も発信する。
 生産管理部出身で経営企画部に在籍する私は,このシ
ステム導入に当たり,問題点を洗い出すことになった。
(設問ア:800字ライン)

----------------------------------------------------------------------
(設問イ)
----------------------------------------------------------------------
2.新システム導入に際して想定される障害と対策
----------------------------------------------------------------------
 上述した新システムを導入するためには,以下に述べ
るような問題点が認識された。それぞれについて,私が
立てた対策とともに述べる。
----
2.1.情報システム基盤の整備
----
 M社の基幹システムは,生産・物流・販売のデータを
一元管理する集中処理システムである。これは旧式の汎
用機を使用するもので,運用・保守は系列のシステム会
社A社に委託していた。
 また,数年前よりM社には社内ネットワークが構築さ
れつつあった。しかし,グループウェアを中心とするこ
のシステムはあまり利用されておらず,多くの社員はプ
リンタを共有する新型ワープロ程度の認識であった。
 今般の新システムでは,このネットワークを拡充し,
本社および営業の全社員と,各工場の幹部社員全員にパ
ソコンを配布し,ネットワークで結ぶことにした。そし
て基幹システムの主要データはこのネットワークからア
クセス出来るように計画した。
 そのために新規に必要となる初期費用は約2億円と試
算されたが,これはまるまる従来の予算枠から逸脱した
ものであった。私が本システムの必要性を経営陣に説明
した結果,遊休不動産の売却によって費用を捻出するこ
とに決定した。
----
2.2.開発・運用・保守要員
----
 M社には情報システム部が存在するが,これはシステ
ム会社への窓口に過ぎず,通常時は各部・事業場への帳
票の配布が主な業務であった。したがって,新システム
の構築にあたっては,M社情報システム部員が開発や運
用にあたることは不可能であると考えられた。
 私は新システムの開発は従来通りA社に委託し,運用
および保守に関しては,当面A社社員を2名,M社情報
システム部に常駐させる契約を結ぶことにした。
----
2.3.情報リテラシの向上
----
 前述のように,M社では社内ネットワークが殆ど利用
されていない状態であった。新システム導入にあたって
は,社員に十分な情報リテラシ教育を施す必要があると
考えられた。
 私は全社員を対象に研修制度を発足させ,レベルや職
務に応じて必要なスキルを身につけさせるようにした。
初心者はキーボードの操作訓練を受けさせるところから
始め,上級者には初級シスアド受験を奨励し,各部・事
業場の情報化リーダーとして育成することにした。
----
2.4.業務手順やルールの見直し
----
 システムを構築し,情報リテラシが向上しても,生産
から販売までの現場で意識が高まり,システムを積極的
に利用する風土が生まれなければ意味はない。また,そ
こで遣り取りされる情報は本システムの目的である,適
性在庫の確保に資するものでなければならない。私は関
係各部と協議の上,以下のような業務改革を実施した。

1) 支店・営業所
 販売予定数量を決定する際,従来は確実に達成できる
数値を申告する者と,かなり希望的な数字を申告する者
があり,不正確な数値となりがちであった。今後は販売
予定数量イコール各営業要員のノルマとした。そして,
その数字が現実的でかつ十分なものであるようにするた
め,本社販売推進室と各支店長が綿密に打ち合わせる体
制を整えた。一方,何らかの事情で在庫に変動が生じた
場合には,販売計画にかかわらず,過剰な商品を販売し
た者を評価することにした。
 また,各営業要員が収集した,市場や同業他社の動き
等に関する情報を社内に発信することを奨励した。そし
て,その情報が他の営業要員等に役立つものであると認
められた場合,考課に反映するシステムを導入した。

2)製品開発関係
 製品開発時には技術的な項目の検討だけでなく,必ず
市場調査等を実施する。そしてその情報を社内に十分に
開示することによって,営業要員の新製品の販売予測を
より正確なものにできると考えられた。

3)生産・物流関係
 生産と物流を集中して統括するため,原料調達部,生
産管理部および物流部を統合して,生産物流部が発足し
た。各工場・倉庫は生産物流部の監督の下に活動し,生
産計画の変更や在庫の移動は即時システムに入力するこ
とを義務づけた。これによって,原料調達もタイムリー
に行うことが可能になり,原料・半製品の在庫削減も期
待される。
 また,生産の現場からの商品に関する情報発信を奨励
し,優秀な者は評価する体制を整えた。

----------------------------------------------------------------------
(設問ウ)
----------------------------------------------------------------------
3.新システム導入に際して取った対策の評価
 以上のような諸施策によって,新システムは昨年度よ
り順調に稼動し,利用されている。まだ一部の事業場で
はシステムを十分に利用していないところもあるが,イ
ンセンティヴとペナルティを適宜組み合わせることで利
用率を上げて行く予定である。
 また,商品開発や生産の現場からの情報を,ホームペ
ージを通じて一般顧客へアピールすることが有効と考え
られるが,これは今後の課題である。
 昨年度は前年度に比べ,在庫金額が年間平均で約20
億円削減された。これによる金利と倉庫料の負担削減額
は約1億円である。また,在庫切れによる販売機会損失
件数は半減し,販売機会損失金額は前年が約8億円に対
し,昨年度は約3億円となった。
 以上の結果から,本システムの構築費用2億円と,年
間運営費用約5千万円は十分に回収できており,上述の
対策は成功を収めたと言うことが出来る。
(設問イ+ウ:2375字ライン)





[ 戻る ]