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(問題発生プロジェクトへの新たな参画について)
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(設問ア)
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1.プロジェクトの概要と参画時の問題状況
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1−1 プロジェクトの概要
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私が参画したのは、航空管制支援システムの開発プロ
ジェクトである。全国の空港、7箇所の管制センター、
航空会社などをネットワークで結び、飛行計画、気象情
報、航空機との交信情報などを処理する。また、気象庁
、防衛庁、国際的な航空管制ネットワークにも接続され
ている。重要な公共インフラのために高い信頼性が求め
られ、ホスト系は全て二重化、端末系もファイル/通信
サーバは二重化されている。
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1−2 プロジェクト参画時の状況
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私がプロジェクトに参画したのは、顧客のシステム部
門による立会い試験が終了し、1ヶ月後に顧客の完熟運
用が開始される時点であった。その時点での問題発生状
況を以下に述べる。
(1)大幅なスケジュール遅延
立会い試験までにすべての開発が完了せず、顧客と
調整して試験対象を制限して、試験を実施せざるを得
なかった。
(2)多数の品質不具合が発生
社内でのシステム試験で100件以上の不具合が発
見された上に、対象を制限した立会い試験でも約30
件の新たな不具合が発見された。
(3)要員の士気低下
スケジュールの遅れを取り戻そうとして、深夜残業
や休日出勤が常態化する状況が3ヶ月以上続いていた。
要員に疲労が蓄積し、それが新たな品質不具合を発生
させる悪循環に陥っており、士気が著しく低下してい
た。
(4)顧客との信頼関係悪化
対象を制限して立会い試験を実施したにもかかわら
ず不具合が発見されたために、顧客が不信を抱き、信
頼関係が悪化していた。
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(設問イ)
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2.問題点の調査、分析と実施した対策
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2−1 問題点の調査
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私は、プロジェクト管理上の問題点を、以下の4点に
付いて調査した。
(1)品質不具合
障害報告書を調べて、発見された不具合をその原因
と作りこまれたフェーズごとに集計するように指示し
た。その結果、業務間インタフェースの仕様解釈が不
一致や、その更新が徹底されないために作りこまれた
不具合が多数を占めていた
(2)レビュー・テスト
レビュー・テスト記録票を調べて、レビュー・テス
ト密度をチェックさせた。特にテストについては、テ
スト実施の証拠の存在まで確認させた。その結果、1
日に数十モジュールの設計書がレビューされたり、テ
スト結果の証拠が残されていない事象が多数発見され
た。
(3)構成管理
変更申請書を調べて、ベースライン凍結後の設計書
とコードの変更回数と、その理由を分析させた。その
結果、仕様変更を理由とする変更申請が最も多かった。
(4)プロジェクトの運営方式
プロジェクト運営方式を確認したところ、次のよう
な問題点が判明した。
プロジェクトの体制は、業務機能ごとに5つに分け
られていた。また、3回に分けてサービスを開始する
のだが、業務グループが内部でリリースバージョンご
とに分けられ、さらにホスト系と端末系に分けられて
いた。グループの管理は、ほとんどサブグループが主
体となっており、進捗会議もリリースバージョンごと
に分けて開催されていた。
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2−2 原因の分析
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私は、調査結果を以下のように分析した。
(1)サブグループが主体となって業務間インタフェー
スや顧客との仕様調整を行っていたために、インタフ
ェースの不一致や、他の業務への影響を考慮しない仕
様調整が多発した。
(2)それらに対応するための修正作業によって、スケ
ジュールが遅れていった。
(3)スケジュールの遅れを取り戻すために、レビュー
やテストを簡略化するようになり、そのために品質が
低下してさらなる修正作業を発生させている。
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2−3 実施した対策
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私が、プロジェクト管理上の問題点を解決すべく実施
した対策は、以下の5点である。
(1)仕様調整チームの編成
各グループから代表者を選出して、業務間のインタ
フェースや顧客との仕様調整を専任とするチームを編
成した。そして、このチーム以外がグループ間のイン
タフェース調整や顧客との仕様調整を行うことを禁止
した。
(2)プロジェクト運営方式の変更
リリース時期ごとに実施されていた進捗会議を一本
化すると同時に、出席者を正副2名のどちらかのみと
して、グループの窓口も一本化した。また、全体の進
捗会議の前日に、グループ内の進捗会議を実施させる
運用に変更させた。
(3)スケジュールの再設定
完熟運用開始までに、残りの開発と不具合の対応を
完了させることは不可能だと判断した。そこで、、完
熟運用期間中に、数度に分けて順次不具合に対応や、
残開発機能をリリースする計画を、顧客と調整して承
認してもらった。
(4)要員の負荷管理
まず最初の1週間は、残業と休日出勤を全面的に禁
止して、疲弊していた要員を休ませた。その後は、グ
ループごとに残業時間や休出回数を把握し、プロジェ
クト進捗会議において報告させることにより、要員の
負荷状況を監視することにした。
(5)レビュー/テスト結果のチェック
レビュー/テストの管理をグループに任せていたの
を改め、レビュー/テスト密度を監視することにした。
特にテストについては、実施の証拠がなければテスト
完了を認めないこととした。
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(設問ウ)
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3.問題解決活動の評価と今後の課題
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3−1 問題解決活動の評価
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仕様調整チームの編成により、これ以降は業務間イン
タフェースの不整合を原因とする不具合は発生しなくな
った。また、仕様調整に専任することによってチームメ
ンバの業務ノウハウが高まり、バックログとなっていた
顧客との仕様調整の効率も良くなっていった。
分割リリースによってスケジュールが合理的になった
こともあり、レビュー/テスト結果のチェックで不合格
となることは少なかった。品質も安定し、分割リリース
ごとに実施された受入テストでは、1〜2件しか不具合
を指摘されなかった。
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3−2 今後の課題
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プロジェクトにおいて問題が発生すると、直接的な事
象への対処に追われて、原因の追求が後回しになりがち
である。さまざまな失敗事例と成功事例を集積すること
によって、問題発生時の即応性を高めることが、今後の
課題だと考えている。
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