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「業務プロセスの再構築」

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(設問ア)
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1 私が参画した業務プロセスの再構築
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 私の勤務先は、市町村における事務作業の情報化を共
同で行うことを目的に設立された公益法人(以下「自社」
という。)で、職員数は146人、事務所は本所のほか
出先機関3か所がある。

 私は、現在総務課で経営分析・経営計画の立案に携わ
っているが、総務課に配属される前は、プロジェクトマ
ネージャーとして、県内市町村に提供するクライアント・
サーバ財務会計システムの開発を行ってきた。

 私が、総務課に配属された当初、総務課の経理部門に
おける残業の多さに驚いたものであった(職員平均月2
5時間に対し、2倍強の55時間)。とりわけ、予算編
成及び決算時期における残業は、毎日午前様で、休日も
出勤というものであった。そこで、私はその原因につい
て調査した結果、各課が表計算ソフトで作成した500
ページにも及ぶ予算要求資料を、ホストシステムへ再入
力し、予算関連資料を作成している実態に驚き、さらに、
各課が手書きで作成した年間10,000枚に及ぶ伝票
も、ホストシステムへ入力を行っている現実に呆れてし
まったしだいである。加えて、予算差引簿を手書き作成
し、予算管理を行っているために記帳ミスが発生し、決
算時期になると予算不足により、その調整に手間取って
いることがわかった。

 このような現状をみて、CS財務会計システムの導入
を行う必要があると考えた。導入ができると判断した背
景には、職場のインフラ整備により、一人1台パソコン、
4所間のネットワークが整備されていたことがあげられ
る。早速、導入における実施計画書を作成し、経営層へ
理解を求めた。経営層も現実を把握しており、システム
導入についてはすんなりと承諾が得られた。計画書には、
経費を抑制し、円滑でかつスムーズに導入ができ、サポ
ートも自社でできる、自社で独自開発していたシステム
を導入することで提案を行った。

 これは、ユーザである市町村に提供する前に、自社で
導入することにより、テストができると考えたためであ
る。また、システム購入費、研修費用、導入費用、セッ
トアップ費用等が不要であることも大きな要因であった。

 もちろん、システム化により残業を0にすることが最
大の目標であった。

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(設問イ)
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2 CS財務会計システム推進のプロセス
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2.1 業務プロセスの改善内容
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 従来の業務プロセスは、前述したとおり、予算要求及
び伝票のホストシステムへの入力を行ってきた。また、
予算の執行に当たっては、予算経理簿への記載を手書き
で行い、予算管理を行っていた。

 このような業務プロセスに対し、予算要求は、説明内
容から各課ですべて表計算ソフトを利用して作成する代
わりに、CSシステムで入力させた。同様に、伝票につ
いても、手書きを止めさせ、各課で入力させ予算管理を
行わせた。これにより、予算要求説明書A4版500頁
分の入力は不要となり、さら10,000枚に及ぶ伝票
の入力についても不要となった。さらに、各種集計表は
正確にかつ迅速に作成できるようになった。

 一方、決算処理については、出納閉鎖期間終了後、従
来2週間もかかっていたが、現在では半日で集計ができ
るようになり、かつ正確となった。

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2.2 改善に対する問題
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 このような業務プロセスを変える過程には、各課から
の大きな反発があった。まず、「改善」というものに対
する根強い反発である。自分たちにメリットがなければ、
無理(苦労)してまで改善を行う必要がないという組織
風土(利用者側である各課に強かった)。次に、パソコ
ンに対する嫌悪感。これは、中堅以上のパソコンには触
りたくもないという旧態然とした体質をもった職員と自
分たちの仕事がなくなると戦々恐々としている経理部門
の職員によって発せられていた。
 これら職員の意識を改革することが、最も大きな問題
であった。

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2.3 問題点の解決と情報システムの活用
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 今回のシステム導入については、全職員が利用するた
め、職員が納得し期待できるものである必要があり、そ
の効果が共有できることが重要であると考えた。

 このため、できる限り部門間及び職員間のコミュニケ
ーションの向上に努めるため、部門毎、あるいは役職別
に1か月に一度説明会を行い、プロトタイプによる操作
研修会も兼ねて開催した。

 この中で、各所属の係長クラスを集め、ブレーンスト
ーミングにより、システムに向けた本質的問題、解決策
を見いだす努力を行ってきた。これは、システム化への
意識付けを行うには最良の方法であり、改善の目的を明
確にできたと考えている。今回のシステム化が、経理部
門の作業を各課に分散することによって軽減するだけで
あり、各課は仕事が増加するだけであるとの認識があり、
それを払拭するためにも意義があるものであった。とり
わけ、各課にとってのメリットを強調することに力点を
置き、前年度の要求説明データの利用、リアルタイムの
予算管理、専決判定の自動化、予算整理簿の自動化等を
説明し理解を得、協力体制を整えた。

 また逆に、ホストシステムで有効に活用できるデータ
があることを指摘される。それは次のようなものであっ
た。
a.年間1万件を超す請求明細データ
b.年間5千点を超す帳票データの利用
c.入金情報が提供されるファームバンキングデータ
であった。

 一方、経理担当者に対しては、今後人員の増加も見込
めないなか、時間外勤務手当の増加(毎年5%程度上昇)、
膨れ上がる伝票枚数(予算科目を細分化するため毎年10
%ずつ増加)、予算科目の細分化による細かな予算要求
等に対し、今後どのように対応するのかを投げかけてみ
た。

 結果は、システム化による事務作業の軽減以外に具体
的回答はなく、システム化の方向で意見が一致した。

 また、パソコンアレルギーに対しては、「覚えるより
慣れろ」で、作成する文書は、すべて電子化されたもの
とし、手書き文書はすべて受け付けないよう所属長に徹
底させ、それとともに、電子化した文書の再利用により、
事務効率が向上することについても認識させることした。

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(設問ウ)
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3 業務上の効果を上げるための方策
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(1)現状における評価
 経理部門の残業は、導入当初、操作に不慣れなことも
あり、一時的に残業が増加したが、徐々に操作に慣れ、
事務作業の流れ(コツ)が把握できるようになった現在
では、残業は0になっている。また、システム導入によ
り、事務作業を標準化することができ、本所及び3所の
経理事務を本所に集中し、出先機関における事務要員の
配置は行わない組織体制を構築することができた。

 以上のような点で、システム化は大きな評価を得るこ
とができた。

(2)今後の課題
 システム化は果たしたものの、実際のところは、決ま
ったメニューを利用して処理しているだけであり、その
データを利用して分析するところまでは至っていない。
システム化に当たっては、経営層から経営分析的資料が
作成できないのかとの要望もだされており、これが今後
のひとつの課題である。システム設計段階で、CVP分
析ができるように、固定費及び変動費の管理項目を設定
し設計としてある。今後は、これを利用してシステムの
カスタマイズを行っていく。

 ふたつ目の課題としては、コンピュータリテラシの向
上は着実に前進しているが、情報リテラシの向上が一向
に進展しないことである。これを向上するためには、
OJT、OFF−JT等を行うことも必要であるが、本
質的には、職員一人ひとりの不断の努力と、事務を改善
していこうとする強い意識が重要である。

 これらの意識付け及び方向性を明確にしていくことが
課題であり、経営層に代わってSADに求められること
でもある。





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