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□ 論文テーマ:A社衣料品システム開発におけるニーズの取りまとめ
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(設問ア)
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 私は現在システムインテグレータであるE社に勤務し
ており、3年前からA社の依頼を受け、衣料品システム
の開発・改造に携わっている。
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1.衣料品システムの概要
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1.1.衣料品システム開発の背景
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 A社は九州地方を中心に50店舗を展開する中堅クラ
スのスーパーである。A社においては衣料品の売上は
30%を越え、食品に比肩する割合を占めている。しか
しながら長引く不況により、衣料品の売上は伸び悩み、
社長からの厳命により衣料品システムに対する抜本的な
見直しが指示された。
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1.2.開発の目的
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 衣料品の様に季節性の高くかつ、長期にわたり在庫に
なる商品においては、計画的な売上・在庫管理が必須で
ある。しかしながらA社においては商品の単品管理こそ
実現されていたものの、季節を切り口にした商品管理が
なされていなかった。このため、夏が終わる時期に在庫
を評価した場合にも、夏物の売れ残りなのか、秋物の新
作が入荷されているのか判断出来ない状況であった。
従って、商品を売り切るタイミングを逸してしまう事は
必至であり、値下げによる大幅なロスを生み出してしま
う事となっていた。今回の開発では、衣料品の季節管理
を実現する事により、値下げ率の3%改善をプロジェク
トの目標とした。
 本論文ではA社衣料品システムに対して行った、シー
ズン管理の導入について、ニーズ分析の過程と私の役割
を述べる。
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(設問イ)
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2.ニーズ分析
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 衣料品システムの機能は、計画・発注・納品・販売・
評価から構成される。私はシステム化方針に基づき、先
ずは販売実績・在庫の評価機能にシーズン管理を導入す
る前提で利用部門へのヒヤリングを行った。ところが、
ヒヤリングの結果、驚くことにシーズン管理に止まらず
実に沢山のニーズを暖めている事や、現行システムの抱
える問題点等が明らかになった。
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2.1.計画・発注のシステム化
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 ヒヤリングの結果まず挙げられたニーズは、発注のシ
ステム化である。A社において衣料品の発注は、手書き
伝票をFAXする事や、電話での連絡にて行われており、
誤配・遅配等の発生により納品率はA社の要求を満たす
レベルには無かった。この様な背景から、多くの利用者
がシステム発注を強く望まれていた。
 一方で、発注のシステム化と同時に上がったニーズは、
計画のシステム化である。シーズン管理の導入にあたっ
ては、シーズン別の発注・販売計画を立案し、それに立
脚した発注と実績管理を行いたいとの考えである。つま
り、利用部門の要求としては、単なるシーズン別の実績
管理を実現する事では無く、計画に対する実績評価機能
の構築であり、言い換えると仮説・検証を実施できる仕
組みを求めていたわけである。
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2.3.レジスキャン率の向上
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 シーズンを切り口にした情報提供がなされても、その
精度が低くては実用にはならない。ところが、A社にお
けるレジのスキャン率は90%を割っており、10%以
上の売上については商品を特定できない状況にあった。
従って、部門レベルでの実績管理には支障無いものの、
商品を特定できない為、売筋・死筋を分析するとこが出
来ず、チャンスロスを生み出してしまう可能性があった。
 この様な背景から、今回の開発に合わせて、レジス
キャン率の向上も強く要請された。
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3.現実的なシステム開発
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3.1.効果の早期享受
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 前述の様に、シーズン管理の導入に伴うシステム化ニ
ーズは広範囲にわたっていた。しかしながら、全てのニ
ーズを同時に実現しようとした場合、開発の長期化は避
けられない。従って、私はヒヤリングの結果に基づき、
まずは最も効果を発揮するであろう評価機能にシーズン
管理を導入し、サービスを開始した。
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3.2.シーズン管理の意識合わせ
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 プロジェクトとして評価機能の部分から、シーズン管
理を導入した理由は、もう一つある。
 従来からも、システムによるサポートこそ無いものの、
業務の実態としてシーズンという考え方は殆どの利用者
が意識していた。しかしながら、それは組織としてのコ
ンセンサスが得られているものでは無い。例えば、1年
を春・夏・秋・冬で管理する人も居れば、加えて初夏・
初冬・晩夏などの木目細かい管理を行う人も居るといっ
た具合である。また、シーズンの計画についても、枚数
・金額、或いはシーズン週別計画・シーズン合計での計
画と、その内容も人それぞれである。
 私が、実績評価の部分からシーズン管理を導入した理
由は、組織としてシーズンの管理をどう行うべきか、共
通認識を築いて頂く事にあった。その為に、最も利用者
が入り易い評価機能から開発に着手したものである。
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(設問ウ)
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4.評価
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4.1.シーズン管理導入の効果
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 衣料品システムの、実績評価機能にシーズン別の管理
を導入した時点で、値下げ率は3%改善され、プロジェ
クト目的をクリアすることが出来ている。
 また、レジの問題についても、その後の調査結果、特
殊な条件下において、ホストから送信されるメンテナン
スデータをレジ側が受け切れない不具合を持っている事
が判り、これにも対応した。
 A社においては今後、発注・計画等の残された機能に
ついても順次開発・改造に着手する予定であり、値下げ
率改善を含む衣料品の業績は更に好転する見通しである。
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4.2.ニーズ分析とAEの役割
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 A社の例に見る様に、システム開発のニーズは多岐に
渡り、全てのニーズを一度に満たそうとした場合、どう
しても開発期間は長期化する事になる。今日の様に、企
業間の競争が激化している状況では、1日でも早くシス
テムをカットオーバーし、効果を生み出さなければなら
ない。つまり、全体のシステム化計画に基づき、実行面
では効果的なサブ機能単位に、設計・開発・運用を繰り
返すスパイラル的なアプローチが必要であると言える。
 我々アプリケーションエンジニアの役割は、ユーザか
ら混沌と涌き出るニーズを整理し、最も効果の高い機能
を切りだし、システム構築を進めていく事にあると認識
している。


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