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(費用対効果の評価について)

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(設問ア)
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1.新しいウェブサイト開設計画とその背景
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1.1.L社の業務の概況と経営環境
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 L社は欧米からある種の食品を輸入・販売することを
主な業務とする,年商約2百億円の中堅商社である。近
年の不況による売上不振,円相場の弱含みに加え,バブ
ル期の海外投資による損失と金利負担によって,L社の
業績は思わしくない。
 このような環境にあって,L社では広告宣伝費等諸経
費を削減する一方で,売上増加を目指している。

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1.2.新しいウェブサイトの開設計画
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 L社では,5年前にグループ企業数社と共同でホーム
ページを開設し,各社の主要商品の広報活動を行ってき
た。そのホームページの運営の費用は微々たるものであ
る一方,目に見える効果も期待出来なかった。
 L社では,今般独自のサイトを開設し,広報活動のほ
か,電子商取引にも参入することになった。このサイト
の機能は大きく分けて,以下の3つになる。

1)広報活動
 L社の代表的な商品に関する情報提供や,商品に関連
した読み物,懸賞等を掲載する。

2)消費者への小売販売
 L社の商品の中でも比較的販売量の少なく高価なもの
を中心に,通信販売を行う。いわゆるBtoCである。

3)取引先への情報提供と電子商取引
 L社商品の大口顧客である飲食店チェーンや,中小の
飲食店を対象とした,いわゆるBtoBである。主要取引
先にはIDとパスワードを発行し,BtoB専用ページに
アクセスさせる。そこには飲食店用の情報があり,また
商品を発注する機能が備えられている。

 L社経営戦略室次長の私は,この新サイト開設にあた
って,費用対効果の分析を担当した。
(設問ア:775字ライン)

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(設問イ)
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2.L社新サイト開設計画の費用対効果分析
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 L社ではバブル期に商品とは直接関係のない文化活動
に投資し,約6億円の赤字を出している。その事業につ
いては,L社のイメージアップという目に見えない効果
があったとする評価がある一方で,具体的な売上増や広
告宣伝費削減につながっていないという批判もあった。
この時の反省から,L社では新事業についてはその費用
対効果を数字で詳細に評価することが求められている。
私はこの新サイトの費用対効果の評価をする際,定性的
効果についても極力数値化することを目標とした。
 以下に新サイト開設に要する費用と,定量的および定
性的効果の評価について順に述べる。

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2.1.新サイト開設に必要な経費
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 L社では独自にシステム開発をする要員を持たないた
め,新サイトの開発・運用・保守はすべてSIベンダに
委託する。システム開発および専用サーバ・回線等の費
用の合計は約5千万円,年間の運用・保守費用は約2千
万円と見積もられた。また,本事業遂行のため,L社で
は正社員5人からなるネットワーク営業室を開設した。
その人件費・諸経費の合計は年間約5千万円である。そ
して,情報ページ等コンテンツ制作のための諸費用は年
間約3千万円となる。したがって,初期費用5千万円,
年間運営費用1億円が当サイトに要する全費用となる。

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2.2.新サイトの定量的効果
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 サイトによるBtoCおよびBtoBの売上の利益がその
まま定量的効果となる。しかし,ここで注意しなければ
ならないのは,サイトでの売上高をそのまま売上増と考
えるのではなく,既存チャネルでの販売から移行した分
を差し引いて考慮する必要があることである。

1)消費者への直接販売の売上・利益見込
 既存小売店への影響を考えると,輸入商社による直接
販売で大きな値引きをして大量販売を目指すことは不可
能である。販売するアイテム,数量ともに限定されたも
のにならざるを得ず,売上は初年度4千万円,粗利益2
千万円,3年後以降でもその倍程度と見積もられた。
 この小売販売は限られた特殊なアイテムを中心にする
ので,既存チャネルからの移行分は無視できると考えら
れた。

2)取引先との電子商取引による売上・利益見込
 取引先企業との電子商取引は当初年間1億円,3年後
には5億円以上に拡大すると予想された。しかし,既存
の取引先からの受注が従来の方法から電子化されただけ
の取引も当然多くなる。実質的な売上増加は初年度2千
万円,3年後に1億円程度と予想された。飲食店への販
売の利益率は売上高のおよそ3割であり,3年後の貢献
利益はおよそ3千万円と試算された。

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2.3.新サイトの定性的効果の数値評価
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1)L社商品の認知度上昇による売上増
 新サイト開設に伴って期待される定性的効果は,顧客
へのL社商品の宣伝効果と,きめ細かな情報提供による
顧客満足度向上である。これらの効果も最終的には売上
増に結び付かなければ意味がない。サイトを開設するこ
とによって見込まれる顧客増・売上増の予想がそのまま
定性的効果の客観的な評価となる。
 私はこの効果をなるべく正確に把握するため,二つの
調査を行った。一つは様々な業種において,ホームペー
ジ上で自社商品を積極的に宣伝した会社についての調査
である。そしてもう一つは,L社商品の購入者に対する
アンケート調査で,様々な項目とともにインターネット
に対する意識調査を加えた。これらの調査の結果,新し
いウェブサイトの開設によってL社商品の認知度が高ま
り,年間1億円程度の売上増が見込まれた。粗利として
3千万円の効果があることになる。

2)広告宣伝費の削減
 L社では新サイト開設の原資として,広告宣伝費の削
減を予定している。現在年間約7億円使用している広告
宣伝費のうち,テレビCMを中心に約5千万円を削減す
る予定である。これによる売上減は約1億円と見込まれ
るが,これはちょうど上述の新サイトの効果による売上
増と同じである。
 したがって,広告宣伝費5千万円の削減が,正味の定
性的効果として認められた。

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2.4.費用対効果の検証
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 以上の考察を総合すると,新サイトの収支は以下のよ
うになる。なお,初期費用は5年間の定額償却で計算す
するため,毎年の費用は1億1千万円である。
        初年度     3年後 (万円)
 BtoC利益  2000    4000
 BtoB利益   600    3000
 広告費削減  5000    5000
  合 計   7600   12000
 このように,3年後には単年度で黒字になるため,こ
の新サイトは十分採算性が見込めるものと判断され,L
社経営陣は開設を決裁した。

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(設問ウ)
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3.新サイト稼動後の効果把握について
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 従来のL社では,新しいプロジェクトが一旦稼動して
しまうと,当初の採算見込を大きく下回っても,そのま
ま運営されることが少なくなかった。私は新サイト稼動
後にもその効果を適宜評価し,必要に応じて対策を打つ
必要を痛感している。そのため,特に定性的効果につい
ては以下の二つの方法で常に調査を続け,新サイトの効
果を評価して行く予定である。

1)売上高の分析
 L社全体の売上高の変化を詳細に分析する。売上高を
増減させたと考えられる個々の要因を勘案して補正を加
え,新サイトの効果による売上高増加を客観的に評価す
るものである。

2)顧客の意識調査
 新サイト上でL社の商品を購入した顧客および一般の
顧客に対してアンケート調査を行う。これによってサイ
トが提供する情報の評価をし,またサイト全体の効果を
評価する際の参考にする。なお,BtoBの顧客である取
引先への調査も同様に検討している。
(設問イ+ウ:2575字ライン)





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