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WEBアプリケーション技術適用の結果と今後の課題

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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要
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1.1.A社データウェアハウスの構築
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 A社は東日本を中心に約100店舗を展開する中規模
のスーパーである。A社において、POSレジスタの導
入は比較的早い時期に完了していたが、その活用はレジ
の省力化に止まっており、販売実績を商品計画に活かす
までには到っていなかった。
 一方でA社は西日本への進出を計画しており、競合他
社との差別化を図るべくデータウェアハウス(以下、
DWH)の導入を決定した。
 システムインテグレータであるN社に勤務する私は、
A社DWH構築に営業時点より参画しており、受注後は
PMとしてプロジェクトを指揮する事となった。

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1.2.WEBアプリケーション採用の理由
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 A社システム部においては、これ迄に導入してきたク
ライアント・サーバ方式のシステムに対して以下の不満
を抱えていた。

 a.本社・店舗で約400台存在するPCに、アプリ
  ケーションを配布するコストが高い。

 b.アプリケーションにより、OS・ミドルソフトウェ
  アのバージョンが限定される為、最新のソフトウェ
  アを利用する事が出来ない。

 私はA社システム部の抱える課題を解決すべく、5年
前としては最新であったWEBアプリケーションの適用
を提案した。WEBアプリケーションでは、クライアン
トPCに必要なソフトウェアはブラウザのみであり、上
記の課題を一気に解決する事が可能である。
 私の提案は、A社にも承認され、プロジェクトではW
EBアプリケーション方式を採用する事となった。

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(設問イ)
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2.予想された問題と事前の対応
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 プロジェクトにおいて新技術を適用する場合には、製
品の完成度、技術の修得度合いによって、品質を低下さ
せたり、納期を守れなくなる場合がある。またそれらの
問題が発生した場合、リカバリにより予定外のコストを
生み出す事にもなる。
 私は今回のプロジェクトにおいて、スケジュール・コ
ストを遵守するために、品質を確保する事が最も重要で
あると考え、以下の課題を洗い出した。

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2.1.予想された問題
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a.操作性
 WEBの画面はHTMLにより構成され、その構成部
品はクライアント・サーバに比べ著しく少なく、操作性
の低下は避けられない。これまでクライアント・サーバ
に慣れているA社ユーザからの不満が上がる可能性が
あった。

b.応答性
 私の勤務するN社においては、WEBアプリケーショ
ンの開発経験が無く、どの程度のレスポンスが保証出来
るか不明であった。特にDWHの場合、指定した検索条
件により、レスポンスは大きく異なるため、前提条件の
設定は重要である。
 私はA社と協議して、日常的に使用する、ある検索パ
ターンにおいて、3秒のレスポンスを約束した。

c.安定性
 A社では、商談・発注・商品の展開など、販売計画を
週次で行っており、週の特定の曜日にDWHに対するト
ランザクションが集中する事が予想された。
 トランザクションの集中は通常時の10倍が予想され、
この場合にシステムが安定的に稼動する事も重要なポイ
ントである。

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2.2.プロジェクトでの対応
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 私は前述の課題を極力早期に解決するためにプロトタ
イピングの実施を行った。しかしながら、以下成約によ
り全ての課題を解決可能なものでは無かった。

 a.本番に使用するサーバは本番直前に導入する予定で
  あり、プロトタイピングには使用できない。

 b.トランザクションの集中については、機械的にトラ
  ンザクションを発生させるツールが必要であるが、
  当時はこの様なツールが製品化されておらず、自製
  する時間も無い。

 従って、プロジェクトとしては、以下の目標設定を行
い、プロトタイピングを実施した。

a.操作性
 プロトタイピングで充分に検証可能な項目であり、
ユーザの参画を要請し、実際の画面で確認して貰う。

b.応答性
 本番機では無いために正確なレスポンスは確認出来な
いが、少なくともトランザクションを単体で実行した場
合に、3秒以内である事を目標とする。

c.安定性
 これについては、非常にローテクではあるが、プロ
ジェクトメンバー全員で可能な限りのトランザクション
を発生させ、安定的に稼動する事を確認する。

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3.プロジェクトの開始後に発生した問題と対応
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 前述の目標に従ってプロトタイピングを実施した結果、
操作性・応答性・安定性について問題の無い事が確認さ
れた。プロジェクトはプロトタイピングを終え、本格的
な開発作業の後、無事に本番化を迎えた。
 しかし問題は本番稼動後に発生した。その内容は、シ
ステムを1週間程度連続使用した場合に、WEBアプリ
ケーションサーバがダウンするというものである。実際
には自動リカバリにより使用を継続する事は可能である
が、A社を不安にさせるには必要にして十分な不具合で
あった。
 私は、WEBアプリケーションサーバのメーカに現地
での調査を要請する一方で、A社にはソースコードの開
示について了承を得た。一般的には、メーカが現地で対
応を行う事は無く、ソースコードレベルのチェックを行
う事は皆無に等しい。しかし私は、N社として今回採用
したWEBアプリケーションサーバを今後も積極的に採
用したい方針である事など、将来性を説明し、協力を取
り付けるに到った。
 結果的には、WEBアプリケーションサーバのメモリ
リークに起因するバグである事が判明し、パッチが提供
され事態は収束した。

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(設問ウ)
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4.新技術導入に際し必要な施策
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4.1.A社DWHプロジェクトの評価
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 前述の通り、操作性・応答性についてはプロトタイピ
ングが奏功し、本番稼動後もこの点が問題になる事は無
かった。
 唯一の問題点であった連続稼動時の安定性についても、
連続稼動を限られた工期の中でシミュレーションするた
めには、トランザクションを機械的に発生するツールが
必要となる。しかし、そのような要件を満足するツール
が無かった当時では回避不可能なトラブルであったと判
断する。
 但し、今日では機械的にトランザクションを発生させ
るツールは多くの製品が発表されており、私自身も他の
プロジェクトで使用している。 

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4.2.今後取り入れたい施策
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 今回のプロジェクトに例を見る通り、技術は常に変化
しており、それを取り巻く開発・テスト環境も日々変化
している。つまり、どういった技術を適用するかと同等
に、どの様な開発・テスト環境を用意するかもプロジェ
クトの成否を大きく左右する。
 私は今後、最新技術の適用に際しては、課題の見極め
を行うと同時に、課題を検証できるツールの調査も十分
に行っていきたいと考えている。



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