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(情報システム基盤の整備計画の策定について)

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(設問ア)
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1.O社海外事務所における情報通信機器整備計画の概要
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1)O社の業務と海外事務所の概要
 O社は世界18箇所に海外事務所または現地法人(以
下単に海外事務所と記す)を置く年商約5千億円の中堅
商社である。O社は国内の製造業との取引が多く,原材
料の輸入や製品の輸出を主に取り扱っている。昨今の世
界的な不況による売上高の減少と,バブル期の過剰投資
の後遺症で,O社の経営状態は思わしくない。このよう
な環境にあって,その維持に多額の費用が掛かる海外事
務所の合理化が重要な経営課題となっている。O社はこ
こ5年間で,採算性の低い7箇所の海外事務所を既に閉
鎖しているが,残った18箇所の海外事務所におけるコ
スト削減が急務である。

2)海外事務所の現状と情報通信機器整備計画
 大半の海外事務所では,日本との主な通信手段はテレ
ックスであり,ファクシミリ,電話,電子メールを補助
的に使用している。また,書類や資料類は郵送によって
遣り取りするが,急ぎの場合には国際宅配便を用いてい
る。特に近年は資料を日本へ迅速に届ける要求が多く,
費用がかさむ要因となっている。これらの通信に要する
費用は年間3億円弱に達する。
 ところで,近年のインターネット技術の発展により,
通信コストの大幅な削減が可能となっている。インター
ネットに接続された環境さえ整っていれば,コストを殆
ど掛けずに大量の情報をほぼ瞬時に世界中へ送ることが
できるのである。O社では海外事務所の情報通信機器を
整備し,通信費の削減を図ることになった。
 O社情報戦略室次長である私は,海外事務所の情報通
信機器を整備し,将来的には本社と海外事務所を結ぶ世
界的なネットワークを構築する計画を策定することにな
った。
(設問ア:775字ライン)

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(設問イ)
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2.海外事務所における情報通信機器整備計画の工夫点
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 本計画は,それぞれに事情の異なる世界各国の事務所
において情報通信機器を整備し,それらをネットワーク
で結ぼうとするものである。私は実現可能性と標準化が
最も重要であると考え,以下の手順で検討を進めた。

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2.1.各海外事務所の実情調査
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 私は各海外事務所の全駐在員に対して本計画に関する
詳細な説明と質問書を送付し,必要に応じて意見交換を
することにした。また実際に数箇所の海外事務所を訪問
して,駐在員からのヒアリングや,社会基盤の調査を行
った。その結果を以下に地域別にまとめる。なお,いず
れの国においても現在世界の大半のシェアを占めている
アメリカのM社の基本ソフトを搭載したパソコンを最低
1台は導入していた。

1)北米・オセアニア
 これらの国々は社会基盤の整備が進み,インターネッ
トの普及率も高い。O社の3箇所の事務所と2箇所の出
張所(駐在員が1〜2名駐在する,海外事務所の支所)
でも既にインターネットを活用していた。また,携帯電
話を利用したモバイル環境でのインターネット接続にも
問題はなく,出張所の駐在員が既に利用していた。

2)ヨーロッパ
 西欧各国は社会基盤に問題はないが,国によってイン
ターネットの普及率は異なる。6箇所の事務所のうち,
インターネットを殆ど利用していないところが2箇所あ
った。しかし,いずれの国でもパソコンを買い,契約さ
えすればすぐにインターネットに接続できる状態であっ
た。また,モバイル環境の利用にも問題はなかった。
 東欧では社会基盤整備の遅れが懸念されたが,O社の
事務所が唯一存在する都市では問題なく接続できること
がわかった。ただし,モバイル環境による接続は期待で
きなかった。

3)アジア・中近東・中南米
 これらの国々では,社会基盤の整備が遅れているため
に,1箇所を除き,インターネットによる通信が不安定
になることがあった。また,宗教上の理由や社会主義政
権による統制のために,インターネットの自由な利用が
認められていないところもあった。

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2.2.各国の実情に合わせた基盤整備計画
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 以上の調査結果から,先進国の事務所においてはイン
ターネットを利用した通信に何ら問題はないと考えられ
た。また,通信手段としては,M社の基本ソフトとそれ
に付随したブラウザおよび電子メールソフトを利用する
ことで標準化が図れる。
 しかし,発展途上国等では若干の工夫も必要となるの
で,私は以下のように計画を策定した。

1)全事務所共通事項
 駐在員全員に,M社の基本ソフトとワープロ,表計算
ソフト等を搭載した日本語環境のパソコンを配布する。
全員にメールアドレスを配布し,インターネット接続環
境を確保する。また,自社開発の暗号化ソフトをCD−
Rで配布し,機密事項の通信を可能とする。

2)先進各国の事務所
 パソコンは軽量のノート型を使用し,携帯電話を利用
したモバイル環境に対応できるようにする。テレックス
は廃止し,通信には可能な限りインターネットを利用し
て他の手段の使用を控える。

3)通信の不安定な事務所
 通常はインターネットを利用した通信を主とするが,
障害が発生した場合の代替手段として,従来の通信手段
も全て温存する。

4)インターネットの利用に制限のある国の事務所
 可能な限りインターネットを利用するが,従来の手段
も利用する。

5)本社のシステムの整備
 海外事務所から本社のコンピュータに国際電話で接続
し,直接通信することを可能にする。これによって,イ
ンターネットの接続が不安定な国や制限のある国からも
緊急性のあるデータを送受信することが可能となる。ま
た,先進国からも,極めて機密性の高いデータを安全に
送受信することができる。

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(設問ウ)
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3.海外事務所の情報通信機器整備の問題点と今後の展望
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3.1.経費削減効果の検証
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 以上の計画は取締役会の承認を得て実行に移された。
総費用は約3千万円を要したが,これによって通信費が
年間5千万円程度削減されることが期待されている。
 しかし,海外事務所の通信費をさらに削減することが
求められている。今後本計画の効果を一層高めるために
は,以下に述べるような強化・拡充が必要となる。

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3.2.国際ネットワークの構築計画
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 現状では,本システムは電子メールによる情報の授受
と,インターネットの利用による情報収集にしか利用さ
れていない。今後は暗号化技術を利用したいわゆるバー
チャルプライベートネットワークを構築し,海外駐在員
全員を社内ネットワークに参加させることが有効であろ
う。私が現在検討している機能の概要を以下に記す。

1)グループウェア,イントラネットへの参加
 国内の社員はすべて社内ネットワークに参加し,グル
ープウェアやイントラネットで情報を共有することがで
きる。現状でも国際電話を利用したダイヤルアップで海
外からこれに参加することは可能になっている。しかし
これは通信費の削減に逆行するために,特別な場合以外
の利用は認めていない。十分な機密性を確保した上で,
インターネット経由で社内ネットワークに接続できるシ
ステムを構築したい。

2)基幹システムとの会計データ等の遣り取り
 現地法人の場合には経理的に独立しているが,海外事
務所の場合には本社の経理に伝票を送って会計処理をし
ている。国内の支社と同様に海外事務所でも伝票の入力
ができるようになれば,通信費のみならず,本社経理部
の経費削減にもつながる。海外事務所に伝票入力用ソフ
トを配布し,インターネット経由で安全にデータを送れ
るシステムを構築したい。
(設問イ+ウ:2575字ライン)





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