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 (アウトソーシングの企画段階におけるシステム監査について)

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(設問ア)
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ア−1.わたしが携わった情報システム
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 S社は、創業70年を迎えた中堅建設会社である。時
代の変遷と共に、造船から重化学プラントへ、一般建設
からビル・マンションのリフォームへと事業分野をシフ
トして来た。店頭公開に向けて、土木技術者とSEの派
遣会社を買収した。旧来の建設事業はエンジ事業部とし
て再編された。
 S社の情報システムは、月次バッチによる決算処理の
経理システムだけである。業容の拡大と、派遣事業部の
影響もあって、エンジ事業部でも情報化の必要性が再確
認された。具体的には、次のようなものである。
 a.既存の経理システムは勘定系だけに用いる
 b.各事業部は独自に情報系を導入する
 c.2事業部の情報系に共通のミドルウェアを用いる
 わたしは、エンジ事業本部工事業務部長で、情報系の
企画、開発の責任者も兼任する。

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ア−2.アウトソーシングの目的と概要
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 既存の経理系を保守・運用する情報システム室には、
情報系の企画、開発能力はないと判断された。情報系の
分析、開発はアウトソーシングすることになった。具体
的には、つぎのようである。
 a.元社員で現在ITコンサルのI氏に、企画、分析の
  段階から参画してもらう
 b.開発段階は、中堅ソフトハウスに発注するが、派遣
  事業部の社員を配する
 元社員のI氏は、エンジ事業部の体制や業務を知って
いるので、業務分析・要件定義での能率や的確性を期待
できる。派遣先で業務を行なう派遣事業部の社員には、
会社への帰属心は薄いかも知れないが、内部情報の流出
防止にある程度は期待できると判断したのである。

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(設問イ)
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イ−1.アウトソーシングの実施
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 一般に企業がアウトソーシングを実施する場合に考慮
すべきリスクで重要なものに次の2つがある。
 a.意志伝達・意図達成の問題
 b.内部情報の流出の問題

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イ−2.意志伝達・意図達成の問題の場合
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 およそ企業やその構成員には独自の文化や個性が存在す
るので、当社の意志や意図が十分伝わらず、アウトソーシ
ング先での解釈との間で誤解や錯誤が生じる怖れがある。
口頭や電話での伝達だけに頼らず文書化しても、まだ十分
ではない。契約条件など重要事項の議事録などは、定期的
に読み合わせを行ない、十分に確認する必要がある。
 この点で、元社員のI氏が、企画、分析など上流段階で
参画する効果は大きかったと判断している。
 また、大規模な会社では企業文化が堅固で完成されてい
るので、当社のような中堅規模の会社の業務モデルを定義
する際に影響がでる怖れもある。アウトソーシング先には、
個人や中堅規模のソフトハウスを採用した方が、より無理
なく当社の意図が達成されるのではと考えられた。

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イ−3.内部情報の流出
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 どのようなアウトソーシングでも、大なり小なり、内部
情報の流出の怖れはある。企業ノウハウや機密事項に関す
るものは、自社開発するべきであろう。
 機密事項に属さない場合でも、事業の全容をカバーする
場合には、同様の配慮が必要である。そのような場合は、
分割発注として全容が知れないようにするコントロールが
効果的である。
 今回の当社の場合、自社開発が可能でなく、また分割発
注が費用対効果の面で不利と判断されたので、契約条件を
吟味した上で、社員SEを配することとした。

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イ−4.企画段階に実施すべき内容
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 企画段階でリスクをコントロールするためには、まず想
定されるリスクを多出する。考えられるすべてのリスクに
対するコントロールを多出した上で、効率やコストなど他
の要件を損なわない限りでコントロールを多重化すること
が必要であると考える。

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(設問イ)
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ウ−1.アウトソーシングの意志決定の合理性
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 意志決定の合理性は、誰が目的を設定し誰が指標を判断
し誰が決定したか、代替策との比較は公正に行われたか、
などを検討する。
 一般にアウトソーシングの目的はつぎの3つであり、そ
れぞれの場合で、監査の重点を考慮すべきである。
 a.自社資源の目的適合化
 b.自社に不足する資源の補完
 c.最優先戦略、目的の迅速な達成

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ウ−2.自社資源適合化の場合
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 自社資源を向ける分野での効果と、アウトソーシングの
コストが同等な指標で比較検証されているか。いわゆる効
率性の検証が監査のポイントとなる。
ウ−3.自社に不足する資源の補完
 補完する資源の調達において、代替案の評価が公正に行
われたかなど、調達資源の信頼性や安全性の検証が監査の
ポイントとなる。
ウ−4.最優先戦略、目的の迅速な達成
 この場合は、得られた成果の検証にポイントを置く。成
果は、話題性や迅速性などのインパクトも指標化されてい
るか検証すべきである。効率性や安全性は最低限を損なっ
ていない限り、2次的な位置に置かれる。


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