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A社情報システム基盤の整備計画

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(設問ア)
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ア−1.A社の情報システム環境
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 A社は、社員300名の中堅建設業である。重化学プ
ラント建設の請負を中心にして来た。近年、プラント分
野の需要減少と採算性悪化により、改修・改築を含めた
一般建築分野に重点をシフトしている。
 このシフト戦略により、従来と違って、不特定多数の
顧客、多岐にわたる工種・資材の把握と顧客へのカスタ
マイズに対処せねばならない。
 A社では、役員も含めて、一人1台のPCが配布され
ている。経理・事務要員にも、エミュレータにより端末
専用から汎用PCが配備されている。デスクトップと
ノートPCの比率はほぼ1:1である。本社、12の支
店にはLANが導入されており、これらが専用回線やイ
ンターネットによって結ばれ、WANを形成している。
 A社の情報システムは全社勘定系の1つだけで、汎用
オフコンをホストとし汎用PCを端末とする集中系で、
いわゆる決算中心経理システムに特化している。経理部
電算室が運用・保守にあたっている。

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ア−2.情報システム基盤の整備計画
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 わたしは、A社から事業部門の情報システム化の企画・
指導を請けた。対象範囲は、事業部門(200名)の業
務全般である。基盤・体制の整備や部門システムの企画
も含む情報システム化構想企画書を成果物としてまとめ
るもので、納期は3ヶ月であった。
 わたしの策定した企画書は、2ヵ年計画のいわゆる中
期計画の形をとり、初年度を基盤整備、次年度を部門シ
ステムの開発と運用体制の完成を目標とするものであっ
た。
 初年度の基盤整備の内容は、次のとおりである。
 (1) 情報系ミドルウェアとVPNの導入
 (2) 勘定系データの開放と活用の促進
初年度は、情報リテラシの向上がねらいである。

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(設問イ)
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イ−1.A社の情報リテラシ
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 A社事業部門の部員の7割は、表計算ソフトを利用し
見積書や実行予算書を作成する事ができた。PC操作の
習熟度は十分であった。しかし、情報の活用という場面
では不足であった。
 事業部員は通常1つの案件を、営業・受注から工事管
理・完工まで一貫して担当する。よって、すべての業務
に通じている反面で、関係しなかった案件はもとより、
担当案件により業務・作業の知識・スキルに偏りがあっ
た。
 そのためか、情報・データの収集に熱心であるあまり、
個人のPCにすべてのデータを貯め込む性向がみられ、
共有フォルダには文書フォームぐらいしか上げられてな
かった。

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イ−2.基盤整備のねらいと重要点
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 現行のEUCは、定型文書の作成作業が中心であって、
作業の効率化が目的のようであるが、これは次年度に予
定している部門システムで解決することができ、EUC
の目的としては少し的外れである。
 一方で、収益性に直結すると思われる予算実績管理や
それを一段進めた予防管理などは、必要性が認識されて
いるにも関わらず行なわれていない。
 より有効なEUCとは、収益に繋がるものでなくては
ならない。また、中・高度な情報リテラシとは、作業の
成果物(出力)と必要な情報(入力)を、各ユーザが発
見・定義することが可能でなくてはならない。
 情報システム基盤が提供するのは、
 (1) 整理され、わかりやすい「情報の所在」
 (2) すぐに使える「情報の形態」
 (3) 洗練された「情報の加工ツール」
 (4) 作業に専念できる「ネットワーク環境」
でなくてはならない。

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イ−3.情報システム基盤の整備計画上の工夫
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 ミドルウェアとしては、グループウェアがまず候補と
してあがったが、インタフェース・データベースの組み
込み・機能の選択と追加などの導入時設定の煩雑さで退
けた。代わって、データベースとの親和性やテーブル・
フィールドの追加などもクライアントのブラウザででき
る操作の容易性からWebアプリを選定した。EUCで
も、次年度の部門システムのプラットフォームとしても
使用可能である。
 次に、勘定系に蓄積されている情報の開放であるが、
夜間バッチを介してDBサーバに移し、ミドルウェアの
Webアプリから参照できるようにする。テーブル間の
リレーションシップを意識しなくてもデータの利活用が
できるように、操作画面を一体化する。当面はEUC側
から勘定系のデータの更新はできない。追加されたテー
ブル・ビュー・フィールドのログを収集し、ニーズの分
析が可能なようにする。
 ネットワーク環境としては、オープンで高速なものが
望ましいが、一方でセキュリティの問題も検討しなけれ
ばならない。インターネット−ブラウザ−LANの普及
により、ユーザはオンライン・オフラインの区別を意識
しないようになっている。今回の場合もミドルウェアは
Webアプリである。A社では、セキュリティポリシも
ネット利用規準も策定されていない。このような状況で
は、VPNが即時有用・有効であると判断した。
 EUC全体の推進と次年度の部門システムの準備も兼
ねて、Webアプリ導入を主管するSIを通じて、
Webアプリに通暁したSEを派遣してもらうことにし
た。事業部からも1人を専任で出してもらい、チームを
組む。専任部員が慣れるまでは、SEに常駐してもらう
計画である。

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(設問ウ)
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ウ−1.不足している点、問題点
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 現在、2ヵ年計画は初年度の半ばを過ぎている。現状
で、先の計画時に不足していた点は次のとおりである。
 (1) 電算室の改組
 (2) アウトソーシングの検討
 前述したように、経理部電算室は勘定系の運用・保守
が主業務であり、要員も経理部出身となっている。業務
部門のユーザニーズを抽出し、EUCに対応するには全
く力不足である。セキュリティポリシをはじめ、全社的
な規準・マニュアルの策定・更新などは、主管がどこに
あるか責任のありかが組織的にも明確でない。
 わたしの今回の対象範囲は事業部であり、初年度は事
業部内でサポートができるように計画しており、外部か
らSEを派遣してもらっている。しかし、全社的なリ
ソースの観点からは、非効率である。全社的な情報資源
のあり方を、アウトソーシングという選択肢も加えて検
討し、システム部門を再組織する必要がある。
 次に情報化人材育成の問題がある。これは、EUCと
部門システム、全社システムの切り分けもからむ問題で
ある。実は、A社事業部門の一般建築分野での業務モデ
ルは完成されていない。現実の業務がまだ模索中であり、
標準化するほどパターン化されていないからである。導
入したミドルウェアの利用状況、勘定系データの活用状
況やEUCの進行状況を検討・分析し、定型作業を切り
出し、次年度の部門システムの目的・要件を定義する。
これによって、育成すべき情報化人材の姿も明らかになる。



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