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 S社に対する生産計画計画パッケージの適用について

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(設問ア)
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1. 私の関わったシステムの概要と適用したパッケージ
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 S 社はプラスチックを主に製造している化学工業メー
カーである。化学工業では,他の製造業と違い,製造し
た品目の状態を直接確認することはできない。そのため,
製造過程において途中経過を確認する方法は機械による
監視など間接的な方法を取る。生産計画の修正に必要と
なる製造実績データも監視システムにより間接的に収集
される。このため,製造システムへの的確な作業指示デ
ータの作成や,製造実績をリアルタイムに反映するため
に,生産計画システムは,製造システムやその監視・制
御システムと同時に構築することが多い。生産状況の監
視や製造システムの制御,製造実績データの収集といっ
た生産計画システムと製造システムとの間のデータの交
換を行うシステムははMES(Manufactiring Execution
System)と呼ばれる。
 S 社は現行の生産計画システムでは市場のニーズに合
わせた製品の生産計画作成を行えないという問題を抱え
ていた。市場のニーズに合わせた的確な製造を行うため,
その製造システムおよび生産計画システムを見直すこと
にした。オーダーメイドによるシステムの再構築も含め,
実現方式を検討した結果,H 社のMES パッケージとT 社
の生産計画システムパッケージを組み合わせて導入する
ことにし,両社に共同でシステムを構築することを依頼
した。
 私はT 社のアプリケーションエンジニアである。S 社
生産計画システムの構築に当たり,T 社側のリーダーと
してプロジェクトに参画し,H 社側のアプリケーション
エンジニアと共同でシステムの設計および構築を行った。
 
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(設問イ)
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2. パッケージを適用するにあたって発生したギャップと解決策
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2-1. パッケージを適用するにあたって存在したギャップ
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 私はS 社生産計画システムを構築するにあたってまず
H 社のMES パッケージおよびT 社の生産計画システムパ
ッケージの標準機能と,S 社の業務システムが必要とす
る機能の分析を行った。さらにH 社のMES パッケージと
連携するためにどのような方法が適切か分析を行った。
分析の結果明らかになったパッケージの機能と業務シス
テムが必要とする機能のギャップやH 社のMES パッケー
ジとの連携上解決しなくてはならない問題は次に挙げる
ものであることが明らかになった。

a) 工程間の作業の連続性保持の必要性
 通常,製造業では一つの製品を完成させるために幾つ
かの工程を経る。電化製品の製造などの組み立て加工業
種などではある工程の作業が終了したあと,中間製品と
呼ばれる成果物ができる。中間製品はいったん保管場所
に運ばれる。次の作業が開始される時に保管場所から取
り出され,次の工程の作業が行われる。この様な製造形
体では工程ごとの作業はその前後関係さえ保っていれば
良いためそれぞれの作業情報を比較的独立した形で生産
計画を作成することが出来る。このような作成方法を
「ジョブ指向の割付」という用語を用いて呼ぶ。
 しかし,化学工業では各工程の作業を行う設備同士が
パイプでつながっているため,保管場所にいったん運ぶ
という概念がない。ある工程で作業を実施し,中間製品
ができたら次の作業を行う設備に直接運ばれる。この際,
パイプが別の中間品を運ぶために使用されている場合は
先行する工程の設備上で待機させる必要がある。待機時
間が長すぎると化学反応が進みすぎ, 次工程の作業で使
用できなくなってしまうという問題があるため,待機時
間を一定の時間内に抑える必要がある。生産計画を作成
する段階で待機時間を一定の時間内に抑えた生産計画を
作成する必要がある。このような生産計画を作成するた
めには,関連する作業を同時に割り付ける必要がある。
この方法は「オーダー指向の割付」と呼ばれる。
 T 社生産計画パッケージではこのようなオーダー指向
の割付にもとづいた工程間の作業の連続性を保持した生
産計画を作成する機能はもっていなかった。このため,
パッケージに何らかの方法で手を加える必要があった。

b) 実績データ管理方法の違い
 今回のシステムはH 社のMES パッケージとのデータ連
携も必要となる。MES は前述したように製造実績データ
の収集を行う。H 社のMES パッケージとT 社の生産計画
パッケージの連携のための方法を検討した結果,T 社の
生産計画パッケージのデータベースに含まれる実績テー
ブルに対してH 社のMES パッケージが収集した製造実績
データを出力する方法を採用することにした。
 ところで製造実績データの管理方法にはさまざまな方
法がある。H 社のMES パッケージが収集できる製造実績
データは作業が実際に開始した日時と実際に終了した日
時であった。それに対し,T 社の生産計画パッケージで
採用している製造実績データは,製造予定数量に対し完
成した数量であった。
 また実績の粒度もH 社のMES パッケージでは完成品目
ごとに収集していたのに対し,T 社の生産計画パッケー
ジでは中間品目ごとに管理していた。このためどちらか
のパッケージに手をくわえる必要があった。

 分析の結果以上のようなギャップが存在した。以下,
存在したギャップの解決方法について述べる。
 
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2-2. ギャップの解決策
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a) 工程間の作業の連続性保持の実現
 工程間の作業の連続性保持のため,検討した方法は次
の2 つである。
a-1) 既存パラメータの調整
a-2) アドオンプログラムの開発
 私はまず,既存パラメータの調整はT 社の生産計画パ
ッケージがもともと持っている生産計画作成上のパラメ
ータを調整することで工程間の作業の連続性を保持した
生産計画を作成できないか検討を行った。これはアドオ
ンプログラムの開発に伴うシステム構築の工数増大を避
けるためである。
 検討に際してS 社よりデータを拝借しパラメータの調
整を行った。しかし,様々な調整を行ったがパッケージ
の既存の機能ではS 社システムの機能要件を完全に満た
すことが出来ないことがわかった。
 そこで,T 社の生産計画パッケージ開発を取りまとめ
ているシニアプログラマに依頼しS 社システムの機能要
件を満たすため,オーダー指向の割付方法にもとづいた
アドオンプログラムを開発する場合にどれだけの開発工
数・テスト工数が発生するか見積もりを立ててもらった。
 私はパラメータの調整についての検討結果とアドオン
プログラムの開発工数・テスト工数の見積もり結果をS
社側に提示し,どちらの方法が良いか検討を行った。検
討のポイントとなったのは,機能要件を満たす割合とシ
ステム構築の工数の増大する割合である。検討の結果,
機能要件を満たすことを優先しアドオンプログラムを開
発することになった。

b) 実績データ管理方法のすり合わせ
 この問題についてはH 社とともに検討を行った。もと
もと化学工業では作業の途中でどれだけ反応が進んだか
という情報を実績情報として収集することには意味はな
く,作業の開始時間,終了時間のみしか問題にされない。
そこで,H 社のMES パッケージが収集する実績情報につ
いて作業が開始されているがまだ終了していない作業
(仕掛中の作業)については完成数量を0 としてT 社の
生産計画パッケージ側のデータベースに実績情報を出力
し,終了した作業については完成数量をとして製造予定
数量をそのまま出力してもらうことにした。これにより
データ上はH 社のMES パッケージと連携が取れるように
なった。

 さらに解決しなくてはならない問題として実績の粒度
の違いをどう解消するかという問題がある。T 社側の生
産管理システムは完成品の製造単位ごとにロットNo. と
いうコードを採番している。このコードはH 社のMES パ
ッケージにそのまま渡され,MES パッケージはロットNo.
ごとに作業の監視を行う。一つのロットNo. に対し,各
中間製品ごとに作業コードが採番される。ロットNo. と
作業コードの組み合わせでT 社の生産管理システムは実
績を管理している。また,ロットNo. と作業コードの組
み合わせに対し製造機械コードが一意に存在する。
 そこで,H 社に対し,MES パッケージがロットNo. と
製造機械コードの組み合わせで実績データを収集してい
るか調査を依頼した。すると,もともと,MES パッケー
ジはそれぞれのロットNo. ごとにどの製造設備上の作業
が終了したか監視していることがH 社からの情報として
提供された。そこで,私はT 社生産計画パッケージシス
テムのデータベースにある作業計画テーブルからロット
No. と製造機械コードをキーとして作業コードを取得し,
ロットNo. と取得した作業コードを元にして実績データ
を出力するという方式をH 社に提示し,この方式にもと
づいたアドオンプログラムの開発が可能かH 社に調査を
依頼した。またその開発にあたってどれだけの工数がか
かるか見積もりも依頼した。
 H 社からは私の提示した方式にもとづいたアドオンプ
ログラムの開発は可能であるという回答を得た。この回
答とH 社の工数見積もりをもとにS 社,H 社とともに検
討を行い,私の提示した方式で実績データの連携を取る
ことが決定した。
 
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(設問ウ)
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3. 本システム構築についての私の評価と今後の改善点
 S 社生産計画システムは,予定通り構築を終了し,現
在本番稼動中である。事前に機能のギャップを明確にし,
解決方法について明確にしていたため,アドオンプログ
ラムの設計,開発,テストをスムーズに行うことができ
た。今後もパッケージ適用の際にはパッケージの備える
機能と業務上必要となる機能の比較を行い,問題点の明
確化に利用していきたい。
 今回は,H 社のMES パッケージとT 社の生産計画パッ
ケージを組み合わせてシステムの構築を行った。パッケ
ージの適用範囲についての分析は顧客であるS 社自身が
行った。しかし通常,パッケージ適用範囲・方法の分析,
検討はアプリケーションエンジニアが行う。その意味で
今回のシステム構築を通じ,何故H 社のMES パッケージ
とT 社の生産計画パッケージの組み合わせで良いのかと
いう観点からシステムの設計を行わなかった点が今回の
反省点である。今後は顧客の要求を実現するためにどの
パッケージが適切であるかという観点からもシステムの
設計を行うよう努力したい。





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