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 (ITの活用による業務プロセスの再構築について)

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(設問ア)
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1.関わった業務プロセスと導入IT
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1.1.当事業部の概要と市場環境の変化への対応                 
       
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 当事業部は食肉加工大手P社の食肉調達・補給・販売
を行う食肉事業部です。年商150億の戦略単位の部門
であり、独立した基幹情報システム、業務・販売・物流・
管理課という機能別組織を構築しております。

 元々食肉の調達、P社営業拠点への食肉商品の補給業
務が主体でしたが、市場が単独業種店から組織化された
業態店へと変化するに伴い、大手組織店のオンライン発
注等にルートセールスを基本とする営業拠点では対応不
可能になり、食肉事業部が直接受注−納品対応するよう
になる過度期でした。

 市場の変化に伴い対応すべき組織店が急増しましたが
本格的物流センターを構築せず、外部営業冷蔵庫に分散
保管されている在庫を日々引取、食肉事業部付設の配送
=補給センターで仕分・配送対応しておりました。月、
週次の事前オーダーに従うリ−ドタイムのある社内補給
には対応出来ても日々の短納期オーダーに敏速、確実に
対応できるシステムが構築出来ていなかったことから日
々の業務が完結出来ない危機的状況を招いておりました。

 私は本社物流管理部よりこの状況打開を特命され、着
任した事業部長付でした。
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1.2.情報システムの援用を考えた業務プロセス
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 受注〜納品のプロセスの観察、聞き取り調査の結果、
ボトルネックのプロセスを特定し、そこを情報システム
の援用で解決するしかないと考えました。併設センター
の保管能力の制約から生じる営業冷蔵庫からの引取プロ
セスを所与として考えると、その後に続く食肉事業の1
箱毎の不定貫重量を読取、入力しないと伝票が発行出来
ないという特性による読取プロセスが引取プロセスと連
動して最大のネックになっている。

 営業冷蔵庫との情報ネットワークの構築がネック解消
の鍵になると考えました。

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(設問イ)
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2.コストトレードオフの考え方とIT導入の期待効果
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2.1.現状分析と問題点把握
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 市場構造の変化と共に食肉事業部で対応すべき得意先
数は急激に増えておりました。

 一方保管機能は営業冷蔵庫、仕分・配送は付設センタ
ーというハード面の制約条件下にある食肉事業部は当時
大幅な残業発生による労組の改善要求、夜間に及ぶ作業
による周辺住民からの騒音クレイム等の解決を迫られて
いました。又市場環境の変化に起因するとは云え、異常
に運搬、流通加工コストの上昇が続いていました。ここ
までの観察・聞取り調査でまず以下のような問題点に気
付きました。

a.機能別組織による部分最適な管理体制
 受注−引当−引取依頼・営業冷蔵庫出庫依頼−引取−
センター入庫−仕分−重量読取−積込・伝票発行−配送
の一連のプロセスが上流の受注は販売各課、引当〜引取
依頼・出庫依頼は業務各課、以後は物流課で課別に管理
されており、販売・業務各課にとって最適な処理がなさ
れて下流プロセスに流れてくる仕組みであり物流課は全
く受身処理になっており、管理不在の状況になっている。

b.営業冷蔵庫との連携が取れていない。
 業務各課が窓口になっており、仕入の都合及び保管料
管理優先の冷蔵庫選択が各課・各担当の判断で行われて
おり、物流課との接点がなく、全体最適なタイムリーな
引取等望むべくもない。
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2.2.対策 物流プロセス一元管理体制
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 事業部長の了解を得て、受注−納品のプロセスを私の
一元管理下に置き、保管料・流通加工費・運搬費の予算
比管理項目を各課長の評価項目から外す。
 先々このプロセスをトータル別会社化することも視野
に入れて営業冷蔵庫・運送会社等との交渉窓口も私に一
本化することを内外に周知徹底しました。
 勿論、現状分析によるプロセス毎の帰納法的改善も実
施しましたが効果は限定的であり、問題解決には程遠い
ものでした。そこで以下の仮説を組み上げてみました。
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2.3.仮説
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〜 引取をタイムリー化し かつ
    センターから重量読取プロセスをなくする 〜

 物流課作業は飛躍的に改善され積込時間・伝票発行待
ち時間が1車両当たり3時間短縮され、配送回転率向上に
より運搬費・流通加工費が20〜30%削減される可能性が
ある。

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2.4.仮説条件実現への前提条件
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a.営業冷蔵庫の集約                
 現在のように業務課ベースで1日20件の冷蔵庫から
引取が発生していては冷蔵庫に対する協力要請も出来ず
ネットワーク化の交渉も出来ない。集約化を進め、制約
条件があって不可能な場合には事前に倉移しにより指定
冷蔵庫に余分な保管料を支払っても集約する。

b.集約冷蔵庫の条件                
 指定冷蔵庫は付設センターへの引取が最短時間で行え
る立地条件と情報システム開発力のあることが必要であ
る。
 まず、業界大手N社のA冷蔵庫にターゲットを定め集
約指定冷蔵庫とし、分散する冷蔵庫渡しで仕入れた商品
も事前にA冷蔵庫に入出庫料等保管料を余分に支払って
も集約、日々の引取先冷蔵庫数を当日仕入れ等万やむを
得ないケースを含めて4〜5件に制限し業務課に協力を
要請しました。この時点で付設センターの作業時間につ
いて1時間程の短縮効果が出ております。

 同時に仕入の制約条件で倉移等コストをかける必要の
ある商品が月間600tN社に支払う保管料が300万
増加することも分かりました。全くの先行的な増分コス
トです。但しこの段階では危機的状況が緩和されただけ
であり、トータルコストの飛躍的改善には結びつきませ
ん。

c.従来の常識に対する疑問             
 この間に私は付設センターでの重量読取は不可避であ
る=出庫商品と配送先は1対多の関係にあるとの常識に
疑問を抱き、出庫依頼の行数と配送依頼の行数の関係を
調査しておりましたが、配送依頼300行の場合営業冷
蔵庫への出庫依頼も240行になっているすなわち80
%の部分については既に多品種・多規格化によって出庫
商品と配送先の関係は1対1になっている事実を1ケ月
のデータを整理して確認しておりました。残り20%の
工夫(1対1化)とN社の協力があれば双方向のネット
ワーキングによりA冷蔵庫の出庫時重量情報をP社基幹
システムに取り込み伝票発行は可能と予測しておりまし
た。
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2.5.仮説による企画書作成とN社との交渉開始       
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 N社とP社の基幹システムの連携ということになり、
調査データと付設センターにおいて引取後の重量読取プ
ロセス0化による期待効果を保管料300万増加、流通
加工費300万減、運搬費600万減、差引600万減
のコストトレードオフの考え方による企画書をP社関連
部門に提出、同時にN社には当部よりの保管料支払いが
集約により、3倍増になり、支社長クラスが注目したタ
イミングで協力要請しました。

 数回のN.P両社の情報システム部を含めた検討委員
会がもたれ、技術的には可能、N社支社長も同社の戦略
にも合致し、20%の負荷増であれば同社の作業もネッ
トワーク化で大幅改善されることも見込まれ協力すると
の解答があり、4ケ月の開発、並行運用期間を経て重量
読取プロセスはなくなりました。

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(設問ウ)
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3.期待効果の検証
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3.1.システム導入後3〜4ケ月後及び1年後
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「定量効果」      期待効果    実績
運搬費     4000万 3400万    3400万
流通加工費   1300万 1000万    1100万
保管料     1100万 1400万    1400万
外部委託物流費  800万  800万     800万
合計      7200万 6600万    6700万

 流通加工費については物流課社員の削減が人事的に不
可能であり200万期待効果を下回る。

 更に1年後にはセンター空間の余裕創出効果、無在庫
受発注システム構築等によりコスト削減レベルを維持し
ながら委託物流費800万の内部吸収が可能になり、
1300万のコスト削減が可能になりました。

 「定性効果」危機的状況はなくなりました。

 この間N社の開発コストは無償、自社情報システム部
にはSLAにより月間25万の課金支払いに同意してお
ります。振り返って一番辛かったのは危機的状況を背景
にしているとは云え着任後1年間程保管料の増加のみが
続いた時期でした。この事例は即東日本の食肉事業部に
も水平展開されました。
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3.2.今後の課題
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 この間にP社にも全社的にLAN.イントラネットが
構築されており、受注〜引当についても伝票レスの環境
が出来ており、このデスク作業の改善が急務と考えてお
ります。

 その間に受注〜納品の物流プロセスの一元管理にはこ
のプロセスを別会社組織にし、食肉事業部とは請負契約
による緊張感と対等の立場での協力関係により、トータ
ル最適なシステムと管理体制を構築すべきだと考え実行
に移しております。別会社として本体に対する契約コス
トの引下げによる貢献という立場に立つと、この一連の
プロセスを多重活用した共同配送、作業による外部から
の複合利益確保という視点に立つことが出来、3年後に
は当初比年間3億の差し引きコスト削減を実現しました

 上級シスアドが情報技術の潜在的能力を引き出す立場
であるとすればその役割は今後ますます大きくなるだろ
うと考え受験を思い立ちました。


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目次かな?
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1.再構築した業務プロセスとIT
 1.1.食肉事業部概要と市場の変化
 1.2.IT導入を企画した業務プロセス

2.コストトレードオフの考え方とネットワーク化

 2.1.現状分析と問題点把握
  a. 機能的組織による自課最適な管理体制
  b. 営業冷蔵庫との連携がとれていない

 2.2.対応策―物流プロセスの一元管理体制

 2.3.引取のタイムリー化と重量読取プロセス0化

 2.4.仮説条件実現の前提条件
  a.営業冷蔵庫の集約
  b.集約冷蔵庫の条件
  c.従来の常識を疑ってみる

 2.5.企画書作成とN社への協力要請

3.期待効果の検証
 a. ITシステム導入後3〜12ケ月後
 b. 今後の課題
 c. その後と述懐





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