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 C社生産管理システムにおける分散開発環境と監査のポイント

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(設問ア)
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1.情報システムの概要と分散開発環境
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1.1.C社生産管理システム
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 C社はシリコンウェハーを製造するメーカであり、大
容量化・新品種への対応と、更なる品質向上を目的に、
新工場の建設を中心とする大規模な設備投資を行った。
これにより製造工程および品質保証の考え方は大幅な変
更となり、生産管理システムも抜本的な見直しが必要と
なった。
 システムインテグレータであるN社に勤務する私はC
社生産管理システムの再構築についてPMとして携わっ
てきた。本論文では、C社プロジェクトを対象にシステ
ム監査人の立場としての意見を述べるものである。

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1.2.分散開発環境を必要とする背景と狙い
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 C社プロジェクトの開発規模は600人月であり、当
初はこれを2年間で完成させる計画であった。しかし、
市場動向の変化により、急遽半年間の短縮を要請され、
その結果プロジェクトのピーク時には60人体制が想定
された。この規模は私の勤務する事業所だけでは調達不
可能な規模であり、また事業所内およびC社内にも収容
できる人数では無かった。
 しかしながら、シリコウェハーの市場変化は激しく、
適切なタイミングで新品種を投入できなければ効果が無
いとの事から、C社の予定変更が撤回する事は無かった。
 以上の背景から、プロジェクトでは開発工期の短縮を
狙いとし、同じN社内の別事業所2箇所、計3箇所での
開発を進める事とした。同じ社内と言えどもプロジェク
ト本体の設置されている私の事業所から各事業所への移
動は3時間を要し、容易に打ち合わせ等のために移動が
できる環境には無かった。


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(設問イ)
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2.分散開発環境におけるリスク
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2.1.意思疎通が充分に図れない
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 プロジェクトを進める上で、品質・進捗・コストは重
要な管理項目であり、PMは常にこれらの状況を確認・
管理しなければならない。
 しかしながら分散開発環境においては、地理的な制約
から意思疎通が充分に行えずに、これらの確認・管理が
徹底されないというリスクがある。

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2.2.開発標準が徹底しない
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 一般にシステムの品質・生産性を向上させるためには、
開発標準の制定と遵守が有効であるとされている。C社
プロジェクトにおいても以下のような標準を定めている。

 a.画面・帳票作成基準
 b.仕様書の様式・記述内容レベルに関する基準
 c.プログラミング標準

 しかしながら分散開発環境においては、標準が徹底さ
れず、品質が保たれない、進捗に遅れが発生するという
リスクがある。

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2.3.システム構成間で不具合が生じる
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 前述の意思疎通が不十分、開発標準の不徹底の結果と
して、各分散開発環境における完成物を結合した結果、
システム構成間の不具合で、システム全体として上手く
機能しないというリスクがある。

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3.リスクを低減するためのコントロール
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3.1.意思疎通の徹底
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 日常的に電子メール・共有掲示板等によりコミュニケ
ーションを図る事は重要である。しかしながら、最も効
果的な方法は、週報等により定期的に分散開発環境の状
況を確認する事である。
 実際にC社のプロジェクトにおいても私は、週報とし
て報告すべき項目と様式を定め、定期的に各事業所の状
況確認を行ってきた。

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3.2.開発標準の徹底
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 私の勤務するN社はISO9001を取得しており、
この基準に沿って運用を行った。

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3.2.1.分散開発環境における管理責任者の設置
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 まず、各分散開発環境において開発標準の管理責任者
を設置し、以下の指示を行った。

 a.配布された開発標準の差し替え。
 b.開発標準の変更時、各人に周知徹底させる事。

 いずれも社内の基準に従って、標準の差し替え・各人
の教育記録を残す事としている。

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3.2.2.改廃ルールの制定
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 開発標準については不具合、より良いと思われる内容
が各分散開発環境で発見・起案される場合がある。これ
について、各分散開発環境だけで見直しを行い成果物へ
の反映を行ったのではプロジェクト全体としての品質は
保たれない。
 従って、開発標準の改定依頼、受理/不受理の通知、
受理した場合の改定通知について、様式・提出先・方法
等のルールを定め運用する事とした。

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3.3.システム構成間の不具合の低減
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 分散開発環境に関わらずこの問題は発生する可能性が
る。しかしながら特に分散開発環境に特化して、システ
ム構成間の不具合について低減方法を述べるならば、各
分散開発環境における開発機能を極力独立性の高いもの
にする事であると考える。
 他の分散開発環境との関係を疎結合とし、同一分散開
発環境内の開発機能は密結合の集合体とする事により、
システム構成間の不具合は各分散開発環境内で早期に発
見・解決を行う事が可能である。
 実際にC社プロジェクトを例にすると、受注と出荷、
品質設計と品質判定といった密に関連する機能単位は、
同一事業所にて開発を行う事としてきた。

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(設問ウ)
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4.分散開発環境におけるリスクコントロールの監査
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4.1.意思疎通の方法
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 先に述べた週報による意思疎通の徹底については、実
際に作成された週報を確認する事で監査可能である。特
に監査のポイントは以下にある。

 a.決められた頻度で定期的に作成されている事。
 b.全ての分散開発環境の週報が漏れなく作成されてい
  る事。

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4.2.開発標準の徹底
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4.2.1.管理責任者の設置状況と行動の記録
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 まず、各分散開発環境において管理責任者が定められ
ている事を、プロジェクト体制図より確認する。そして、
管理責任者が規定に沿って標準の改廃・通知を行ってい
る事を以下より確認する。

 a.改廃に伴う標準の差し替え記録
 b.標準改定時の教育記録

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4.2.2.改廃ルールの遵守状況
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 これについては、開発標準の改定ルールが存在する事
を確認する。更に、開発標準の複数バージョンを入手し
以下を確認する。

a.変更箇所に関する改定履歴・改定通知書が存在する事。
b.改定履歴に記載の無い箇所が修正されていない事。

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4.3.分散開発環境の開発機能の妥当性
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 これについては、システム機能階層図・関連図等のド
キュメントを入手し、各分散開発環境での開発機能の妥
当性を確認する。
 また、各分散開発環境の開発責任者にインタービュー
を行い、分散開発機能の妥当性・問題点を確認する事も
有効であると考える。





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