Click here to visit our sponsor




----------------------------------------------------------------------

(システム化範囲の策定について)

----------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------
(設問ア)
----------------------------------------------------------------------
1.新会計システム計画の概要
----------------------------------------------------------------------
1.1.M社会計システムの概要と新システム開発計画
----
 M社は従業員数約千名の上場会社で,東京の本社の他
に全国十数箇所に事業場を持つ。M社では平成4年にオ
ンライン会計システムを導入し,本社および各事業場で
入力された会計伝票を一括して処理し,決済している。
しかし当時は現在のようにパソコン端末も普及しておら
ず,3連複写式の会計伝票を各自が手書きして作成して
いた。その伝票を上司に見せて決裁印を貰ってから,会
計担当者が本社各階および事業場に各1台しかない端末
を利用して入力する方式を取っていたのである。伝票は
会計担当者自身が作成するものも少なくなく,記入と入
力の両方を行うことの非効率性が問題となっていた。
 M社はバブル崩壊後の経営不振から脱却すべく再建を
図っている最中である。経理関係の事務の効率化も重要
な経営課題とされ,経営会議はこの会計システムを全面
的に見直すことを決定した。

----
1.2.経理部が策定した業務の流れとシステム要件
----
 経理部は主な事業場の経理担当者にアンケートを取っ
た上で,新システムを利用した会計業務の流れをまとめ
た。その計画では,伝票は社内ネットワークを利用して
各自が入力した上で3部の伝票を印刷,以後の過程は従
来通りのものであった。経理部の要求は社内ネットワー
クで各自が伝票を入力・印刷できることと,入力したデ
ータが従来のシステムへ送られることだけであった。

----
1.3.私の役割とシステム化方針
----
 私はM社経営情報戦略室次長として,会計業務の根本
的な見直しとシステム要件定義の策定を担当した。私は
経理部の要求するシステムではM社経営陣が意図する十
分な合理化は達成できないと考えていた。そこで私はM
社の会計業務を根本的に見直し,業務の流れを再構築し
てからシステム開発に入ることにした。
(設問ア:800字ライン)

----------------------------------------------------------------------
(設問イ)
----------------------------------------------------------------------
2.会計業務の見直しとシステム化計画策定
----------------------------------------------------------------------
2.1.伝票起票から決裁までの過程の問題点洗い出し
----
 私は現状の会計業務の問題点を洗い出すため,まず月
末に自分自身の業務に関わる伝票を全て自分で処理して
みた。経営情報戦略室の事務社員の協力を得て,起票か
ら伝票入力までを行い,経理部へ伝票を提出したのであ
る。更に,その伝票が経理部内で処理される過程も詳し
く観察した。以下にその概要と問題点について述べる。

1)伝票の作成と入力,決裁
 伝票はそのまま入力できるよう,入力端末の画面に合
わせたレイアウトになっており,A4版3連複写式であ
る。所属コード,年月日,費目コード,負担部署コード
等を順次記入し,3枚とも押印する。この際,費目コー
ドや負担部署コード等はコード表を参照するが,慣れな
い者にはかなりの時間を要することが分かった。また,
証憑がある場合には3枚目に貼附する。この伝票を会計
担当者が確認して全3枚に押印し,更に入力する。そし
て所属長に提出して全3枚に決裁印を受けた上で入力内
容を印字し,経理部へ提出するのである。この時点で既
にのべ9個の印鑑が押されている。

2)経理部での処理と伝票の保管
 経理部では担当者が伝票と入力内容を印字したものを
確認し,全3枚に押印する。更に経理部の責任者が確認
して全3枚に押印した上で正式決裁となり,担当者が決
済手続に入る。伝票は証憑を添付する場合もある3枚目
が金庫室に,2枚目は入力内容を印字したものと共に経
理部で,1枚目は各部室で各々保管される。
 このように,伝票の内容がシステムに入力されている
にもかかわらず,同じ内容のものが3部,それも5人の
押印がなされた上で保管されているのである。

----
2.2.会計業務の見直しに関する提案
----
 以上の体験を踏まえ,私は改めて経理部から提出され
たシステム要件について検討した。その結果,経理部の
要求通りのシステムでは,伝票を手書きで記入する手間
と入力内容を印字する過程が省かれるだけで,それ以外
の業務に変化はないものであると考えられた。私はこの
業務を根本的に効率化するため,以下のような業務の流
れとシステムを経理部に提案した。

1)各部署での伝票作成と決済
 各自が端末で伝票を入力する。この際,部署や費目等
のコードは直接入力も出来るし,コード番号に説明付き
のプルダウンで選べるようにもする。これによって,慣
れない者でもコード番号を迅速に選択できるし,熟練し
た者は素早く入力することもできるのである。
 印刷される伝票は1部とし,押印の上,証憑類は裏面
に貼附する。この伝票を各部の会計担当者が受け取り,
確認・押印の上,所属長の決裁印を受ける。伝票は1枚
であるので,押印の手間がかなり省かれる。

2)経理部での確認と伝票の保管
 各部では伝票を番号順すなわち入力順に取りまとめ,
経理部に提出する。経理部の担当者は自分のパソコン端
末に入力内容を表示させ,1枚ずつ確認しながら押印す
ると同時に仮決裁を登録する。次に経理部責任者が伝票
を確認・押印するとともに,自分のパソコンで仮決裁済
の伝票枚数を確認し,一括決裁を登録する。万一決裁で
きない伝票があった場合には,その伝票番号を除いて一
括決裁することが出来る。これにより,従来最終決裁後
1枚ずつ伝票を処理していた過程が省かれる。
 伝票は金庫室に保管される。証憑を確認する必要のあ
る場合以外は,経理部・各部室とも,伝票内容の確認は
各自のパソコンで行う。これによって,決裁済の伝票を
保管する手間が省かれ,また各自が席を立たずに伝票の
内容を確認することができるようになる。

----------------------------------------------------------------------
(設問ウ)
----------------------------------------------------------------------
3.新システム案の評価
----------------------------------------------------------------------
1)費用対効果の検討
 上述した私の案は経理部の了解を得た上で経営会議の
決裁を受け,実現された。実際のシステム開発はM社で
使用していたグループウェアに元来備わっている機能を
利用した。必要な作業は伝票書式その他のカスタマイズ
だけであり,総費用は約5百万円であった。
 このシステム導入により伝票用紙代が年間約5百万円
と,事務社員の残業代約1千2百万円が削減されると予
想されている。当初の経理部の案に基づいて試算したと
ころ,システム開発費用約3百万円,伝票用紙削減額年
間約4百万円,残業代削減額約3百万円であり,私の案
は経費削減に大きく貢献したと考えている。

2)新システムの今後の課題
 会計伝票の宿命として,証憑を添付したものの回覧・
保存があるため,完全なペーパーレス化と電子決裁が実
現されていない。M社の企業風土を勘案して今回は見送
ったが,遠からず電子帳簿保存法に準拠したシステムに
移行する時が来るであろう。その際には押印を排し,決
裁もすべて電子化したワークフローの導入を検討する必
要があると考えている。
(設問イ+ウ:2100字ライン)



[ 戻る ]