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 派遣要員のスキルとプロジェクトの相違にともなう要員交代について

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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要と交代要員の担当作業
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1.1.A社データウェアハウスの構築
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 A社は東日本を中心に約100店舗を展開する中規模
のスーパーである。A社において、POSレジスタの導
入は比較的早い時期に完了していたが、その活用はレジ
の省力化に止まっており、販売実績を商品計画に活かす
までには到っていなかった。そこでA社では、競合他社
との差別化を図るべくデータウェアハウス(以下、DW
H)の導入を決定した。
 システムインテグレータであるN社に勤務する私は、
A社DWH構築に営業時点より参画しており、受注後は
PMとしてプロジェクトを指揮する事となった。

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1.2.交代要員の担当作業
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 今回のシステム基盤については、全店展開時のTCO
を考慮した結果、WEBを採用する事が前提とされてい
た。しかし、N社にはWEBアプリケーションの開発経
験が無く、PMである私はチーム編成を行う際に、協力
会社よりテクニカルSEを派遣して貰う事を決めた。
 協力会社には、今回のシステム基盤・使用する具体的
なプロダクトを連絡し、協力会社での人選の結果、F君
が適任であるとの判断から、プロジェクトに派遣されて
来た。F君の具体的な作業内容としては、以下の通りサ
イジングの実施である。

 a.テスト環境の作り込み。
 b.性能評価に使用するテストプログラムの作成
 c.過負荷時の性能測定に使用する、トランザクション
  発生ツールの開発。
 d.上記環境・ツールを使用した、適切なハードウェア
  の選定。


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(設問イ)
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2.要員交代を考えた時の問題と解決策
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2.1.要員交代を考えた時の状況
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 プロジェクトでは、基本設計として要件定義・外部設
計を行うと同時に、F君にはサイジングの作業を実施さ
せた。具体的には以下のスケジュールである。

 a.最終的なハードウェアの選定まで、2ヶ月間。
 b.1ヶ月目に、テスト環境・プログラムの作成。
 c.2ヶ月目に、テストデータを用意し性能評価を行う。

 プロジェクト全体としては、2ヶ月で基本設計を完了
させ、ハードウェアを含め、以降の工程に必要な費用見
積りを行い、一括で請け負う予定である。
 私は、F君の作業を含め、プロジェクト全体の進捗管
理を行うために週に一度必ずミーティングを実施してい
た。ところが、プロジェクト開始から半月が経過した時
点で、F君より進捗の遅れが報告された。
「1ヶ月目にテスト環境の構築・プログラムの作成を完
 了するためには、現時点でテスト環境の構築を終えて
 いなければならないが、まだ終了していない。更に、
 月末近くまでかかる見込みである。」
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2.2.PMである私の取った行動と解決策
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 私は、遅れている原因について、F君に詳細な状況を
確認したところ、以下の通りであった。
「確かにWEBの経験はあるが、今回採用しているシス
 テム基盤とは異なるものである。従って、問題点や使
 用上の不明な点が発生した場合の解決に時間がかかる。」
 私は、システム基盤については詳細に協力会社に伝え
てある事から、F君は経験・スキルとも充分であると判
断しており驚いた。要員の交代も考えたが、N社と協力
会社の関係、F君自身へのモラルを考慮すると、一旦は
踏みとどまざるを得なかった。
 私は、F君に以下のアドバイスを行い、引き続き業務
を継続するように指示した。

 a.報告・連絡・相談は日々行う事。
 b.これまでに経験のあるプロダクトとも共通する考え
  方もあると思うので調査してみる事。
 c.情報の収集には、インターネットをフルに活用する
  事。

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3.要員交代の決断と工夫した点
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3.1.要員交代を決断時の状況
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 前述のアドバイスによってF君の作業も次第に軌道に
乗りはじめたが、プロジェクト開始から1ヶ月が経過し
た時の状況は以下の通りであった。
「テスト環境の構築は完了したが、テストプログラムに
 ついては50%程度しか完了していない。」
 つまり、投入工数4/8(人週)に対し、完了工数3
/8という状況である。
 またF君自身より「プロジェクトに迷惑は掛けられな
い。」と相談を受け、私は要員交代の検討に着手した。

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3.2.要員交代時のリスク分析
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3.2.1.品質面
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 要員交代を行ったとしても、必ずしもスキル的に充分
な人材が手配可能であるとは限らない。一方、F君を継
続して参画させた場合、彼のスキルから判断すると、サ
イジングの結果が誤った方向になる可能性もある。
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3.2.2.納期面
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 F君からの引継ぎを考慮すると、残り1ヶ月間でサイ
ジングを完了させるためには2名の要員が必要になるが、
交代要員が直ちに手配可能であるとは限らない。また、
交代要員が順調に立ち上がらないという可能性もある。
一方、F君を継続して参画させた場合、サイジング完了
時期の予測が難しい。
 しかしながら、サイジングの作業が完了しない事には、
詳細設計以降の全体に必要な見積りを提示する事ができ
ず、プロジェクト全体が停滞する事となり、2ヶ月以内
に作業を完了させる事だけは遵守しなければならない。
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3.2.3.コスト面
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 要員の交代を円滑に進めるためには、F君とのラップ
配置が必要である。また、前述の通り交代要員は2名が
必要であり、いずれもコストを押し上げる要因となる。
一方、F君を継続して参画させた場合、ずるずると期間
が延び、結果的にコストを押し上げる可能性もある。

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3.3.リスク回避と要員交代の工夫
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 私は協力会社に要員交代を打診したところ、幸いな事
に1週間で手配可能との事であり、要員交代を決断した。
 交代要員の立ち上がりに時間がかかる新たなリスクに
ついては、手配に必要な1週間について、F君には全て
の作業を一旦中断し、テスト環境・テストプログラムの
目的・狙い・状況について整理して貰う事とした。また、
協力会社には、引継ぎのためにF君と後任を1週間ラッ
プして配置する事を要請し、承諾を得た。

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(設問ウ)
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4.要員交代の評価と改善策
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4.1.要員交代の評価
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 前述の通り、ドキュメント整理・ラップ配置の施策に
より、後任は順調に立ち上がり、予定通り残り1ヶ月の
中でサイジングを終える事が出来た。
 一方、要員交代・ラップ配置にかかるコストについて
は、協力会社での確認ミスを指摘する事によりF君のラ
ップ配置分のみは費用を請求しない扱いとする事が出来
た。結果的に2ヶ月目のコストは、F君(1/4人月)
+交代要員2名(3/4人月×2)となっており、1人
月弱のコストが余分に掛かった事となる。しかしながら、
F君を継続した場合には、仮にF君が0.5ヶ月遅れで
作業を完了したとしても、プロジェクト全体が待ち状態
になるため、コスト・納期面への影響はもっと大きい。
 以上から、今回の要員交代は成功であると判断する。

4.2.要員交代の改善策
 そもそも要員交代を行わずにプロジェクトでは完了す
る事が望ましい。今回は、協力会社・私の確認ミスであ
る。私は今後、プロジェクトのメンバーを編成する際に、
各人の経験・スキルを充分に確認したいと考えている。
それにより、不要な要員交代を避ける事ができると考え
る。





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