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 開発計画策定における合意形成について

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(設問ア)
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ア−1.システム開発の目的と概要
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 S社は、従業員350名、売上高80億円の中堅建設
会社である。長年プラント分野を中心事業としてきたが、
プラント業界の不況を期に一般建設分野へとシフトした。
3年前に、人材派遣会社など数社を買収した。現在のS
社は、次のような構成となっている。
 1.本社管理部門(経理、総務、管理などの各部)
 2.E事業部(建設事業:12の部と支店)
 3.T事業部(人材派遣業:8支店)
 4.O事業部(アウトソーシング事業:8支店)
 情報システムに関しては、経理部電算室で自社開発し
た経理システムだけである。十数年を経ており、開発者
が退社、ドキュメントは散逸している。
 経理システムは決算処理に特化しており、最近の各部
門からの要求には応じきれない事が多い。わたしは、E
事業部向けに営業・計画・工事の全業務を支援する、い
わゆる情報系システムの開発計画に参画した。

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ア−2.開発計画立案体制
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 当初の説明では、E事業本部長がトップとなり、工事
業務室長とわたしがメンバ、電算室長がオブザーバとし
て参加する開発計画立案体制であった。コストとスケジ
ュールの制約から、わたしは現行の勘定系ホストをDB
サーバとし、ユーザPCとの間に数台のWebサーバを
置く3層のイントラネットを構想していた。
 最初の企画書を作成し役員会へ諮られた際に、O事業
部より問題提起があった。勘定系ホストとGUIエミュ
レータが昨年バージョンアップされたばかりであり、こ
れを活用せずに新しいシステムを構築するのはおかしい
という事であった。
 役員会の結論として、O事業部長が計画に加わること
となった。立案体制は混乱してきた。

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(設問イ)
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イ−1.意見の対立
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 O事業部長が参加してからの開発会議は、毎回粉砕し
先へ進まなくなった。O事業部長の意見は、要するに昨
年度の投資が間違いだったというものである。電算室長
の反論は、更新は必要不可欠であって、投資の回収は経
理システムの保守コストとして償却されるというもの。
両者は平行線をたどった。
 本来であれば、更新されたエミュレータを各ユーザP
Cにインストールし、これを基盤とした情報系システム
の開発も不可能ではない。そうすれば、昨年の投資も活
かされる事になる。
 しかし、わたしは、これを検討済みであり退けていた。
それは、エミュレータのGUIエンジンであるアプレッ
トのファイルサイズが大きく、ユーザPCのメモリとC
PUに相当の能力・容量を要求するものである事。加え
て、経理システムのOS言語やDB構造が陳腐化してお
り、この上に乗った情報系システムは将来のメンテナン
ス性などにリスクが大きいと判断したからである。

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イ−2.対立の背景
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 わたしは、会議・会社の場でなく、社外でO事業部長
の本音を探った。
 ・担当事業内容の関係で情報システムの費用対効果に
  詳しいにも関わらず、昨年の反対意見が無視された。
 ・現行の月末決算を焦点とした経理システムでは、O
  事業部とT事業部の日次処理の業務ニーズに合わず、
  再三システムの改変を要求しているが容れられない。
以上の様な背景が明らかになった。さらに、O事業部と
T事業部は、事業部利益の一部を原資として、独自の部
門システムを構想中でもあった。その部門システムには、
営業支援や人事給与系を含むWWWアプリが候補に上っ
ていた。

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イ−3.合意の形成へ
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 わたしは、E事業工事業務室長と打開策を検討した。
その結果、次の2つが重要であると判断した。
 1.将来への基盤となる情報システムの計画であるか
   ら、全社的な体制で再検討する。
 2.経理部電算室の業務について、その配置が経理部
   に属するのが妥当であるかも含めて検討する。
以上をE事業本部長に説明し、役員会に諮ってもらった。

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イ−4.情報化推進本部の設置と電算室の改組
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 役員会の結果として、2つが決定した。
 情報化推進本部は、全社の情報化とその費用対効果を
決定・検討するもので、本部長はO事業部長が兼任する
事となった。わたしも社外コンサルタントとして参加す
る事になった。
 経理部電算室は廃止され、情報システム室として情報
化推進本部の直下に置かれることになった。全社的な視
点から情報資源を管理するのが主眼となった。

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(設問ウ)
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ウ−1.計画立案体制の評価
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 当初の体制は、E事業部だけの体制であった。全社的
な情報基盤などの整合性をオブザーブしてもらうために
電算室に加わってもらったのだが、経理部電算室であっ
たために機能しなかった。情報システムの開発計画は、
たとえ部門システムであっても、全社的体制での検討は
欠かせない。
 今回の場合、企画の最初の段階で問題が具現化し、体
制の不備が明らかになったので、むしろ結果的には良か
った。
 情報化推進本部に権限が移ってからは、開発計画は進
むようになった。それなりの権限が与えられた事もある
が、やはりキーパーソンの選定がうまくいったからだと
判断している。当初の体制では、電算室長は社内的に有
力とはいえなかったし、E事業本部長は情報システムに
詳しくなく、技術論や各論では力を発揮できなかった。
 計画立案体制では、関連部門長などキーパーソンの網
羅も重要であるが、そのキーパーソンが社内で有力なの
かどうかも、より重要であると認識している。

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ウ−2.今後の改善点
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 S社の現在の体制は、情報化や情報システムの開発を
決済するには最適となった。
 しかし、計画の実現化、設計、開発、運用段階では、
新設なった情報システム室の能力が問われる。今回のE
事業部のシステムは、ミドルウェアをO事業部、T事業
部と共通化して、パッケージソフトを指定してアウトソ
ーシングする事に大綱が決定した。
 この後のアウトソーシングでは、情報システム室が契
約なども含めて管理できるかがポイントである。引き続
き情報化推進本部の外部コンサルタントであるわたしは、
体制の整備と共に、人材の育成も重要であると認識して
いる。

(全部で2800字ライン、1時間50分)





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