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 管理部門の業務革新と機能強化

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(設問ア)
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ア.管理部門の業務変革の概要
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 わたしは、従業員150名、売上45億円の中堅建設
業S社の事業本部工事業務室長である。当社の組織は、
管理本部と事業本部からなる。管理本部は、総務部、管
理部、経理部を統括する。事業本部は、12の部支店と
工事業務室、ISO推進室、安全衛生室を統括する。
 事業本部直下の工事業務室の主な機能は、a.工事の支
援、b.工事の管理である。また、c.事業本部機能として、
企画・情報化推進なども主導している。
 事業本部では、役員会の新経営戦略をうけ、業務革新
プロジェクトを設置した。業務革新プロジェクトは、当
社の生き残り・差別化策を営業力・商品力・管理力の3
点から見なおした「理想ビジネスイメージ」を基礎に、
具体的なモデルを作成、実行可能な計画へと推進するも
のである。プロジェクトは、全体会と分科会からなる。
 プロジェクトが基礎とする当社の理想ビジネスイメー
ジは、「利益の出所と仕組みを明確にし、組織としてこ
れを共有している」である。そのために、
 ・タイムリな予実分析と予想分析
 ・迅速かつ確実なネットワークとツール
の2つが必要であるとされた。
 プロジェクトの進展に伴い、一部の問題は管理部門も
対象としないと解決しないことが明らかになり、役員会
決定により、全社的なプロジェクトへ格上げになった。
 管理部門関連では、次のような業務プロセスの変革を
行なうことになった。
 a.データフロー:部支店→管理本部→事業本部であっ
  たものを、部支店→事業本部→管理本部と変更
 b.管理部機能:予実管理の機能は工事業務室に移し、
  管理部は予想管理の手法を確立・実施
 c.監査室機能:予算管理中心であったものを業務監査
  に重点をおくように変更

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(設問イ)
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イ−1.データフローの変更について
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 当社では、各部支店の売上・費用データは経理システ
ムで処理されている。これが月次決算帳票として出力さ
れ、事業本部ならびに各部支店の資料となる。
 しかし、タイムリな予実分析を行うには、月次処理を
待てないのと同時に、事業本部が利益の出所と考える様
々な指標も把握する必要があった。日々の外注業者動員
数や材料納入数・在庫数など、月次決算には直接的には
関係しないものである。(事業部専用データ)
 さらに、見積や予算段階から利益予想をおこなうには、
経理・決算処理にはなじまない種々の未確定データ・数
値も扱う必要がある。(仮・予想データ)
 そして、事業部専用データや仮・予想データから、経
理帳票データや確定データが導出される事を考慮すると、
旧来の確定データしか対応できない経理システムではな
く、事業部基幹システムを構築する結論となる。同時に、
すべてのデータを事業本部で処理し、管理本部には必要
なデータだけを渡すというデータフローとならざるを得
ない。
 データフローの変更について管理部門からは、特に異
論は出なかった。「旧来データと同じ形式・タイミング
での経理システムへの引渡し」を確約したからである。

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イ−2.予実管理から予想管理へ
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 当社の管理部の機能は、経理帳票のチェック、予実管
理、資金計画、監査室による内部監査が主であった。当
社はISO9000および14000による内部監査を
実施しており、これには部支店目標の管理も含まれる。
よって管理部の機能の内、資金計画以外は、他部門でも
おこなっている機能でもあった。
 わたしは、リアルタイムでも1次データでもない出力
帳票をもとにしたダブルチェック機能は、単にデータを
最終確定するだけのものであり、付加価値は低いと考え
た。さらに、改善機能がない予算管理は単なる比較に過
ぎない。データフローからも組織的権能からも、予算管
理や予実管理は工事業務室が行う方が妥当であり、改善
の実効も見こめると判断した。
 わたしは、管理部からのアウトプットである予想管理
(資金計画)が管理部独自の機能であり付加価値である
と考えた。これを強化するために、管理部の事業部基幹
システムへのアクセス権限を昇格した。

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イ−3.予算監査から業務監査へ
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 管理部監査室の過去の監査報告を検討すると、監査室
の内部監査は、そのほとんどが部支店予算、それも間接
費に重点をおいていることがわかった。つまり、部支店
経費の使途と証跡中心であった。
 しかし、当社の部支店経費は売上の20%に満たない。
80%以上を占める直接費(外注・材料)に監査の重点
を置くべきであろう。また、間接費に関しても、証跡を
厳密にトレースするよりも、利益や売上への連結という
視点から行うべきである。
 さらには、ISOで行っている内部監査と整合・調整
を行えば、さらに有効な、業務監査といえるべきものと
なる筈である。

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(設問ウ)
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ウ−1.人材面での強化策
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 前述した3つの変革は、プロジェクトで採用される方
向にあった。プロジェクトの経緯から全体会でも分科会
でも事業部門が主導権を握っており、かつ利益責任をも
つ事業部門の発言力は大きい。一部の分科会では、管理
部門の廃止、事業本部への吸収やアウトソーシングも議
題に上っている。
 わたしは、全体会事務局長として、管理部門として残
す機能や役割について具体的討議を行うようにプロジェ
クトを誘導した。一般に、間接部門は損益に関与しない
と考えられ、最小人数で最大ルーチンをこなすように望
まれている。また、権限は少ないが責任は大きいのが通
常である。これでは、間接部門に属す人員のモチベーシ
ョンは低い。
 わたしは、全体会で管理部門の、特に人材面での強化
策として、次を提起した。
 a.事業部前線(営業・工事現場)の知識習得
 b.外部研修参加・資格取得の奨励
 c.人事考課、業績査定の改定と年俸制の導入

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ウ−2.強化策の成果予想
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 管理部門への3つの変革と3つの人材強化策の導入説
明の前に、管理各部によって事業部各部支店へアンケー
ト調査を実施してもらった。「事業部門を顧客とした場
合のサービスレベル」と「会社・事業部の利益向上に繋
がっているか?」が主眼である。
 この結果をもとに、管理各部と各部員に具体的なアク
ションプランを作成してもらった。利益部門である事業
部各部支店が毎年度作成している年度計画、個人年度目
標の管理部版である。
 ここではじめて、3つの変革と3つの人材強化策を説
明し、実施してもらうこととなった。同時に、先に作成
したアクションプランの変更も要求した。
 直接利益責任のある事業部門と温度差はあるものの、
変更前後のアクションプランを見比べると、より具体的
になっていて、理解は得られたと判断している。
 現実問題として、経営スタッフは育てるものなのか、
それとも育ってくるものか、わたしには判断がつかない。
ただ、定量的な業績判断の難しい部門で「計画・実行・
評価」のサイクルを回転させるのは、少なくとも経営ス
タッフに必須の企画能力を高めるものと考えている。





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