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□ A社における仕入先とのデータ受け渡し
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(設問ア)
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1.A社における仕入先とのデータ受け渡し
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1.1.データを受け渡す業務上の目的
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 A社は東日本を中心に100店舗を展開する中堅クラ
スのスーパーである。A社における、商品マスターの登
録作業は以下の様に2重で行われていた。
 a.各バイヤーが仕入先との商談を行った後に、商品マ
  スターの登録を行う。
 b.仕入先においてもメーカへの発注のため、同様な商
  品マスター登録をう。
 一方各仕入先では、A社の販売実績を担当バイヤーか
ら商談時に聞かされるのみで、情報の鮮度・精度は悪く、
欠品を防ぐ為に、過度の在庫を抱えてしまう傾向にあっ
た。
 以上の様な背景から、情報共有の必要性がA社内・仕
入先で共通認識となり、業務効率化、各仕入先での在庫
圧縮を目的に、データ共有化の仕組みが検討される事と
なった。
 一方、システムインテグレータであるE社に勤務する
私は、A社データウェアハウス(以下DWH)の構築に
携わってきた経験から、当仕組みにおいても検討・構築
に携わる事となった。
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1.2.システムの概要
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 A社では、発注情報の配信にVAN会社を使用してお
り、今回のデータ受け渡しについても、これを活用する
事とした。具体的なデータの流れは以下の通りである。

 商品マスター:各仕入先からVAN会社を通じて、
 A社に受け渡される。受取った情報は、仕入・発注処
 理を行う基幹系システムに渡される。

 販売実績:店舗から上がるPOSデータはDWHに蓄
 積されており、これをVAN会社に受け渡し、VAN
 会社に設置するサーバーに、各仕入先からアクセスを
 行う。
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(設問イ)
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2.データ受け渡しの仕様決定について
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2.1.代表仕入先の決定
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 データ受け渡しについて、必要なデータ項目、フォー
マットを各仕入先と検討する事は、仕入先の数が数百を
越えている事から現実的では無かった。また、全ての仕
入先がデータの受け渡しが可能なレベルにシステム化さ
れている訳でも無く、A社と協議の上、特に効果の高い
主力仕入先を数社に絞り、検討を行う事とした。尚、そ
の他の仕入先については、決定事項について合同の説明
会を開催し、可能なところから順次、データ受け渡しの
仕組みへの参加を募る事とした。
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2.2.仕様の決定
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 データ項目については、既にDWH上に構築されてい
る、商品マスター・販売実績からレコード仕様をベース
に打ち合わせを行った。
 商品マスターについては、各仕入先で入力可能なデー
タ項目を洗い出す比較的単純な作業であり、スムースに
進めることができた。
 一方の販売実績については、A社として外部に提供す
る事に難色を示す内容もあり、両者の調整が必要であっ
た。具体的な内容は以下の通りである。
 a.販売実績数量・金額は可能であるが、値下げ等ロス
  に関するものは提供出来ない。
 b.提供可能な販売実績数量・金額はあくまでもA社の
  全店合計であり、各店別には提供出来ない。
 値下げ等ロスに関するデータについては、A社の機密
事項であり、かつ仕入先でも有効なデータ活用の方法も
見出せない事から、提供内容から外す事で了承が得られ
た。しかしながら、店別の販売実績については、A社の
出店地域が広範囲に渡る事から、地域別の販売傾向を見
たいとの強いニーズがあり、この部分はA社が妥協し、
提供内容に含める事となった。
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3.想定したトラブルと解決の為の工夫点
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3.1.想定したトラブル
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 販売実績については、POSデータを収集後、A社基
幹システム及びDWHにおいて、月曜朝6時に先週分の
売上が確定される。一方で、VAN会社から仕入先への
データサービスは午前9時を予定しており、かつVAN
会社におけるサーバーへのデータ取り込み時間を考慮す
ると、2時間の間にデータの受け渡しを完了しなければ
ならなかった。
 当然ではあるが、ネットワークには障害が付きもので
あり、2時間は再処理を考慮した上の時間となる。つま
り、実際には1回あたりの送信を1時間以内に完了させ
る事が運用スケジュール上の条件となった。
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3.2.解決の為の工夫点
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 A社の販売実績を正規化されたDWHから単純に抜き
出した場合、そのデータ量は、約1Gになる。このデー
タを、A社−VAN会社を接続する64Kのネットワー
クに乗せた場合、伝送効率60%の前提で、70時間を
要する事になる。但し、数値データが主であり、かなり
の高圧縮率が期待され、実験の結果から安全性を考慮し
ても圧縮率は98%となる事が判った。しかしなが、圧
縮した結果でも送信時間には69分を要する事となり、
前述の1時間を切るには至らなかった。
 そこで、当初は受け渡しデータのファイルレイアウト
にはDWHのレコード仕様をそのまま使用する予定で
あったが、これを見直し、全レコードに付与されている
販売実績日付を別ファイルとする事を決定した。これに
より、各レコードからは日付項目が削除され、データ量
をを大幅に削除する事が出来た。但し、これはあくまで
も仕入先に提供するデータが先週分であり、複数の週を
送信する予定が無い事が前提であり、これはA社にも確
認を行った。
 この結果、データ量は3割削減され、受け渡し時間は
50分となり、ネットワーク障害時にも再送可能な所要
時間でもデータ受け渡しを実現する事が出来た。
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(設問ウ)
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4.データ受け渡しの評価と今後の改善点
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4.1.データ受け渡しの評価
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 前述の様にデータ受け渡しの目的は、A社業務効率化
と仕入先における在庫圧縮にあった。在庫圧縮について
は定量的に述べる事は出来ないが、業務効率化について
は、目標であったバイヤー一人当たり1週間につき、5
MH(人時の削減を実現する事が出来ている。
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4.2.今後の改善点
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 受け渡しデータのフォーマットを非正規化し、日付部
分を別ファイル化した事による弊害も運用面で出ている。
それは、当初日曜締めで先週分データを仕入先に受け渡
す前提であったが、店舗からのPOSデータが確実に日
曜夜間までに届かないケースである。具体的には本社・
店舗間のネットワーク障害がそれに当たる。
 この場合、火曜以降に仕入先に訂正データを提供しな
ければならず臨時のオペレーションが発生する事となる。
これは、受け渡しデーのフォーマットを正規化したまま
にしておけば、翌週のデータに訂正データを追加して提
供する事も可能であった。
 いずれを採用するかは、ネットワークコスト・仕入先
へのデータ提供のサービスレベル・運用オペレーション
のトレードオフであり、設計時点で前提条件をもっと詳
細に確認しておく必要があったと反省している。
 またこの作業は、実際にシステムを設計し構築する
我々アプリケーションエンジニアの成すべき作業である
と考えている。





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