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 情報共有化とEUC推進

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要約
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 私は「ユーザー部門の情報装備」という経営課題を解
決するために結成された「情報共有化とEUC推進チー
ム」のリーダーを務めた。
 まず、このプロジェクトが今後の経営を左右するとい
う認識をトップマネジメント層に持ってもらった上で、
LANを構築し、全社的に情報共有化とEUCを進めた。
 情報共有化においては、セキュリティ管理、データの
標準化を行い、共有データを守ると同時に、使い勝手の
よいものにした。EUC推進においては、部署ごとにキ
ーマンを育成し、キーマンが部署単位での教育を行った。
また、相談窓口を設置し、EUC具体例を公開して、全
社員がEUCを行いやすい環境を整えた。
 これによって、EUCが浸透し、情報生産性が向上し、
各種資料のレベルアップ、スピードアップが図れたと同
時に、社内の活性化にも効果があった。今後は、グルー
プウェアの導入も検討し、業務革新に努めていきたい。


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(設問ア)
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1.EUC推進と私の立場
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1.1 システムの概要
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 私は販売業を営む会社の情報管理部で主任を務めてい
る。現在当社の社員は約500名、本社1、支店5で経
営されている。各支店には、本社に設置されたホストコ
ンピュータとつながる端末機があり、オンライン化され
ている処理もあったが、営業部等で必要とする情報の大
半は月次バッチ処理で出力されていた。このため、各支
店の営業部では、本社から送られてくる販売実績等の月
次資料を活用し、必要に応じて個別の各種分析資料を作
成していた。このシステムでは以下の問題点があった。

(1)市場環境の激しい変化に伴い、各部署から月次資
   料の項目追加や分類変更などの要求がでているが、
   対応しきれない。
(2)資料が送付されてから各部署で再入力するため、
   工数がかかり、月毎の分析資料が完成するのは翌
   月の10日頃となってしまう上に入力ミスがある。
(3)各部署の情報の活用方法に格差があり、手書き、
   表計算ソフト利用、ワープロ利用等、様々である。
(4)似たような分析資料を別々の部署で作成している
   場合もある。

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1.2 私の役割と方針
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 今年度の中期経営課題のテーマに「ユーザー部門の情
報装備」があげられたことに伴い、私は上記1.1の問
題を解決する方策として、以下の2点を提案し、EUC
を推進することとした。

(1)情報の共有化を図る。
(2)情報のやりとりをシームレスにする。

 早速、情報共有化推進チームが結成された。メンバー
は、システム技術部1名、情報管理部2名(うち1名が
私)、営業部2名の計5名で構成され、私は当チームの
リーダーとなった。

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(設問イ)
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2.情報共有化およびEUCの推進
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2.1 トップマネジメント層の意識改革
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 社長はじめトップマネジメント層は、あまりパソコン
を使いこなしていないこともあり、私の提案にはさほど
積極的ではなかった。最低限必要な予算は出すが、情報
共有化推進チームでとりまとめて進めてほしい、という
方針であった。しかし、トップ層の理解がないことには、
単に情報共有化を行っても効果がないため、私はトップ
層の意識を改革するために説明会を開催した。説明会で
は、「情報資源はきわめて重要な経営資源であり、その
マネジメントが付加価値生産性を大きく左右する」とい
うことを強調するために、事例研究を通じて効果や価値
を報告した上で、情報共有化およびEUC推進の利点と
して以下の3点を説明した。

 (1)経営判断のための情報収集がスピードアップす
    る。
 (2)情報共有化によって、業務の進め方、仕事の仕
    方そのものの変革ができる。
 (3)社員はいつでも情報を自由に加工することがで
    きるようになり、情報生産性(データの作成、
    検索、加工等)が向上する。

 これにより、トップ層の十分な理解が得られ「自ら実
践し、率先して押し進めていこう」という認識を持って
もらうことができた。さらに、情報共有化推進チームの
活動を定期的にトップに報告し、検討する機会が設けら
れることとなり、トップ層もEUC教育を受けることと
なった。

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2.2 情報共有化推進
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 第一に、全ての本支店にLANを導入した。本店には
ファイルサーバーを設置し、各支店のLANからアクセ
スできるようにした。ファイルサーバーには、共有デー
タ(顧客・販売データ、予算・実績データ、経営管理デ
ータ)をストックし、一元管理できるようにした。情報
共有化に当たっては、セキュリティ管理、データの標準
化に関して検討した。

(1)セキュリティ管理
 私は以下の4点を検討し、セキュリティ管理を行った。

 a.アクセス権のレベル分け
  全社員にユーザIDをあたえ、アクセス権のレベル
 分け(7分類)を行った。原則として部署を単位とし
 てレベル分けをしたが、以下の2点は細心の注意を払
 って決定した。
 ・共有データ設計のアクセス権:システム技術部の中
  でもデータベース管理を行う限られた者
 ・共有データ更新のアクセス権:データベースを更新
  する必要のある部署毎に1名(専任者を選出)

 b.違法コピーの防止
  ソフトウェアの管理にあたって、ソフトウェアライ
 センス管理ツール「KeyServer」を導入した。
 これは、ネットワーク上のソフトに鍵をかけ、使用さ
 れる本数を管理するものである。これによって、違法
 コピーの防止やソフトウェアライセンス管理が容易に
 できるばかりでなく、全クライアント数分ソフトウェ
 アを買う必要もなくなり、ソフトウェア投資の削減に
 もつながった。

 c.共有データ更新履歴
  共有データが更新された場合は、時間、内容、更新
 者等の履歴を残し、チェックできるようにした。

 d.社員への意識づけ
  社員向けのLAN導入の説明会では、著作権やLA
 N使用上のマナー、パスワードの重要性と運用方法等
 についても時間を割き、社員の意識を高めるようにし
 た。

(2)データの標準化
 今まで各部署ごとにデータを加工・管理していたため、
同じ内容のデータでも部署ごとに異なる名前が付けられ
ている場合があった。そこで私は命名基準を設け、コー
ド体系の標準化を行った。さらに、共有データのデザイ
ン、データ名、内容、データ作成部署、責任者等をまと
めてキーワード毎に分類た。さらに、これを共有データ
の一つとし、誰でも参照できるようにした。

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2.3 EUC推進
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(1)キーマンの育成
 部署毎にEUC推進のキーマンを置いて連携を図るこ
ととした。キーマンの役割としては、はじめにキーマン
にEUC技術を修得させ、そのキーマンが部門のスタッ
フを教育する方針とし、以下の手順で進めた。

 a.キーマンへの動機付け
  全キーマンが同じ意識を持っていなければ、全社的
 なこのプロジェクトの成功はあり得ない。私はキーマ
 ン達に上記2.1で行ったトップマネジメント向けの
 説明会と同様の説明をし、キーマン達の使命を認識さ
 せた。

 b.キーマン対象の講習会
  キーマンの技術レベルは段階的差が多かったので、
 知識が不足しているキーマン対象に講習会を行った。

 c.教育マニュアルの作成
  キーマンが自部門内でエンドユーザー教育を行う際
 の教育マニュアルを作成した。教育の進め方、留意点、
 起こりうるトラブルと質問に対する対処等をまとめて
 配布し、各部署でのEUC教育に格差が付かないよう
 にした。

 d.キーマンによる部署ごとのEUC教育
  EUC教育のためのテキスト、カリキュラムを整備
 し、部署ごとに表計算ソフトとワープロソフト、デー
 タ検索ソフトの操作に関する教育を実施した。その際、
 実際使用されている「客層別・商品ジャンル別販売実
 績分析表」を教材として使用し、身近で具体的なEU
 Cを体得させた。

(2)相談窓口の設置
 キーマンによる教育には限界があると考え、情報管理
部に相談窓口を設けた。窓口では、ユーザからの各ソフ
トの操作方法に関する質問ばかりではなく、環境設定や
共有データの検索方法、キーマンからの質問にも対応し、
必ず「相談回答票」に記入するようにした。

(3)分析資料の公開
 各部署で作成している分析資料のうち、効果を上げて
いるものや、共通で使用できるものをピックアップして
サーバーに登録し、誰でも流用できるようにした。

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(設問ウ)
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3.結果の評価と今後の課題
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3.1 結果および評価
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 当初の問題点は以下の通り、解決されたと言える。

(1)情報の共有化により、誰でもソースデータを自由
   に加工することが可能となった。
(2)必要なデータを速く、正確に誰でも入手できるよ
   うになった。月毎の分析資料も、2人日で完成で
   きるようになった。
(3)EUCが進み、情報生産性が上がった。
(4)分析資料の公開により、各支店の分析資料のレベ
   ルアップと工数の削減がはかれた。
(5)トップ層自らデータを加工するようになり、経営
   判断のための情報収集がレベルアップ、スピード
   アップした。

 また、会社の動きに関わる重要なデータを全社員が同
時に知ることが可能になったことから、社員が自分の仕
事の意義を確認でき、個人のやる気が刺激され、社内活
性化とビジネスモラルの向上を図ることができた。

3.2 今後の課題
 今回は、分析用データの共有のみに終わったが、今後
はグループウェアの導入を検討した上で、以下の3点を
押し進め、さらに業務革新に努めていきたい。

(1)スケジュール管理の電子化
(2)各種報告書・届け出の電子化
(3)共有文書データベースの整備





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