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 営業現場でのデータ活用の高度化について 

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(設問ア)
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私の取り組んだデータ活用促進活動の概要
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1.1 目的
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 私は教材販売会社の営業部本店企画課に所属し、SF
A管理チームの責任者である。営業部は全国約7万人の
学習塾の教師を顧客とし、全国に営業網を展開している。
少子化により業界の再編が進む中で営業資源の効率的運
用が営業部門の経営課題となっていた。

 私は営業員エリア毎の市場分析を行い、教師を生徒数
と教材使用量で層別し、優良顧客となる教材使用量の多
い教師に営業活動を集中する事が経営課題の解決に有効
と考えていた。経営層へのSFA運用開始の報告時に、
私はデータ活用による優良顧客への営業活動集中につい
て言及し、具体化に向け調査を命ぜられた。

 私はパイロット試験として一部の営業所でSFAと販
売実績のデータ分析を試みて有用性が実証した。しかし、
各営業員の担当エリア毎に継続的にデータの分析作業が
必要であり、全社的な実施には組織的な対応と操作簡易
化の仕組みが必要であることが確認された。
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1.2 活動の概要
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 パイロット試験の結果を説得材料として経営会議に提
示しエリア市場分析委員会設置の承認を受けた。多部署
にわたる為、営業部長直轄プロジェクトとなり、事務局
長を命ぜられた。

 各現場からの提案を基に各ケースの事例を整理し、ベ
ストプラクティスにつながる分析パターンと必要なデー
タを洗い出した。一方、予算とインフラの制約、そして
教育と利用者支援を考慮し、分析対象は全営業員のエリ
アだが、データ提供は各営業所の所長に限定した。

 教育と支援はSFAの管理チーム自身が行い、既存の
ヘルプデスクを利用しなかった。理由は、操作法よりも
業務へのデータ活用が中心であり、Q&Aからノウハウ
獲得を目的とした為である。に努め全社対応の本店近郊
の営業所から3段階で利用範囲を拡大し、初期トラブル
と利用者支援のピーク分散をした。

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(設問イ)
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データ活用促進活動に際して私が行った創意工夫
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2. 私の行った創意工夫
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2-1戦略レベルのデータ活用
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 私は営業部本店のスタッフ組織の戦略的な施策立案に
おけるデータ活用の為に、システム部に依頼して各種の
データのデータベース化を行ってきた。データベースに
は基幹系システム由来の販売実績データ、在庫管理デー
タ、SFAからの営業活動データ、顧客データ、調査会
社からの市場統計データが蓄積されている。

 非定型的な分析はOLAPツールやODBCを経由で
データベースソフトや表計算で分析・加工して資料を作
成している。これらのデータベースの利用は業務知識と
一定の情報リテラシを必要とする。私は、各種ツールや
ソフトの講習会、事例発表勉強会を企画し実施運営して
いる。一方、定型的で全社を対象とした日次の販売実績
と在庫の日計表は以前は基幹系システムの印刷出力を社
内郵便の配送だったが、これを自動化したOLAPツー
ルとASPを利用しイントラネットの社内ホームページ
で全社に掲示し、速報性で高い評価を得ている。

 私は、データベース構築時にシステム部の協力を仰い
だが、基幹系での各種印刷出力やその発送の手間の軽減
でシステム部からも感謝された。このように、全社的戦
略レベルでのデータの活用は軌道に乗っていた。

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2-2戦術レベルのデータ活用
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 営業部はライン組織として全国に8支店67営業所約
700人の営業員を配置している。営業活動の対象は全
国7万人の学習塾教師である。営業所では、1人の営業
所長が約10人の営業員を率いている。営業所長は管轄
エリア内の販売実績集計表やSFAの営業日報、学習塾
協会名簿を参考に、自分の培った経験と勘で部下の営業
員を指揮指導している。

 目標管理制度で各営業員の販売目標が営業所長との面
接指導で決定され、その集計値が全社のマーケティング
戦略に反映される。しかし、この各営業員の目標が量と
しての販売額が結局ノルマとなり、「こうすれば目標が
達成できる」と言う方向付けと具体的方策と追跡指導の
不足が営業会議の席で報告されている。これは営業所長
の営業員の活動と販売実績についてもっている情報の不
足が原因と私は考えた。したがって、営業所長が営業員
のSFAからの訪問回数の時系列的な推移などの量的営
業活動データと販売実績データと顧客データを比較分析
すれば、的確で具多的な指導が可能となる筈である。

 また、市場調査会社のアンケートによる統計資料から、
学習塾の生徒数と教材使用量を5段階にランク分けする
と、上位2ランク40%の教師が全体の教材使用量の
70%を占めていることが判明している。市場統計、販
売実績、SFA営業活動の各データを就き合わせれば、
教材使用量の多い学習塾名、所在地、学区、地域内小中
学校、地域生徒数、進学状況、担当自社営業員、営業活
動履歴などを分析することが可能である。必要なデータ
は既に社内のデータベースにある。私はこのデータの分
析により、顧客の教師を層別し優良顧客に集中的な営業
活動を行えば営業成績を向上できると確信し、何として
も営業所レベルのデータ活用を実現したかった。

 その実証を目的とし、私はパイロット試験として
SFA管理チームのメンバーを動員し、本店近郊の営業
所について6ヶ月分の販売実績と塾および教師との面会
状況について比較分析を行った。販売額がある時点から
漸減している塾があった。勤務している教師と営業員の
面会回数、面会時に説明した教材名を比較した。漸減が
始まる3ヶ月前から面会回数がゼロとなっていた。調査
すると、教師と営業員の面会規制が開始された塾であっ
た。普通、塾教師は複数の塾や予備校を兼務している。
教師登録データベースで教師の兼務先塾を探し、兼務先
で面会するように手配した。追跡調査の結果、数ヵ月後
販売額は回復した。有用性は明らかであった。

 営業部本店会議でこのパイロット試験の結果報告を説
得材料とし、営業部長直轄のプロジェクトとして承認を
得た。営業活動データと販売実績と計画値の対比分析を
第一段階とし、処方調査データ、市場統計データの対比
を第二段階として活用する事とした。

 しかし、大きな問題があった。実際の分析作業は1つ
の分析の結果をから判断し切り口を変えて別の条件で分
析を行う事になる。従って現場の担当者が分析を行う必
要があった。事前に準備したクエリのテンプレートの利
用には限界がある。OLAPツールの利用にはある程度
の情報リテラシが必要である。しながら営業現場の営業
所所長や営業員にこの情報リテラシを求めるには費用対
効果から無駄が大きいと考えた。あくまでデータ活用は
手段であり目的は販売実績の向上である。営業員全員の
業務から所長に集約し指導の材料とし、何らかの自動化
の仕組みを用意し、所長が管掌エリア内の分析を行い営
業員に説明し、施策を営業員に指示する業務プロセスに
すれば解決すると考えた。分析結果を見ての施策の立案
は営業所長は高いスキルを持っている。

 私は、システム部に自動化について相談し、外部のソ
フト会社を紹介された。ソフト会社は要件を分析し、以
下の提案をした。

(1)専用サーバを設置し必要なデータを既存のサーバ
   から取り込む
(2)営業所単位に集約、圧縮し営業所長のパソコンに
   送信
(3)受信した営業所長のパソコンで解凍し分析ソフト
   にロード
(5)利用者はGUIでマウス操作で直感的に分析
(6)分析結果はグラフ表示され、画面上のボタンのク
   リックで表として数値が表示
(7)パッケージソフトを組み合わせて構築
(8)プロトタイピングで開発

 私はこの提案に対し、データを取り込む際に、データ
の単位や更新時期などの整合性を取る必要性を指摘した。
私の指摘を基に作成した修正案を受け入れたいと考えた。
システム部の担当者も技術的側面から賛成であった。プ
ロジェクトチームメンバはソフト会社の雛型のイメージ
を用いた説明に納得した。

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2-3データ活用の組織的運営
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 運用の開始は、本店近郊の3営業所から開始し、1ヶ
月後に20営業所、2ヶ月後に全営業所に3段階で利用
範囲を拡大展開した。段階的展開により、初期トラブル
洗い出しと利用者支援のピーク分散をした。

 システム部の運営するヘルプデスクと教育チームがあ
ったが、私は、あえて教育と支援をSFAの管理チーム
自身が行う事とした。その理由は教育と利用者支援を通
じてノウハウ獲得と有用事例の発掘にある。また、操作
は容易であり、私は教育内容は操作自体よりもデータの
活用を中心にしたかった。教育は各所長のエリア内のデ
ータを実際に分析し営業所長の経験を基に有効な方策を
立案する演習を中心とした。講習はOJTで生の担当エ
リアのデータを用い即時に現場の指揮に役立つもので、
多少の緊張を伴い好評であった。利用者支援の窓口の質
問内容と対応は分類整理してイントラネットで社内公開
し、情報共有と宣伝の効果を狙った。

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(設問ウ)
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3.データの活用についての私の評価と今後の方策
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 各営業所から液晶プロジェクタの増加配備の要請が同
時に一斉に稟議された。理由は、販売実績と新規納入開
始先と活動内容の対比から、塾業者の会合の席で液晶プ
ロジェクタを利用した説明会の実施が有効であることが
各営業所で確認された為であった。従来ならば見逃して
いた筈であり、明らかにデータ活用が功を奏したもので
ある。営業員からの営業報告と対応した営業所長からの
指示のSFAのデータを、データ活用の前後で比較を
KMツール解析で試みた。形容詞と副詞が26%減少し、
固有名詞が43%増加した。明白に報告と指示に具体性
を与えたと判断できる。

 今後は予定の処方調査データと他社製品を含めた市場
データとの提供を行いたい。その前提として、営業所長
のパソコンが容量不足と通信インフラ貧弱が障害となる
が、パソコンのリースオンリースによる更新とFRの容
量拡大を検討している。また、支店長レベルのエリア分
析の為の仕組みも検討中である。

                     以  上





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